メッツァー様がチート級能力を得て魔法戦士ヒロインたちを手籠めにして無理やりハーレム化する話~RPG式セクハラバトルZERO シナリオパート~ 作:ろむ1000/為五郎
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・ゲームの試作版 01-09話までが収録されてます。ゲーム内での話数とは別ですのでご注意ください。試作版とは、前作をひな形にイラストとテキストだけを入れ替えたものです。
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メッツァー
「────やはりというか、無理だったか…………」
大して感情も乗っていない声で失敗を認める。
いや、声といっても本当に発声できたわけではないが。
ここは俺のクローンの精神世界、その最深部。
生まれたばかりで新品状態のそこに俺の人格情報を焼き付けるため、精神体のみとなってダイブしている。
もっともそれは先ほどまでの話で、今は単に遭難しているだけというほうが正しいか。
ダイブと施術について、事前にできるかぎりのシミュレーションはしておいた。それでも、実地ではやはり異なる部分が多々あった。
そのわりには最小限のロスで切り抜けたといえるくらいにはよくやったが、その最小限のロスすら許容できないスケジュールだったわけで。
脱出については自身の精神世界の中で訓練できているため、必要な時間と魔力がはっきりわかっている。
その脱出用リソースをたった今割り込んだところだ。施術完了まであとわずか残して。
施術が完了するまでは精神世界の構造が俺と異なるため最短での脱出は不可能。
つまり、詰み、というわけだ。
メッツァー
「…………はあ……………………」
どうやら見積もりが甘かったようだ。失敗というほどの失敗はしていないのだが、それでこれとは。
心当たりはある。俺は着実な回り道を選ぶことを忌避し、結果に関わらずこのプランを断行することを望んでいた。
そんな精神状態で公正に試算できたはずもない。サキュバスも、それに気づいていたから反対したのだろう。
メッツァー
「人生最期の時間、か…………さて、どうしたものか…………」
他人事のように考える。
修羅道そのものの人生だったのだ。いつかこういうときが来るだろうとは覚悟していた。
それにしても平坦に過ぎる気はする。この死に方ならば苦痛なく、眠るように死ねると理論的にわかっているということもあるだろうが。
やはり精神的におかしくなっているのだろう。
とはいえ己の死に考えを巡らせれば、眠らせた死への恐怖が目を覚まさないともかぎらない。
であればこれまでの人生に想いを馳せるよりは、最期の瞬間まで目の前のタスクに集中すべきか────
そんなことを考えていると────不意に、暖かな魔力が流れ込んでくるのを感じた。
メッツァー
「…………これは……………………」
それは、ロア最高峰の魔導師であると自負する俺ですら初めての感覚だった。
外部からマナを取り込んだり、他者の魔力を奪うのとは違う、ごく自然な魔力の感触。まるで自分の魔力が他所から流れ込んでくるような────
これならば、この繊細な施術での使用にも耐えられるだろう。
自分が死地を脱したことを理解する。
しかし、いったいなぜ…………
サキュバス
「────はぁい♪、私からの贈り物、届いたみたいね」
メッツァー
「…………おまえの仕業か。いったい何をした?」
サキュバスは夢魔。精神系魔法を得意とする。彼女ならばこの場に来られても何もおかしくはない。
疑問なのは、どうやって俺の魔力そのものとしかいえないものを調達できたかということだ。
サキュバス
「やれやれ、助けられたんだから先に礼くらい言いなさいよ。親の教育が疑われちゃうじゃない」
メッツァー
「……………………おまえに…………育てられた、覚えは…………ない…………」
────なぜだろう。
いつもの軽口なのに、なぜか続けるのがためらわれた。
それでも一度話し始めるとほかに言う言葉が見つからず、結局最後まで言い切ってしまった。
サキュバス
「この期に及んで憎まれ口とは。まあ、事実なんだけど。まだそれなりに元気そうね。心配して損しちゃった」
メッツァー
「…………しん…………ぱい……………………」
なにか、彼女にはひどく似つかわしくない言葉を聞いたような…………
