宿を決めかねているのか、繁華街をウロウロしている年若い2人がいる。
一人は東方、JAPANの風情が漂う少女で、すれ違う者の殆どが一瞬見とれてしまう程の美少女。
特に濡れ烏のような漆黒の髪は、とても印象的で美しい。
そんな少女の連れは、どこから見てもタダの一般人。今一冴えない駆けだしな冒険者風の少年である。
美しい少女とは、とてもとても吊り合いがとれてないことはなはだしいが、それでも2人は信頼しあっているのだろう。仲良く手を繋いで、夜の街を歩いていた。
もっとも、手を繋いでいるというのに、恋人同士と言うよりは仲の良すぎる兄妹にしか見えない。
まあ、見た目が12~13才程度の少女と、17~18才の少年では、元々カップルには見えはしなかったのだろうが。
そんな2人を、微笑ましそうに見ている酒瓶を持った厳つい男がいた。
彼の名は、ボーダー・ガロア。
身長2メートル超にして、筋肉が隆々としている巨漢。
通常、身体を守る様に覆う鎧が、申し訳なさ程度に急所のみを僅かに守り、代わりにその隆々とした筋肉こそが鎧なのだと言わんばかりにあらわになっていた。
腕は身体に相応しく丸太の様に太く、その腕から放たれる拳の一撃は、そこらのモンスターなど容易く粉砕するだろう。
そう、ボーダー・ガロアと言えば、アリスダンジョンがあるこのシャングリラでは、ちょっと有名な高レベル……驚きのレベル40オーバーな冒険者である。
そして彼のパートナー、レイチェル・ママレーラ。
美しい桃色の長い髪と、男の視線を釘つけにしてやまない豊満で官能的な肢体を持ち合わせる美女。
彼女もまた高レベルな冒険者で、魔法使いとしては中々いないレベル30オーバーな冒険者だ。
そんな彼女は、最初不思議そうにボーダーの視線を追い……
続いて納得したように母性溢れる視線で少年少女達を見やった。
「ボーダー、あの子達が気になるの?」
「まあ、ちょっとな……」
レイチェルのからかいが混じった問いかけに、ボーダーは内心を見透かされたと、苦く笑って肯定する。
そう、このボーダー・ガロアという男は、厳つい外見とは裏腹に、実に面倒見のいい男なのだ。
実際、彼は出来の好い弟か息子みたいに面倒をみていた2人の青年がいた。
シャングリラを代表する剣術道場、『瑞原』の若き剣士『シード・カシマ』と、名高き『闘神』レグルスが一子『ナクト・ラグナード』。
どちらも今では綺羅星の如く有名な冒険者であるが、彼らはボーダーから冒険者の何たるかを教わり大成したのである。
そして今日、2人はボーダーの手から離れた。
立派な一人の男として、傍らに愛する女……
シードは幼馴染で恋人であった少女でなく、ダンジョン内で知り合ったカラーの少女、クライアと。
ナクトは幼い頃からの憧れだった、やはりカラーである冒険者のレメディアと。
それぞれを連れ、アリスダンジョンのあるこのシャングリラから世界へと旅立ったのだ。
世界を知り、もっと大きな男となるために。
本当に駆け出しの頃から2人の面倒を見ていたボーダーは、結果的にフラレたことになった2人の幼馴染の少女達に複雑な思い……(彼女達もまた、ボーダーにとっては大切な妹や娘みたいなものだったから)があるものの、成長を見守っていた身として、自らの庇護から離れ一人立ちしたのは嬉しくもあり、寂しくもあり。
この日飲んだ酒は、極上の美酒であったと同時に、どこか苦くも感じたものだ。
そんな、少しだけぽっかり空いた心の隙間を、無意識に埋めようとでも考えていたのか……
ボーダーはバツが悪そうに頬をポリポリ掻くのだが。
再び視線を件の2人に向けてみれば、どうにも危なっかしくてしょうがない。
あのまま放っておけば、ここ冒険者街から繁華街の方へと行ってしまうかもしれない。
昼間ならともかく、夜の繁華街は、何も知らない子供にとってはとても危険な場所だから。
裏でAL教団の聖堂騎士団ともつながりを持っていると噂されるマフィア『わかめ組』は、売れ筋の娼婦を増やそうと人浚いまでやっているとの噂があった。
この街に来たてで、まだ何も知らない田舎臭い少女なんかは、格好の餌食である。
口八丁手八丁で暗がりに連れ込まれ行方不明。そして、少女は夜の街で客を取る身分になるのだろう。
そんな危険な組織の活動拠点が、このシャングリラの繁華街である。
ボーダーとしては、あの2人がそんな危ない場所に入り込み、心と体に傷がつかないか心配なのだ。
まあ、自警団『ホワイトファング』が目を光らせている今、そうそう危険な事態にはならないとは思う。
