※この作品はR-18です。

ソフトウエアトーク乗っ取りもの詰め合わせ   作:そのやまよーく

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pixivの転載です。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21616937

なんだかちょっといい話っぽい感じになってますが、冷静に見るとそんなことは少しもないです。
主人公が勝手に恋をして、勝手に舞い上がって、勝手に共感して、勝手に何の罪もない女の子の人生を奪う話です。
私はそういう身勝手な話が大好きです。



おねえちゃんといっしょ(琴葉葵乗っ取り)

俺の名前は成川 利一(なりがわ りいち)、特にこれといった特徴があるわけでもない、普通の男子高校生だ。俺は今、大げさかもしれないが一世一代と思えるほどの勇気を振り絞って言った。

「琴葉 茜(ことのは あかね)さん、俺と付き合ってください!」

目の前の彼女、琴葉 茜は長い髪をくるくる指先で巻いて、困惑していた。どこか温和そうで、人好きがする感じの彼女は俺の胸の内に長いこと住み続けていて、俺はついにその思いを隠せなくなった。

「成川くんのこと、うちは嫌いじゃないけど」

茜の一挙一動で俺の心臓の鼓動が乱高下する。このまま答えを聞く前に不整脈で死んでしまうのではないか、俺は真剣に心配しながら、茜の返事を待った。

「ごめん、恋人とかそういう好きでもないんよね。クラスメイト、友達として好きって感じでさ」

俺は目の前が真っ暗になった。確かに茜ちゃんはそういうところがあると思う。誰にでも好意を向けるし、誰とでも友達になれる。そんな彼女だから、俺は琴葉 茜のことを好きになったのだと思う。だが、理屈と感情は別物で、感情サイドの俺に言わせたらこれは明確な拒絶だった。

「茜ちゃん、ごめん。言いにくかったよね」

「ええんやで。うちのこと、そんなに好いてくれるのは嬉しいから。でも、君のそういう思いにうちは答えられんって思った」

「ありがとう。また明日」

俺は茜の返事を待たずに踵を返した。今の俺の顔を茜に見せたくはなかった。涙ぐんで、今にも決壊しそうになっていたから。

 

---

 

ということがあったのが、数日前。俺はいまだに琴葉 茜のことを忘れられないでいた。学校で会うたびに何事もなかったかのように挨拶を返してくる君。その笑顔が振りまかれるたびに、俺の胸は激しく痛んだ。このままでは俺は苦しみ抜いて死んでしまう。それは嫌だ。琴葉 茜を自分のものにしたい、いや、その傍にいられるだけでいい。他の有象無象、俺と横並びのクラスメイト達とは違う特等席に居たい。

そんなことを考えているときに、俺はひょんなことから"それ"を手に入れた。

憑依薬。自分の魂をカラダから分離させ、好きな人間のカラダを乗っ取ることのできる薬。俺の心にどす黒い計画が渦巻いた。

琴葉 茜には双子の妹がいる。名前は琴葉 葵(ことのは あおい)といい、別のクラスなので俺はあまり関わりはないのだが、ややキツめの性格をしており、姉と違ってあまり交友関係も広くはない。二人はおそらく一卵性の双子だと思われ、容姿や背格好は鏡合わせだったが、その与える印象があまりに違うので俺は驚いたものだった。

俺の計画というのは、俺が琴葉 葵のカラダを乗っ取り、なり替わって茜のそばに居続けるというものだった。それはとても甘美で邪悪な計画だった。だが、失恋直後の俺の精神はそれを是とした。茜ちゃんのそばにずっといられるのなら、俺は悪魔に魂を売り渡したっていい。俺の天国はこの世界で、死んだ後には地獄が待っていたってかまわない。

俺は憑依薬の無地の茶色い瓶をひねって開けた。立ち込める異臭。俺はこれを本当に飲むのか、飲んでも大丈夫なのか、と疑念を抱いたが、意を決して息を止め一息に飲み干した。

最初に感じたのは浮遊感だった。カラダの感覚がぼやけ、薄れていく。意識はしっかりとしていたが、カラダの実感、特に地に足がついた感覚が失われ、俺は困惑した。今なら空だって飛べそうだ。そう思ったとき、俺は飛んでいた。肌にまとった服の感触もなく、生まれたままの姿で、俺は天井を、壁をすり抜け、空に飛びだした。

すごい。これは、本物かもしれない。幻覚かもしれないという気持ちはあったが、その場合は何も起きないだけだ。もうどうにだってなれ。そんなやけっぱちな気持ちで、俺は意識を琴葉家の方に向けた。

