ロサンゼルスの郊外にあるレストラン“Lucy”は私の実家だ。
元々は父方の祖父が第二次世界大戦後に始めた店で、Lucyとは亡くなった祖母の名前である。
チェーン店のレストランがあちこちに並び立つようになった現在、Lucyの存在価値と言えば、歴史のある建物アンティークっぽい内装ぐらいのもので、私が生まれる前から客足はほとんど途絶えていた。
それでもこのオンボロレストランがやっていけるのは、街のワルどもの掃き溜めになっているからだ。
ワルと言っても、ギャングや麻薬カルテルの連中が巣食ってるわけじゃない。せいぜい田舎で粋がるティーンエイジャーが集う程度で、治安もそこまで悪くない。あくまでもここはロサンゼルスだ。
そう言った悪どもが、私は嫌いだった。
注文を取ればナンパばかりしてくるし、お尻を触られたことだってある。
それでも私がこの店で働くのは、従兄のマイクがいるからだ。
三歳年上のマイクは、小さな頃から私の憧れだった。
ジュニアハイスクールからアメリカンフットボールを続ける人気者で、体格もいいし顔もいい。
有り体に言えば好きだった。いつからかなんて覚えていない。
先週、現在の店主である父がギックリ腰でダウンしたことで、私はマイクと二人でこの店を任されることになった。
マイクが厨房を担当して、私が接客を担当する。
州法的に、まだ十八歳の私が何時まで働いていいのかわからないけど、父が復帰するまでの繋ぎとして、私とマイクはLucyにおける全権を任されることになったのだ。
子供の頃から、経営とか金勘定は嫌いじゃない。
むしろ好きな方で、将来は自分で何かお店を開きたいとすら考えている。
何のお店をするかは未定だけど、できれば憧れのマイクと一緒に――というのは高望みし過ぎだろうか。
「わかったよジェニファー。仕事が終わったらすぐ車で迎えに行くから」
マイクが厨房で誰かと電話をしている。方やグリル板で焼かれたハンバーグは放置されたままだが、多少焦げようが生焼けだろうが、文句を言う客はこの店にはいない。
そもそも味を期待されていない。私が子供の頃から、決して味の良い料理を出すお店ではなかったから。
「愛してるよジェニファー。君と会うのが待ち遠しいよ」
マイクはガールフレンドが多い。
あの容姿でスポーツでも有望なのだから当たり前だが、そのガールフレンドのうちの一人にも、私は入れていなかった。
彼の中では、せいぜい妹程度にしか見られていないのだろう。
collegeに通うお姉さんに比べて、私はまだまだ子供だ。
でもいつか想いを――。
そう考えたことは何度もあった。
けれどマイクは忙しい。
日替わりで違う女の子とデートしているし、昼間は大学とフットボールで多忙だ。
私の入り込む余地など、あるわけがなかった。
「いらっしゃい!」
入り口でベルが鳴り、私は笑顔で振り返った。
こんな店でも、私は全力で仕事をすることにしている。
お客さんに満足してもらうのは好きだったし、自分が将来飲食店を営むことになったら、笑顔の絶えないお店にしたいからだ。
しかし入り口に立った客を見て、私のテンションは急落した。
見るからに冴えないアジア人。
日本人《ジャップ》がそこにいたからだ。
「一人?」
私は相手にもわかるくらいぞんざいな態度で人数を聞いた。本当は日本人の客などすぐに追い返したい気分だった。
“日本人《ジャップ》はパールハーバーに奇襲を仕掛けた卑怯者だ”
それが亡くなった祖父の口癖だった。
ガダルカナル島での激戦を経験した祖父は、多くの戦友を失い、日本人に対して強い恨みを抱いていた。
すべてのジャップが卑怯者のわけではない。
そんなことはわかっているけど、祖父から旧日本軍の悪行を聞かされてきた身としては、ジャップに好感を抱くことは難しかった。
そして何より、私はアジア人の冴えない容姿が嫌いだ。
背は低いし、自己主張は弱いし、セックスも下手。
それが私の日本人男性に対するイメージだった。
とくに今日やってきた日本人は酷かった。
見るからにモテなさそうだし、ひょっとしたらチェリーボーイかもしれない。
言葉もかなりたどたどしいし、ガタイこそしっかりしているけど、マイクの鍛えられた肉体とは違い、どちらかと言えばネアンデルタール人を連想した。
とにかく野暮ったい。
それがその男に対する私の印象だった。