思うが……だからといって、確実に安全という訳でもない。
ならば、危険な場所に入り込まないよう注意するのが年長者としての役目だろう。
それに、宿を探しあぐねる若い冒険者にイイ宿を紹介するのが、先達としての役目だしな。
こんな感じで理論武装したボーダーは唇の端を二ィッと吊り上げる。
だが、それは決して恐ろしい表情ではなかった。
どこか優しさを感じられる漢の笑み。
「オイ、坊主。宿を探してるんならついてきな。女将が美人で宿代が安い上にメシもうまいぞ」
私はこの人のこんな所が好きなのよ。
レイチェルにとって、ボーダーは世界だ。
そんな彼のお眼鏡にかなった少年。
きっとこの子も、シードやナクトと同じく良い子なのだろう。
仲良く手を繋いで歩いていた少女を背に隠し、警戒心バリバリにボーダーを睨みつける少年に、急いで彼のフォローしなくちゃと駆け寄るレイチェル。
シードやナクトが旅だって、少し寂しくなるなって思ってたけど、また賑やかになりそうね───
和馬と香がボーダーに紹介された宿は、2人の感性にピッタリきた。
外見は白くこじんまりとしたペンション風ではあるものの、意外にも中は結構広い。
入口から入ってすぐにある食堂には、ここの泊まり客だろう冒険者風の人達が数人、食事をしていた。
「あらボーダーさん、レイチェルさん、おかえりなさい」
ひょこっと顔を出し、ボーダーとレイチェルを見るなり満面の笑顔になったのは、ここの女将だろうか?
確かにボーダーの言うとおり、とても美人である。
何というか、匂い立つ美女……という言葉が相応しい、しっとりとした色気のある人で、その所作ひとつひとつにゾクゾクする。
そんな彼女は、ボーダーの連れである和馬と香に視線を送る。
ボーダーは彼女の視線を受け二ィッと笑うと、2人を彼女の前に押し出した。
「おう、客を連れてきたぜっ」
ととととん、とたたらを踏んで前に出た和馬と香は、少しオドオドしながらペコリと頭をさげた。
「部屋は……恋人・夫婦用の部屋しか空いてないけど、いいかしら?」
「えっ? それはちょっとまず「はい、かまいません」って、香ちゃん?」
「うふふ、じゃあ、今、部屋を使えるようにしますね。その間は、ご飯でも食べて待ってて貰えますか?」
「はいっ」
軽く頬が引き攣る和馬を放って、香が元気よく返事する。
そんな2人の様子を微笑ましそうにしながら、女将さんはすぅっと大きく息を吸った。
「香苗さーん、4番のダブル入りまーす」
食堂の奥に見える階段の先、恐らくは2階だろう場所から、
「は~い」
と妙齢の女性の返事が聞こえた。
そして恐らく、その返事をした女性だろう。
階段から降りて来るなり、和馬と香にペコリと頭を下げにっこり笑いかけると、再びぱたぱた足音を立てて2階へと繋がる階段を昇っていく。
それを見送った女将さんは、
「まどかー、今日のおすすめ料理2人前、大至急おねがいねー」
と今度は厨房だろう場所に声をかける。
彼女は、
「は~い、2人前、大至急入りま~す」
と答えが返って来るなり、まるで家族でも迎えるかのような笑みを浮かべた。
「私は当宿のオーナー、葵咲良です。お名前、聞いてもよろしいですか?」
「織田香です」「……山本和馬です」
「あら、2人ともJAPAN系の名前なんですね?」
「私はJAPANから来ましたから。で、和馬さんは……」
「まあ、俺も似た様なもんです」
「うふふ、では……ようこそ『葵屋』へ。和馬くん、香ちゃん」
柔らかく笑む咲良に、和馬と香は、ボーダーの言う通りの好い宿なんだろう。そう、思った。
ああ、確かに良い宿だ。
最初、厳ついおっさんに声をかけられた時は、絶対にヤバい人種だと勘違いしたけれど、ホントにイイ人だよ、ボーダーさん。
湯船に全身を浸し、ぱしゃぱしゃと湯を顔にかけながら、そう呟く。
この世界、何気に技術が高く、上下水道完備だったり、テレビがみれたりと、中々に侮れない。
まあ、ないよりはあったほうが良い物だし、和馬は心の底から喜んでいた。
正直な話、風呂に入れないとか、トイレが水洗じゃないとか、テレビ見れないとかマジでキツイ。
などと思いながら、肩まで湯につかって酒精の混じった息を吐き出す。
吐き出す、吐き出す、吐き出す。
とにかく吐き出して吐き出して吐き出して。
そうして思考をループさせる。
けして酔ってるせいなんかじゃなかった。
とにかく別なこと考えないと、色々やばい。
……そう、本当に良い宿だ。
あとボーダーさん。この人、闘神都市に出て来た人だよね?
