※この作品はR-18です。

ようこそ性教育至上主義の教室へ   作:ましゅまろバスターズ★

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ようこそ、夢のような学校性活へ

 

 東京都高度育成高等学校。

 今日から俺が、高校生活を送ることになる施設である。

 バスが着いて早々、黒髪少女に絡まれるという災難に遭ったが、俺は気を取り直した。

 今から俺は、夢見てきた高校生活を送るのだ。

 

 学校行事、修学旅行、友達作りに部活に恋愛。

 厳しい受験戦争を勝ち抜いた者だけに与えられる、甘酸っぱい青春である。

 

 俺はこの学校で、新しい出会いをして、沢山の事を学ぶだろう。

 まずは、友達作りだな。

 友達作りには、第一印象が肝心である。

 前提として、清潔感がないのは論外。

 更に、会話を発展させなければ、友達は作れない。

 そもそも、友達とは何なんだ。

 俺は疑問を浮かべながら、教室の中へと入った。

 

 俺の高校生活は、お先真っ暗かもしれない。

 クラスに入って、席に着いて、俺は結局、誰にも話しかけることが出来なかった。

 クラスの中では、ちらほらと会話が繋がって、徐々に友達の輪が作られ始めている。

 先を越された。

 俺は、後悔に打ちひしがれる。

 何もしないまま、時間だけが過ぎていく。

 

「入学早々随分と重たいため息ね、私は貴方との再会にため息をつきたい気分よ」

 

 そう言って、俺の隣席に腰を下ろしたのは、バスの停留場で、出会い頭に俺の信条を否定した少女だった。

 まさか隣の席になるとはな。

 

「オレは綾小路清隆。よろしくな」

 

「いきなり自己紹介?」

 

「いきなりって言っても、会話をする二回目だしな。別に良いだろそれくらい」

 

「私は拒否しても構わないかしら?」

 

 冷たい声で拒絶をされた。出会ったばかりだが、俺への好感度はマイナスのようだ。

 

「一年間、互いに名前も知らずに過ごすのは、居心地が悪いと思うけどな」

 

「……物好きね。私に話しかけても面白くないわよ」

 

「そうか、迷惑ならやめておく」

 

 どうやら俺は、名前すら教えて貰えないらしい。

 

「私は堀北鈴音よ」

 

 と思ったら、少女はぽつりと呟いた。

 

 堀北鈴音か。

 よく見るとかなりの美人だ。

 俺は心の中でガッツポーズをした。

 高校生活における、最初にして最大級の難関、自己紹介ミッションをクリアしたのだ。

 まだ一人、されど一人。

 ここから交友関係を広げていき、俺は青春まみれの学校生活を謳歌するのだ。

 堀北鈴音。今はまだ不愛想だが、交友を重ねていく内に、親しい仲になるかもしれない。

 ひょっとすると、恋人にだってなれるかもしれない。

 あいにく俺は、交際経験ゼロの童貞だ。

 この学校で、キスの一つや二つは、経験してみたいものだ。

 

 なんて考えていると、教室の扉がガラリと開き、スーツを着た女性が入ってくる。

 ポニーテールの、厳しそうな印象の女性だ。

 年齢は、三十路前後といったところだろう。

 オトナの色気と、若々しい未熟さの、両方を備えた雰囲気。

 いかん、見惚れてしまいそうだ。

 

「えー。新入生諸君、私はDクラスを担当することになった茶柱佐枝(ちゃばしらさえ)だ。普段は日本史を担当している……」

 

 担任教師、茶柱佐枝は、教壇に立ち。いたって事務的に説明を進めた。

 俺の手元には、詳しい資料がまわって来る。

 

 漏れのないよう、長い文章でまとめられていたが。

 要するに……

 

・この学校は、他と異なるシステムで動いている。

・入学から卒業まで、生徒は学校敷地内での寮生活を義務付けされる。

・外部との連絡は、卒業まで一切禁じられる。

・学校敷地内には、娯楽施設や公共施設などが設置され、不便の心配はない。

・金銭のやり取りは、現金ではなくポイントでのやり取りをする。

・ポイントは毎月一日に振り込まれる。

・10万ポイント、即ち10万円が、入学を果たした俺達の価値。

・そして、本校の最大の魅力は、進学率が100%という事だ。

 

 整理してみたものの、これは余りにも優遇されすぎじゃないか?

