彼は見るからに一般人以外の何者でもなく、ついでに言えば冒険者なんてその日暮らしを選ぶバカにも見えない。
逆に少女の方は一見可愛らしいだけにしか見えないけれど、高い教養を思わせる立ち振る舞いは、少女が只者ではない証拠。
最低でも大店の商家の娘、もしくは貴族。下手すれば王族といっても違和感はないだろう。
着ているJAPAN風の衣服から、大名とよばれる王侯の娘というのが現実的か。
それほど気品高い少女が、今一冴えない少年と夜を共にし、明らかに一線を越えたのは、何がしかの物語を感じざるを得ない。
だから、やってしまった。
従業員としては失格なのだが、2人と、ボーダー、レイチェルの会話を、耳を大きくして興味津々に聞いてしまったのだ。
でも、まあ、特に問題はなかったみたい。
だって、自分だけじゃない。
和気あいあいと食事する2人とボーダー達の会話を盗み聞いてたのが沢山いたから。
というか、お姉ちゃ……もとい女将や香苗さんまで聞いてたのだから、私、悪くない。
それに、結果としてはそれで良かったのだ。
年端もいかない少女を誑かした最低男という私内評価が逆転したんだから。
もっとも、その多くは同情だろう。
それでも兄を救いたい少女と、いきなり異世界に落とされて寄る辺もない少年の助けになりたいって思ったのは本当だ。
だから、いいんじゃない? その話受けても。
そう言った私に、ちょっと驚く顔した女将と香苗さんは、でもすぐに満面の笑み。
基本人見知りし、内心刺々しくしている私がこんなこと言うなんてと、微笑ましく思ってるんだろう。
ちょっと何だかバツが悪い。
この葵屋は、姉・咲良とその夫である義兄が始めた大切な宿屋だ。
死んだ義兄の思い出が沢山詰まった大切な場所。
姉は義兄の残してくれたこの葵屋の中で、思い出に包まれて生きる道を選んでしまった。
変化しない明日は、とても優しい時間だ。
傷ついた心は、これ以上傷つくことなく、思い出という暖かい残滓に包まれ、穏やかに、ただ穏やかに……
だけど、それでも!
私は、それがとても悲しいと思う。
姉の親友で離婚調停が遅々として進まない香苗さんと妹の私は、変化を望む。
停滞した優しい時間。
だけども、とても悲しい時間。
そんな時間を終わらせたい。
なのに、私には何も出来ない。出来なかった。
でも、なぜだろう?
この少年と少女は、そんな悲しい時間を、とても楽しい時間に変えてくれる気がするのだ。
きっと、きっと……
なんか同情を買うみたいで、正直な話、気は乗らなかった。
この辺り、自分が純正の日本人だなぁって思わないでもないけれど、これが山本和馬という人間なのだ。仕方ない。
それに言い訳ではないが、別に隠すような話でもない。
……まあ、筋肉お化けのボーダーが、めっさ怖かったってのが本当の話ではある。
だからどこから来たかとか、促されるまま話してしまったんだが……
結果としてはこれでよかったのだろうと思う。
それに香も同じように話していたし、やっぱ隠す必要はなかったのだ。
もっとも、これに関しては、後にあまり吹聴しないようにと釘をさされはしたけれど。
でも、何度も言うが、ここで話したのは良かったのだ。
この世界に寄る辺のない和馬にとっても、兄の為にウェンリーナーの血を求める香にとっても。
ボーダーが厳つい顔で笑い背中を叩く。まるで頼もしい兄のように。
レイチェルは柔らかく香を抱きしめた。まるで優しい姉のように。
頼っていい。頼りなさい。そう言われてるような気がした。
頼れる人が出来たのは、とてもありがたい。
聞き耳立ててた葵咲良と蓮間香苗は、
「なにか出来ることがあったら言ってくださいね?」
そう言って宿代を安くしてくれた。
冒険者としてのホームを葵屋にお願いしたい旨を話したら、円はぜひにとまで言ってくれた。
本当にありがたいことだと和馬は思った。
特に今は金がない。そんな状況で、安い金銭で長く泊めてくれるというのだ。マジ助かる。
和馬はボーダーに背中を叩かれながらも、3人にむかって深々と頭を下げ、慌てて香も和馬に続いて頭を下げた。
基本的に、冒険者のホームになるのは面倒事を引き寄せる元である。
彼ら冒険者がダンジョン探索中に行きそのまま帰ってこないなど良く有る話。
そうなれば、その冒険者が使っていた部屋には彼らの私物が残ってしまう。
処分をすればいいじゃない。そう思うかもしれないが、処分をした後、もしも無事に戻ってきたなら大変だ。
だからと言って、放っておけば邪魔になる。
ほんとう、面倒なことこの上ない。
だから殆どの宿は一泊事に冒険者を宿から出すし、多くの『家なし』『ギルド末所属』冒険者の方も、預り所に荷物を預けてダンジョンに潜るのが一般であった。
その辺り『普通』を知らない香や和馬だったからこそ、厚かましくもお願いできたのだ。
実際名うての冒険者以外は、こうして宿にホームを作ることは稀なのだし。
まあ、その名うての冒険者であるボーダー&レイチェルの紹介であったのも大きかったのかもしれない。
そのボーダーからは使わなくなった財布や、サイズがかなり大きめなものの自身が使わない古着などが贈られた。
なんて財布の中身に優しいんだ……!