俺のカラダは真っ直ぐに琴葉家に飛び、その壁をすり抜けた。時刻は夕暮れ、リビングは明るく、キッチンの方からまな板の上で物を刻む音が聞こえてくる。

そちらを見ると、カウンター式になって開放されているキッチンの壁から、琴葉 葵の姿が見えた。おそらく晩ご飯の下ごしらえをしているのだろう。鼻歌を歌いながら、上機嫌でにんじんを刻んでいた。葵の声は茜とそっくりなようでいて、少し違う。声の主成分は同じなのだが、葵の方が少し凛と張り詰めたような美しさがあった。まだ茜ちゃんは家に帰っていないようだった。

俺は最後の罪悪感にかられた。この姉妹の幸せを俺が壊すのか?この美しい少女の身体を乗っ取り、俺がなり代わるのか?俺の中の天使がそんなことは許されないと囁く。だが、俺は願ってしまった。琴葉 茜とずっと一緒に居たいと、そのためなら何をしてもいいと。それに、彼女たちの幸せは壊れない。俺が守ればいいのだ。

俺は葵ちゃんに背後から近づき、そのカラダにそっと腕を埋めた。

「……ひゃっ?!な、なに。今の冷たいの……」

葵ちゃんが驚き、包丁を扱う手を止める。ごめんね、葵ちゃん、君に恨みとかはないけれど、俺のために乗り移らせてもらうね。

俺は葵ちゃんにさらに深く入り込んだ。温かい湯に浸かっているような全身がポカポカした感覚に包まれる。だが、この湯は俺を溶かしていく。溶け込んで、琴葉 葵に俺が混ざっていく。

「や、だ……たす、け、て、おねえちゃん」

葵ちゃんが肩を抱きしめ、がくりと膝をつく。カラダに力が入らなくなっているようで、手から包丁が滑り落ちて、まな板の上に転がった。その美しい顔立ちが蒼白に染まる。

俺は葵ちゃんの中に自らを広げていくのをイメージした。広がり、混ざり、そして、塗りつぶす。俺はこのカラダを成川 利一という人間に染め上げた。

「わた、し、きえ……うん」

葵ちゃんの言葉尻が消える前に、その唇が次の言葉を紡いだ。

俺の前にはエプロンをつけた華奢なカラダが、主観的な視点として存在していた。まるで自分のカラダを見下ろしているかのように。ようにではなく、実際にそうなのだ。

「成功、した」

琴葉 葵の利発そうな声が俺の意志を代弁した。完全に成功だ。俺は沸き立った。

次は何をすべきか、俺は一瞬迷った。だが、脳内にポップした答えがあった。もうすぐお姉ちゃんが帰ってくるから、それまでにご飯の準備しなきゃ。俺はそれに従い、葵ちゃんの後を引き継いで料理を続けた。

俺は、直前まで葵ちゃんが考えていたことが手に取るようにわかり、連続性を持って自分の中に展開されたことに驚きを隠せなかった。今の俺には葵ちゃんが何の料理を作ろうとしていて、何をどこまでやったかも余さず分かった。にんじんのグラッセとエビフライ。どちらも茜ちゃんの好物だった。

俺は何事もなかったかのように鼻歌の続きを引き継ぎ、料理を続けた。すると、玄関の方から足音が聞こえてくる。茜ちゃんが帰宅したのだ。僕の、葵ちゃんの心が心なしか華やいだ。

「ただいまやで、葵」

「あ、おねえちゃん。お帰り。ご飯はちょっと待ってね、今料理してるから」

「わかった。いつもありがとうな、葵」

茜の感謝の言葉を受け取り、俺の胸はさらにはずんだ。これが琴葉姉妹の日常なのか。これが今日から俺のものになる。その嬉しすぎる事実が俺に若干の眩暈を引き起こした。

「葵、大丈夫か?ちょっと顔色悪くない?」

「ううん、大丈夫。ちょっと嬉しいことがあって、考え事しちゃっただけだから」

「そうか。しっかり者の葵がそんなに喜ぶんだから、きっとすごくいいことだったんだろうな」

茜がまるで自分のことのように喜び、大輪のひまわりのように愛らしく笑った。俺はそれに合わせて笑った。それは雛菊のように可憐な笑みだった。

 

---

 

俺の目の前で茜ちゃんがもりもりとご飯を食べている。それも、俺が、葵ちゃんが作ったご飯を実に美味しそうに食べている。妹心としては、もう少し落ち着いて噛んで食べて欲しいといつも思っている。だけど、その食べっぷりは大好きだったし、作り手としても冥利に尽きるの一言だった。

