※この作品はR-18です。

鈴木君 その後   作:大仁 裕

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俺と付き合ってくれない?

夏休みが近づいて来た頃、俺と山本はサンタの連中を引き連れて毎日のようにゲーセンに通っていた。打倒鈴木を掲げての特訓だったが、俺にとっては打倒鈴木は割とどうでも良くなっていた。サンタは順の指導の元、急成長を遂げ、俺や山本とも互角に戦えるようになった。特に吉田の成長が著しい。

そんなある日のこと。

「山本君、今の攻撃の使い方は上手かったよ。でも、もう一手欲しかったかな。」

順は、一緒に夕飯を食った次の日以降、特に呼び出しをしてない日も毎日ゲーセンに来ている。

「よう、鈴木」

「おう、順。今日は一回くらい勝たせてもらうよ。」

鈴木も彼女連れで俺たちと合流することが多くなった。

「じゃ、最初は俺と対戦しようぜ。」

「順、石井相手の時はもう全力でいいよな。」

「うん、今の石井君相手なら鈴木は全力でいいよ。」

「じゃ、そういうことで。」

鈴木は、俺たちの特訓の相手プレーヤーとして散々縛りプレイを強要されたことで、戦術の幅が格段に広がっていた。順に教えてもらった鈴木攻略の作戦はもう使えない。

「くっそー、惜しかった。やっぱり全力の鈴木に勝つのは難しい。」

「そんな事ないよ、石井君。今の鈴木相手にここまで善戦できるんだから十分に強いよ。」

「順は石井には甘いよな。」

「あら、山本君も鈴木には時々勝てるようになってきてるじゃない。本当に大したもんだと思うよ。」

「えへへ、そう言われると悪い気はしないな。ありがと。」

「あかねちゃんも頑張ってるよね、サンタと互角に戦えるようになったもんね。」

「いや、伊藤さんはマジ強いっすよ。最近は山本先輩との勝率が半々くらいで...」吉田が興奮しながら伊藤さんを褒める。

「え? 俺そんなに負けてたか...」

「ええ、鈴木先輩の特訓と、皆さんのおかげでゲームが楽しくて。最近は私の方から鈴木先輩にお願いしてるんです。ゲーム行きましょうって。」

「あかねちゃんは、元々お兄さんの影響で格闘ゲーム自体の経験はあったんだよ。それに加えて飲み込みが早いから、最近は僕も油断すると負けちゃうんだよ。」

「そんな、私なんて鈴木先輩には全然敵いません、勝った時はほとんどまぐれです。それに、やっぱり鈴木先輩に教えてもらうのが楽しくて...」

「はぁーぁ」思わず俺はため息をついた。こいつらいつ偽装カップル解消するんだ?このままだと本当に付き合いだしかねない勢いだ。

そう思った時、ゲーセンの入口の方からの視線に反応して思わず振り返った。あの娘は鈴木のクラスの...そう思った瞬間、その娘は視線をそらせて走り去った。視線を戻す途中、鈴木も入口の方に視線を向けているのが見えた。

 

今日の締めということで、恒例の師範同士によるエキシビションマッチ、順先生対鈴木先生をみんなで見学。3回戦の内、鈴木が一回だけ勝った。順は悔しがりながらもどこか嬉しそうだった。

お開きの後、一同解散する中、俺は順に声をかけた。

「この後、少し話できるか?」

「うん、いいよ。」

俺は例の川縁に向けて歩き出した。人に聞かれたくない話をする時はあそこに限る。

二人で川縁の道を歩きながら、俺は座って話をする場所を物色していた

「あー、ここかぁ、懐かしい。」「あそこに座って話しようよ。」

順は俺の腕をつかんで走り出した、完全に先手を取られた形だ。

「はぁはぁ、ここにしよっ。」

順は俺の答えを待たずに座った。図らずもここは、山本や鈴木と佐藤問題について話をしていた「例の場所」だった。

「それでだな、順...」

「ここね、春頃だったかなぁ。久しぶりに鈴木と会ったときに話をした場所なんだよね。」

「なっ!」

鈴木の野郎、よりにもよってそんな曰く付きの場所を「例の場所」に選んだのか...でもまあ鈴木らしいといえば鈴木らしいかもな。でも、後で尋問だな。俺はそんな事を考えながら、順のペースで進んでいるこの流れをいつ取り返そうかと焦っていた。

