なので未遂ではなく完遂されてしまった。
そんな世界線のお話。
糸使いのすれ違い
「……俺がノヴァスさんのあんな無茶な約束をタダで引き受ける訳ねえだろう! あの後、交換条件を出したら、ノヴァスさんは二つ返事で引き受けてくれたぜ。あの触らせねぇ女を、まさかこんなことですんなり抱けることになるとは、お前には感謝しても足りねぇよ!…… ハァハァ」
カジカの頭の中でようやく今までのノヴァスの言動が一致した。
カジカを守る為、ただその為だけに彼女は目の前の下衆な男に身体を捧げる約束をしたのだ。
何故そこまでする必要があるのだ。
カジカはそう考えて…
そして気がついた。
自分が彼女をそこまで追い詰めてしまっていた事に。
ノヴァスの忠告も受け入れず、手助けも拒否した。
行き違いからの誤解からとはいえ、ノヴァスからの謝罪も聞き入れずに立ち去った。
あの潔癖なノヴァスにとってそれがどれだけ苦しめた事なのか。
今のカジカには痛い程わかる。
だから理解できた。
あのノヴァスなら
俺の命の為に自分を捧げる事を厭わないだろう。
カジカの心に自責の念とともに重く後悔の苦さが痛みを伴いながらが広がっていく。
笑われたぐらいで意固地となった己の狭量さがこの事態を招いた。
何が最強の糸使いだ。
少女に守られていたことにも気づかず、その好意を踏み躙り、さらにその代償まで払わせようとしていたとは。
口の中に鉄の匂いが滲み出す。
いつのまにか出血を伴う程噛み締めていた。
カジカはストレージから仮面を取り出す。
仮面を装備しながらここにはいないノヴァスへ謝りそして誓った。
すまなかった。せめてもの報いだ。
俺は目の前の男を殺し、お前の禍根を断つ。
カジカからカミュへと変貌していく。
失われていた力が戻ってくる。
久しぶりの感覚にカミュは身震いした。
歓喜
かつて蔑まされ痛めつけられた相手に対する報復。
そして自分を助けてくれた女性に対する望外な劣情も排除出来る。
何もかもが可能だ。
今のカミュなら雑作もなくできる。
だがカミュは知らない。
代償はすでに払われていた後だった。
【ノヴァス視点】
決闘数日前……
「わかりましたよ。ノヴァスさんがそこまで言うのなら従いましょう」
エブスの説得は難航したが、乙女の祈り、そして他ギルドからも働きかけてもらい、なんとか折れてもらうことができた。
私はほっと一息ついてカジカのことを思う。
最初は初心者だと思って手助けしているつもりだった。
ほっとけなかった。何回忠告しても守ろうとしない。
死にたがりかとも思った。
突然ログアウトできなくなり、悲観して自暴自棄になる人も沢山見てきたからだ。
自ら命を絶った人たちも少なからずいた。
だが何度も遭遇しているうちにカジカはそう言う人たちとは違う事に気がついた。
目だ。
捨てきれない何かを必死に守っている者だけがもつあの目。
諦めかけた色を宿しながらも失われない力を確かに感じていた。
ひょんなことからカジカの過去について知る事ができた。
シルエラが語るカジカの人物像。
それは私の知らないカジカだった。
この世界に精通し、効率的な成長法を知り、隠す事なく他人に教える事が出来る。
明らかに初心者ではない。
初心者ではないのに……
カジカの謎に触れたことから私はこの男から目を離せなくなっていたのかも知れない。
「ですが条件付けさせてもらいます」
エブスの一声に私は思考の海から引き戻される。
「条件?」
私は唐突な申し出に虚をつかれていた。
「そうです。今回はノヴァスさんの申し出通りにします」
「あ、ああ」
「ですが元PKギルドの副団長が初心者の挑発を受けて、それを見逃すのです」
「それが……何か不都合あるのだろうか」
「乙女の祈りさんにはわからんでしょうが、俺らは力で地位を築き上げて来たんですよ」
エブスはいつになく真顔になっていた。
プレイヤーキルを繰り返し対人戦で力を示し続ける。
他のプレイヤーから畏怖され、あるいは尊敬されてきた存在。
それがPKギルドKAZUYAの存在意義であるとエブスは主張する。
「俺はこの要求を飲みます。今まで築き上げてきた物を捨てて。初心者に馬鹿にされる元PKerとして」
私はようやく自分がエブスにどんな願いをしていたのかを知った。