それにこの宿の女将さんの咲良さんと、その妹である円さんに、従業員である香苗さん。
間違いない。妻しぼりのメインヒロイン達と、妻みぐいの人妻ヒロインだ!
18才になったばかりな和馬だったが、この3人がヒロインのゲームには色々とお世話に……
と、そこまで考えて、再び顔にぱしゃぱしゃお湯をかける。
いかんいかん。また余計なことを考えてしまった。
主に下半身に直結しそうな考えを。今はマズイ。とにかくマズイ。
少しでもエロいことを考えようものなら、俺は……しんぼうたまらんくなる!
「和馬さ~ん。背中ごしごししてくれませんか?」
浴室に反響する少女の美声が、どこか遠くに逝きかけていた和馬の精神を現世に呼び戻す。
常に湯船と天井から滴り落ちる滴のみに視線を固定させていた和馬は、思わず声の方を見てしまった。
結構長い時間を掛けて丹念に洗った髪をお団子状にして、うなじや首筋やおっぱいやおしりやうなじやうなじやおっぱいやおしりを露わにしている香ちゃん。
部屋に入るなり、ベッドに突っ伏してそのまま寝ようとした俺を、無理矢理風呂場に連れてきてお姉さんぶったりしてる気がする香ちゃん。
雪のように白い肌が、湯気にあてられほんのり赤く染まり、身体を伝う滴がとてもセクシーにさえ感じる香ちゃん。
ちらりと見える淡い膨らみやぽっち、風呂場のタイルにぺたんと座って半ばが見えない……言い方を変えれば、半分丸見えなお尻のワレメが艶っぽく見えたりする香ちゃん。
ああ、簡単に言おう。
目の前には、裸の美少女がいる。
何の警戒心も見せず、童貞男の前で髪の毛を洗ったり、身体を洗ったりする美少女が。
少女は『少女』である。手をだしていいモンじゃない。
そうでなくても彼女は恩人だし、これから毎日を共に過ごす仲。
下手に手を出して仲がこじれようモノなら、目もあてられない。
でも、下半身に血がたまる。
少しでも気を抜こうものなら、あっと言う間にぱお~んだ!
「どうしたんですか?」
「い、いや……なんでもない」
「じゃあ、よろしくお願いしますね」
「お、おう」
石鹸の泡がついたタオルを手渡され、和馬は湯に浸かったまま腕を伸ばし、微妙に震える手で香の背中にごしごし、ごしごし……
気持ちいいのか、
「ん……っ」
なんて小さく喘ぐ様な声を漏らす香に、和馬の鼻息が段々と荒くなっていく。心臓がばくばくする。
もう、誤魔化しがきかないぐらいに下半身が硬くなった頃、ようやく泡だらけになった背中に湯をかけ流す。
そこから……もう和馬は自分がなにをしているのか分からなくなってきた。
断片的に思い出すのは、しゃぶりつきたくなるような香の未熟な肢体と、小さな口から発せられる喘ぎ声に似た何か。
彼女の肢体に魅せられボゥっとし、
「次は和馬さんの番ですよ」
そう言われ。
彼女の膝を見るように頭を下げると、手に石鹸をたっぷりつけた香が、ワシワシと丁寧に髪を洗っていく。
むろん、視線は香の太もも……だけでなく、その付け根に釘付けだ。
初めて見る女の子のアソコは、股間の部分が土手のように盛り上がり、縦スジが一本という正にロリ垂涎の光景だ。
思わずしゃぶりついてみたくなる。
が、和馬はクッと自分を戒めるように唇を噛み、ピリリとくる痛みで正気を取り戻す。
ダメだダメだ……俺はロリじゃないはずだ。
オレの好みはオッパイの大きなお姉さんタイプで、香ちゃんのような可愛らしい妹タイプじゃなかったはずだ!
