幼馴染みのイヴァンと結婚して、丸二年。
この二年間、もちろん喧嘩することもあったけれど、私とイヴァンは幸せだった。
他人の気持ちなんて本人にしかわからない。そういう人もいるかもしれないけど、私たちは互いが幸せであると断言できた。
だって、ずっと好きだった相手と結ばれて、結婚までできたんだから、それを不幸せだなんて言う人なんて見たことがない。
モスクワよりかなり東にあるチタという町で互いに生まれ育ち、高校まで一緒だった私たちは、一度は大学進学で離れ離れになった。
しかし就職の折に運命的な再会を果たした私たちは、導かれるように恋に落ち、結ばれた。
私の家は代々経験なロシア正教会、キリスト教の信奉者だけど、本当に神様が導いたとしか思えない再会に、神は本当にいるんだと改めて、心に刻むくらいだった。
「いってらっしゃい、イヴァン」
モスクワの警察官を務めるイヴァンは、一般的な仕事とは違い、二十四時間働き、二十四時間休むという、不規則な生活を送っている。
丸一日一緒にいられる日が交互に来るのは嬉しいけれど、その分丸一日会えない日が交互に来る。
イヴァンのモスクワ勤務が決まり、もう一年が経つけど、会えない時間が二十四時間続くというのは、私には寂しいことだった。
でもこれは、神が私たちに与えた試練。
離れていても二人の愛が本物であることを、神様が試しているのだ。
「ああ、行ってくるよソフィア」
イヴァンが出かけるとき、私たちは必ずキスをする。
もちろんロシアではキスは挨拶の意味もあるけれど、友人や両親とするのとは違う、ちゃんと恋人同士がするキスを、結婚してから毎回続けている。
よく、夫婦も長年連れそうとマンネリするなんて言うけれど、私はその気持ちがわからない。
本当に愛し合う相手なら、どんなときでもキスしたいって思うものなのに。
「俺の留守をよろしくな」
「はい、わかりました」
結婚するときに引越した狭いアパートだけど、ここが私たちの家だ。
イヴァンがいない夜は不安だけど、イヴァンが留守の間は私にこの家を守る義務がある。
「さ、お掃除しましょう」
イヴァンがいないからって、いつまでも寂しがってはいられない。専業主婦の仕事は山ほどあるし、イヴァンが帰ってきたときに「この家が好きだ」と思ってもらえるように、家を綺麗に保つことが私の仕事だ。
「今日は、窓の拭き掃除もしようかしら」
床の掃除機がけ、雑巾掛けをあらかた終えて、最近汚れが気になっていた窓ガラスを掃除しようと思い至る。
汚れたガラスから差し込む陽光より、綺麗なガラスから差し込む日の光の方が綺麗に決まっているもの。
「あっ!」
しかし窓際にバケツを置いたところで、私はとんでもないミスを犯す。バケツの取手に腕を引っ掛け、あろうことかバケツを倒してしまったのだ。
必死に手を伸ばして、バケツそのものの落下は間逃れる。
でもバケツから飛び出した水が、五階の窓から外の通りにぶちまけられてしまう。
「ああ! なんてことなの!」
しかもあろうことか、運悪く水の落下地点に通行人がいた。
突然上空から水を被せられた黒髪の男性は、当然のことながら何が起きたのはわからず、その場に立ち尽くしている。
「大丈夫ですか!?」
窓から身を乗り出して叫ぶと、その黒髪の男性が混乱したままこちらを見る。
イヴァンよりはやや小柄な、朴訥な雰囲気を持ったアジア人の男の人。
それが、私とダイスケさんとの出会いだった。
◆ ◇ ◆
「本当にごめんなさい……」
ずぶ濡れになった男性を、私は家の中に招き入れた。
それからすぐにタオルを探し、身体を拭くために彼のシャツを脱がそうとすると、
“zi, zibun de yarimasukara...”