また……やってしまった……
どれだけ私は独善的なのだろう。
今までもこんなこと繰り返してきたのだ。
ようやく……ようやく償えると思っていたのに……
「だから……ノヴァスさん。あなたの大事な物を俺は貰う」
「え?」
私は弾かれたように顔を上げてエブスを見る。
エブスの顔が醜く歪んで見えた。
「あんたの身体、一晩好きにさせてもらう。それでいいなら要求を飲もう」
よく聞く要求だと思った。
だが自分に対してそういう要求をされることになるなんて思っても見なかった。
リアルでも異性に触れられたことなんてないのだ。
高校に通うようになってからそういうことを話す友人がちらほら出てきたが私にはとても遠い世界の出来事のように思っていた。
「拒否してもらっても構わない。だがこの件、既に大事になっちまってる。色んな人のメンツ潰すことになるな」
「わ、私は……そんな……」
そんな遠い世界へ私は来てしまったのだ。
人の命が簡単に奪われていくそんな世界。
そんな世界でも必死に生きている人がいる。
初心者クエをひたすら続け、それでも何かを諦めずに追い求めるカジカの顔が浮かぶ。
私は自然とエブスの要求を飲む気になっていた。
たった一晩この身を任せるだけで救われるのならば安いものだ。
この時の私はそう思えていた。
「良いだろう。この身体で良ければ貴方の好きにするがいい。だが約束は守って貰うぞ」
だからそう答えてしまったのだ。
カジカと闘技場の下見を終えて私はエブスの元へ足を運んだ。
「本当に来るとは良い度胸だな」
私の訪問にエブスは驚いた様子だった。
「やっぱりやめたなんて言われても困るのでな」
「ふん、そんなこと言いながら本当は抱かれるのが待ち遠しくて来てしまったとかじゃないのか?」
「そう思いたければ思うが良いさ。だが報酬を受け取っておいて反故にすれば自分がどんな目に合うかぐらい想像がつくだろう?」
「ちっ……中身がどんなもんか知らねえが楽しませて貰うぜ」
「ふん、好きにしろ。だが生憎初めてなものでな。お前の期待に応えられるかどうか」
ヒュー
エブスが口笛を吹く。
その顔は欲情に染まってどこまでも醜い。
「なんとまあ初物かよ。その強気な顔がどこまで続けられるか見ものだぜ。まあ、せっかくその気になってくれたんだ。早速始めるか」
唐突に立ち上がりこちらへ近づいてくるエブスに私は緊張の色が隠せない。
口では気丈に振る舞ってはみた。だがやはり恐怖の感情は抑えても消えてはくれなかった。
テーブルを回り込んで来たエブスに肩を掴まれ、初めて接触を許した異性の手の平に熱い物を感じ、私の身体が少し跳ね上がる。
「大丈夫、心配しなさんな。もうあんたは俺なしではいられない身体にしてやるよ」
エブスにふざけたことを耳元で囁かれたにも関わらず不覚にも何故か私の身体は熱くなる。
「な、何を馬鹿なことを……あっ」
私は言葉を続けることが出来なかった。
肩に置かれたエブスの手が動き始めたからだ。
肩から首筋、そして耳元を撫でるように這い上がり、そして胸元へと降りていく。
エブスの指先が私の肌に触れるたびにゾクッとした感触が背骨を走り抜け、思わず声が漏れてしまう。
私はエブスに間近で表情を窺われながら全身を撫でられていった。
「立って」
エブスの言葉に私は従う。
言われるがままに椅子から立ち上がり、エブスの手をその身で受け止める。
最初に想像していたような無理矢理力づくで揉みしだかれるようなことはなかった。
あくまでもソフトで緩やかに触れる程度の動きでしかない。
だが私はエブスの手の動きに集中してしまう。
頭の中にはエブスの先程の言葉がこだまする。
『俺なしではいられない身体にしてやるよ』
この行為の果てに私はそうなってしまうのだろうか。
そんな不安に苛まされながらエブスの触診は続けられ、私は少しずつエブスに自分の身体の秘密を暴かれていった。
「んっ」
「ここ、もう固くなってない」
首を振って否定したところで意味などない。
反応が良いところを責められ始めると私の身体は自分でも驚くほど簡単に緩み始めていた。
いつのまにか背後から抱きしめられ、衣服の中に手が入っていた。
直に感じる異性の手の平に心地よさを感じ始めている。
