実は義妹が痴漢に遭いまして 前編
「えへへ……あ、兄貴、ど、どうかな?」
俺の目の前で真新しい制服に身を包み、スカートを翻してターンを決める晶。
色々と行き違いもあったが今や同じ家族として歩み出した晶の眩しい笑顔。
少々、距離感が兄妹としてはバグってる気もするが……
だが心を開いて接してくれてるのはやはり嬉しいものだ。
そんな感慨に耽りながら思わず見惚れてしまっていたことにようやく気づく。
早く答えてやらなければ晶が不機嫌になってしまう。
「ど、どうって……あ、ああ、とてもよく似合ってるよ、う、うん」
そんな焦りからか、少しどもりがちに答えてしまった。
兄としての余裕はどこへいった。
改めて晶を見る。
今まであまり女の子らしい格好をすることがなかった晶の制服姿は破壊力がすごかった。
それは今まで隠されていた晶の女の子らしさを存分に発揮させ……
とか見惚れていると晶の顔がみるみる赤く染まっていく。
しまった、見過ぎだったか。
「もうすぐ二学期だから制服取りに行ってきたの」
美由紀さんの言葉に我に戻る。
「そ、そうなんですね」
美由紀さんの方を見て相槌を打つ。
助かった。
そう、晶は夏休み明けから俺と同じ高校に通うことになるのだ。
こんなに可愛い子が転入してきたらちょっとした騒ぎになることだろう。
悪い虫がつかないように俺が守ってやらねば。
こうしてついに迎えた新学期。
俺たち兄妹は一緒に玄関を出る。
見送ってくれた親父とお袋の目がなんか生暖かい。
隣で歩きながら話しかけてくる晶のテンションもかなり高い。
妹とはいえ可愛い女子と登校とか夏休み入る前までは想像すらしてなかった。
願望はあったけどね。
駅に着いて電車を待つ。
段々と人が増えてきて、ふと振り返るとごった返しの状態だった。
「晶は女性専用の方に乗った方がいいな」
3両程先の女性専用車両を指差す。
あっちはそれほど混んでなさそうに見える。
「え?なんで?」
「いやこんなに混んでたら嫌だろう?」
「別に嫌じゃないよ?むしろ満員電車を体験してみたい!」
「いや、しかしなあ……」
華奢な晶の身体を見ると不安になる。
これは守護らねば……
「仕方ない。結構混んでるから逸れないようにな」
「大丈夫!兄貴に掴まってるから!」
「待った!腕を組むことはないんじゃないかな」
「じゃあ手を繋ご?」
「あ、ああ……」
そうやって握った晶の手は柔らかく暖かい。
少し力を込めると壊れそうな気がして……
強く握れなかった晶の手は人混みに押し流されて離れていってしまった……
「あ、兄貴!」
もみくちゃにされながら流されて行く晶。
俺は降りる駅の名前を晶に告げるのが精一杯だった。
「降りたら改札で落ち合おう」
「う、うん……わかった」
どうやらちゃんと伝わったようだ。
不安そうな表情で離れていく晶の姿が目に焼き付いている。
満員電車の洗礼を受けている晶の事を思う。
一人で通学していたから想像も出来なかった自分を悔やむ。
もっとしっかりしなきゃな。
逸れた晶は列車の奥へと押されてしまっていた。
圧倒的な質量に流されて抵抗する余地などそこにはない。
無言で迫り来る群衆に恐れを感じながら奥へ奥へと逃げる。
車内のスペースは限られている。
晶はあっという間に車内を区切るドアまで追い詰められていた。
見知らぬ男性に押されて残された僅かな窪みに身を滑り込ませる。
初登校の緊張もありやや汗ばんだ背中に冷房で冷やされたドアの冷たい感触が広がる。
「痛っ……」
思わず呟いてしまった言葉に男性からの短い謝罪の言葉。
そして少しだけ圧迫が緩む感覚。
気を遣ってもらったのだろう。
少しだけ出来た余裕に感謝しながら体勢を楽な姿勢にすることが出来た。
群衆の隙間から逸れた兄の姿を探す。
詰め込まれた人々の姿の中に晶はその姿を見出す事が出来なかった。
落胆する晶はその心細さから急速に広がり始めた居心地を悪さを感じていた。
失って初めて涼太の存在の大きさに気づく。
突然出来た兄という存在。
自分の事を大事に思ってくれる初めての異性の存在が晶にとっては未知のものであった。
初対面からグイグイとくる涼太に最初は面食らっていたがそこに悪意を感じたことはない。
(でも僕の事、弟だと思ってたんだよなあ……)
涼太のそんな態度にいつの間にか惹かれていたのだろう。
晶は今や完全にお兄ちゃんっ子となってしまった。
だから今のこの状況がとても辛い。
(早く駅につかないかな……)
駅に着いたらこの反動で涼太にベッタリになりそうだ。いや、絶対そうしよう。
晶にとってはそれだけが唯一の救いのように思われた。
スマホを取り出して目的地の駅を確認する。
到着まで4駅20分。
アプリが示すその数字を見て晶は顔を顰める。
20分もこの状況が続くことに気持ちが暗くなってしまう。
だが終わりがわかったことで多少気が楽になったのも事実だった。
そうして少し気を緩めた晶は
自分のスカートの中に入ってくる無粋な手に驚いて硬直した。
「あっ!」
短く上げた声は車内の喧騒に消えていく。
自分が陥ってしまった状況に脳が追いついていかない。
大胆に太腿を撫で上げていく不快な感触に慄いてしまう。
自分の大事な場所に迫る手に反射的にその柔らかな太腿を閉じて抵抗する。
(や、やめて!)
