「なあ拓真」
新しく引っ越した拓真のアパートで、僕は溜め込んだ大学のレポートに打ち込んでいた。
日本らしいコタツに入って、合間にみかんを食べながら。まさに十年一日の光景である。
「なんだよ大介。口動かす暇あったら手を動かせよ。こっちはお前のレポートを手伝ってるんだぞ」
そう。拓真はわざわざ僕のレポートを手伝ってくれていた。いつもなら自分のレポートぐらい自分で終わらせるのだけれど、今年に限っては誰かの力を借りないと到底終わらせられそうにない。
僕にはそう、時間がない。
一度彼女たちの誰かに見つかれば、SEX要員として引っ張り出されるからである。
「いや、それは悪いと思ってるんだ。でもこうなったそもそもの原因を考えると、自分でもなんとかしないとって思うんだよ。なあ拓真、どうして俺は、外国人にだけ異様にモテるんだ?」
最近になって気付いた結論。
僕、坂上大介は、外国人の女性にだけ異様にモテる。
日本人の女の子にはまったくモテなかったのに、外国人女性だけが情熱的で露骨な愛情表現をしてくるのだ。
それがダメだとは言わない。むしろ嬉しい。でもそれが原因でこうして親友に迷惑をかけることがあると、さすがに考えざるを得なくなる。
「知らないよ。たまたまお前を好みの女性が多いってだけだろ? エナちゃんもリズちゃんも、みんな凄い美人ばかりじゃないか」
僕が帰国するまでの数週間、外国人の女の子たちのことで拓真には多大な迷惑をかけた。
とくにディアナさんたちにコキ使われたせいか拓真は消耗しており、再会したときは見るに耐えない姿だった。
それ以上に迷惑をかけたのは、拓真の女性関係。
先述のように拓真には可愛らしい彼女がいるが、僕の周りに外国人女性が多いことで「たっくん、本当は外国の女の人が好きなの?」とあらぬ疑いをかけられ、一時は別れ話にまで発展しかけたらしい。
幸い今は以前のように仲睦まじい二人だが、あらゆる方面で僕は拓真に迷惑をかけてしまった。
そのことを反省する意味でも、僕は自分がこんな風になった原因を突き止めなくちゃならないと思ってる。
そう伝えると、拓真はレポート(代理)を打ち込む手を一瞬だけ止め、
「お前はそのままでいいんだよ。変わったのは環境だけだ。お前という男の魅力に気付いた女の子が世界にはたくさんいて、その結果誰もが知るハリウッド女優まで連れてきた。むしろ誰もが羨むような環境じゃないか。あんな美女美少女たちとセックスできるなんて、大学の奴らが知ったら全員代わってくれって土下座するぞ」
いったい何が不満なんだよ。お前はずっと女の子にモテたがってただろ?
その質問に、僕は言葉を窮してしまった。
どうして僕は、長年追い求めていたモテ環境を手に入れたのに、こんなにも物足りなさを感じるのだろう。
何が足りない。女の子たちとセックスしていても足りないと感じるものがある。
それが何なのか、思い当たる節は一つしかなかった。
「わかった。お前との時間が取れないからだ」
「ぶっ――」
その瞬間、拓真が勢いよくみかんを噴き出した。挙句飲み込む途中だったものを喉に詰まらせ、必死にお茶を飲み込んでいる。
「何気持ち悪いこと言ってんだよ! そんなこと言ってるからリズちゃんにゲイ疑惑かけられんだぞっ!」
僕が拓真と出かけようとすると、リズに「ダイスケにそっち方面の趣味があるなんて許さない」といって断固阻止される。
もちろん僕と拓真はそんな関係にない。ただの幼馴染み。ただの腐れ縁だ。
でも外国で出会ったどの女の子たちよりも、長い時間一緒に過ごして来たのは拓真だ。
一緒にバカやって笑い合ったのは拓真だし、ときに痛い思いをしたのも拓真だ。
学生時代は一瞬だ。
女の子たちと愛を語り合う時間も大事だけど、男友達とバカやる時間も大事。
そんな風に思うから、僕は一時間でいいからこの親友と過ごしたいと思うのだろう。
白人の女の子たちとのセックスは、もちろん気持ちいいけれど、
「いいから、さっさと終わらせて飲みに行くぞ。今日は大介に言っておきたいことが山程あるんだからな」
やっぱり友達との時間も大切だなと、僕は心の底から思うのだった。
冬の始まり。
狭いアパートの狭いコタツの中で、何処産でも何でもないスーパーのみかんを食べながら、黙々と大学のレポートをノートパソコンに打ち込む二人。
さっきから僕のスマホは鳴り止まないけど、せめて今日ぐらいはと、僕はそっと電源を落とす。
今夜は冷える。多分居酒屋飲みも宅飲みに変わるだろうけど、コタツの中は温かいからそれでもべつにいいかと、僕は経済学のレポートを打ち込みながら思うのだった――。
おしまい
◆人物紹介◆
名前 坂上大介
出身国 日本国
年齢 21歳
身長 175cm
セックスがしたいという一心で100人の日本人女性に告白して振られ、童貞を拗らせた結果、勃起したペニスが放つ特殊なフェロモンで巨乳の美女のみを発情させるという特異体質を会得した日本人の青年。
とくにコーカソイド(白人)女性には効果抜群で、恋人がいようと夫がいようと想い人がいようと子供がいようと強制的に発情させる。
セックスに関して天賦の才を持ち、日本人離れした逞しいペニスも相まって、旅先で出会った様々な白人巨乳美女たちを絶頂させまくった。
中南米で死地を乗り越えてからは生存本能が開花し、勃起していない状態でも服越しにペニスに触れさせる、または顔を近づけさせただけで女性を発情させられるようになる。
その後も特異体質を開花させ、シベリア鉄道に乗り込んだ頃には狭い列車内ですれ違っただけの女性を発情させられるようになる。
その頃には白人女性という枠も超え、あらゆる女性を発情させる能力を会得していた。
日本に戻ってからもその効果は続き、彼と二人きりになった女性は、(かつてダイスケのことをこっぴどく振った相手であっても)悉く彼とのセックスを望むようになる。
男にとって夢のような体質だが、本人はあくまでこれまで通りの生活を望んでいるという。