エブスの手つきは明らかに私を高ぶらせようとしている。
わかっていながらも私はそれに抗えずにいた。
エブスの手の中で形を変えていく乳房。
下着の上からでもはっきりとわかるくらいに自己主張を始めた乳首がその証拠だった。
そこに触れられた時に私は跳ね始めた自分身体に私は戸惑う。
「良いだろう?たまらなくなってきたんじゃない?」
問いかけられてもそれに答えることができない。
それほどの甘美な刺激だった。
乳首を刺激されながら、太腿を這い回っていた手がスカートの中、私の股間へと上がってきた。
お腹の奥が疼くような感覚に更なる快感を予感し思わず腰を引いて逃れようとする。
自然と押し付けてしまった臀部にエブスの熱い剛直を感じ取る。思わず硬直してしまった隙をつかれた私はそこにエブスの手を受け入れていた。
ショーツの上から擦り上げられる感覚に思わず顎を上げてしまう。
初めて味わう秘部への他人からの愛撫。
それは想像以上に私を狂わせていたのだろう。
未知の境地へ誘われていくことに興奮を覚え、決して心許してはならない男に身体を委ねていた。
まるで自分が楽器になったかのように感じさせられる。
エブスの手によって奏でられる私という存在。
いつしか私は自ら快楽を求め、腰を揺らしてエブスの手にそれを伝えようとしていた。
私の秘裂が湿り気を帯び始め、羞恥心と恐怖が混ざった感情が私の心を蝕んでいく。
エブスの手がショーツの脇から侵入してきた時、私はついに悲鳴を上げた。上げてしまった。
「い……いや……」
弱い自分を曝け出してしまい歯止めが効かなくなりそうだった。
エブスの手は止まることなく私をほぐしてていく。
私の最も敏感な部分に触れたエブスはそこを優しく包み込むように撫で回す。
ダメになっていく。
好きでもない男にここまで昂らされる。
私の口からは甘い吐息しか出てこない。
身体から力が抜けていく。
それが私にはエブスを受け入れていく過程のように思えてならない。
自分の力では立っていられない私をエブスはしっかりと支えながら私の股間からその指でピチャピチャと音を立て続けさせていた。
顔を向けさせられて唇を呆気なく奪われた私はエブスに導かれるように舌を絡めあってしまっていた。
エブスに抱きつくようにして寄りかかり、私はその行為を享受し続ける。
そんな私を見てエブスは寝室へと導いていく。
エブスに抱えられるようにして寝室に連れて来られた私はベッドの上に放り出された。
されるがままに服を脱がされていく。
肌が露わになるにつれどうしようもなく昂っていく。
エブスも同じように裸になり、覆い被さってきた。
お互いの肌が直接触れ合う。
体温が溶け合い、汗ばむ身体が吸い付くような錯覚に陥る。
私は目を閉じ、与えられるであろう快楽に身をゆだねた。
エブスの口付けが顔から下へ降りてくる。首筋、鎖骨、そして胸元へ。
その間もエブスの手は休まずに動き続けている。
そしてとうとうエブスの口は私の胸の果実を捕らえた。
強く吸われ、転がすように舐められると今まで経験したことのない強い刺激が走り抜ける。
ビクンと跳ね上がった私を押さえつけ、執拗に責め続けるエブス。
同時に指先でもう片方の乳房の先端を摘まれると、堪えきれずに声が出てしまう。
いつのまにか私の両手は自分の手では無く、エブスの手でシーツに押し付けられていた。抵抗するつもりはない。
むしろ私はその手を握り返し、自分の方へと引き寄せている。
エブスの指先がまた別の場所へと移動していく。
そこは既に十分すぎるほど潤っていた。
割れ目に沿って上下するエブスの太い中指が陰核を捉え、軽く押しつぶされると、電流のような快感が全身を駆け巡る。
そのまま円を描くように動かされ、膣内に侵入してきた。
奥の方まで到達すると今度はゆっくりと引き戻され、入り口付近で焦らすように繰り返される。
身体は正直に反応してしまい、もっと欲しいと言わんばかりにヒクついてしまう。
エブスはそんな私の反応を楽しむかのように何度もそれを繰り替えしていた。
やがて二本目の薬指が挿入され、バラバラに動き始めると私の身体は小刻みに震え出した。
限界が近いことを察したエブスは一気に速度を上げ、親指でクリトリスへの刺激も加えながら私の弱点を攻め立てた。
