窓からこぼれる光に目を覚ました。
目をこすりながら身体を起こすと、頭がガンガンする。
(これが2日酔いってやつか……)
そう思うと同時に、ウッと吐き気が襲う。
2日酔いからではない。
昨日の殺し合いを思い出してだ。
元の世界に帰るために入ったダンジョン。
初めての戦い。初めてナニかを殺す感触。初めて感じる死の恐怖。
イキナリこの世界に来るまで、ただの高校生だった自分が、まるでゲームの中のような……
いや、まさにゲームの中だ。
彼が【見よう】と思うだけで、ステータスが眼前に現れるのだから。
山本 和馬
クラス 学生
Lv3(才能限界Lv∞)
経験値(152/200)
HP 35/35
MP 2/ 2
力 17
守備 12
魔法力 2
魔抵力16
回避 7
速度 7
武器:ロングソード(攻+10)
防具:アーマー(防+8)
アクセサリー:なし
GOLD:112G
攻撃力 27
守備力 21
魔法攻撃力 2
魔法防御力 16
技能レベル
異世界人 Lv3
冒険者 Lv1
剣戦闘 Lv1
固有スキル
攻撃
戦術的撤退
祝福 弾数 3/3
財テク
……ったく、マジでゲームだぜ。
そう吐き捨てようとするが、和馬は自分のステータスに何か違和感を感じた。
何だろう?
そうマジマジと見ていると、
「和馬さん! 技能レベルに剣戦闘Lv1、固有スキルに財テクが追加されてますよ!?」
違和感はそれか。そう納得した同時に、ギョッとする。
真横から聞こえた声。
昨日、彼を拾って仲間にしてくれた少女の声。
「もしかして、私も何か増えてたりするんでしょうか?」
そう言いながら、少女もステータスを表示した。
織田 香
クラス 姫
Lv3(才能限界Lv40)
経験値(219/200)
HP 26
MP 0
力 9
守備 18
魔法力 0
魔抵力14
回避 3
速度 1
武器:家宝の朱槍(攻+75)
防具:織田家伝来姫鎧(防+45 魔防+20)
アクセサリー:青いの印籠(被ダメージ30%減少)
GOLD:1920
攻撃力 84
防御力 63
魔法攻撃力 0
魔法防御力 34
技能レベル
槍戦闘 Lv1
護身術 Lv2
国政 Lv1
毒料理 Lv1
姫 Lv1
固有スキル
攻撃
かばう
叱咤激励
戦術的撤退
スキルは何も変わらない。
でも、
「経験値、増えてます……」
やや呆然として呟く。
ダンジョンを出てすぐに和馬がレベル神を呼んでレベルを上げて貰ったのだ。
それなのに、今の経験値の量でレベル上がるほど。
「えと、和馬さんと交わった……からでしょうか?」
顔の下半分を布団で隠し、それでも隠しきれない頬の赤さが彼女の照れ具合を表していた。
ほっそりとした小さい身体の背中が丸見えで、幼い外見の筈の少女が得も言われぬほどの色気を感じさせる。
そうだ、そうだった。
和馬は2日酔いからでなく、頭を抱えたくなった。
だって自分は、まだ年端もいかぬ目の前の少女とイタしてしまった。
昨日出会ったばかりの、恩人である【13才】の少女と……
「俺は……俺がロリコンだーっ!」
「か、和馬さんっ!?」
酔ってはいた。
だが正気だった。
なのにどうして?