私たちロシア人にはまったくわからない言葉を言って、自らタオルで頭を拭き始めてしまった。
彼をこんなにずぶ濡れにしたのはこの私だ。だから彼の体を拭くのは私の仕事なはずなのに、彼は断固として私に体を触らせようとしない。
そこに、彼の誠実さが滲んでいるように見えた。
考えてみれば私は人妻で、彼は男性。家に招き入れられた時点で抵抗があるのかもしれないし、私自身もいくらかは不用心だと言えるかもしれない。
でも、
「大丈夫ですよ。これもきっと、神のお導きですから」
隣人愛を重んじる私は、タオルを掠め取って彼の頭を拭き始める。
どんなシチュエーションであろうと彼をずぶ濡れにしたのは私だし、彼なら何か間違いが起こることはないだろうと、私の勘が告げている。
「失礼しますね」
“A...”
あらかた髪を拭き終わったところで、私は彼のシャツを脱がせる。
男性の体は思ったよりゴツゴツしていて、警察官であるイヴァンに比べて筋肉質ということはないけれど、やはり男性なんだということを実感する。
少し、恥ずかしくはあるけれど、これも神に与えられた試練だと思って、私は彼の体を丹念に拭き上げる。
(なんだろう、この気持ち)
彼の上半身を拭き終えた頃、私の中に不思議な感情が生まれていた。
なんだか心が高揚して、頭の中に霞がかかる。
あとは彼のズボンを下ろして下半身を拭くだけ。
そんな簡単なことなのに、何故か人妻としてそれはしてはいけないことのような気がしてしまう。
彼の被害者。私は加害者なんだ。
だから彼のズボンを下ろすのは、私に与えられた使命なんだ。
「…………どうして?」
しかしズボンを下ろした中にあったものを見て、私は唖然とする。
彼のトランクスの「中のモノ」が、明らかに大きくなっていたからだ。
私はただ体を拭いていただけなのに。
エッチなことなんて何一つしてないのに。
(私……どうしてこんなことを……?)
彼のモノは明らかにイヴァンのモノより逞しく、社会の窓からイヴァンのモノとは形が違先端が半分顔を出していた。
その時点でようやく、私は自分のしでかした行為の重大さに気付く。
人妻が、見ず知らずの男性のズボンを下ろす。
その行為の異常さに、私は今さらになって驚愕した。
そんなこと、普段なら絶対にしないはずなのに、ズボンを下ろす前はそれを躊躇うことがおかしいとさえ思っていた。
まるで、何者かに導かれたかのような行為。
それこそ、神が私にそうすることを仕向けたような――。
“Go, gomen nasai...”
彼の言葉はわからない。でもとても申し訳なさそうな態度にそれが謝罪を意味する言葉だと言うのはわかる。
彼もまた状況の被害者。
ただ道を歩いていただけで私に水をかけられ、不可抗力の中で体を拭かれ、下半身の恥ずかしい部分を露出させられた。
私もまた、普段の自分からは絶対に考えられない“意志”でこの状況に導かれた。
何よりさっきからずっと頭の中で誰かが、彼のモノを鎮めろと命令している。
(神よ……あなたなのですか?)
二十六年間神を信じてきて、こんな経験は初めてだった。
もしこれが、私に与えられた啓示だとしたら。
彼の下半身に対峙するという行為が、私の人生において必要なことだとしたら。
私はもう、頭の中の誰かの声に、素直に従うしかない。
「私……ソフィアと申します。失礼ですがあなたのお名前は?」
今さらになって私は彼に自己紹介をする。
言葉が通じないのはわかっているはずなのに、片言ならわかる英語ではなく、ロシア語で。
もしこれが本当に神の啓示なら、彼は言葉の壁など超えてくると思った。
今この状況が、私たち人間を超えたものの作り出したものなら、どこで生まれたとか、どんな言葉を話すとか、そんなことは些細なことに過ぎない。
“Daisuke.”