(早くしなさいよ……)
ジャップは注文も遅かった。
常連客ならメニューを見なくても適当に注文できるのに、メニューの写真を見て無駄にあれこれ悩んでいる。
私が将来オーナーになったら、こんな男は死んでも雇わないだろう。
判断は遅いし、優柔不断で、おまけにジャップ。最悪だ。
男は安いハンバーグセットを指差した。もはや英語を使うつもりもないらしい。知らない言葉でたどたどしく返答してくる。
私は確認もせず、男の席を離れた。
仮に注文が間違っていたとしても、彼なら気付きもせずに完食しそうだ。
「マイク。注文お願い」
注文が入ったことを厨房のマイクに知らせる。
しかし今度は別の女の子と電話していた。
この分だと、料理が出来上がるのは三十分先だろう。
……マイクは今、どんな女の子と喋っているのだろうか。
今日、彼がベッドで抱くのはどんな女だろうか。
私がその中に入れる日は、来るのだろうか。
小さな溜息が溢れる。
私が相手にされていないことはわかっている。
でも何かの間違いで、一晩だけでも彼と一緒に過ごせたら、きっと天にも昇る気持ちになれると、根拠もなく確信できた。
三十分経って、生焼けのハンバーグセットが出てきた。
普段ならマイクに気付かれぬよう電子レンジで加熱し直すところだけど、相手があの男なら平気だろう。だってネアンデルタール人だから。
私が料理を運ぶと、男は間抜け面で生焼けのハンバーグを見つめていた。
不平不満があったとしても、おそらくそれを主張する度胸もないのだろう。それが私にとってのジャップだ。
しかしその瞬間、男の視線がハンバーグではなく、その先に向けられていることに気付いた。
男が見つめているのは私の胸元。
屈んで露わになったboobsを見つめていたのだ。
「失せろジャップ」
私はありったけの侮蔑を込めて男を睨んだ。
きっとジャップは妄想の中で私のboobsを揉みしだいているのだろう。
視姦されているだけで怖気が走る。
よりにもよってこんな冴えないジャップに。
私を見ていいのはマイクだけなのに!
「せいぜい妄想を楽しむことね。私があんたみたいな冴えないジャップの上で腰を振ることなんて、天地がひっくり返ってもありえないから!」
私が叫ぶと、店中の客たちが湧き立った。
想像しただけでも鳥肌が立つ。
こんな冴えないジャップのpenisを受け入れるなんて百パーセントありえない!
それからジャップは一心不乱にハンバーグセットを平らげていた。
脇目も振らず肉を喰らい、パンに齧り付いている。
なんて野蛮なんだろう。
本当に原始人みたいだ。
やがて閉店時間が近づき、常連客たちは帰って行った。
残ったのはあのジャップ一人だけだ。
「もう閉店時間なんだけど」
料理は一瞬で食べ終わったくせに、ジャップは最後まで店に残っていた。
それならせめて注文しなさいよと思うが、もうそんなことはどうでもいい。薄汚いジャップは早く店から出てって欲しい。
“I'm sorry...I have no money.”
その瞬間、私の中の何かが弾けた。
このジャップは、あろうことかお金もないのにメニューを注文したのだ。
それを野蛮人のごとく綺麗に平らげて、最後はお金がないと来た。
「ふざけないでッ!!」
やっぱりジャップは卑怯者だ。
おじいちゃんの言った通りだ。
「聞いてよマイク! このジャップ、あろうことかうちでタダ飯食らおうとしたのよッ!」
当然ながら、私は店のパートナーであるマイクに事の次第を伝えた。
無銭飲食を働かれた以上、店としてそれなりの対処をする必要がある。
「別にいいじゃないか。せっかくだから店の後片付けでもさせとけよ」
しかしマイクは無銭飲食について我関せずだった。
今は私とマイクが店のことを任されているのに、まるで他人事みたいだ。
大方、例のジェニファーとの約束があるのだろう。
片付けをしなくて済んでラッキーぐらいに思っているのかもしれない。
「じゃあ俺は上がるから。後のことはよろしく」
「ちょっとマイク!」
私が呼び止めるのも聞かず、マイクは店を出て行ってしまった。
まだ締め作業だって残ってるのに、マイクは本当にお店のことに興味がないみたいだ。
「興味がないのは……私に、か」
思わず本音が漏れる。
マイクは私に興味がないのだ。
でなければどこの馬の骨ともわからないジャップと私を二人きりにして、店を空にするわけがない。