宿にあいてる部屋が一つしかなかったのが始まりだったかもしれない。
命のやり取りをした後の妙な高揚感。
そして、もう戦いは終わったのだという安堵感。
何より種の保存的な意味の、根源的な生物としての本能。
全てが合わさり、2人は自然と唇を合わせ、身体を重ね、生の喜びを貪りあった。
それは自然な流れの自然な行為。
だからと言って、元の世界風に言えば中学2年になったかどうかの少女に手を出していいという言い訳にはならない。
「がぁーっ! 俺ってやつぁーっ!!」
壁に頭をガンガン打ちつける和馬と、そんな和馬にビックリする香。
香にとっては、この地に来たときに貞操や何かは既に諦めていた。
たった1人で見知らぬ土地で、何事もなく過ごせるなんて思えるほど、香は楽天的ではなかったから。
それが流されてとは言え自分の意志でそうしたのだから、香にはまあまあ満足な初めてだったのに。
それに、昨夜は香自身がそんな気分になったのだ。
だから、彼が気にする必要はないのに。
異世界から来たちょっと情けない彼に、そうクスッと笑ってみせた。
もっとも、和馬から言わせれば、13才、しかもこんないい子を、しかもしかも吊り橋効果でヤッちまうなんてと、余計落ち来むだけだろうが。
こんな感じでグダグダで、2日目の朝は平和に始まった。
和馬の脳裏に、昨日の出来事が走馬灯のように過りながら……
第一話 目を覚ませば異世界
夢だと思いたかった。
でもそうでは無いのだろうと、はっきりと理解もしていた。
なんで自分がこんな目に……!
あまりにも腹立たしく、頭がどうにかなってしまいそう。
いや、どうにかなって当然だろう?
目を覚ましたら異世界だなんて。
安っぽいラノベでさえ、こんな展開中々ないぞ?
彼はそう思いながらも、心はどこか平穏。
それは、彼を起こしてくれた少女の存在のおかげである。
「もう大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ありがとう、えーと……」
「香(こう)です。織田香」
「ありがとう、香ちゃん。おれは和馬。山本和馬」
和馬と香はとある宿屋の一室にいた。
混乱する和馬を見かねた香が、彼を引きずってここに連れてきたのだ。
香にとっては、どうせ宿をとらなきゃならなかったし、丁度良いといえば丁度良かった。
それに、やっぱり一人は寂しかったのかもしれない。
そうでもなければ、例え訳ありっぽくとも、こうして見知らぬ男と狭い部屋で2人きりにはならなかったろう。
和馬も年下の少女にみっともないとこ見せたくない気持ちが働いたのか、必死に取り乱さないようにしていた。
とは言っても、顔色は真っ青だし、身体もブルブル震えが止まらない。
香からここの話を聞けば聞くほど、ここが地球は日本でないことは明白。
でも、言葉は日本語なんだな……
名前も日本人っぽいし。
……これはきっとご都合主義ってヤツだ。
俺はこの世界に呼ばれたオリ主かなんかで、力がチートで、世界を救う力ががががががががが……
やっぱり彼は平静などではなかった。
間違いなく現実逃避している。
だけど、あははははははは、と最後に力なく笑って、自分の顔を思いきりパシンと叩く。
いつまでも現実逃避はできない。
とりあえず、助けを乞わなければどうにもならん。
自分の事情を話した場合のメリットとデメリット。
この場合、メリットはあってもデメリットは無さそう。
問題があるとすれば、目の前の少女を信用出来るかどうかだが……
「あの、山本さん?」
「和馬でいいよ、香ちゃん」
「じゃあ、和馬さん。これからどうするつもりですか?」
信用しようと思う。
この少女は、善人にしか見えん。
現代日本のヌルイ環境に育った和馬だ。
この子が悪人だったら、どの道この世界で生きてける自信がない。
そんな切実な事実もあり、実は善人だと信じたいのが本音である。
だから和馬は口を開いた。
自分が異世界からの来訪者だという話から始まり、これから先どうすればいいのか分からないと。
……屈辱だった。
見かけ明らかに年下の少女にすがらなければ生きていけないと、自覚してしまったのだから。
何より、自分の話を信用してもらえるかどうか……
貰えなかったら、どうなる?
野たれ死にがイイとこだ。
当然だが、和馬は死にたくなんてなかった。
ずっと世話して欲しいとは流石に思わないし、そんな自分は嫌だが、せめて生活の当てが出来るまではと必死である。
必死な様子の和馬に気づいたのだろう。
香はしばし思案し、そうして名案を思いついたと両手をパン!と叩いて合わた。
「でしたら、私と一緒にダンジョンに潜りませんか?」
「はっ? ダンジョン?」
「はい、ダンジョンです! ダンジョンとはですね……」
こうして、本当だったら大学受験真っ只中の少年の、命がけの冒険が始まることになる。