これまでの意思疎通のなさが嘘のように、彼は自らの名前を答える。
これが名前である証拠なんてどこにもないはずなのに、私は疑いようもなくダイスケが彼が名前なのだと確信する。
それが、神のお導きである証拠だ。
「…………神よ。彼のペニスを咥えることをお許しください」
十字を切り、神に祈って、私は社会の窓から顔を出した彼のペニスに手を添えた。
熱い。
第一印象はそれだった。
イヴァンのモノより熱くて、それに太い。
先端の形が違うのは、おそらく皮が剥けているから。
私はイヴァンのしか知らないけど、男性器には包茎というものとそうでないものがあり、世の中には彼のように皮が剥けてエラのようなものが剥き出しになった男性もいるらしい。
(神よ……)
もう一度神に祈りながら、私は彼の重量感のあるペニスを口で咥え込んだ。
途端に、口の中がペニスでいっぱいになる。
イヴァンのモノとは全然違う。熱さも重量感もそうだし、何より硬さが私の知る男性器とまるで違う。
コンクリートのように硬いペニスが、私の鼻腔を殿方の臭いで満たしていく。
唇が彼の張り出したエラに引っかかるたび、なぜかお腹の奥が熱くなるのを感じる。
(どうして……射精しないの……?)
口でのご奉仕を始めて早十五分。
にもかかわらず彼は一向に射精しようとしない。
イヴァンはいつも五分ともたないのに、彼のそれは私なんかの口ではびくともしないようだった。
(このままだと、私の顎がもたない……)
ただでさえ太すぎるそれを咥え続けて、私の顎は限界だった。
それに彼の男らしい“臭い”に充てられて、だんだんと頭がぼんやりとし始めている。
私の使命は彼を射精させ、男性器を鎮めること。かくなる上は、
“Ah....”
はしたないと思いつつも、私は着ていたワンピースを脱ぎ捨て、彼の前でブラを外した。
夫でもない男性の前で胸を晒す。
それ自体が背徳行為だとは思いつつも、もはや口や手だけでは追いつかない。
晒された私のバストを見て、ダイスケさんが感嘆の声を漏らしている。
私だけでなく、ロシアの女は他の国に比べて胸の大きな女が多い。
私も例に漏れずかなり大きい方だと思うけど、イヴァン以外に胸を称賛されて嬉しい気持ちになるのは、初めての経験だった。
「……失礼します」
不躾なのを承知で、彼のペニスを両胸で挟ませてもらう。
途端に、彼のペニスのあまりの硬さに驚嘆する。イヴァンのは私の胸で埋れるのに、彼の反り返ったそれは私の胸で挟んでもなお、エラの張った先端を私の眼前に突きつけている。
熱い。
なんて熱いペニスなの。
胸で挟んでいるだけなのになんで、私の胸の奥まで熱くなるの?
(ああ……)
彼の逞しいペニスをご奉仕しながら、反り返った感触に酔いしれる。
私はただ、彼を射精させるためだけに胸を上下させているのに、まるで彼の熱と硬さを感じることが目的かのように、彼の長い竿から離れられない。
(なんて臭いなの……)
彼の先端から、逞しいオスの臭いがする。
イヴァンのはこんな臭いしないのに。
他の男の人の臭いなんて、ただ不快なだけなのに、どうしていつまでもこの臭いに晒されていたいと思うの?