そのとき、私は誰かの視線に気付いた。
例のジャップが私の横顔を覗き込んでいるのだ。
正直かなりムカついた。
人が落ち込んでるときに、よりによって女の子の顔を覗き込むなんて、どれだけデリカシーがないのかしら。
冴えないジャップを睥睨で制して、私はキッチンへと足を運んだ。
こいつが無銭飲食を働いた事実は変わらないのだ。
どうせなら死ぬほどこき使ってやって、向こうが「もう許して下さい」と嘆願するのを見るのも悪くない。
相手はそう。薄汚いジャップなんだから。
Lucyのキッチンを見たジャップは案の定、瞠目していた。
お世辞にも、うちのキッチンは綺麗とは言えない。正確にはマイクの使った後のキッチンは――だけど。
「あんたの仕事よ」
私はジャップにキッチンの片付けを命じた。無銭飲食したのだから当然だろう。
客が無銭飲食したと聞いたときから、マイクの頭に後片付けという言葉ない。ジャップにすべて押し付けて女と会うことを考えていたのだろう。
正直、マイクの仕事は適当だ。
実際問題、彼も私も、店番を押し付けられただけなので、仕事にポリシーも何もないのは理解してるつもりだ。
でも私は、最低限の仕事はすべきだと思っていた。
父に仕事を任されたということは、それを期待されているからだろうし、ここで真剣に仕事に向き合うことは、私自身の将来にも役立つはずだ。
将来はマイクとこの店を継ぐ――なんて願望もなくはない。
でもそれは仄かな夢だ。
マイクは店の仕事に興味はないし、私に対してもない。
それが実現したら、さぞかし幸せなことなのだろうけど、今のままでは夢物語だ。
私自身も、仕事とちゃんと向き合えないマイクとは添い遂げられない。
彼の気持ちどうこうではなく、私自身の問題だ。
私は仕事にすべてを捧げられる人間だし、パートナーも同じ考えの人間がいい。
その観点から見ても、私の夢は到底叶いそうもない。
今夜はジャップと居残り作業だし、気持ちは沈むばかりだ。
マイクは今頃、ジェニファーと合流しただろうか。
悲惨な有様のキッチンをジャップに丸投げして、私はホールで暇をつぶしていた。
ホールの後片付けは正直三十分もすれば済んでまう。テーブルと椅子を拭いて、床にモップをかけて、あとはゴミを捨てるくらいだ。Lucyはそんなに広くない。
でもキッチンの片付けは三時間かけても終わらないだろう。
マイクが放置して帰ったのもあるけど、普段から彼の使うキッチンは整理整頓されてない。
食器を洗って元の場所にしまうだけで、きっと二時間はかかるはずだ。
「嘘でしょ……?」
一時間後、ジャップのところに戻った私が見たのは、綺麗に整頓されたキッチンだった。
シンクで山積みになった食器も、荒れ果てた調理台も、すべてピカピカに磨かれている。
正直、ジャップが汚れたお皿をすべて捨てたのかと思った。そうでないと説明がつかない早さなのだ。
しかしお皿は所定の場所にすべて収納されていた。無論、置き方など教えていないので多少の違いはあるが、むしろジャップの置き方の方が効率がいいと思えるくらい、洗練されている。
調理台には汚れひとつないし、まるで父がいた頃のキッチンに戻ったようだ。
当のジャップは、床をモップがけしていた。
私は食器洗いと後片付けだけを頼んだつもりなのに、彼は店を隅々まで掃除しているのだ。
本音を言えば、予想外だった。
ジャップは仕事も適当で、あわよくば裏口から逃げ出すような奴だと思っていたのに、ここまで完璧な仕事をされると肩透かしもいいところだ。
完璧どころか、それ以上をやってのけている。
しかも一時間かそこらの短時間で。
「休憩したら? 過労で倒れられても責任持てないし」
かと言って、ジャップに心を許す気にはならなかった。こいつが無銭飲食をしたのは事実だし、ちょっと後片付けができるからといって、私の評価が覆ることはない。
これはあくまで、仕事人としての単なる効率化だ。適度に休憩を挟まないと仕事の質は確保できない。
ジャップは私の差し出したCOKEをまじまじと見つめていた。失礼な話だ。大方毒でも盛ったと思っているのだろう。
私の視線を感じたのか、ジャップは一気にCOKEを飲み干した。
炭酸飲料なのに、なんて豪快な飲みっぷりだろう。野蛮人に相応しい飲み方だ。
「マイクもあんたくらい仕事熱心だったらいいのに」