サキュバス
「それで、何をしでかしたかだったわね。単純に、アンタの魂の魔力回路を増強したのよ。血縁者の、それなりに近い魔力回路を移植してね」
メッツァー
「………………………………な……に…………?」
一瞬、頭が理解を拒絶する。
たしかに、そうすればこうなるか。
しかしそんなことをすれば────
メッツァー
「…………血縁者とは、おまえのことか……?」
サキュバス
「ほかに誰がいるのよ」
メッツァー
「…………魔力回路を取り出したということは…………魂を、分解したのか……?」
サキュバス
「その通りよ」
メッツァー
「…………そんなことをすれば…………おまえは…………」
サキュバス
「もうすぐ死ぬわね」
メッツァー
「…………何を考えているっっ……!!」
サキュバス
「────ククッ! そうよ、その顔が見たかったのよっ!」
メッツァー
「……………………どういうことだっ……」
サキュバス
「どうもこうもないわ。平坦な、揺らぎのない心ほどクソつまんないものはない。悟りを開いた坊さんだろうと、恋人に先立たれた絶望だろうとね。悲しみ、怒り、喜び────その落差が大きいほど見ていて面白いんじゃない。私はそれを少しでも激しく、一度でも多く鑑賞できるように自分からも介入しているだけ。人間はそれを『嬲る』って表現するけどね」
メッツァー
「…………今はそんなことを聞いてるわけでは────」
サキュバス
「────いいから黙って聞きなさい……! アンタは私にとって特別な存在よ。そのアンタが、私のために怒ったり泣いたりするところが見たくなった、ただそれだけよ。深い意味なんてないし、思いつきで衝動的にやっただけ。『これをやれば最高に面白いんじゃないか』ってね。趣味の話だから、アンタが気にすることじゃないわ」
メッツァー
「……っ………………」
サキュバス
「そう、いい子ね。聞き分けのいい子は好きよ。…………そういえば、アンタは昔からやたら聞き分けがよかったわね。子供らしさがなくて、可愛げがないったらなかったわ」
メッツァー
「………………………………」
サキュバス
「……話を戻すわ。この施術が成功すれば、たしかにアンタは大きな力を手に入れることになる。でもね、力なんて道具でしかない。今のままのアンタじゃ、何も成し遂げられはしないわ。どんな大きな力を握ったところでね。どうせ『可哀想になった』とかいって中途半端なところで投げ出して終わりよ。世間様にご迷惑を撒き散らさない分、何もしないほうがマシなんじゃない?」
メッツァー
「…………それは……………………」
自覚はあった。
ココノと、そして魔法戦士たちと知り合ってから、俺は明白に弱くなった。
何をするにしても、迷いや罪悪感が付きまとうようになった。
路地裏ではそんなもの、一度も感じたことはなかったというのに。
────真に美しいものを知ったことで、自分がいかに醜く穢れた存在なのかを自覚してしまったのだ。
サキュバス
「だからといって『初志を貫徹する鉄の意志を持て』とか、『大事の前の小事』とか、そんなことは言わない。そんなこと言ってる奴の大半は上辺を取り繕ってるだけ。本心ではそんなこと気にもしていない、ただやりたいようにやってるだけのケダモノよ。中には本当に心を痛めながら道を貫いている奴もいるけどね、そんな生き方は人間じゃないわ。だから、私がオススメするのは断然ケダモノのほう」
そういえば先日も似たような話が出たな。
「心から化け物になってしまえば楽になる」と。
メッツァー
「…………それは…………たしかにそうかもしれん、しかし…………」
だからといって「はい、今日からケダモノです」とスイッチを切り替えられるほど器用な神経をしていたら、こんなことで迷ったりはしていないだろう。
サキュバス
「そう────だから私があげる。欲を、願いを。走りださずにはいられないほどの疼きを。世界に向けて『俺はここにいるぞ』と叫ばずにはいられないほどの熱狂を」
メッツァー
「…………何を……? ………………っ……こ、これは…………?」
────ちょうどそのとき。
図ったようなタイミングで、俺のうちに正体不明の熱いものが蠢くのを感じた。
それはなんというか────不快というほどではないが、妙に落ち着かない気分にさせられる。何かを欲しているのにそれが何かわからない、そんな座りの悪い心持ち。