お口でのご奉仕と胸でのご奉仕を含めてかれこれ二十分。
イヴァンだったらとっくに射精しているはずなのに、彼のそれは時折脈打つだけで一向に射精しようとしない。
もしかしたら本当に、私は自分の身体の一番大事な部分を差し出すかもしれない。
それがいけないことだと知りつつも、もしそうなったら私はどうなってしまうの?という疑問が頭の中をぐるぐると巡って離れない。
こんなペニスを挿れられたこと、私の人生では一度もない。
(お願いだから、早く射精して――)
そうならないことを願って、全身全霊をかけて彼のペニスを胸でご奉仕する。
しかしそう願う反面、数パーセントかはいつまでも射精しないで欲しいと願う自分がいるのことは、紛れもない事実だった。
そして、
「ああっ――!!」
彼の逞しいペニスの先端から、もの凄い量と勢いの精液が解き放たれる。
それはまさに、出すではく、射出。
スペルマの弾丸となった精液が、私の胸と顔と髪を、一瞬で白濁液で染めていく。
(熱い……それになんて臭いなの――)
もはやペニス自体の臭いの比ではない。
これまでのそれを圧倒的に超える臭気が、私の全身に浴びせられる。
私はイヴァンのものなのに、この射精だけで彼の所有物に塗り替えられてしまうような圧倒的な存在感が、彼の射精にはあった。
この臭いを嗅いでいると、頭の中がクラクラしてくる。
それに目の前の逞しすぎるペニスが、視覚の面でも私の精神を追い詰めていく。
彼の精液は全身にまとわりつく感じがするのに、なぜか不思議な清涼感があって、嫌な感じは全然しない。
むしろ彼の先端からまだ出ないのかと期待している自分がいて、そのはしたなさを恥じてしまう。
「これで……満足ですか?」
朦朧とする意識の中で、顔を赤らめながら問いかける。
私の義務は、私のせいで大きくなってしまった彼のペニスを鎮めること。
その役目は果たしたのだ。それ以上は、何も背負う必要がないはずなのに。
(どうして……まだこんなに逞しいままなの?)
射精してもまったく衰えないペニスから、目が離せなくなる。イヴァンは一度出せばしばらく休憩が必要なのに、アジアの男性は連続で射精できるの?
私の役目は終わった。
終わったはずなのに、彼のペニスを鎮めるまで、家から帰してはいけない気がした。
(神よ……ここからが本当の試練なのですか?)
ダイスケさんのペニスが未だ逞しいのは、私がまだ試練を乗り越えていないから。私は徐々にそう考えるようになった。
女なら誰もが見惚れてしまうような、圧倒的なペニスを持つ男性。
神によってその男性に引き合わせて、私が試されていること。それは――。
(この人と繋がっても、イヴァンへの愛が変わらないことを試されているのですか?)
薄々、そうではないかと思っていた。
たまたまバケツをひっくり返した場所に人がいるなんて確率、そうそうない。
そんな中で家に迎え入れた男性がアジア人で、言葉もまともに通じなくて、その方が私の前でペニスを大きくするなんて、そんな偶然がある?
その答えを裏付けるかのように、私は導かれるように彼のペニスをご奉仕し、全身に夫ではない男性の精液を浴びることになった。
普通ならばそれで終わるはずなのに、まったく衰えないペニスなんて、そんなの神の御業でなくてなんだというの?
“Sofiya...”
そんな私の予想を裏付けるかのように、ダイスケさんは私を後ろ向きに立たせ、たった一枚残ったショーツを剥ぎ取った。
Киска(女性器)。
イヴァン以外の男性の前で、絶対に見せてはいけない部分。
それをまざまざと見つめられ、挙げ句の果てにそそり立ったペニスを入り口にあてがわれる。
(ああ……なんて形なの――)
入り口をなぞられるだけで、イヴァンのものとまったく違うことが伝わってくる。
長さも硬さも、張り出したエラも、同じ男性とは思えない逞しさだ。
こんなもので突かれらどうにかなるという確信がありつつも、私は彼の行為に抗うことができない。
そして、
「あ、ああっ――」
彼の逞しい亀頭が、少しずつ私の中に入りこんでくる。一秒で一ミリ。それぐらいのペースなのに、拳を埋められるような圧力が、私の膣壁を押し広げていく。
(神よ――)
彼に亀頭の半分を挿れられながら、十字を切る。
この人のペニスを受け入れることをお許し下さい。
恥じらわないことをお許し下さい。
これがあなたの与えた試練なら甘んじて受け入れます。
イヴァン以外の男性と、
愛する夫以外の男性と、
今から私は、セックスしてしまいます。
「あああっ――!!」
逞しすぎるものを一気に奥まで突き込まれ、頭の中が真っ白になる。
もしかして私、イッたの?