ある意味、香に借金してる形な和馬にとって、これは涙が出る程ありがたく。
咲良、香苗、円の3人も、あれやこれやと助けてくれる。
例えば、
「流石にボーダーさんのじゃ彼に合わないんじゃない?」
「そうね。だったらまどかが仕立て直してあげなさい」
「わたしぃ~ッ!? って、まあいっか。山本和馬……かずまって呼んでいい?」
「へっ? いいですけど……?」
「じゃ、かずま。サイズ測るからこっちに来て上着脱いで」
こんな感じだ。本当に助かる。
それに美女達とお近づきになれるなんてと、『昨日』までの自分だったら、だらしなくもにやけていた事だろう。
なんせ目の前の咲良、香苗、円、ついでにレイチェルの4人のおっぱいは、正に和馬の性癖にぴったり。
実にさりげなくオッパイ聖人……もといおっぱい星人な和馬にとって、4人の美乳は正に桃源郷である。
しかし、しかしだ!
今の和馬はその性癖と反して微乳な香だけしか目に入らない。
そう、和馬は昨夜のアレから香が気になって仕方ない!
だから採寸の為に和馬にびったりくっつく円の肢体にも、特に反応することなく。
せいぜいが(いい匂いだなぁ)とか(おっぱい柔らかいなぁ)程度なのだ。
……まあ、十分悩殺一歩手前なような気がしないでもないが。
それでも、僅かに顔を赤らめるだけで、下心をあまり見せない和馬に、円の好感度は少しあがった。
ちなみに円内評価の変遷をたどると……
冴えないガキ→幼い少女に手を出した外道→不幸な少年→がんばれっ
短い間に良くもまあ、ここまで変化したものである。
まあ、そんなこんなで、和馬のこの世界での滑り出しは実に上々。
住むところは出来た。
仕事……というか、冒険者としての最低限の準備も終わった。
友人以上恋人未満仲間以上の香ちゃんという大切なパートナーも出来た。
それがどんなに幸運な事か解らない和馬ではなかった。
はっきり言えば、香ちゃんの存在だけでも、元の世界に帰りたくないなんて思える程には、幸運だ。
新たに借り直し、これから長い間の生活の拠点となるツインルーム……とは言っても、前夜泊まって愛し合った(?)部屋のまんまではあるが……に荷物を置き、仲良く手を繋いで宿を出た。
妙に生温いにやにやした視線を宿内から感じはしたが、気づけばなんだかこうやって手を繋ぐのが当たり前になってしまった気がする。
なにやら急速に恥ずかしくなってはきたけれど、今更手をはなすのも何だか違う。
2人は宿を出るなり足を止め、ジッと見つめあってどうするかを考えたのだが……
「あはは……」
「えへへ……」
曖昧に笑って誤魔化し、結局手は繋いだまんま。
これじゃまるで恋人同士みたいだな。
しっとり汗ばんだ細い指の感触に、ついさっき、この指でして貰ったんだよな……と思わず朝の情事を思い浮かべそうになったものの、
「どうかしたんですか和馬さん?」
小首を傾げて下から覗きこんでくる香に、いかんいかんとエロ思考を外に追い出そうする。
とは言え、それが中々難しい。
まだ少し恥ずかしいのか、若干頬を桃色に染めた香の小首を傾げる様は、とてもとても愛らしく。
セックスを覚えたばかりの思春期の男子が、しかもその相手である。
どうにも一度浮かんだ不埒な感情が抜けそうになかった。
しかも織田香という少女は、愛らしい外見から想像できないぐらい、とても聡い少女だ。
当然このままではスケベ心を見抜かれる。
そうなれば、朝の様に慈愛の表情を浮かべながら処理されるかもしれない。
その『処理』が気持ちいいのは確かだが、正直言ってすんごく嫌。