「この場所のことやここで鈴木と話したことはずっと忘れていたんだけど...こないだ石井君が言ってくれた言葉のことを考えて、色々なことを思い出しているとき、この場所のことも思い出したんだー。」「それで、色々考えた。中学の時のこと、高校に入って佐藤君に出会ったときのこと、今のこと、そしてこれからどうしたいのか、ってこと。」「でね、石井君話してくれたよね、優しさの絶対量の話。あれ、私も考えてみたんだけど、私はね、優しさの量が足りててもやっぱり選ばれないのは嫌だって、分かったんだ。」「それでね、色々と確かめたくて...その...次の日、佐藤君のところに行ったんだ。」

「えっ? それって...」

「ごめん、最後まで話をさせて。」

何でそうなったの? 俺はそう言いたかったが、すかさず順に次の句を封じられる形になった。

「それでね、佐藤君のところで抱かれたんだ、気持ちよかった、楽しかった...」「佐藤君は相変わらず優しかった...」

俺はいつまでこの話を聞かなければならないのか? 悔しさ、嫉妬、それらが入り混じった感情が沸き起こる。

「けど。やっぱり私は「選ばれて」ないんだよね。セフレの一人でしかないんだよ。それが分かった、いや分かっていたんだけど、でも分かっちゃったんだよ。」「それで...」

順はそのままうつむいて、つなげるつもりだった言葉はそのまま出てこなかった。

沈黙の後、少し落ち着いた俺は、順に伝えたかったことを話し始めた。

「順、あのな。俺、順と一緒にいるとすげー楽しいんだよ。ゲームだけじゃなくて、一緒に飯食って、今日みたいに一緒に歩いて、そんなのも全部楽しいんだ。」「その、何ていうか、す、好きになっちまったっていうか。いや、もっと前から好きだったっていうか。ホラ、順って可愛いし。」「だから、打倒鈴木って、最初は本当に打倒鈴木のために順に先生をしてもらっていたんだけど、最近は割と鈴木はどうでもよくなって....」

パロりパロリラ...突然電話の呼出音が鳴り出した

「あ、ごめん。」

慌てて順がスマホを取り出す。

「あ、佐藤君から...」

そう順が呟いた瞬間、俺は順の腕を掴んでいた。

「佐藤の電話には出るな。出ないでくれ...」

順は軽く頷いて、力を緩めた俺の隙を突く形で受信ボタンをスワイプした。

「もしもし、佐藤君?」「うん、でもごめん、今日は行けないんだ。ごめんね。」

そのまま電話を切って

「うん、行かないよ。佐藤君のところには。」

「でも、『今日は』って...」

「あ、流石に『もう絶対行きません』とは言えないでしょ? 佐藤君には後でメッセージ送るよ。」「で?」

「で?」思わず順の言葉をそのまま返す俺

「で? 話の続きを聞かせてよ。」「鈴木がどうでもよくなってから何?」

「だから...俺は...順が好きなんだ。だから、付き合ってくれないか?」

順は顔を上げて俺を見た。そして、しばらく間をおいて

「うん、いいよ。ありがとう。」「ありがとう、こんな私を選んでくれて。」

思わず俺は順を抱き寄せて、彼女の頭に手を乗せた。順は、そのまま俺に身を委ねた。

体が触れ合った体温、汗ばんだ服の僅かな湿り気、髪の毛から香る女子の匂い。全てが俺にとって初めての感覚だった。

「今度の土曜。二人でデートしよう。」

「うん。」

 

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