ただペニスを挿れただけなのに、
腰なんて一回も振られてないのに、
子宮口をキスされただけで果てたの?
しかも、軽くイッた程度ではない。
イヴァンとのセックスで年に数回、クライマックスで迎える特別な絶頂に匹敵する絶頂。
いいえ、匹敵どころじゃない。
これまでのイヴァンとのセックスで一番気持ちよかった瞬間。
それを遥かに超える感覚を、この人はただペニスを挿れただけでもたらしてしまった。
次元が違う。
それに気付いたときにはもう、ダイスケさんとのセックスは始まってしまっていた。
「あっ……!! 大きいっ!!」
逞しい彼のペニスが、私の奥の奥を軽々と突き上げる。イヴァンならようやく届くところを、女の弱点を、彼のペニスは余裕を残して簡単に突き上げていく。
それに大きいだけじゃない。
異次元に硬いペニスが、これまで私の知っていたセックスを呆気なく塗り替えていく。
まるで石の棒に突かれたような衝撃。
それでいて絶妙な形で反り返ったペニスは、私の一番気持ちいいところをまるで運命の恋人のように重点的に擦り上げる。
「あっ! カリっ、凄いっ!!」
そして極め付けは彼の張り出したエラだ。確か俗な言葉でカリと呼ばれる箇所が私の膣壁を引っ掻くたび、脳髄をとんでもない量の快楽が駆け抜ける。
最初から皮をかぶっているイヴァンとはまるで違う。生まれて初めての感覚が、私の全身を快楽一色に塗り替えていく。
「ああっ! 神よっ!!」
神の名を叫びながら、とんでもなく色っぽい声が出る。
イヴァンとのセックスでは一度も出したことのない甘えたようで潰れた声。
彼に突かれるたびお尻が揺れて、同様にバストも激しく揺れている。
地面を向いた胸が自分自身のお腹に当たって、パンパンと乾いた音を響かせる。
イヴァンとのときはこんな音出ないのに、まるで獣同士がセックスをするような激しい音が、私とイヴァンの愛の巣に響いている。
(神よ。私にこんな気持ちいいペニスに耐えろと言うのですか?)
ダイスケさんの逞しいペニスで奥を突かれるたび、愛しいはずのイヴァンの声や顔が掻き消される。
イヴァンは今朝、なんて言って家を出たの? いつものキスはちゃんとした?
明後日は何時に帰るって言ってた?
もう全然思い出せない。
ダイスケさんのペニスで奥を突かれるたび、もう彼のことしか考えられなくなる。
「ああっ! ダイスケさんっ! ダイスケさんっ!」
ついに私は恋人の名前を呼ぶように、ダイスケさんの名前を叫び始めた。
その間も激しいピストンは絶え間なく続き、私とイヴァンとの思い出は塗り替えられていく。
イヴァンと初めてセックスしたとき、本当に幸せだったはずなのに、今はそのときの記憶すら思い出せない。
こんな男らしいペニスで突かれたら、もうセックスのこと以外考えられなくなる。
「ああっ! イクっ! 大きなペニスに突かれてイっちゃうっ!」
ついに私は、夫以外の男性のペニスで絶頂を叫んだ。
頭の中が真っ白になる。
イヴァンの百倍気持ちいい。
男らしいペニスにイかされるの、信じられないくらい気持ちいい。
「イクっ!! イヴァン以外のペニスでイクっ!!!」
包み隠すことなんてできない。イクものはイク。気持ちいいものは気持ちいい。
イヴァンと桁違いに男らしいセックスで、私はいとも容易く果てていた。
誇張でも何でもなく、意識が飛びそうなくらいの快楽。
イヴァンとのセックスはあくまで表面上のものだったことを思い知らされる。
本当に優れたオスに犯されたら、女はここまで気持ちよくなれる。
そのことを強く思い知らされて、私は愛する人のイヴァンという名前さえ、軽く忘れかけていたことに気付いて戦慄する。
(これが……神の試練なの……?)