あまりの強い刺激に一瞬目の前が真っ白になる。
絶頂を迎えた私は大きな波に飲まれ、激しく痙攣しながらエブスの指を締め付けた。
肩で大きく呼吸をしながら余韻に浸っている私にエブスは再び口づけをした。
そしてエブスの剛直が私の入口にあてがわれる。
いよいよその時が来たのだと思った。
私だってもう子供ではない。男女の交わりについての知識はある。
これから起こることに期待をしている自分がいる。
だが、私の予想に反してエブスは挿入せずに私の太腿の間に割って入ってきた。
太腿の内側を擦り上げられ、時折秘所に触れる剛直の感触にドキドキしてしまう。
しばらくそうしているうちにエブスの動きが止まった。
どうしたのかと思い、薄っすらと目を開けるとエブスはこちらを見ながらニヤリと笑っていた。
そして次の瞬間―――
ズブッ! 突然の痛みに私は悲鳴を上げた。
エブスのモノが勢いよく突き立てられていた。
あまりの質量に裂けるような激痛が走る。
私は身を捩らせながら苦痛を訴えかけた。
しかしエブスは全く気にせず腰を振り始めた。
パンッ、パチンっと肌同士がぶつかる音が響く。
エブスの荒々しい抽挿によってもたらされる激しい痛みと圧迫感から逃れようと、必死になってベッドの上を這う。
だがエブスはそれを許さず、私の腰を掴み再び自分の方に引き寄せた。
そしてより一層深く挿入される。子宮の入り口まで届いているのではないかという程の衝撃に息ができない。
それでもエブスは容赦無くピストン運動を続ける。
何度も打ち込まれる楔が私の身体を変えていく。
最初は痛みしかなかった行為に徐々にではあるが確実に快楽を感じ始めていくのがわかる。
やがて私は自分から求めるようにエブスに抱きついていた。
それに応えるようにエブスもキスをしてきて舌を絡め合う。
エブスの舌は私の口腔内で暴れまわり、歯茎や上顎をなぞられるとゾクゾクとした感覚に襲われる。
その間もエブスの手は私の胸を揉みしだいており、乳首を摘まれたり引っ張られたりすると甘い痺れが走った。
下半身からは絶えず淫らな水音が流れ出しており、それが自分の愛液によるものだと思うとなんだか恥ずかしくて耳を塞ぎたい気持ちになった。
その光景を見たエブスは満足そうな表情を浮かべていた。
それからどれくらい時間が経っただろう。
既に何回果てたか分からない。
数え切れないほど絶頂を迎え、意識が飛びそうになる。
エブスもそろそろ限界が近いようだ。
ラストスパートをかけるように更にペースを上げて攻め立ててくる。
休む間もなく与えられ続ける快楽の嵐に私の理性は完全に崩壊してしまった。
そしてついにその時が訪れた。
一際強く打ち付けられたと同時に熱い奔流が体内に流し込まれる。
同時に今までで一番大きな快楽の波に襲われ、私は大きく仰け反った。
それと同時に全身から力が抜け、ぐったりと倒れ込む。
しばらくしてようやく落ち着いたエブスが私の上から退いた。
私の身体に打ち込まれ続けた楔が引き抜かれ白濁した液体が溢れ出す。
しばらく余韻に浸る。
何も考えたくなかった。考えられなかった。
ひたすらに与えられ続けた快楽を反芻していた。
そして再びエブスが私にのしかかり、私はその背に手を回す。
楔は再び打ち込まれていく。
何度も何度も。
私は当初の目的も忘れ果て、教え込まれた女の悦びをひたすら享受させられ続け……
そして朝が来る頃にはそれが当たり前だと思い始めていた……
「んじゃ行ってくるわ」
「約束は守ってくれるんだよな」
「心配すんな。報酬は貰った。初心者のブタ一人見逃すなんてわけない話だ」
「すまない。エブス殿にも迷惑かけて」
「気にすんな。こんな良い女抱けたんだ。文句はない」
「っ!バカ!そんなこと言わないで!」
「なあ、今日帰ってきたらまたやらないか」
「……あ、ああ…私は……別に……構わないぞ」
「よし、そうと決まったらさっさと片付けてくるか!」
「おい、約束守れよ!」
「わかってるって」
私は初めての男を家から送り出した。
彼と交わした新しい約束のことを思いながら、彼の帰りを今か今かと待つ。
昨日までは知らなかったこんな生き方も悪くないと思い始めていた。
だけど
約束は守られなかった。