そう何度も自分に言い聞かせ、だが香の魔の手は髪の毛を洗うだけでは止まらず、
「全身くまなく洗ってあげますね?」
と微笑まれてしまった。
そこで断れば良かった。
「た、頼むね」
自分で自分を追い詰めて、そうして彼女の指先が、不意にソレに伸びた。
そして触れた触れないか……そんな瞬間。
頭が、真っ白になった。和馬の一部分が膨張し、限界を超え、破裂する。
先端から噴出する粘性の白濁液は、香の顔や身体を汚し、べとべとのどろどろにしていった。
「あ、ああ……こ、これって……?」
突然の出来事に、香は目をぱちくり瞬かせ、そして数瞬後、何が起こったか理解した。
最初から、抱き合いたいとは思ってた。
もちろん、最後までいくかどうかは、流れに任せるつもりだったけど。
でも、不安そうに今日は眠れないなどと呟く年上の少年に、人肌の温もりをあげたかったのだ。
都合のいいことに部屋はひとつ。ベッドもダブルで、やっぱりひとつ。
一緒に食事をし、いっぱいお話しして、お風呂にもいっしょして、そして暖かいお布団につつまれていっしょに眠る。
抱き合いながら、慰め合いながら。一人じゃない。一人ではないのだと。
突然異世界に飛ばされた少年に、そう教えてあげたかった。
それは、『妹』である香にとって、お姉ちゃんみたいでちょっとした快感でもあったのだ。
だけども、少しやりすぎてしまった。
香は少し反省しつつ、涙目で茫然としている和馬に優しく微笑みかけた。
『こう』なってしまったのは、間違いなく自分のせいだろう。
だったら責任とらないと。
和馬と『そう』なるのは……嫌ではない。
むしろ、和馬さんとなら別に嫌じゃないですと、彼に直接言ってしまいそう。
香はJAPANからシャングリラまでの道すがら、共をしてくれた鈴女と言う名のクノイチから言われていた。
冒険者という職柄、貞操はある程度諦めた方がいいだろう。
ダンジョン探索中に出会った乱暴者の冒険者に、襲われ、犯されるなんて話は、別段珍しい話ではない。
実際、香もその手の話を途中に立ち寄った街で何度も聞いた。
冒険者の男の中には、見目麗しい女性の冒険者を見つけるなり襲いかかってレイプするトンデモないのがいるのだ。
特に緑で大口開けて、がはははと笑う冒険者には要注意。
そんなトンデモナイ冒険者に犯されてしまうと思えば、和馬が初めての相手というのは、ちょっと嬉しいかもしれない。
それに、和馬も『して』る間は、不安に泣くことはないだろうし。
香は涙目の和馬の顔に、自分の顔を近づける。
そうして……チュッと唇を押しつけ、すぐはなれた。
「え……っ? ええっ!?」
今度は、和馬が驚きに目を瞬かせた。
ちょっと可愛いかも……なんて思いながら、もう一度、キス。
この瞬間、強く、強く和馬が『男』なんだと感じた。
……いいや、違う。和馬が『男』なのではなく、香は自分が『女』なんだと強く感じた。
そう思ったら、とくん、と胸が跳ねた。
唇どうしが触れ合うだけのキス。
それでも身体はどうしようもなく熱い。
流されている感じがしないでもなかったけど、もっと強く触れ合いたいのだと、身体の奥から欲求が湧く。
「お酒、飲んだからでしょうか? 胸がどきどきします。和馬さんはどうですか?」
「お、おれもどきどきしてる」
和馬の胸に、耳を当てる。
どくどく、どくどく、激しい鼓動。
「ほんとう、どきどきしてます……」
照れくさい。そんな感情をごまかすように和馬は香を抱き寄せ、湯船の中に連れ込んだ。
もう我慢できない。いや、する必要があるのだろうか?