何者かに導かれるようにして始まったダイスケさんとのセックス。
私の……イワン、いいえイヴァンへの愛を試すため、神が送り込んだセックスの神様。
(もしかしたらダイスケさん自身が、本当に神様なのかもしれない)
でなきゃこんな気持ち良すぎるセックス、説明がつかない。
私の愛は百パーセントイヴァンにあるのに、こんなに気持ちよくなるなんて、あるわけない。
多分私は、これからもっと犯される。
イヴァンのとは違う逞しいペニスで、もっともっと気持ちよくしてもらえる。
その中で私にできるのは、愛する人の名前だけは忘れないこと。
何が何でも、イヴァンへの愛を忘れない。
そのために私ができることは――。
「ああっ! イヴァンっ! イヴァンっ! イヴァンっ!」
ダイスケさんとセックスしながら、ひたすらイヴァンの名前を叫ぶことだった。
それでも彼の逞しいペニスに奥を突かれ、カリで襞を抉られるたび、その名前すらも忘れそうになる。
あまつさえ私の愛する人はイヴァンではなくダイスケさんだと錯覚さえしそうになる。
それが神の与えたもうた試練。
ダイスケさんと一晩中セックスしてもイヴァンへの愛を忘れない。
これはそのための聖なる儀式なんだ。
“AH!! SOFIYA!!”
逞しいペニスに突かれ、名前を呼ばれるたび、思わずダイスケさんの名前を叫びそうになる。
でもそれは絶対にダメ。
もしここでまたダイスケさんの名前を叫んだら、彼のことが忘れられなくなってしまう。
この逞しいペニスを持つ彼のことを、本当に好きになってしまう。
それだけは絶対にダメだから。
どんなに愛してると叫びたくなっても、それだけは絶対にダメだから、
「ああっ! イヴァンっ! イヴァンっ!!」
私は必死に愛する人の名前を叫んだ。
夫以外のペニスと繋がっていても。
その人のセックスが、イヴァンのよりも遥かに気持ちいいと知りつつも、私は必死に彼の名前を叫び続けた。
“AH!! SOFIYA SOFIYA!!”
しかしそれでもダイスケさんはセックスの手を緩めない。イヴァンとの簡単なセックスしか知らなかった私に、女の悦びを逞しいペニスと共に叩きつけていく。
「ああっ! チンポいいっ!! イヴァンのペニスと全然違うっ!!」
ついに私は、イヴァンの名前以外のことを叫んでしまっていた。
ダメだ。このままだと本当にイヴァンの名前を忘れてしまう。
他に何を叫んでも、絶対にそこにイヴァンの名前だけは含める。
消し飛びそうな意識の中でそう考え、私はなおもイヴァンの名前だけは忘れまいと、必死にダイスケとのセックスに耐える。
「ああっ! イヴァンのより気持ちいいっ!! イヴァンのセックスと全然違うっ!! アジア人の極太チンポに、ロシアおまんこ侵略されてるっ!!」
もはや、自分でも何を叫んでいるかわからない。
時折自分が織り交ぜるイヴァンという言葉の響きだけを、自分の耳に刻み付けていく。
「ああっ! アジア人のセックス凄いっ!! アジア人のチンポ凄いっ!! イヴァンの粗末なセックスと何もかも違うっ!!」
ダイスケさんに後ろから突かれながら、私は何度もイッていた。
イキすぎてもう何がなんだかわからないくらいだった。
でもダイスケさんとのセックスが後ろ向きでよかったと心から思う。
もし顔を見合わせてのセックスだったら、間違いなく彼のことを好きになっていた。
こんなにも私を気持ちよくしてくれる男の人のことを、心の底から愛してしまっていた。
“SOFIYA SAN!!”