私は自分用にもドリンクを注いでキッチンの椅子に腰かけた。
別にジャップに興味があるわけじゃない。
ただ単に、話し相手が欲しかったのだ。
英語がわからないのか、ジャップはその場でキョトンとしていた。
でも私には好都合だ。別に相談相手が欲しいわけじゃない。壁以外で、愚痴の捌け口が欲しかったのだ。
「別に料理人を目指せとも言わないし、私とお店を継いでくれとも言ってない。ただ単に、与えられた仕事くらいはちゃんとやろうって言いたいだけなのよ」
正直、マイクが私に気がないことはわかっている。そして今後もそれは変わらないだろう。
だから私がマイクに伝えたいのは、女の尻ばかり追いかけていても、そのうち足元をすくわれるってこと。
いくら顔が良くても、スポーツができても、仕事に誠実でないと人は離れていく。
私はそれが伝えたいだけなのかもしれない。
「私、この仕事に向いてないのかな。細かいことは気にせずに流せる人間だったら、マイクの仕事ぶりも気にせずに済むのかもしれない」
案外、私が神経質なだけなのかもしれない。
マイクの料理も、片付けも、簡単に見過ごせるのなら、こうして夜中に落ち込むこともなくなる。
そもそもLucyに料理の味や綺麗さを期待してる人間などいない。
もしそうだったら、ワルの吹き溜まりにはなっていないはずだ。
そしてそんなことを気にしない女だったら、マイクも振り向いてくれるのだろう。
彼のやることなすことすべてを礼讃して、褒め称えるだけの器量のある女なら、抱く女のリストの一人には加えてもらえるかもしれない。
「……そんなの、考えるだけ無駄よね」
私はそういう女じゃない。マイクのすべてを許せるような、懐の深い女とは程遠い。
だから、今私の目の前にいるのはマイクではなく、冴えないジャップなのだ。
「あんたも少しは話しなさいよ。少しくらいは英語できるんでしょ?」
ジャップは私の話を聞くだけだった。
英語がわからないのでそうするしかないのだろうが、ただ聞いてもらえるだけで幾分気持ちが楽になるのは事実で、その点に関しては私は彼に感謝していた。癪だけど。
「そもそも、英語も話せないようなジャップがどうしてアメリカにいるのよ。おまけにお金までないなんて、無謀にも程があるわ」
彼がどういう経緯でロスに来たのかはわからないが、本当に無銭で来たなら無謀もいいところだ。ここはまだ平和だけど、市内には5thストリートみたいな危険な場所もあるのに。
“I'm a heartbreaker.”
ジャップが何を言ったのか、一緒理解できなかった。
失恋者だから何だというのだ。
何をどうすれば無一文でアメリカに来るというのか。
「あんた……バカでしょ」
しかし私はそれを理解した。
この冴えないジャップは、たかだか失恋したからといって、この広大なアメリカを旅しようとしているのだ。
言わば、傷心旅行。
英語も話せないのに。
お金もないのに。
無謀なのもいいところだ。
「……まあそういうの、私は嫌いじゃないけどね」
言ってみれば私もマイクに失恋したようなものだ。
本当はもっと前から叶わぬ恋とわかっていたけど、このジャップに会って初めて、マイクが私を選ぶことがないことを、そして同時に、私の方もマイクを選ぶことがないことを理解した。
ならばいっそ、私も旅にでも出てみようか。
「そしたらあんた、私を連れてってくれる?」
冗談めかして言うと、ジャップがキョトンとした顔をする。多分理解していないのだろうけど、こうして間を持たれると言ったこっちも恥ずかしくなる。
「わ、忘れて忘れて! ただの冗談だから!」
私は必死になって否定した。
言葉なんて通じていないのだからスルーすればいいのだけれど、あまりにも恥ずかしくてつい狼狽えてしまった。
どうして私はあんなことを言ったのだろう。
「きゃっ!」
思わず逃げ出そうとした私は、不覚にもジャップに躓いて、彼にCOKEを引っ掛けてしまった。
「ごめんなさい……」
彼のズボンがCOKEまみれになっている。
旅人の彼にズボンの着替えなどあるはずがないし、無一文なのだからクリーニング代も出せないだろう。
第一、クリーニング中に履くズボンがない。
必然的に、ズボンは店で洗うことになった。
厨房には店員のユニフォームや布巾などを洗う洗濯機が備え付けられており、服を洗うことはそう難しくない。