メッツァー
「…………何をした……?」
サキュバス
「ククッ、察しが悪いわね。私は淫魔サキュバス。その私が欲をあげるって言ったら、一つしかないでしょう?」
メッツァー
「……まさか………………」
その言葉で、正体不明だった内側の熱が一つの指向性を持ち始める。
それはかつて戦場にて何度もぶつかりあい、また牢獄や寝室でも体をぶつけあった女たち────魔法戦士。
ココノを思い起こさせる、その穢れ泣き瞳。深き慈愛。凛々しき勇姿。そして────嬲りがいのある、美しき肢体。
俺にとってココノは自身の罪の象徴だ。
それに対し魔法戦士は同じように美しくあるというのに、世の理不尽ときれい事を同時に押し付けてくる、苛立たしい存在。
まさに可愛さ余って憎さ百倍であり、嬲って犯しても何の痛痒も感じずに済む、そんな存在なのだ。
こんな場面でその存在が胸中で急速に大きくなるのを感じ、サキュバスが何をしたのかを正確に理解した。
サキュバス
「ようするに、いつまでも死んだ女に囚われてメソメソすんのをやめて、次の女を探せって言ってんのよ。それを強制するための呪い。ちょうどいい具合にココノちゃんと似た感じの娘に心当たりがいっぱいあるでしょ。その娘らからココノちゃんの代わりを見繕いなさい」
メッツァー
「…………ココノの代わりになる者など…………」
口ではそう言いながら、本心では非常に魅力的な提案に思えた。
これが呪いを受ける前なら、ふざけるなと激昂したことだろうが。
サキュバス
「じゃあ代わりじゃなくていいから、片っ端からコマして憂さを晴らしなさい。その染みついた負け犬根性を払拭しないかぎり、力だけ手に入れたところで約束を果たすなんて夢のまた夢よ。……ククッ、もっともこの呪いはまだまだ成長していくから、発散できなければ気が狂わんばかりになる。そうなれば女のことしか考えられなくなって、どちらにしろ負け犬根性なんて忘れてしまうでしょうけど」
メッツァー
「恐ろしいことを…………」
苦笑と恐れが半分半分の言葉が漏れる。
サキュバス
「そうかしら? 今までみたいに女々しく世を儚んでるよりはマシでしょう? それを強制的にわからせるためにその呪いを編んだんだから」
「いい? 最近の姿を見るに、アンタは後悔するのがセックスより好きな変態みたいだけど、大事なことを失念している。お母さんが世の中について教えてあげるからよく聞いて理解しなさい。一度しか言えないからね」
「────後悔なんてクソよ。過ちなんて認めても1ゴールドの特にもならないわ。贖罪なんて間違っても考えないこと。そんなものが必要なのは弱者だけ。弱者が身の程を弁えて人様の迷惑にならないように生きるとき以外に役に立つことは皆無よ。むしろそんなものを抱えていたら、遠からず手足は萎えて動かなくなり、弱者の側に引きずられていく。昨日までのアンタみたいにね。そんな人間に成し遂げられることなんて何もないわ」
「人間は猿でありケダモノ。ケダモノは後悔なんてしないわ。次に機会が巡ってきたとき、たまたま前回の失敗を覚えていたら試しに避けてみる、反省なんてそんなもんで十分よ。それ以上はケダモノとしての強みを削ぐことになる」
「ケダモノの本質は感情であり欲望よ。自分は違うなんて考え違いはしないこと。理性なんて後から学習で取り付けた道具に過ぎない。道具はアンタの代わりに生きてはくれないわ。生きる原動力となるのは欲望だけ。理性や理論なんて、スケベ根性を正当化するのに使えれば上等よ。必死こいて学んだ甲斐があるってもんだわ」
「────そうして欲望を全肯定すること。どうしても強者として成し遂げたいことがあるのならね。罪が怖いというのなら、中途で挫け、止まることこそ最悪の罪だと知りなさい」
メッツァー
「…………一面の真理ではあるが…………」
さすがに暴論な気はする。
しかし昨日までの自身の醜態を考えれば、少なくとも自分には否定できるところがどこにもなかった。
まして────命を捨ててまで自分を救った者の諫言に耳を傾けぬほど、メッツァー・ハインケルの器は小さくはない。
サキュバス
「…………そのツラは、『頭では理解したけど感情が納得してない』ってとこね。ククッ、大丈夫よ。そんなシャイボーイのイチジクの葉を強引に引ん剝くための呪いなんだから。…………まあ、それでも────」
その美しくも怪しい女の手が、俺の頬に触れる。
