※この作品はR-18です。

鈴木君 その後   作:大仁 裕

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連絡先の交換しない?

夏休み初日、僕は伊藤さんとのデート。伊藤さんの希望で、地元の駅から数駅行ったところにある水族館を一緒に見に行くことにした。水族館の最寄りの駅の改札で待っていると、私服姿の伊藤さんが現れた。私服姿の伊藤さんは、いつものお硬い印象が抜けて可愛らしい。

「おはよう、あかねちゃん。私服姿も可愛いね。」

「おはようございます、鈴木先輩。」「先輩の私服姿もカッコいいですよ。」

「あはは、ありがとう。」「それじゃあ行こうか。」

「はい。」

 

水族館は駅から歩いて10分くらい、駅前から続く公園を通る道なので休日は賑やかである。夏休み初日ということもあり、入場券売り場の前には親子連れの列。僕たちはその最後列に並んだ。

 

券売機の順番待ちをしながら、僕たちは端から見るとカップルに見えるのだろうな、と思いながら伊藤さんの方を見る。視線を感じたのかこちらに顔を向ける伊藤さん。

「ん? どうしたの? あかねちゃん。」

「いえ、他の人から見ると私たちはどう見えるのかな、と思いまして。」

「あはは、同じこと考えてた。やっぱりカップルに見えるよね。」

「そうですね。」

僕たちは、カップルならぬ偽装カップル。元々は佐藤から伊藤さんを守るためだったのが、そのまま今でも続行中である。僕はなんとなく今の関係が気に入っているが、伊藤さんはどうなのだろう?

列の長さのわりに思ったほど待たされもせず、数分後には水族館に入ることができた。

 

水族館は、二人でゆるっと見るつもりが、伊藤さんは最初に巨大淡水魚の水槽でピラルクーが気に入ったみたいでずっと眺めていて、次は隣の水槽のアリゲーターガー、しばらく歩いたかと思うと、深海の生物、その次は...という具合に気に入った水槽があるとぼーっと眺めていたので、水族館を見終えたのは午後に入ってからだった。でも、魚をぼーっと眺める伊藤さんをぼーっと眺めているのは結構楽しかった。

 

昼食は水族館併設の食堂で軽く済ませ、おみやげコーナーでお揃いでクジラの小さなキーホルダーを買ってスマートフォンにぶら下げた。伊藤さんは本当はピラルクーのキーホルダーが欲しかったらしく、かなり探していたようだが諦めてクジラにしたようだ。

 

「次、どこか行きたいところある?」

「えと、それでは少し歩きませんか?」

「じゃ、そうしようか。ところで、さっき水族館で大きい魚に興味があるみたいだったけど、巨大魚が好きなの?」

「そうですね、巨大魚というよりは大きい生き物は大体好きですね。好き、というよりは興味があると言うか。変な言い方になりますがロマンがあるじゃないですか?」

「じゃあ、クジラも好き?」

「クジラは好きですね、普通に。でも、私がロマンを感じるというか、うーん、『そこにいるはずのない大きさの生き物』みたいなのが好きですね。例えば、公園の、そこの池に2mのナマズがいるとしたらすごく興味わきませんか?」

そう言って、伊藤さんは公園の池を指さした。

「うーん、分かるようなわからないような。でも、やっぱり伊藤さんって面白いや。」

僕は笑いながらそう言うと。

「あ、今先輩引きましたよね。」

「いや、引いてない引いてない。本当に面白いと思ったんだって。」「でも、なんで大きい生き物に興味を持ったの?」

「最初はやっぱり魚だったんですよ。鈴木先輩はイトウっていう魚をご存知ですか?」

「確か日本で最大種と言われる淡水魚だよね。」

「よくご存知で、普通は知りませんよそんなこと。」

「昔、図鑑の類をよく眺めていたからかな? 変なことを覚えていたりするんだよ。」

「元々は、私の名字と同じ名前の魚だったから調べてみたのがきっかけだったと思うんですが、調べてみるとかなり大きくなることがわかって。川にいる魚が2mってなんか凄いなって思ったんですよ。」

「そこが伊藤さんの巨大魚好きの原点かぁ。」

「そうですね、そこが原点だと思います。そして、そこから大きな生き物全般に興味が広がったというか、あとUMAとかも好きですね。」

「じゃあ、UMAじゃないけどシーラカンスとか...」

「シーラカンスは凄いですよね。あんなのが人知れずずっと生きながらえていたとか、本当にロマンですよね。」

 

伊藤さんとはこのまま巨大生物の話で盛り上がり、そのまま駅まで歩いた。

「まだ明るいけど、もうこんな時間だから、今日はこれで帰ろうか。」「今日はとても楽しかったよ、ありがとう。」「夏休み中で毎日会うのは難しいけど、こんな感じで時々会おうよ。」

「はい、私も楽しかったです。ありがとうございます。」

「そういえば、僕、伊藤さんの連絡先を知らなかったんだ。連絡先の交換、いいかな?」

「ええ、お願いします。会えない時もこちらでメッセージ交換いいですか?」

「それは是非、こっちからもメッセージ送るよ。」

 

帰りの電車は途中まで一緒だったが、伊藤さんが先に降りることになり、その場でお別れとなった。元はといえば石井と山本から半分強制される形でのデートだったけど、楽しかったしデートして良かった。伊藤さんとは結構一緒にいるはずなのに、いつも新しい発見がある、本当に伊藤さんは面白い。家に帰ったら、イトウについて調べてみよう。

 

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