※この作品はR-18です。

逆髪の結羅、異世界へ降り立つ   作:nenenene

1 / 5
糞尿注意


異世界召喚

「んん? ここはどこかしら?」

 

 あたしが目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。

 

「確か…あたしが昨日寝たのは、自分の巣の中だったはずだけど……」

 

 だが今では、見知らぬ場所に移動している。そこは、ごつごつした岩でできた半球状の洞窟のようだ。その洞窟の底には、あたしのコレクションである無数の人間どもの骸骨が敷き詰められている。恐らく、骸骨の下にも同じような構造が広がっているだろうから、ここは球状に近い場所なのだろう。

 

 本来、あたしの巣は、半径150メートルほどの球状に編んだ髪の毛でできていて、その球体の下半分はあたしのコレクションである骸骨で埋まっていた。そして、その髪の玉は地面にできた巨大な裂け目の中に巧妙に隠していて、あたしを狙う連中からあたしを守る役目を果たしていた。

 

 そのはずなのだが……今では見たこともないごつごつした岩でできた洞窟の中にいる。

また、髪の巣から周囲の林の中に伸ばしていた『髪籠(くしのかご)』‐獲物を狩るための罠であるとともに、外敵の存在を察知する早期警戒網‐もなくなっている。

 

「誰かに拉致されたの?」

 

 あたしは鬼の族長の娘で、昨日17歳になったばかりの、自他ともに認める美少女だ。

 あたしの胸はすでに、17歳にして、同族のどんな鬼よりも大きく、スイカのように大きな二つの果実が胸部から突き出ている。その上、あたしはその胸を自慢して見せつけるために、胸の谷間を大きく強調した、大胆な服装をしている。そのため、あたしは、一族の女性の多くから嫉妬されている。

また、男たちにとっても、私のような巨乳の美少女は慰み者にしたくてたまらないらしく、いつも厭らしい目であたしの肢体を舐めまわしてくる。

 あたしの体目当てに襲ってくる男どもや、嫉妬心から襲撃してくる女たちは多かったが、あたしはそのすべてを返り討ちにして、その髑髏をあたしのコレクションに加えてきた。

 このために、あたしを拉致して慰めものにしようとしたり、復讐のために嬲り殺しにしようとしているものには、心当たりが多多ある。

 

 でも拉致だと考えるのは変だ。これが何者かの悪意の結果なら、腰に差した刀がそのままなのはおかしい。そして、あたしの主要な戦闘手段である髪の毛もそのまま残っている。それらの髪の毛は、あたしが殺した人間の死体等から取ったもので、あたしの魔力を通すことにより、自由に制御できるようになっている。そして、それらの髪の毛は、あたしの両手の指につながっていて、今でも問題なく制御できる。

 

 もしもこれが、だれかの悪意による結果だとしたら、武器や戦闘手段がそのままなのは、明らかに不自然だ。

 

 

 

(え?)

 

 そこまで考えたところで、あたしは違和感に気付く。

 おかしい。

 あたしの魂を移してある櫛がなくなっている。

 

 あたしは、あまりにも美しい鬼であるために同族の女性の多くの嫉妬を浴びているし、男たちからも付け狙われている。また、あたしは人型生物の骸骨を集めるという趣味のために、人狼族などの人型妖魔や、人間の妖魔退治屋等からも追われている。

 

 狙われているのが分かっているのに、何の対策もしないのは、愚か者だけだ。そして、あたしは愚か者などではない。

 対策の一つとしてあたしは、魂移しという秘術を使用している。これにより、あたしの魂は肉体から分離し、櫛へと移してあるのだ。これによって、本来の肉体がどれだけ傷つけられても、魂を移した櫛が無事である限り、あたしは不死身でいられるようになっていた。

 

 そのはずなのだが……。

それが今では櫛との接続が絶たれて、その代わりに部屋の中央に置いてある見慣れない水晶玉に、魂が接続されているのがわかる。

 

「あたしの魂が移されている?」

 

 そう、あたしの魂がこの玉の中に入っていて、しかも完全に同化しているのが感覚的に理解できる。

これでは、魂を再度転移させようとしても、この玉から魂を取り出すのは難しそうだ。といより、魂が引き裂かれるだろう。

 

 あたしが、さてどうしようか、と思索をしていると、突然頭痛が襲ってきた。

 

「いやあああああ!!! 痛いいいい!!! 痛いいいいい!!!」

 

