16話目 微エロ(香)
血の様な赤が視界を覆った。
……いや違う。これは目蓋の外が明るくなったのだ。
もう朝なのか。なのに、身体が起きるのを拒否してる。
起きたくない。もっと寝ていたい。
そうだ、起きなきゃという理性をねじ伏せるのだ!
そうして思うが儘に惰眠を貪ろう。
なのに朝の大事なひと時を邪魔するのか、ゆさ、ゆさ、と身体を揺さぶる何か。
寝ていたいのだ。邪魔するな。けれど次第に覚醒する意識。
「おきてください和馬さん。もう、朝ですよ」
眠りを妨げるのは、腕の中の抱き枕。
せっかく気持ちよく寝てるのに。
おのれ抱き枕、いい度胸だ。
文句を言ってやる! と、ゆっくり目を開けた。
すると、はっとするほど愛らしい笑顔が、寝惚け眼でぼやける目にもはっきり見えた。
一瞬、今の状況が分からず混乱する。
が、すぐに腕の中の────というか、抱き枕が香だと分かった。
ああ、可愛いなぁ。なんだよこの抱き心地。まさに至上じゃないか。
「おはよう、香ちゃん」
口元を緩め笑みの形にし、間髪入れずに言えたのは上出来だ。
まるでテレビか小説に出てくるカップルみたいだ。とは言い過ぎだろうか?
いや、そんなことはない。少なくても自分ではそうだ。
リア充には当たり前かもしれないが、抱き枕にしていた香は昨夜のままだ。
ようするに、裸だ。美少女と肌を重ねあった状態で目を覚ましたのだ!
これは山本和馬史に残る燦々たる歴史的偉業である。
感動のあまり胸がジーンとした。
込み上げる衝動のまま、腕の中の柔らかくも暖かい香を抱き締める力を強くした。
香の肢体はとても柔らかい。ふにふにしてて実に最高。本当に幸せだ。
「あうあうあう~」
香がバタバタ腕の中から逃れようとする。
だが本気でないのだろう。
むしろジャレてる感じが強かった。
これなら、少しくらい悪戯しても許されそうである。ってかしよう。
「やんっ! 手つきが、いやらし、い……ふ、ぁ……ダメだってばぁっ!」
肉厚がなくてもぷにぷにして素晴らしい桃尻に指先が触れた。
指先が、容易くお尻の肉に埋もれる。
そのまま指を折り曲げ、ぐに、ぐに、と揉んでみる。
「んっ……ふぁ……」
この感触、すごくいい。いつまでも揉んでいたい。
「か、和馬さんっ! もうやめてください! ひゃっ!?」
可愛い女の子のお尻を自由に出来る。
なんだ? ここは天国か?
とすれば俺は死んでたのか?
異世界トリップの定番だが……なるほど、俺のチートは香ちゃんか!
ふふふふふ……あはははははははは!
世の全ての転生&トリップチートオリ主に告げよう。
無限の剣製? 無限の魔力? スキル強奪? 凄い召喚魔法? 妄想具現化能力?
はん! 雑魚だな!!
定番オリ主もやれやれ系オリ主もEランクだけど実はSSSランクな実力隠しオリ主も聞くがいい。
俺が────香ちゃんが傍に居てくれる俺こそがっ! 最 強 だっ!!
蹂躙せよ! 蹂躙せよ! 蹂躙せよ!! 全てのオリ主に見せつけるのだ!