それとは対照的に俺はそれほど量を食べない。茜ちゃんがご飯をおかわりしたのに対し、俺はお揃いのごはん茶碗に半分ほど。

「葵、もっと食べんとしおしおにしおれちゃうで」

ごはん茶碗を片手に、茜ちゃんが言う。

「おねえちゃん、ご飯食べてるときはお口閉じてって言ってるでしょ、もう」

俺は渋面を作って叱ると、茜ちゃんが少ししゅんとする。でも、そんな茜ちゃんも可愛くて仕方がない。俺はこのころころと表情を変える琴葉 茜という生き物が愛おしくてたまらなかった。俺が俺だったころはそれは明確に恋心だったのだが、俺が葵ちゃんと混ざったことによってこの感情が何なのか自分にもわからなくなっていた。

「わたしは大丈夫だから」

言葉を重ねて茜ちゃんを安心させる。俺はご飯をよく噛みしめ、おかずと合わせて三角食べをした。葵ちゃんの口内で葵ちゃんの歯がご飯をかみ砕き、それを葵ちゃんの舌が撹拌し、喉が嚥下する。そんな当たり前の人体の動きすら、俺にとっては新鮮で、喜びに満ちていた。そして、葵ちゃんの料理は美味しかった。

食後はというと、俺はいつものように食器を洗いながら、リビングのソファーの上に猫のように転がる茜ちゃんを眺めていた。ソファーのクッションに身を乗り上げて、携帯ゲーム機でゲームに夢中になっている茜ちゃん。熱中するあまり、身体が動いてしまうのは見ていてとても心が温かくなった。ただ、制服のブラウスのお腹がめくれてちらちらと肌色が見えているのはよろしくない。はしたない。別に、ここには俺のほかにはいないので問題はないのだけれども。

「おねえちゃん、早く制服着換えちゃって。しわになるから」

「んー、もーちょい、もーちょいだから」

「もう……」

あまり強く言えずに、俺は洗った食器の水気を清潔なふきんで拭った。葵ちゃんはしっかり者だが、茜ちゃんにはどうしても強く出られない。それは俺も同じで、なんだか俺たちは少し似ているのかもしれないと勝手に共感を覚えた。

 

---

 

俺の胸の鼓動が極限まで加速していく。俺は今下着と肌着だけの半裸で、目の前には茜ちゃんがすっぽんぽんになってお風呂のドアを開けて待っていた。

「葵、入らへんの?」

「まって、おねえちゃん、まって」

俺は葵ちゃんの飾り気のないキャミソールを下からなだらかに押し上げる胸のふくらみに、つるりと何もない股間に、本気で困惑していた。それを脱ぐ、いつもなら何の抵抗もない行為の筈なのに、その一枚が果てしなく遠い。

「葵、顔真っ赤っかになっとるな。熱でもあるんか?」

茜ちゃんが気遣って、俺の額に手を当てた。確かに熱はあると思う。

「ちょっと、お腹痛いの我慢してるんだよね。ごめん、おねえちゃん先入ってて」

俺は踵を返し、トイレへと避難した。そしてすぐにトイレの鍵を閉める。

俺は便座に腰を下ろし、頭を抱えた。琴葉 葵になるということは、当然その裸も見ることになるわけで。そうなると、今日みたいに茜ちゃんの裸を見ることもあり。

俺は恐る恐るとキャミソールのふくらみに触れる。柔らかい。そこはとても熱くて、中で血が脈々とめぐっているのが分かった。葵ちゃんのカラダ、触らせてもらうからね。心の中で謝りながら、俺はキャミソールを脱ぎ、ブラジャーのホックを外し、ショーツを下ろした。こうしてはいられない。あまり時間をかけると茜ちゃんに怪しまれる。俺は脱いだ下着類を洗濯かごに入れて、すでにシャワーの音がするお風呂へと侵入した。

「ふんふんふーん♪」

茜ちゃんがくねくねと踊るようにシャワーを浴びていた。そのしなやかなカラダがぱちぱちと水をはじき、スパンコールのように散っていく。俺はそれを呆然と見た。

「あっ、葵。お腹大丈夫だった?」

「……あ、うん、なんとか」

俺は湯船の湯を桶で掬って頭から浴びながら、茜ちゃんの裸体から何とか目をそらした。

「なーなー、葵」

「なに、おねえちゃん」

「髪、洗って」

ドキリとした。だが、湯船を向いていたためにその顔を茜ちゃんに見せずに済んだ。こちらを向く前に表情を取り繕い、俺は一つ深呼吸し、茜ちゃんの背後に回った。長い、とても手入れの行き届いた綺麗な髪だ。見ているだけでうっとりとする。だが、俺にも同じものがついているんだよな。