しかし乾くかどうかは話が別だ。
洗濯したズボンは脱水機にかけたところでそれなりの水分を含んでおり、厨房中の換気扇を回しても、乾くのに一晩かかるだろう。
「寝たけりゃ寝てもいいわよ」
厨房の椅子に座りながら、私たちはズボンが乾くのを待つことにした。
部外者である彼を店で一人にするわけにもいかないし、かといって他にすることもない。
言葉が通じないことも災いして、私たちはどんどん会話を失っていった。
もう午前二時過ぎ。
さすがに眠気が襲ってきた。
普段はもう寝てる時間だ。親には遅くなると伝えてあるから大丈夫だけど、朝まで眠気を抑えられる自信がない。
それに……。
(目のやり場に困るのよ……)
当然ながら、ジャップはパンツ一枚で座っていた。
私も十八歳。まったく経験がないわけじゃないけれど、さすがに視線が泳いでしまう。
だからといって目を閉じると、とたんに眠気が襲ってくる。
眠気と気まずさに挟まれて、私は神経をすり減らした。
それから数分経っただろうか。
気付けば私は、眠っていた。
眠ったと言っても椅子に座ったままだから、完全に意識を失ったわけじゃないけど、目覚めたときに前後不覚になるくらいには、眠っていた。
「……え」
そして目の前にテントを張らせた大男が立っていたら、誰もがこう叫ぶに違いない。
「何してんのよこの変態!!」
私はジャップを床に張り倒した。ジャップも無警戒だったので簡単に倒れた。
しかしそれがいけなかった。
倒れたはずみで、ジャップが怒張したpenisを社会の窓から露出させてしまったのだ。
なんて凶悪な形なのだろう。
私も処女じゃない。処女じゃないけど、ここまで大きなpenisを見るのは初めてだった。
おまけに太いし、グロテスクだし、野蛮人という言葉がぴったりの荒々しいpenisだった。
やっぱりこいつはネアンデルタール人だ。
そもそも、どうしてジャップはこんなに逞しく怒張しているのだろう。
そういえば彼は、お店で注文するときも私の胸を凝視していた。
決して大きい方ではない。クラスでも私より大きな子はたくさんいる。
かといって小さいとも思わない。アメリカでは平均か、少し大きいくらいのサイズだろう。
そんな私の胸を、ジャップは鼻の下をのばして見つめていた。
なんともおぞましい光景だけど、あの瞬間からすでにジャップが私の身体に目をつけていたとしたら、私はなんて馬鹿なことをしたのだろう。
見ず知らずの男を、お店の中に連れ込むなんて。
しかも周りには民家もなく、助けを呼んでも誰も来ない。ジャップにそんな度胸はないと高を括っていた。
もし押し倒されたら、こんな大男には敵わない。
完全に不覚だった。
こんな男の前で寝姿を晒すなんて。眠気は不可抗力とはいえ、パンツ一枚の男の前で船を漕ぐなんて、犯してくれと言っているようものだ。
私の寝姿を見て、彼は興奮したのだろうか。
この巨躯で私を押さえつけて、組み敷き、巨大なpenisで私を喘がせ、泣き寝入りさせようというのだろうか。
何度見ても逞しいpenisだ。
カリ首はあんなに大きく、太さも尋常じゃない。長さも半端なく、経験の少ない私のpussyでは半分も咥え込むことができないだろう。
もしこんなので突かれたら、私は壊れてしまう。
それだけジャップのpenisは立派だった。
マイクのpenisは見たことはないけれど、多分これほどの逞しさはないだろう。
「あなた……私を犯したいの?」
私は何を言っているのだろう。女の前でpenisを勃起させているのだから当たり前だ。
しかしジャップは答えなかった。
英語が通じなかったのかもしれない。
仮にジャップが首を横に振ったら、濡れたズボンを突っ返して今すぐ店の外に追い出すつもりだった。
逆に首を縦に振ったら、すぐさま警察に通報してやるつもりだった。
しかしジャップは答えない。
まるで私自身に選択させているようで、身動きが取れなくなってしまう。
その間にも、ジャップのpenisは衰えない。むしろ先程よりも大きくなっているように気がした。
きっと射精しなければ収まらないだろう。
これだけの大きさだ。女を抱かなければ収まらないかもしれない。
危険は重々、承知していた。
それが馬鹿な選択肢なのもわかっている。
しかし私は、それが唯一正しい選択肢だと信じていた。
“Ah...”