ダイスケさんが私の名前を叫ぶ。
多分射精が近づいているんだろうと思ったけど、私に抗う気力はない。
このペニスに抗う術はない。
あの男らしい射精を今度は子宮に直接されたらどうなるのか。そのことしか考えられなかった。
「ああっ! 出してっ! ダイスケの精液、私の中にぶちまけてっ!! ああっ!!」
その瞬間、先程を遥かに超える勢いの射精が、私の子宮に襲いかかる。
おそらくはイヴァンの数倍。それだけの量と勢いの精液が、何の躊躇いもなく私の子宮にぶちまけられる。
「ああああっ――♡♡」
とんでもない、衝撃。
と同時に襲いかかるとんでもない快楽。
頭の中が真っ白になるなんて次元じゃない。まるで魂だけ宇宙に飛ばされてしまったような絶頂の後、全身が痙攣し、なんがなんだかわけがわからなくなる。
(私……射精されたの……?)
その事実に気付くまで、しばらくかかった。
それが妊娠の危険性のある行為だと気付くまでには更に。
にもかかわらず私が何の嫌悪感も抱いていないことに気付くには更に時間がかかった。
しかしそれよりも重要なのは、私がまた、セックスでダイスケさんの名前を叫んでしまったこと。
そして同時に、愛しいはずの人の名前を叫ばなかったことだ。
(私……)
その瞬間、夫の名前を思い出せなくなっていることに気付く。
セルゲイ? ミハイル?
そもそも私、本当に結婚してた?
それ以前どうして私は彼とセックスしてるの?
彼って今日、初めて会ったんじゃなかった?
頭がひどく混乱するなか、ダイスケさんのペニスだけは未だ逞しくて、この混沌とした状況で、ただ一つの確固たる存在として私の脳裏に焼き付けられる。
「ああっ! これ凄いっ!」
そして当たり前のように、私は彼とのセックスを初めていた。
言葉の通じない彼との、言葉など必要ないと思えるほどのセックス。
もしかして彼は、私の恋人なのかもしれない。
そう思った瞬間、もう彼のことしか考えられなくなった。
「ああっ!! ダイスケっ! ダイスケっ!」
だから私は一晩中、彼の名前を叫び続けた。
愛する人の名前を忘れないように。
彼の逞しすぎるペニスとセットで、子宮と記憶に刻みつける。
「ああっ! ダイスケのチンポいいっ!! もうこのチンポとしかセックスしたくないっ!!」
私は彼の身体に絡みついて、何度と何度もキスをした。
恋人同士でしかしない濃厚で情熱的なキス。
彼はキスすらも天才的で、私の身体をすべて蕩けさせていった。
「ああまた出してっ! ダイスケのスペルマで妊娠させてっ!!」
その一晩で、もう何度イッたか思い出せない。
私は十数回も中出しされ、そのたびに彼の臭いを子宮にマーキングされて、彼のペニスに対して並々ならない愛情を抱くようになった。
お口でご奉仕したこと、十数回。
袋をマッサージしたこと五回。
恥ずかしがりながらも、お尻の穴に舌を挿れて舐めたこと三回。
面と向かってキスをして、“Я люблю тебя(愛してる)”と囁いた回数はもう数え切れない。
そうして、何度も何度もセックスして、何度も何度も中出しされて、何度も何度も極上の快楽を刻み付けられて、気付けばいつのまにか、朝になっていた。
「私……何やってるの?」
夫婦のベットで目覚めた私は、唖然としていた。
左手の薬指に光る指輪を見て、私はイヴァンのことを思い出す。
私は彼ではなくイヴァンの妻だ。
なのにどうして、私は彼の腕枕で安心し切っているの?