「────ここまでされてもまだ、贖罪みたいな偽善に人生を浪費するなんて、魔法戦士の小娘どもみたいなことを言い張れるなら。────慰み者としては上等よ。私が嬲って弄んであげるわ……優しく優しく、ね? ……ククッ!」
────そして反対の頬に、その唇が触れた。
人を嬲り精気をすする化け物のものとは思えないほど、優しいキス。
こんなキスに覚えはない。
俺が知るのは男女の情愛を貪る激しい口づけ、それだけのはず。
だというのに、なぜか。
なぜか昔────記憶にも残せないほど遠い昔、受けたことがある────そんな気がした────
メッツァー
「────やれやれ、意味のない提案だな」
それで、ようやく覚悟が決まった。
メッツァー
「なぜならこの俺メッツァー・ハインケルは、常に嬲り、弄ぶ側だからだ。あんな胡乱なマゾどもと一緒にされては困る」
魔法戦士たちと相対していた際には意識的に演じていた「不敵な指揮官」「女の敵」の仮面を、再びかぶる。
それは、以前よりも馴染んでいる気がした。呪いのせいだろうか。
────そう、たしかに魔法戦士たちは美しい。
俺はその美しさに惹かれ、自身の醜さに気づかされ、恥じ入ることもあった。それは認めよう。
だが、自分自身が魔法戦士になりたいなどと思ったことは一度もない。
なってしまっては守れない。
あの愛すべき愚かしさに囚われた魔法戦士ココノを、本当に守りたかったのなら。
ココノにはできないことをすべきだった。
欲望のままに振舞う、ケダモノとしてひた走るべきだったのだ。
サキュバス
「そうよね、それでこそ私の子よ。殊勝なことばかり言うもんだから、血のつながりを疑っちゃったわ」
────そうだろうか?
先ほどから妙に母親であることを押し出してくる。昨日まではそんなことはなかったのだが。
こいつはこいつで、いまさら母親面することに引け目を感じていたのかもしれない。殊勝なところもあるじゃないか。
しかし口に出すのはやめておく。
せっかく生まれた母の威厳を傷つけるのは、孝行息子のすることではない。
メッツァー
「……ただ、一つ訂正しておく。俺は別に償いをやめるつもりはない。ココノは俺にとって、この世でただ一つの貴いものだった。妹を失ったあと、ただ孤狼として路地裏を、戦場をさまようだけだった俺の人生に、色を取り戻してくれたのはココノだ」
サキュバス
「…………妹?」
メッツァー
「ああ、いたのだ。正確には妹分だが。人買いのもとから共に逃げ出して以降、面倒をみていた。ほどなく飢えと寒さで死んだがな」
「…………話を戻す。俺は受け取るばかりで、あいつに何一つ報いてやることができなかった。それだけは誤魔化しようのない事実。だからこそ、たとえ死んだ後であろうと何か報いてやらねば男のプライドが許さない。もしくは勝手に恩ばかり押し付けていったあいつへの、俺なりの意趣返しともいえる。それは間違いなく俺自身の望みでもあるのだ。しかし…………」
メッツァーは苦笑する。
メッツァー
「しかしそうはいっても、奴らの同類扱いされては手を止めて考え込まざるをえん。それは俺にとって最大級の侮辱だ。ましてそれに成りきることすらできず、中途で力尽きて自殺まがいのことに手を出したあとではな。あいつに身を挺して庇われた命だというのに。……いや、だからこそ粗末に扱うことで仕返ししていたのか。まるで拗ねた子供だな…………」
「だからといって、俺一人ではわかっていてもどうにもならなかっただろう。サキュバス、おまえに感謝する。命を救われただけでなく、生き甲斐を、愉悦を与えてくれた。……本当にいつ以来だ? 理由もなく、これほど何かを欲したことは…………」
サキュバス
「……勘違いしないでよね。母親としての贈り物は、あくまで呪いのほう。命を助けたのは、単なる趣味なんだから」
メッツァー
「わかった、そういうことにしておこう」
サキュバス
「……フフッ、そんなこと言ってられるのも今のうちよ。さっきも言ったけど、この呪いはまだまだ成長するの。頭がおかしくなりそうなほどの情欲に炙られながら同じことを言えるかどうか見ものだわ。どう? 淫魔の母親らしい、悪辣で諧謔のきいた贈り物でしょう?」
「アンタの場合望む相手が相手だから、それなりに準備期間も必要でしょう。しばらくは自前の性魔術で抑制しようと思えばできるでしょうが、それもじきに効かなくなるわ。逃げ場はない、生き残りたければ戦って勝利するしかないわ」