恐怖と羞恥に支配されていく晶は声も出せずに身悶えて抵抗する。
周囲は見知らぬ人ばかり。
助けを求めたい人物は先程引き離されたばかりだ。
晶の太腿の感触を楽しむかのように弄る手がその抵抗を嘲笑うかのようにその股間へと迫っていく。
必死にその手を掴んで抵抗するが一向にその動きを制することが出来なかった。
自分の大事な所へ少しずつ迫ってくるその手に恐怖し、晶は見上げる。
せめて誰がこんなことをしているのか確かめておきたかった。
どんな顔をしてこんなことをするのか。
見知らぬ顔の中年男性と目が合った。
素知らぬ顔で手を動かすその表情、だが晶はその目に捕らえた獲物を弄ぶ捕食者の残酷な色が見えていた。
無表情な男性の口が歪み、ニヤリとほくそ笑むように見えたその瞬間、
晶はついに自分の大事な所を触れられた感触に腰を引いた。
引こうとした。
だが引いた腰はすぐ後ろのドアに遮られ、僅かにゆらめくのみ。
(んっ!この人、どこまで!)
なんとか逃げようとする腰の動きに晶の短いスカートの裾が揺れる。
僅か10cm程の狭いスペースに身体を拘束された晶はもがくしかない。
だが白いショーツに包まれた恥丘が感じる熱い湿った手の感触が消えることはなかった。
状況が改善することなく、ずるずると男のペースに引きずり込まれていく。
それが晶には悔しくてたまらない。
(もうやめて!離してよ!)
怒りと嫌悪感を色濃く表した表情で男を睨みつけるが男の表情に特に変化はない。
ニヤついた表情のまま晶の顔をずっと観察するかのように見ている。
晶の股間に置かれていた男の手が蠢き出し、晶の表情から怒りの表情が霧散していく。
響き始める未知の悍ましい感触に身体が慄いてしまう。
(なんで……どうして……)
そのスカートの中で晶を責め続ける男の手はしかしあくまで優しく柔らかく蠢く。
それが晶にはとても不気味に感じられていた。
自分は必死に逃れようとしているのに逃げられなかった。
これだけ嫌がっているのにやめてくれなかった。
(まさか……この人……)
晶の頭の中に最悪な想像がよぎる。
断続的に送られる刺激がその想像を裏付ける。
必死に抵抗を続ける少女と余裕を持った表情のまま責め続ける男。
その攻守が入れ替わることはなく、助けが入ることもなく。
見知らぬ男の愛撫を受け入れ続けることを強いられていた。
やがてその悍ましい刺激は甘く痺れるようものへと変わり始め
頑なだった晶の秘裂は解されていった。
新しい生活。新しい学校。そして得たばかりの優しい兄。
初めて兄妹並んで一緒に登校することを楽しみにしていた。
今日から始まる新しい学校での生活を夢見ていた。
そんな大切なこの日に
見も知らぬ男に股間を弄られている。
夢見ていた明るい日常が壊されていく。
晶の目から涙が溢れ、頰を伝う。
キュッと結んだ唇の脇を通り顎の下に溜まった涙の雫。
それが思わず跳ねてしまった身体のせいで真新しい制服の襟に落ち、染み込んでいった。
悲しみに暮れる晶の心を甘く仄暗いものが少しずつ、少しずつ浸食していく。
兄と逸れてから5分。
勝敗は決していた。