「私……試練に負けたのね」
おぼろげな記憶で、昨夜の行為を思い出す。
私はイヴァンのことをすっかり忘れ、ダイスケさんとのセックスに没頭してしまったのだ。
「ごめんなさいイヴァン。ごめんなさい、神様」
ため息をつきながら、私はベッドから起き上がる。
シーツを剥がすと、硬くなっていないダイスケさんのペニスが露わになった。
勃ってなくても、イヴァンのと全然違う。
私はイヴァンしか知らないから、他の男の人とのセックスであんなになるんだってことを知らなかった。
「本当に、神のペニスだったわ」
昨夜の激しいセックスを思い出して、また股倉が熱くなる。
あまりに神々しいペニスに畏敬すら抱いて、このペニスに犯されたらもはや仕方ないと、私は自分自身に言い聞かせた。
そして、
「イヴァン、見ないで」
化粧台に立ててあったイヴァンとのツーショット写真を伏せて、私はもう一度ベッドに戻った。
そして彼の下半身に跪いて、神の像に祈りを捧げるような心持ちで、
「昨日はありがとう」
大人しいままの彼のペニスに、優しく口付けていた。
自分でも、どうしてそんなことをしたかわからない。
でも彼のペニスには、女をそんな風にさせる魅力があった。
多分、彼とセックスしたことのある女にしかわからないだろうけど。
それからシャワーを浴びて、朝食の支度をする。
イヴァンが帰るのは夜だけど、ちゃんと二人分。ダイスケさんの分も用意する。
昨日洗おうとしたダイスケさんの服をドライヤーで時間をかけて乾かし、なんとか着られる形になった頃、寝室からダイスケさんが起きてきた。
“l...I'm sorry...”
片言の英語で、ダイスケさんが申し訳なさそうな顔をする。
人妻とセックスしてしまったという罪の意識があるのだろう。とてもあの逞しいセックスをした男性と同一人物だとは思えない。
てかいくらパンツがないからって、そんなものぶら下げてリビングに来ないでくれないかしら。
そんなものを見せられたら、私またあなたの前で服を脱いじゃうわ。
「おはようございます」
でもその気持ちは必死に抑え、夫婦の食卓に彼を迎え入れる。
朝食と、言葉のまったく通じない会話。
多分、アジアの人と結婚していたらこんな生活だったんだろうけど、私はイヴァンの妻。彼と結婚する未来などない。
「私思ったんです。まだまだイヴァンへの愛が足りないって。これからもっと精進しないもいけないって」
彼に通じないロシア語で、私は今回のことに対する見解を披露する。
彼がイヴァンへの愛を試すために神が送り込んだ遣いなら、私はあっけなく敗北したことになる。
なぜなら私はダイスケさんとのセックスに没頭し、最終的には何度も愛の言葉を囁いたのだから。
朝起きてしばらくは、本当に絶望的な気持ちだった。
イヴァンにどんな顔をして会えばいいんだろう。一晩だけでも他の人を愛してしまった私を、イヴァンはこれまで通り愛してくれるの?と。
でも改めてベッドで眠る彼の下半身を見て、あれは仕方のなかったことだと諦める。
だって、彼のセックスは本当に凄かったから。
彼のペニスほど気持ちいいものはこの世に存在しないと確信できるほどに気持ちよかったから、私も変に悩まないで済む。
私の信仰がまだまだ足りなかった。
イヴァンへの愛が未醸成だった。
でもこれから、時間をかけて積み重ねていけばいい。
人生はまだまだ長いんだから、一度きりの失敗でくよくよしていられない。
今から五年後、イヴァンへの愛が十分醸成されたとき、また彼を探し出してセックスすればいい。
まあそのときも、正直勝てる気がしないけど、そしたらまた五年後にリトライする。
人生は何度でも挑戦できる。
これはロシア正教の司祭でもあった私の祖父が教えてくれたことだ。
「ありがとう」
家出る彼に、セックスという試練を与えてくれたことを感謝する。
本当はもう一回くらいしたい気分だったけど、それはイヴァンへの裏切りになってしまうので気持ちを抑える。
私の夫はイヴァン。
愛する人もイヴァン。
ダイスケさんは私の人生で、一番気持ちの良いセックスをした人。一番のペニスを持った人。
それだけなんだから――。