メッツァー
「仕方があるまい、避けられぬ道ならば楽しんだ方がよい。……いや、楽しめるくらいでなければこの道を踏破することは叶わんことを、たった今学んだ。それに…………ココノも含め、魔法戦士に対しては腹に据えかねていることが多々ある。八つ当たりだとわかってはいるが、遠慮する気にはなれんな。勝者として当然のように貪らせてもらうとしよう」
サキュバス
「…………どうやら、本当にもう大丈夫のようね。どうなることかと思ったけど、体を張った甲斐があるってもんだわ」
メッツァー
「…………本当に、もう終わりなのか……?」
サキュバス
「……まあね。さすがの上魔サキュバス様といえども、魂そのものに傷をつけたらね。人間世界での端末だけとはいかない。魔界の本体までおじゃんね」
メッツァー
「………………………………」
サキュバス
「そんな顔する必要はないわよ、私が好きにやっただけなんだから。そもそも私の生は長すぎたわ、刺激と愉悦のために生きる淫魔としてはね。長く生きればどうしたところであらゆることに飽きが来る。そうしてあらゆる刺激を貪ったすえ、自己犠牲に新鮮な面白味を見出し、試さずにはいられなくなった────というのも、淫魔の業そのものって感じで『らしい』じゃない?」
メッツァー
「…………そうだな。そもそもおまえに前科があり過ぎたから壁を作らざるをえなかったのだ。そのくせ変なところで体面にこだわって遠慮して。俺のせいじゃないな」
サキュバス
「遠慮じゃない! …………一つだけ付け加えておくわ。こういうときは素直に後悔したほうが可愛げがあるわよ?」
メッツァー
「さて、なにしろ化け物の息子なのでな、そんな殊勝なタチではないのだ。次の機会まで覚えていたら、この反省を活かすとしよう」
平静を装い、不敵に振舞い、精一杯の皮肉を返す。
それこそが息子の行く末を案じた彼女への、最大の返礼になると信じて。
サキュバス
「腹立つわねぇ~…………まあ、そんだけ図太ければ世の中渡っていけるでしょ、これからもね。────さあ、さっさと施術を終わらせて帰りなさい。余裕ができたとはいえ、のんびりしていい場所じゃないんだから」
メッツァー
「…………おまえは…………?」
サキュバス
「死に顔を看られるのは趣味じゃないわね。上魔のプライドってもんがあるのよ」
メッツァー
「…………わかった。おまえの意志を尊重しよう」
…………5分後。
全ての施術を終わらせて。
メッツァー
「────終わったぞ」
そう言って振り返る。
────サキュバスの体は、端々が欠けて薄くなっていた。
サキュバス
「はいはい、いちいち言わないでもわかるわよ」
メッツァー
「…………謝罪はしない。ただ感謝を。この恩に報いるためにも────いや、そんなことはケダモノの考えることではないな」
サキュバス
「そのとおりよ。ただ心の欲するままに走りなさい。…………まあ、どうしても感謝を示したいっていうなら、『お母さん愛してる♡』って言ってみて? 感情を込めてね?」
メッツァー
「…………調子に乗り過ぎだ」
サキュバス
「なによ、サービス悪いわねぇ」
メッツァー
「…………俺には、愛というのはよくわからん。ただ、それでも…………」
サキュバス
「それでも?」
メッツァー
「…………母よ、会えて嬉しかった。それだけは確かだ」
サキュバス
「────はいはい、それで十分よ。息子の独り立ちを見送るのに、それ以上は余計だわ」
メッツァー
「…………では、征ってくる」
サキュバス
「はい、いってらっしゃい────」
────完全に自分のものと同一となった精神世界を、急速に浮上していく。
途中、深部に置いてきた異物が溶けるように消えるのを感じたが、前だけを睨み続けた。
メッツァー
「ケダモノは振り返らない。まして、後悔など絶対にしない────」
本当に自分がそのように変われるかは、まだわからない。
しかし変わってみせなければ────
────いや。
母の言葉が本当ならば、呪いは強制的に俺を変える。
ならば何も不安に思う必要はない。
ただ心の欲するままひた走ればいい。
それがケダモノというものだ────
・なにやらサキュバスがずいぶん可愛くなってしまった。
・ロアの通貨単位がわからなかったので、とりあえずゴールドにしときました。