私はジャップのpenisを咥えていた。
とたんに、ジャップがネアンデルタール人とは思えないくらい可愛い声を漏らす。
その可愛らしさとは裏腹に、とんでもなく逞しいpenisだった。
(こんなに冴えないのに、どうしてpenisはこんなにも立派なの?)
まだ亀頭も全部口に入れてないのに、顎が外れてしまいそうになる。
penisの臭気が口いっぱいに拡がり、思考が曖昧模糊としてきた。
私は自分からジャップを射精させることにしたのだ。
できるだけ口や手で射精させて、自分が犯されたときの被害を最小限に食い止める。
でないとこの大きさを受け入れる自信がない。
こんな大きいので犯されたら、私はおかしくなってしまう。
「んっ……んっ……」
できる限り奥までジャップのpenisを咥え込む。なんて硬さだろう。まるで丸太でも咥えてるみたいだ。
ジャップは恍惚の表情を浮かべている。しかし一向に射精する様子はなかった。私のテクニックが覚束ないのはわかるけど、かれこれ十五分近くフェラチオを続けても、cumshotの気配はない。
(なにこれ……? これじゃあ挿入しても全然イカないってこと?)
こんな剛直で何時間も突かれたら、私はどうなってしまうのだろう。
ただでさえセックスの経験の少ない女が、こんな逞しいオスの腰振りに耐えられるわけがない。
私は必死にジャップのpenisをしゃぶり続けた。
手も使って棒を扱いたし、裏筋やカリ首も丹念に舐め続けた。
四つん這いになった私は、おそらく存分にboobsを晒しているだろう。
先程はあれだけ嫌悪感を覚えたはずなのに、今は何ら抵抗を覚えない。こうして胸元を晒すことが、まるで自然なことのように感じられている。
そもそも私は今、このジャップにフェラチオしているのだ。
今さら胸など隠してどうなるのだろう。
むしろ自分から脱いだほうがいざ脱がされたときの屈辱も少ない気がする。
見上げると、ジャップの視線が明らかに私の胸元に向けられていた。
あれだけ嫌だったのに、今は見られることで私も興奮してしまう。
ジャップの巨根がさらに肥大化する。
私のを見て大きくしてくれるのなら、いくらでも見て欲しい気持ちだった。
いっそのことブラを剥ぎ取ってnippleまで見てくれたら、もっと興奮できるのに。
“AHHH!!!”
その瞬間、ジャップの尿道から大量のスペルマが射出され、四つん這いになった私を精液まみれにした。
私の顔が、ブロンドの髪が、胸の谷間が、ジャップの精液に穢されていく。
物凄い臭いだった。
まるで麻薬のような、女を蕩けさせる匂いだ。
(すごい量……)
私はジャップの鈴口から漏れるスペルマを丁寧に舐めとった。
精飲なんて生まれて初めてだった。
そんな屈辱的な行為、マイクにだって御免だと思っていたのに、私は自ら進んでジャップの濃い精飲を口に含んでいた。
(なんて濃さ……なんて濃厚さなの)
まるでフォアグラのように濃いスペルマを嚥下する。
癖になる味だと一回目でわかった。これだけの濃さなら、多分確実に私を妊娠させるだろう。
「どうして……?」
にも関わらず、どうして私は自分からシャツをたくし上げ、ブラのホックに手をかけているのだろう。
薄ピンク色のnippleを見てもらうのが、どうしてこんなに心地良いのだろう。
それだけで飽き足らず、どうしてスカートを外し、ショーツまで脱ぎ去っているのだろう。
下半身を晒してみて、気付いた。
私はすでにびしょ濡れだった。まだ触られてもいないのに、ジャップに組み敷かれることを期待して、信じられないほど濡れていたのだ。
ジャップのpenisはまったく衰えていなかった。
射精したばかりだというのに、逞しい男根が天井に向かって屹立している。
多分私のサイズでは奥まで入らないだろう。
これを最後まで咥え込めるのは、よほど高身長の女性だ。まだティーンエイジャーに過ぎない私は、半分と少しを咥えたところで、軽く子宮口に達してしまう。
そんな相手に騎乗位だなんて、馬鹿げた行為なのはわかっている。
でも私にはそれしかなかった。
この男にセックスで主導権を握られたら、多分私は壊れてしまう。
何度も中出しを懇願して、自ら彼の奴隷になると宣言してしまうだろう。
そんなことは死んでも嫌だった。
相手はジャップだ。
おじいちゃんの代からの私の敵だ。
せめてセックスするなら、主導権は私が――。
「あっ……ああっ!」
ジャップの上に跨って、私はゆっくりと腰を落とした。
凄まじいサイズだ。
ジャップはみんなこんなに大きいのだろうか。
だったらこの国から日本人男性は一人残らず駆逐しなければならない。
でないとアメリカの女はみんな、ジャップのpenisを求めるようになってしまう。
(なんて大きさなの――)
私はしばらく身動きが取れなかった。