お尻の谷間に指を伸ばし、窄まりをゆっくり撫でる。
「あんっ!」
可愛い声を上げた香の身体が少し震えた。
ただ、目はとても厳しい。流石の香も、お尻の穴を弄られるのは嫌らしい。
しかしもっと可愛い声が聴きたい。お尻で感じてる声をもっともっと聴きたい。
だが、そんな邪念を見透かしたのか、
「もう! 変なところばかり……嫌いになりますよ!」
割とマジが入っている声色だ。
仕方ない。お尻はやめて別な場所にするとしよう。
「あのですね、はやく起きないと朝ご飯に間に合いません。ですからエッチは夜までダメですよーだっ」
でも、香の声には明らかに楽しそうな色が混じっている。
ダメと言いつつバタバタ抵抗するのも止めていた。
口だけで、嫌がる素振りも一切見せてはいない。
どころか、微かに色気の混じる吐息を吐き出す程だった。
その吐息を、スゥっと思い切り吸い込んだ。
香の香りを朝一に胸一杯に肺に送り込むと、それだけで何やら儲けた気持ちになれるから不思議である。
……変態? いいえ、紳士です。
香のような超絶美少女の匂いを朝から嗅げるなど、幸せ以外の何物でもあるはずがないのだから、しない訳にはいかないのだ。
この世界に来たばかりの2日前、割と死にそうな気分だったのが嘘のように思える朝のハイテンション。
なんか両親の呆れたツラが脳裏を過ったが、多分気のせいではないだろう。
もう日本に帰りたいとは思っていない和馬の親不孝ぶりを考えれば、確定的に明らかだ。
昔、どこかの誰かが言っていた、
『男の子なんて、好きな女の子が出来たら母親のことなんてすっかり忘れて、もうそれっきり帰って来なくなっちゃうんだから』
という言葉が実に真実なのだと良く分かる一例である。
ただ、この感情は一過性であり、ある程度落ち着いたら、また帰りたいと願う可能性はとても高い。
その日がいつになるのかは不明だが確実にくる。
和馬自身もそう思ってはいるが、とにかく今は香ちゃんだ!
なので、まだまだ先の話になるだろう。
「和馬さん」
親不孝者の筆頭であろう和馬の名前を、香は呼んだ。
ギュッと抱き締められている香の声色には、色事めいた物は、もう、一切含まれてはいなかった。
その事が残念に感じた和馬は、抱き締める力を弱めなかった。
ここでキスでもしたらどうだろう? そう思いながら静かな声で「なんだい?」と聞き返した。
「今日からが、本番です」
何の本番か聞き返すまでもなく。
それでも、あえてゲーム風に格好良く言えばこうだろう。
────試験ダンジョンを踏破せよ!
割と決まってるな。
厨二病を再発したかのような文言に、和馬は満足気に頷いた。
が、その文言。口にしなかったのは正解だった。
言ってしまえば空気が変わり、香の次の言葉がなくなっていたのだから────
「だいじょうぶ、ですか? こわく、ないですか? ダメだと思うのは恥ずかしいことではないのですよ? 和馬さんには祝福があるから、ここで待っていてくれるだけでも、私の力になるんですよ? それでも、私と一緒にきて……くれますか……?」
暖かく、優しく、和馬への思いやりが詰まった言葉だ。
そのことが、とても嬉しい。まるで愛の告白のように感じた。
しかし、である。この言葉に甘えるつもりは一切なかった。正直言って今更だから。
恐怖がないと言えば嘘にはなるが、昨日の内に覚悟は決まっている。
ただまあ……香も今更和馬が怖気づくとは思っていなかったのだろう。
なんせ、昨夜あれだけの宣言をしたのだから。だから香は、
「なんて、今更ですよね」
和馬の返事を待たずに、笑みを浮かべて当たり前のようにこう言った。
そして、目をソッと閉じる。はたして、それは決意を込める間であった。
故に、次に香が発した言葉には、とても力が籠っていた。
「まずは試験ダンジョンを攻略します! そして……」
「……そして?」
「アリスダンジョンへっ!」
昨日、和馬が言った言葉のままではある。
それを、香があらためて宣言した。
熱くなる。ぶるると震えさえした。
その熱と震えは、香の物だったのか、それとも和馬の物だったのか。
多分、両方だったのだろう熱と震えは、恐怖から来るものなんかじゃ、けしてなく。きっと、昨日と同じ武者震い。
でも次の言葉で全てが台無し。
「ですからエッチはダメです!」
メッ!っと指を立て、
「たぶん、和馬さんが一日にエッチ出来る回数は、昨日の和馬さんの射精回数からみて3回が限度と思われます」
え、やめて。
そんな考察はまじでやめて。
和馬は胸元をガリガリ掻き毟りたい衝動に襲われた。
「祝福は3回なんです。朝からエッチしたら、夜に3回できません。非効率的です。いけません。ですから、昨日の朝みたくはしてあげません」
咎めるような目で注意された。
いや、別にそれは構わない。