俺は手のうちでシャンプーを泡立てながら、櫛を通すように茜ちゃんの長い髪を洗っていく。その感触が指の間を通り抜け過ぎ去っていく快感は、正直に言ってくせになりそうだった。

「かゆいところはないですか、お客様」

「完璧やで、さすが葵や!」

茜ちゃんの裸を正面から見ずに済んでいるのもあって、ちょっとした軽口さえ飛ばす余裕ができた。最後にシャワーをかけながら頭皮にシャンプーが残らないようにぐいぐいとマッサージをするように洗い流し、コンディショナーで髪を整える。そして、それも洗い流す。今日という日で、この瞬間が一番心が安らいだかもしれない、と思った。

「次は葵がここに座って!」

ぽんぽんと茜ちゃんが椅子を叩く。俺はその通りに座った。俺の長い髪に茜ちゃんの細い指が通り、同じように髪を洗い始める。茜ちゃんの手つきは俺ほど丁寧ではなく、どことなくガサツな感じさえあるのだが、不思議にそれが気持ちよく俺の心を落ち着かせた。夢のようなひと時。そういうのがふさわしい体験だった。本当に心を許した人間と触れ合う時だけ生まれる心の底からの安心、多分、そういったものがこれなのだろう、と思った。俺は琴葉 葵に嫉妬した。だが、それも意味がない嫉妬だった。今の俺が琴葉 葵であり、もう俺という人間はいない。溶けて消えてしまったのだ。

俺のちっぽけな嫉妬心は、茜ちゃんが掛けるシャワーが洗い流してしまった。髪の毛だけではなく、心まですっきりしたような気がした。

なおこの後、俺は茜ちゃんとカラダを洗い合うことになるのだが、それは落ち着いたはずの俺を再び激しく動揺させることになった。

 

---

 

一日の終わり、それは別々の部屋だった。

茜ちゃんは自分の部屋に、俺もまた葵ちゃんの部屋に分かれ、おやすみなさいを言い合った。

閉じた扉。温かいベッド。ずっしりとカラダを包み込む柔らかなおふとん。すべてが幸せだった。これが琴葉 葵の生活で、俺には逆立ちしても得ることができないはずだったもの。俺は感動に涙ぐむのを感じていた。

俺はこの時間、茜ちゃんと別れた後の葵ちゃんがいつも一人で何をしているのかを知っている。俺は今からそれをしようとしていた。甘いときめきが胸を満たし、期待にお腹の奥が熱くなる。足をもじもじと組み替える。パジャマの奥の胸が早鐘を打つ。

俺はふわふわのパジャマの股間に手を挟み込み、ぎゅっと締め付けた。そこが柔らかな快感を返してくる。俺はそれだけに飽き足らず、いけないと思いながらも、パジャマのズボンのゴムの奥、おろしたてのショーツの奥に手を入れた。そこには琴葉 葵の最奥があった。誰にも明かされたことのない秘密の部屋。葵ちゃんだけが知る、甘美な秘密が。

俺の繊手がそこを撫でる。ぶるり、背筋を走る衝撃に、カラダを身震いさせた。俺の中指は貪欲に、別の生き物のようにそこに踏み入る。瑞々しさを指先に感じ、それが生温かさに変じていく。

「ぁ……っ」

俺の喉がこじ開けられる。微かに声が漏れる。

俺はシチューの鍋をかき混ぜるのを思い浮かべながら、指先で葵ちゃんのるつぼをかき混ぜた。夢と希望、親愛と情愛がごちゃまぜに煮込まれたそこはとろとろにとろみがついており、片栗粉はもはや不要だった。その間、俺の脳裏に去来する像は一つだった。

琴葉 茜。そうか、葵ちゃんも、俺と同じだったんだな。姉妹の壁、親愛の壁、それを超えられず、妹ではない特別になりたかった。俺は全てを理解し、その瞬間、俺と葵ちゃんを隔てる壁が消えたのを感じた。

姉と同じカラダ、姉と同じ指で、姉と同じ性器を慰めている。なのに思いは同じではなくて、この愛情は届かない。切なさに満たされて、それを埋めたくて、俺は葵ちゃんの秘密に耽った。その中で琴葉 葵と成川 利一は同じ鍋で煮込まれて、真に区別がなくなった。照明を消した部屋で、瞑ったまぶたの裏でちかりと光が瞬いた。俺たちはそれに抱かれて眠りについた。

 

「おやすみ、おねえちゃん」

 

そうして、俺たちは新しく生まれ変わった。

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