久々のpenisなのに、今まで経験したものとは異次元のサイズだった。
しかも硬さが桁違いだ。
こんなに硬いので掻き回されたら、私はもうこの男の下僕になるしかない。
(すごい――こんなの――こんなのって――)
シャツを上までたくし上げながら、私は騎乗位でジャップの上に跨っている。
つい数時間前まで、こんな自体はありえないと思っていた。
まさか私が、ジャップのpenisを受け入れるなんて――。
「あっ……ダメッ――」
痺れを切らしたのか、ジャップが下から私のboobsを鷲掴みにしてきた。
野蛮なpenisとは裏腹に、丹念で心地よい揉み方だった。
こんな揉まれ方は生まれて初めてだった。
丁寧で焦らすような揉み方に、私はそれだけで昇天しそうになる。
そして恐れていた(期待していた)行為が始める。
「ああっ!!!」
男の一突きが、私の子宮を襲った。
信じられない。
信じられないことに、私はそれだけで激しくイッていた。
たった一回なのに。
たった一回のピストンなのに。
私は人生で経験したことのない、激しい絶頂を向けていた。
(頭……真っ白になりそう……)
電流が子宮から脳天に駆けて突き抜ける。
これがセックス――。
本物の男のpenisなのだろうか。
これまでの経験が児戯に等しいと思えるくらいの、逞しさ。
彼の逞しすぎるcockを体感して、私は自分から腰を振り始めていた。
「ああっ! すごいっ! これすごいっ!」
あまりに激しい快楽に理性が消し飛びそうになる。
世の中にこんなに気持ちいい行為があるだなんて知らなかった。
セックスがこんなに凄いものだなんて、初めて知った。
「凄いっ!! あなたのpenis、ありえないっ!!」
私の腰の動きに合わせて、彼もまたピストンを開始する。
合わせて――というのは間違いかもしれない。
彼のピストンに、私の腰振りなどあっけなく蹂躙される。
逞しい、本物の男の前に、女はただただ屈するだけだ。
それもう、何万年も前から決まっている人類の真理だ。
「ああ凄いっ!! 日本人のセックス、凄すぎるっ!!」
どうして今まで、私は白人の男にしか抱かれなかったのだろう。
こんなに逞しい人種がすぐ側にいたのに、どうして私は自分から身体を差し出さなかったのだろう。
自分からpussyを晒せば、こんな風に犯して貰えたのに――。
「凄いっ! 日本人の生penisでまたイッちゃうっ!!!」
ジャップがラストスパートを開始する。
ゴムを着けていないとか、相手が日本人だとか、そんなことは関係なかった。
もう理性なんて無意味だ。
私は彼に中出しされるために生まれてきたのだから。
「ああーーーーーーーっっっ!!!」
頭の中が本当に真っ白になる。
実際、意識は何度も飛んでいただろう。
これだけの快楽が身を襲えば、脳がリミッターをかけるのは当然だ。
それだけ凄い、絶頂だった。
数秒遅れて、大量の射精が子宮を襲う。
まるで馬のような射精だった。
男根もまた馬のようなのだから、睾丸もまた同等の性能を持っているのだろう。
果てしなく続く精液の波が、私の子宮を何度も叩いた。
「あっ! ああっ!」
ただの射精のに、私はそのたびにイカされた。
もうこの男に何をしても無駄だ。
私は彼に抵抗できない。
こんな異次元のセックスを教えられたら、抵抗などできるはずがない。
まだ二回目の射精だ。
しかし私はもう限界だった。
これ以上イカされたら、どうなるか見当もつかない。
「ああっ! それ凄いっ!!」
しかし彼が衰えることはなかった。
むしろますますpenisを肥大化させて、私を何度も犯していく。
キッチンの床での正常位。
ホールでの立ちバック。
ディープキスしながらの対面座位。
何度中出しされたかわからない。
その二十倍、私はイカされただろう。
それだけ圧倒的な力の差があった。
彼が数回ピストンするだけで、私は面白いようにイカされたのだから。
そして翌朝。
「これ、昨日のバイト代」
私は店のレジから十ドル札五枚を取り出して、彼に手渡した。
時給換算で言えば多いかもしれないけど、昨夜私が与えられた快楽で言えば桁が二つ増えてもいいくらいだった。
それだけ、彼のセックスは圧倒的だったのだ。
当然ながら、彼はキョトンとしていた。
よもや無銭飲食して給料が貰えるとは思わなかったのだろう。
しかしこれはただの口実だ。
私の目的はもっと他にある。
「午後の十時にまた来て」
私は彼に次の仕事時間を告げていた。
表向きはアルバイトとして雇うためだが、実際のところはまた彼に抱かれたいと思ったからだ。
そんなことをしていたら店の売り上げはあっという間に底をついてしまうけど、私はもう自分を止めることができなかった。
“Th...Thank you.”
