混雑した車内。
時折感じる冷房の冷たい風は感じるのに全然効いてる気がしない。
背中に貼り付くブラウスの感触が気持ち悪い。
湿ったブラウス越しに背中に感じるドアの感触も。
額の汗を吸い込みながら密着していく前髪の感触も。
脇から滲み出して時折流れ落ちる汗の感触も。
全てが気持ち悪い。
ボクは視線を落としてこの暑さの元凶を見る。
ボクの両手に掴まれながらも僕のスカートの中に差し込まれている男の逞しい腕を。
掴んだ手が蠢きボクの下半身から甘い刺激が広がっていく。
それが……ボクを熱くさせている……
敏感な部分に触れられて勝手に腰が跳ねてしまう。
触れられなくても周囲を撫でられると高まる期待に膝が笑い始める。
期待?
違う!
指の動きに意識を引っ張られる。
撫でられ、引っ掻き、押し込まれる。
これはダメだ。そう思えた。
両手に力を込める。
手の平に男の腕の筋肉の動きが伝わる。
それと連動してボクの腰が痺れて蕩けていく。
お願い!止まって!
そんな願いを込めて必死に力を込める。
これ以上続けさせたら……
だけどボクの願いは叶わず男の手は止まらない。
俯いた顔にもわっとしたものを感じる。
それがめくり上がってしまったスカートの中から出てきたものと気づいてボクは堪らなくなり顔を上げる。
視界に入ったボクを責め続ける男の顔は既に勝利を確信しているかのように緩み切っている。
その表情が憎たらしい。
ボクは唇を噛み締めると目を閉じて顔を背ける。
こんな奴、睨んでやる価値もない。
そう自分に言い聞かせる。
力尽きた両脚が緩んでいく。
男の顔が近づいてくる気配を感じる。
「どうしたの?もう諦めるの?」
耳元で囁かれた言葉にボクは一瞬愕然となる。
諦める?何を?
諦めたらどうなる?
これでは終わらない?
もっと酷いことを?
そして……ボクは……ボクはどうなるの?
ボクは甘く見ていた。
勝手にボーダーラインを引いてしまっていた。
ここまでしか出来ないはずだと思い込んでいた。
助けも呼べず、大した抵抗もできない相手になんで遠慮する必要があるのかと。
そう言われているのだ。
ボクは自分の置かれている状況にやっと気づいた。
周りは知らない人ばかり。
そんな人たちに助けを呼ぶなんてボクには出来ない。
抵抗は体格差で無意味だと悟らされた。
誰にも知られずに穏便にという選択はこの男にボクの全てを握られている事に等しい。
今までの攻防で疲労しきったボクの両手と両脚は麻痺してしまったかのように力が入らない。
自由になった男の手がボクのスカートの中から引き抜かれ、濡れたそれをボクの目の前に突きつけてきた。
テラテラと光る指が、
微かな刺激臭を纏うその指がボクから抵抗の意志を奪っていく。
力も意志も失い、緩んでしまったボクの両脚の隙間に男の膝が差し込まれ再び手がスカートの中に潜り込んでいく。
ショーツの上から侵入してこようとする手の動きにボクは必死に首を振って拒絶するしかなかった。
ボクの下腹部にヌメリを擦り付けながら滑り落ちていき、無防備となった股間は容易く男の手を迎え入れていた。
敏感な所を直接触られながら、ボクは懇願するように男を見上げて許しを乞う。
お願い、これ以上しないでと。
これ以上、ボクをおかしくしないで!
だけど……
「っ!!」
不意にスルっとソコを擦られた瞬間、思わず息を呑む。
余りの激しさに涙も引っ込む程。
悲鳴を上げなかったのが奇跡と思える程。
唇を噛み締めながらその刺激の余韻に耐える。
再び擦られる。
腰が跳ねる。
ゆっくりと擦られていく。
徐々に刺激に慣らされていく。
刺激は和らぎ甘くなっていく。
それは緩んでいく身体に染みていく。
羞恥が消えていく。
嫌悪感が薄れていく。
見知らぬ男に触られているという嫌悪すべき事実を忘れ、
そこから得られる快楽を享受し始める。
それは最も恐れていたはずなのに。
こんな形で知りたくはなかった。
ボクの腰が自分の意思から離れ、震え、ゆらめく。
ボクはもうどうしようもなかった。
ツプリ
男の指がボクの胎内に入ってきて自分でも触ったことがない場所を探られる。
見も知らぬ男に。
そして呆気なく見つかったボクの急所。
思わず仰け反り、口に手を当て声を我慢する。
漏れてしまった声に誰かが反応している。
気づかれたかと一瞬背筋に冷たい物が流れるけど、すぐにまた強い刺激に呑まれていく。
呑み込まれながらも声を抑える。
頭の中を白く染められながらも自我を失わんと必死に意識を繋ぎ止める。
それは拷問に近かった。
ボクが声を上げたら困るはずなのに男の手は容赦なく責め立てる。
もう……これ以上は……
ム……リ……
ボクは完全に呑み込まれながらも必死に声を我慢する。
痙攣する身体。
ぼやけていく視界。
薄れていく意識。
男の腕の中に身体を預けて初めての絶頂からゆっくりと降りてくるのを待つ。
見知らぬ男の匂いに包まれて時折ビクビクと身体を震わせながら絶頂の余韻に浸る。
男の指を股間で咥えたまま……
いつまで続くのだろう……
男は呆然自失の晶を置いてさっさと電車を降りて行った。
晶達が降りるはずの駅はとうに通り過ぎており、晶のスマホには涼太からの着信が10数回残っていた。
「兄貴……ボク……これからどうしたらいいかわからないよ……」
ラッシュを通り越して空いた車内で晶は静かに泣くしかなかった。