年上の男としてのプライドが、根こそぎ削られてしまうから。
だから和馬は意地でも悟られてたまるかと、
「なんでもないよ」
と言いながら、顔を香の頬によせ、チュッと不意打ちのようにキスをした。
正直、普段の和馬には出来ない行為。
相手が香ちゃんというのもあるだろうが、異世界で命がけで戦い、少し行為が大胆になっているようだ。
「も、もうっ! 和馬さんにキザな行為は似合いませんからっ!!」
だからと言って、この言い方はあんまりだ。
結果として確かに上手く誤魔化せはしたが、和馬はちょっぴり傷ついた。
ただ香ちゃんの頬が、さっきまでのほんのりピンクから真っ赤に変わった辺り、むしろ照れ隠し。
和馬に対しては、傷つくよりも、むしろモゲロと言った所だろう。
だがしょせん、何処までいっても和馬は和馬だ。
そんな彼女の様子にも気づかず、目の端にちょっぴり浮かんだ涙を小さくぬぐい、
「んじゃ、行こうか」
そう言って、香の手を引っ張る様にして歩きだした。
「は、はいっ」
香も慌てて和馬の横に並び……出会ってからまだ丸一日にもなってはいないが、恋人に近い関係を築きつつある2人のシャングリラでの2日目が始まった。
アリスダンジョンのあるシャングリラは、大まかに5つのエリアに分かれている。
南東部は、和馬が香に保護された自由都市国家群へと繋がる街道に面し、主に冒険者街として発展していた。
ここには、現在和馬と香がホームとする葵屋を始めとする宿屋や、武器・防具・道具といった店。
普通の冒険者達には欠かす事の出来ない重要拠点、レベル屋・システム屋がある冒険者協会。
そしてなにより、和馬と香が攻略中である全3階層の試験ダンジョンがあった。
北東部は、方角的にリーザス王国方面に面した区域である。
間に険しいバラオ山脈があるため、他区域とは違いリーザス~シャングリラ間の街道はあまり使われてはいなかった。
しかし、ここはある意味、シャングリラでも最も活気のある場所だ。
女性と楽しくお酒を飲む場所や、女性と楽しくあれこれ致す場所。そして、女性と一夜を共にする場所。
まあいわゆる夜の繁華街を大きくした場所である。
他にも、ひっそりと奴隷買市場を始めとする闇商があったり、このシャングリラ一のマフィア組織『わかめ組』の本部もあり、中々スリリングであったりもする。
もっとも、自警団組織『ホワイトファング』がある以上、早々危険な目に遭う事もないだろう。
南西部は、ゼス魔導王国へと続く街道に面した住宅街を中心としている。
シャングリラで生活している人達の住居があるのは当然として、他にも冒険者達のホームや、ギルドなどもこの地に多く点在していた。
北西部は、ヘルマン帝国へと続く街道に面した宗教自治区だ。
AL教団の聖地にどうして? と思うかもしれないが、AL教団初代法王の宣言により、大陸中のありとあらゆる宗教団体がこの地に居を構えていた。
例えば、この世界の3大国家、リーザス、ゼス、ヘルマンから邪教認定されているブルマ教団なども、平然と神殿を建てられる辺り、初代法王の宣言は本物だったのだろう。
最後に中央部。
巨大で絢爛な建造物、AL教団大聖堂と、その正面に相対するかのようにアリスダンジョンがあった。
AL教団の聖地にして冒険者の聖地、シャングリラ。
その真髄は、全てこの中央部にある。
この日、2人が最初に訪れた場所は、葵屋から一番近い武器屋であった。
だが、武器屋を出るなり和馬は頭を抱えた。
「ああもうなんだよマジ信じらんねぇ……」