ためらいつつも、彼は給料を受け取った。
言葉も通じない国で無一文なのだ。彼にとってもいい話であることに変わりはない。
「そういえば、あなたの名前まだ聞いてなかったわね」
私はいつもの高飛車な態度で尋ねていた。
昨夜は完全に屈服してしまったけど、それとこれとは話が別だ。この話し方が私らしさなのだから。
“Da...Daisuke. What is your name?”
「ダイスケね。私はエリザベス。親しい人はみんなリズって呼ぶわ」
まだ会って十時間も経っていない男に愛称で呼ぶことを許容して、私は自分の部屋に戻っていった。
それから三日間、ダイスケはうちの店で働いた。
店の片付けが仕事だが、やっぱりそんなことは名目で、夜はベッドの上で激しく愛し合った。
私はダイスケを愛していた。
セックスが気持ちいいからではない。仕事における彼の誠実さに、恋をしてしまったのだ。
私が一緒にお店をしたかったのはマイクではない。ダイスケだ。
そう確信できるくらい、ダイスケはピッタリな人だった。
おまけにセックスが異次元に優れていれば、振り向かない女はいないだろう。
しかし三日間の朝。
「どうして!? 私の何がいけなかったの!?」
ダイスケがまた旅に出ると言い出したのだ。
当然ながら私は引き止めた。
やっと理想の人と出会えたと思ったのに、ここでお別れなんてあんまりだ。
しかしダイスケは聞き入れなかった。
聞き入れないというより、言葉のニュアンスをほとんど理解していないと言った方が正しいかもしれない。
セックスと時は言葉なんて通じなくてもいいと思った。
この人との間には言葉なんていらないと思った。
でも今はそれが何よりもどかしかった。
もし私が日本語を話せたら、何千もの愛の言葉を並べて彼を引き止めるのに。
「行かないでダイスケ! あなたを愛してるのっ!」
それは嘘偽りのない、私の心からの本心だった。
ダイスケと出会うまでは日本人と恋人になるなんてありえないと思っていたのに、今は自分から懇願していた。
でもきっと、愛なんてそんなものなのだろう。
「私、あなたと結婚してお店を持ちたいのよ。このルーシーをもっと素敵なレストランにして、たくさんのお客さんに笑顔になってもらいたいの!」
とっさに発した言葉が、自分の長年の本心なのだと気付いた。
私はルーシーをもっと素敵なお店にしたかったのだ。
一緒にそうしたいと思える相手を、それに気付かせてくれた相手にやっと出会えたのに、ここでお別れなんて絶対に嫌だ。
そんな青写真も、言葉が通じなければ伝わらない。
このままではダイスケが行ってしまう。
「お願いダイスケ。考え直して。私待ってるから。ダイスケの心の傷が癒えて、旅行が終わったら、きっと私のところへ帰って来て」
通じない言葉で無理やり、私はダイスケの連絡先と日本での住所を聞き出した。
彼にはまだ目的があるのかもしれない。
失恋で出来た傷がまだ癒えないのかもしれない。
だったら私はそれを待つ。
何ヶ月だって何年だって、ダイスケがまたルーシーに帰って来るのを待ち続ける。
最後に一度だけハグを交わして、ダイスケは宿泊していたホテルを出て行った。
「私のところに帰って来ないと、許さないからね」
誰もいなくなった部屋で独り言を呟く。
もし、ダイスケが連絡を寄越さなかったら、日本の住所まで押しかけてアメリカに連れ戻してみせる。
それぐらいの覚悟だった。
ダイスケも、ルーシーを継ぐという夢も、私は諦めたりはしない。
それが私、エリザベス・カーターの生き様なんだから――。