 余りにも合理性に欠ける、違和感のような何かが、頭の中で引っ掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

「…ということで、諸君も知っていることと思うが、前年度に日本政府が定めた性教育基本法に基づき、我が校では独自の「性教育カリキュラム」を試験的に導入する事となった。

 もちろんこれは世界初の試みだ。戸惑いや不安、恥じらいを感じる者もいるだろう。

 安心しろ、名義上は必須科目だが、我々は生徒の気持ちに寄り添いながら、慎重に授業を執り行うつもりだ。

 来週月までに、「性教育授業についてのアンケート」を、携帯端末から回答して貰いたい。」

 

 教卓の隣で、我がクラスの担任、茶柱佐枝が、性教育実習の説明を始めた。

 

 

「うわぁああ………」

 

「すげぇ、マジな話だったのかよ……」

 

「性教育実習とか、うちらが子供の頃は、考えられないよねぇーー。」

 

 クラス内から、ちらほらと呟く声がする。

 

 入学前から明言されていた事とはいえ、いざ耳にすると、クラスの誰もが不安と緊張の表情を浮かべた。

 

 

 性教育基本法。とは、

 昨年度、国会で閣議決定された、少子化対策基本法に基づく法律である。

 深刻な少子高齢化と、若者の貧困を打破するべく、出生率改善の為、性教育を必修化するという対策である。

 

 俺は支給されたばかりの端末を開いた。そして着信欄から、アンケートを開く。

 質問項目には、・授業参加の有無、・実技授業の参加の有無、・本番行為の有無などの質問項目がある。

 なるほど、参加を嫌がる生徒のための配慮か。

 だが、こんな事をすれば、女子全員が参加を拒否することもあり得るだろう。

 そうなれば、茶柱佐枝が一人で、複数の男子に対して性教育を施すのだろうか。

 それはそれで、思春期の男子にとっては夢のような授業だな。

 

 と思ったが、アンケートに注意書きがあった。

 授業不参加を選択する場合は、代わりとして、筆記課題やレポートを提出する必要がある。

 性教育の授業時間は、学習室での自習時間となる。

 

 なるほど、授業の不参加を選んだ場合、授業外でのレポートや宿題で成績がつけられるという事か。

 それは面倒くさいな。

 保健体育というのは、身体を動かすのは楽しいが、勉強をするのはつまらないものだ。

 俺は、実技指導を強く希望する。

 

「う、うぇぇ、マジかよ………」

 

「な、なんか不安だよっ……実技なんてっ」

 

「日本政府、頭おかしいんじゃねぇの??」

 

「やべぇよな……」

 

 教室は、困惑や緊張に包まれて、ザワザワとしている。

 女子達は、不安そうに俯くものが多く、男子達は、期待に胸を膨らませている。

 ただ、真っ当な義務教育を受けてきた俺たちにとって、実践形式の性教育など未知の世界である。

 担任である茶柱佐江も含めて、皆、緊張の色を隠せずにいた。

 

 当然だ。

 初めての試みというものは、いつも不安や緊張が伴うものだ。

 俺だってそうだ、初めての高校生活、見知らぬ人達、果たして俺は、このクラスで友達を作れるのだろうか、と。

 

 この性教育も同じだ、経験した事のない非日常、はじめは不安も多いだろう。

 しかし、毎日何度も、非日常を繰り返していけば、それはいつの間にか、日常になるはずだ。

 この性教育だって半年も経てば、俺の日常になっているのだろう。

 

 まあ俺も、友達のいない日常が続かないように、早いうちに友達を作っておかなければ、と思う。

 願わくば、女性との恋愛関係を持ち、身体の関係を持ちたいものだ。

 

 俺は、手元のアンケートの回答を打ち込んだ。

 

 ふと顔を上げると、隣の席の堀北鈴音(ほりきたすずね)は、表情を崩す事なく、タブレットに指を走らせていた。

 

「嫌にあっさりと決めるんだな。迷わないのか?男子はともかく、女の子なら、こういう事には不安や戸惑いがあるんじゃないか?」

 

「余計なお世話よ。こんな授業なんて反吐が出るほど嫌だけれど、卒業資格の為には目を瞑るわ。課題が増えるのも面倒くさいしね」

 

「卒業資格のためか……。希望したい進路でもあるのか?」

 

 俺が会話を繋げていると、隣の堀北が、嫌悪の視線をぶつけてきた。

 

「なにニヤけてるのよ。心底気持ち悪いわ。貴方の相手だけは死んでもお断りね。私に話しかけないでもらえるかしら」

 

「はぁ、俺は至って真顔のつもりだが?」

 

「心の中がニヤけているわ。不快だから、前を向いてくれる?」

 

「うっ……」

 

 心の中だなんて、理不尽だろう。

 かと言って、言い逃れは出来ないが。

 心底嫌われてしまったな。

 堀北と彼女になるという世界線は、今途絶えた気がする。

 

「こっちこそ、お前の相手なんてお断りだな」

 

 俺も流石にいい気分はせず、負け惜しみのセリフを吐いた。

 俺は童貞だ。

 堀北は確かに美少女だが、こんな不愛想な女に初めてを捧げるなど、死んでもごめんだ。

 欲を言えば。可愛くて明るくて優しくて、胸がでかい女の子がいい。

 

 例えば、前の方の席に座っている、バスの中で老婆を助けた女の子だ。

 彼女は優しくて、よく笑い、誰とでもよく話す。

 同じ美少女でも、堀北とはえらい違いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 茶柱先生の説明が終わった。

 そして一週間はすぐに過ぎ去り、第一回 性教育実習授業が膜を開けた。

 

 

 

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