触れたい。香に、触れたい。頭がおかしくなりそうだ。
「……きれいに、するね」
「はい……」
香の肢体にこびり付く、和馬の精子。
それを、無遠慮に全身を這う和馬の指が拭っていく。
愛撫と呼ぶには稚拙な技。火のついた欲情のまま香の身体を撫でまわすだけだ。
でも、香は甘い声を漏らした。
手技から感じた……というよりは、雰囲気に流されているだけ、とも言えるが。
それでも、その甘い声は和馬の鼓膜を震わせ、心を波立たせ、欲望を奮わせる。
和馬の手が、香の胸に伸びる。
申し訳なさ程度にしか膨らんでいないその場所。
でも、確かにそこは女の子の柔らかい胸であった。
最初はおずおずと、だが次第に大胆に香の胸を揉んでいく。
「ぁ、あ、は、はぁ……ん、んぅっ!」
徐々に蕩けたような声を出し始め、息も相当荒くなる。
そんな嬌声混じりの吐息を耳元で聞かされながら、夢中になって香の胸を揉みしだく。
それでも抑え切れない劣情を持て余し、うなじに唇を押しつけ吸いつくと、香の腰が揺らいだ。
「か、かずまさん……わた、しぃ……変になっちゃいます……」
上目遣いで囁く香。
少女然とした外見と裏腹に、その目線と物言いは、とても大人びた印象を感じさせた。
これが、女の子か……
そんな表情されては、心が香で一杯になってしまう。
香が、愛おしい。
我慢……できない……
吸い寄せられるように、濡れた唇に自分の唇を重ねる。
都合、3度目のキス。
1度目や2度目と違い、和馬の意思でキス。和馬からの、キス。
唇は柔らかく、それでいてとても弾力があり……もっと……もっと感じたい。
唇を舌で抉じ開け、稚拙な、勢いだけの深いキスに移行する。
カツンと前歯と前歯がぶつかり、それでも和馬は夢中で香の口腔を蹂躙する。
開いた唇から流れ込む唾液をすすりながら、もっともっと欲しいと夢中で香の口中を掻き混ぜる。
そして思う様に前歯、歯茎、頬裏と、香の口内の隅から隅まで手当たり次第に貪って。
染み出たよだれを、ジュルルっと音を立ててすすっていった。
香の細い腰が断続的にヒクヒクする。
あくまで稚拙なキス。でも感情剥き出しの情熱的なキス。
頭がぽ~っとする。だから、自分から舌を絡めていく。
滴る唾液も気にならない。すすられる唾液も気にならない。
むしろ、もっと飲んで欲しい。そう思ってしまいそう。
いや、思っているのだ。
だって、こんなにも、感じている。
胸がドキドキする。もっとしたい。もっと、もっと、もっと……
だから香は一心不乱に和馬と舌を絡め合い、キスに没頭する。
結果、和馬の味覚、聴覚、触覚、臭覚と、5感の殆どが香一色。
アルコールのせいだろうか?
思春期の少年・『少女』の性の暴走だろうか?
それとも、生命の危険から生じる、種の保存的な意味での生殖行為を求める生物としての本能か?
……おそらく、その全てである。
和馬はもう止まれそうになく、香もやめて欲しいとは言えないし、思わない。
でも、熱い……このまま湯に浸かっていては茹ってしまう。
それに、せめて……
「か、かずまさん、あの、初めては……お布団のうえが……」
離れた唇から絡み合った2人の唾液が糸を引いた。
それを見て、一層股間を熱くしながら和馬は思う。
その程度の我慢は出来るさ。
バキバキに硬くなった股間を堂々としながら湯から出た和馬は、この時だけは確かに漢で。
香の股間から流れる、湯とは明らかに違う粘質感ある液体を見ないように視線をずらし、感情を抑えた。
香も、ちょっと情けない年上の男の子から、男として少し評価を上方修正したのは、これから初めてを捧げる相手へのひいき目だったのかもしれない。
だから小さな声で、こう言ってみた。
「わたし、絶対に責任とりますから……」
(責任とってあげます。だから、ずっとずっと傍にいてくださいね)
そう思った瞬間、全身が薔薇色に染まった。
恥ずかしくて恥ずかしくって、どうしようもない。
だけども、和馬の耳には届かなかった香の言葉。
……なんだろう?
どこかアベコベな気がする。
それでも……本当のわたしの気持ちです。
とくとく、とくとく……高鳴る鼓動。
この世界で、たったひとりで可哀そうな和馬さん。
私がいなければ。私が彼を守らなければ。
だから私に甘えてください。
わたしに……甘えて……
この始まり方は歪だ。
香は恋愛感情からでなく、きっと同情から愛おしく想い、身体を許そうとしている。
でも、自分のことに精一杯な和馬は気づけない。
香が、妖しく、艶やかな表情を浮かべていることに。
一人なのは香も同じだろう。
むしろ、兄を救おうというプレッシャーがある分、彼女の方が重い。
重い、重い、とても重い荷物を、自分の意思だが背負った少女。
それが、織田香という少女である。
そんな少女が、感情のぶつけどころを見つけた。
「和馬さん……」
「な、なに?」
「やさしく、してくださいね?」
「……がんばる」
「はい、がんばってっ」
だからこそ。なのかもしれない。
人は、辛い時ほど、愛に弱い。
性は、愛に良く似ていて。
だから人は、愛欲に溺れるのだろう。
香は和馬の唇を奪いながら、そう思った。