上げて落とされたら、誰でもこう思うんじゃなかろうかと。
だってアレだ。
剣Lvが1になったんだから、昨日と違って良い武器を装備出来るって普通思うじゃん。
なのに結果は……今現在和馬が装備しているロングソード以外の剣は装備不可。
というか、昨日と変わらず、ロングソード以外は棍棒、短剣しか装備出来ん。
……誰でも装備出来る武器しか装備出来ん。
ようするにアレだ。
山本和馬は武器スキルを持ってないから良い武器を装備出来なかったんじゃなくって、山本和馬はスキルがあろうがなかろうが良い武器を装備出来ないんだな、あっはっはー。
「い、良い装備できなくても、和馬さんは才能限界レベルが無限なんですから、とっても強くなれますよ!」
むんっ! てファイティングポーズな香ちゃん。
でも何だろう? こめかみの辺りから汗が流れてるように見える。
確かに和馬の才能限界は破格だ。
この世界において、才能限界レベルこそが、個々の実力の現れでもあるのだし。
むろん、どれだけ才能限界が高かろうとも、実際のレベルが低ければ意味はない。
だから今すぐでなくても少しでも良い装備が欲しかった。
命がかかっているのだ。当然だろう?
なのに、なのに……
「うがぁぁああああああああああああああっ」
頭を激しく掻き毟り始めた和馬に、香は、はふぅ……と疲れたため息。
本当に手がかかる困った人です。
だけど、まあ……
「もう! いい加減にしないと怒りますよっ!!」
そう言って脇腹をつねる私は、きっととても楽しいに違いない。
ステータス
山本 和馬 18才
クラス 学生
Lv3(才能限界Lv∞)
経験値(152/200)
HP 35/35
MP 2/ 2
力 17
守備 12
魔法力 2
魔抵力16
回避 7
速度 7
武器:なし(ロングソード)
防具:なし(アーマー)
アクセサリー:なし
GOLD:187
攻撃力 17(27)
守備力 13(21)
魔法攻撃力 2
魔法防御力 16
技能レベル
異世界人 Lv3
冒険者 Lv1
剣戦闘 Lv1
固有スキル
攻撃
戦術的撤退
祝福 弾数 3/3
財テク
織田 香 13才
クラス 姫
Lv3(才能限界Lv40)
経験値(220/200)
HP 26/26
MP 0/ 0
力 9
守備 18
魔法力 0
魔抵力14
回避 3
速度 1
武器:なし(家宝の朱槍)
防具:なし(織田家伝来姫鎧)
アクセサリー:青いの印籠(被ダメージ30%減少)
GOLD:1920
攻撃力 9(84)
防御力 18(63)
魔法攻撃力 0
魔法防御力 14(34)
技能レベル
槍戦闘 Lv1
護身術 Lv2
国政 Lv1
毒料理 Lv1
姫 Lv1
固有スキル
攻撃
かばう
叱咤激励
戦術的撤退
PTステータス
織田香:リーダー:中衛
山本和馬:サブリーダー:前衛
所属ギルド:なし
ホーム:葵屋
共有GOLD:2
シークレットパラメータ
山本 和馬 Lv1(経験値 40/100)
精力 20/60
キス Lv 1
愛撫 Lv 0
正上位Lv 0
人物リスト
織田 香
妊娠度 5/100
相性 Lv10
愛情 Lv 6
仲間 Lv 2
祝福:守備+1
処女ボーナス:剣戦闘Lv1
初性交ボーナス:財テク
竜胆 沙耶
相性 Lv 6
後輩 Lv 0
葵 咲良
相性 Lv 8 ↑new!
お客様Lv 1 ↑new!
琴月 円
相性 Lv 4 ↑new!
愛情 Lv 0 ↑new!
お客様Lv 1 ↑new!
蓮間 香苗
相性 Lv 9
お客様Lv 1 ↑new!