それよりも、13才の美少女に、こんな考察されるなんて……心が痛い。
「でも、ぎゅってするぐらいはいいですよ?」
むしろギュッとしなさい。と言いたげだ。
「はぅあ~」
言われた通り(?)にぎゅっとすると、香は嬉しそうな声を漏らす。
心なしか頬をすりすりする香は、とてもかわいい。ドキドキする。
これが惚れた弱みと言うやつなのか。落ち込んだ気持ちが瞬時に昂ぶった。
抱き締める。抱き締める。抱き締める。目一杯に抱き締める。
なんだろう。とても幸せな気分だ。エロい気持ちもどっか飛んだ。
このまま2人で抱き合いながら、ずっとのんびりしていたい。そう思った。
なのに、
「ちょっとだけ、さわりますか?」
こう言われたらエロい気持ちが戻ってしまうじゃないか。
いや、夜には堂々と好きなことが出来る。ここは我慢するべきだ。
なんか頭の中で、鼻先にニンジンぶら下げられて奮起する馬が思い浮かんだが、まあいい。男なんてこんなもんさ。
「大丈夫、しないよ」
と言いながら香を抱き締めたまま起き上がり、そのまま昨日の汚れを取るために朝風呂としゃれこんだ。
ただまあ、しないよと言いながらも、結局シャワーに濡れる香の未熟な肢体に辛抱たまらんかったが。
「和馬さん、ぬるぬる取るの手伝って。あっ、優しくですよ? 女の子の肌は敏感で繊細なんですから」
香ちゃん絶対狙っているだろう、これ?
クソ、なんか悪い事したっけかなぁ?
と、口の中でぼやきながらシャワーのノズルをあて、指でヌルヌルした部分を洗い流す。
時折「あんっ」と甘い声。実に小悪魔。ただしめっちゃ可愛い。
可愛いすぎて、思わず小ぶりな胸を思う存分揉みしだく……って、ちょっとこれはまずいか?
と、思うも、いや、違った。おっぱいにもぬるぬるがついている。それをキレイにするためだ。問題ない。
「そ、そこ……そんな風にしたら……やぁん♪」
初めはくすぐったそうに。
でも次第に感じてきたのか、唇を薄く開けてハァと熱い息を漏らした。
ダメだと言わない。嫌がる素振りも見せない。
だったらと、和馬はツンと尖った香の乳首を摘んでみる。
くにくにと、なんとも言えない素晴らしい感触。
ついつい調子にのって引っ張ると、
「きゃうっ!?」
抗議めいた悲鳴を上げた。
しかし痛がっている様子はない。
違う。そうじゃないでしょ?
と目で言いながら、香は顎を上げた。
唇が半開き、舌がチロリと踊って見える。
どう見たって誘ってる。
誘われるままに自分の唇を寄せる。
すると香の目蓋が静かに閉じ、チュッと向こうから唇を押しつけてきた。
キスをする。でなく、キスをされた。
唇が触れただけなのに、とても甘く感じる。
内心悶えている和馬に、こうでしょ? と、香は目を閉じたまま嬉しげに笑った。
ああダメだ。マジで可愛い。
気付けば触れるだけのキスじゃなく、貪るようにキスをしていた。
ぐちゃぐちゃと自分の唾液と香のを混ぜながら、舌を激しく絡め合う。
キスが気持ちいい。頭が溶けそうだ。
シャワーのカランを回し、お湯が出るのを止める。
お湯は邪魔だ。香だけを感じたい。
キスをしながら手を胸からヘソへ。
そして、そのまま下腹部へ撫で下ろす。
ピクンと香の身体が期待に震え、あえぎを漏らした。
もっと触っていいってことだろう。
と勝手に決め、魅惑のデルタ地帯から敏感な突起部分を爪弾く。
細く白い身体が弓なりに反る。指先に、トロリと熱い蜜が纏わりついていた。
感じている。このまま挿入しても大丈夫なくらい、感じている。
でも流石に本番はダメだ。だけども、何もしないのももったいない。
少しだけ。そう、少しだけだ。
少しだけ香の中へと指先を滑らせる。
中はとてもキツかったが、濡れているせいか動かすのは簡単だ。
熱く狭い中を、何度か指を行き来させる。
「んっ、ん! うぅんっ!!」
熱く粘つくような声が和馬の口内を流れていく。
2人の繋がる唇から、ダラダラと零れ落ちていく唾液の量が増えて止まらない。
香の身体がフルルと震えているのは感じているからだ。
可愛らしくも淫靡な反応に、和馬は膣内に侵入させた指先をもっと深く沈めていった。
香の中は熱かった。火傷しそうなほど熱かった。
熱く火傷しそうな膣壁に、ドロリとした矢張り熱い液体が滲み出ていた。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。
脳を麻痺させるエッチな音。男を誘う誘惑の音だ。
かき混ぜればかき混ぜる程、香の奥から愛液が溢れ出て止まらない。
「や、やぁ……ぐちゅぐちゅしたらダメ……です……もぅ、和馬さんのえっち……ああッ、あ……い、いきそうに、なっちゃ……う、だ、めぇっ!」
そう言えば、昨日は一方的にイかされたんだっけな。
だったら今日は逆にイかせてしまおうか?
悪戯心に胸が高まる。
香の中を掻き混ぜるのを止めると、指をくの字に折り曲げゆっくり引き抜いていく。
「ひ、くぅ……っ、ぅう……あああ、は、ぁ……」
香の体がビクビク小さく跳ね踊る。
熱い熱い吐息を「あはぁ」と吐き出す香は、
「こ、こし……ぬけちゃいました……」
蠱惑的な表情を浮かべ、ペタンとお尻をついた。
「気持ち良かった?」
あまりにも肩で息をしている物だから、思わずそう聞いてしまった。
すると香は、これ以上ないくらい顔を赤らめ、恥ずかしそうにコクンと頷いた。
これで昨日の仕返しはなっただろう。
そう思った和馬だったが、
「でも、指……でより、和馬さんの────での方が、きもちよかった……です」
最後の『です』は小鳥の囁きの如き囁きで。なのにはっきりと耳に届いた。
ああダメだ。こんな風に言われたら、もうどうしようもない。
負け負け。俺の負け。たぶん、何をやっても勝てやしない。
でもちっとも残念ではなかった。
惚れた方が負けってのは本当なんだな。と、思いながら香のおでこにキスをした。
その香は、随分と荒い息だ。瞳も蕩けて潤んでる。
体勢もそうだし、このままちょっと肩を押すだけで、簡単に押し倒せるだろうが……流石に拒否られるか?
「かずま……さん……」
いや、このまま押し倒しても、少しの文句で許してくれるだろう。
首筋に唇を這わせ、両手で胸を揉みし抱く。
愛液で濡れた指先で、乳首を何度も摘んで弾く。
「ちょっとだけ……ちょっと、だけですよ……」
「ちょっと、だけ……」
少しでも香を感じ、香のぬくもりを残した状態でダンジョンに行きたかった。
そうすれば、俺は無敵だ。
和馬は背中から抱き締めると、股間のいきりを香の割れ目に合わせた。
すると、香がゆっくりと腰を下ろしていく。
すでに一度イっている香の中は、十分以上に濡れている。
それでも多少の抵抗はあるのだろう。香は少しだけ眉を顰めるが、痛みはあまりないようだ。
「……っ、ふっ……あ、んっ、んっ、ああ……」
むしろ感じているのだろう。
すぐに艶やかな吐息を漏らし始めた。
もちろん和馬も気持ちが良かった。
香の中はとても熱く、何より和馬のモノをしっかり咥えこんで締めつける。
何回しょうしても飽きる事がない。この先一生だって飽きはしないだろうが。
和馬はそんな香を堪能しようと、ぐぷっ ぐぷっ と音を立て、2回だけ中を行き来する。
物凄く気持ちがイイ。このまま最奥を思い切り突き上げて、欲望のまま果ててしまいたい。
そう思いながら、和馬は肉棒を引き抜いた。
肉棒と香の秘所の間を、粘つく糸がピンと張っていた。
もう一度、突き刺したい。股間がそう訴えるが、和馬は当たり前のように訴えを棄却した。
「続きは……よる、ですよ?」
「分かってるって。夜まで我慢するよ」
実際の所、祝福によるレベルアップは、最悪を見積もっても2ヶ月と掛からず香は最大レベルに到達出来る。
ここで一度や二度イタしても、特に問題は起きないはずだ。
香もそれは分かっている。そして和馬もそれに気づいていた。
そう、最後までしても問題はない。ないのだ。
それに、こんな状況で我慢出来るのか? と問われれば、昨日までは無理。でも今なら余裕と答えよう。
何故なら夜にはこの続きが出来るという、確かな事実があったからだ。
和馬は、ダンジョンで殺し合いをする恐怖よりも、夜に香とエッチする楽しみの方が強くなっているのを強く感じていた。
(たぶん、これが香ちゃんの狙いなんだ)
だとしたら正解だ。
最早ダンジョン探索に恐怖はともかく怖気は付かない。
そしてこれが生き抜く力となるのだろう。
試験ダンジョン 全3階層
クリア条件は、2階に隠されている用紙に、3階最奥にある試験ダンジョンクリアスタンプを捺印。
その後、冒険者組合のシステム神に提出すれば、晴れてアリスダンジョンへの探索資格を得られることになる。
和馬が得た試験ダンジョンの情報は、
1階 イカマン
2階 ハニー、るろんた
3階 メイジマン、ぷりょ、きゃんきゃん
推奨クリアレベル 7
ボスモンスター なし
ボスがいない。
まあ、そうだろうな。と和馬は考える。
試験ダンジョンは、アリスダンジョンに入る試験のためのダンジョンだ。
とうぜん、幾千万の冒険者たちが訪れている。
ボスが居たとしても、とっくの昔に倒されているに決まっていた。
新しいボスが湧き出てくるわけでもなく、また、一度死んだボスが復活するなんてない。
これがゲームとリアルの違い。
復活しない。
例えボスでも死ねば終わり。
もちろん、自分も死ねばコンテニューなしの人生ゲームオーバー。
この現実に恐怖を感じない? んなバカな。
ただ、その恐怖を鼻歌混じりで超えさせてくれた。
むしろやる気が溢れてしょうがない。
今ならイカマンを1人で3匹は倒せそうな勢いだ。
これも全て、香がエッチな意味で身体を張ってくれたお陰だろう。
何処の世界のいつの時代も、男を勇者にするのは女の子────優しく微笑む香を、和馬はもう一度だけ強く抱きしめた。
「少し、冷えちゃいましたね」
「じゃあさ、もう少しだけ、こうしていようか」
「……こうして……はい、そうですね……もう少しだけ……もう少しだけ……ですよ……」
シャワーのカランを再び捻り、温かいお湯を出して頭から浴びながら、しばしふたりは こうして いた。
ちょっと長めの朝風呂から上がり、ササッと着替えを終わらせ部屋を出た。
朝食を食べに下の階に降りると、そこは昨晩と同じで戦場だった。
忙しそうに働き回る円に、やはり昨晩と同じように強引に席に着かされる。
和馬は周囲を見渡してボーダーを捜すも、どうやら居ないようだ。
そのことが残念だと思いながら、流れ作業で出てきた朝食を見る。
今日の朝食はお米のご飯に焼き魚。それとお味噌汁に生卵。
香が嬉しそうに食べるのを横目に、和馬は少し残念な気持ちだった。
望郷の念が出るのにもまだ早い。なのに故郷の料理と大して変わらん。
だけどまあ、美味しいことは美味しかった。
パクパクと、10代の少年らしい食欲で平らげると、食休みもそこそこに席を立った。
忙しそうな葵屋の面々に、手をあげ「いってきます」と告げる。
「和馬くん、香さん、気をつけてね」
「和馬っ! 香ちゃんをしっかり守るのよ! 香ちゃん、危ないと思ったら和馬を盾にすんのよ! いいわね!」
「危ないと思ったら、2人ともすぐに逃げなさい。命があれば何とかなるんだから」
咲良に円に香苗の3人が、わざわざ顔を出し、それぞれが、それぞれらしい激励の言葉。
和馬と香は、「はい!」と元気に返事をかえした。