 あたしはあまりの激痛に、頭を抱えると体をよじって転がりまわる。

 

「痛いいいい!!!痛いいいいい!!!」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 それは、魂が強制的に転移されたことによる反動だった。これが人間や下級妖魔、中級妖魔なら即死するだろうし、上級妖魔でも普通なら気絶するだろう。しかし、彼女は中級妖魔の中でも痛みに強い耐性を持つ鬼であった。また、普段から魂を自分の体から切り離していたため、強制的に魂を水晶玉に移されることにも比較的耐性があったので、即死することはなかった。

 最もそれが良いことかどうかはわからない。

 

「いやあああああ!!!」

 

 なんといっても、そのせいで普通の中級妖魔なら即死してしまうような痛みに気絶することもできずに、悶絶することになったのだから。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「はあ、はあ、はあ」

 

 底に無数の骸骨がしきつめられた半球状の洞窟の中で、その美少女は仰向けに寝て呼吸を整えていた。彼女の口からは涎がただれ、鼻からは鼻水が流れ、目から涙が零れ、股間からは糞尿がたれている。

 もともと面積の小さかった女の子の衣服は大いに乱れ、女なら服の下に隠しておくべき秘密の部位を完全に露出させている。しかしながら、その姿はあまりにも薄汚れているために、これではよほど特殊な性癖の持ち主ぐらいしか興奮は覚えないだろう。

 

 だが、そんな糞尿まみれの格好にもかかわらず、女の子は歓喜していた。余りにも頭痛が酷すぎて頭がおかしくなったのか?

 

 否。そうではない。

 

「すごい! あたしは選ばれたんだ!」

 

 あの激痛は凄まじく、時間の感覚がなくなるほどだったので、いったいどれだけの期間悶絶していたのかはわからない。

 1分か、10分か、1時間か、あるいは1日だろうか?

 

「でも、そんなのは問題じゃない。」

 

 あの激痛は、あたしの脳に膨大な情報を植え付けるせいで生じたものだったということが、今ならわかる。

 あたしはよろよろと立ちあがると、水晶玉に近づく。

 

「これがダンジョンコア」

 

 少女にとって、ダンジョンコアとは聞きなれない単語であったが、それがなんなのかは植え付けられた知識からわかった。

ダンジョンコアは龍脈の上に時折発生する特殊な鉱物であり、その存在意義はダンジョンを拡張し続けることにある。ダンジョンの拡張にはダンジョンポイントが必要で、そのポイントを得るには、人間やモンスター等のダンジョン由来でない生物を殺す必要がある。

 また、ダンジョンポイントはダンジョン拡張以外にも、ダンジョンに使役モンスターを創生したり、食糧や財宝あるいは武器などを作成したり、あるいはダンジョンマスターやモンスターを強化するのにも使える。

 では、だれがポイントの割り振りを行うのか?

 ダンジョンコアそれ自体は、ただの鉱石であり自分の意志でポイントの割り振りなど行うことはできない。

 そこで必要になってくるのがダンジョンマスター、つまり彼女だ。彼女がこのダンジョンのマスターで、ダンジョンポイントを使ってそれらの行為を行うのだ。

 

「まさに神の御業よ!」

 

 今はまだ、ダンジョン自体が誕生したばかりで、そのダンジョンポイントはあまり多くない。つまり、大したことはできないのだが、これから彼女がダンジョンマスターとして多くの命を殺めていけばポイントもその分たまり、結果多くのことができるようになる。

 

「何て好都合な!」

 

 もともと彼女の趣味は、人型生物の骸骨の収集であり、人や人型の妖怪を殺めるのもその趣味の一部のようなものだ(同時に、彼女は髪の毛を自由に操ることができるので、骸骨についてくる髪の毛も武器として有効活用できるという一石二鳥な仕組みになっていた。)。

 しかし、彼女が元いた世界では生き物を殺しただけでポイントがたまって、力が強くなるということはなかった。それが今では、生物を殺めるとダンジョンポイントが溜まり、自身の強化等に使えるようになっている。

 つまり、この世界では人間を殺すとその骸骨が手に入るとともに、毛髪も入手でき、それと同時にダンジョンポイントも取得できるということだ。

 

「うふふふふ。一石三鳥ね。」

 

 少女は妖艶な笑みを浮かべる。

 

「ふふふふ。待っていなさい、異世界の人間たち。あたしが殺して、その骸骨をコレクションに加えてあげるから。」

 

 彼女のその台詞は自信に溢れていた。

 

 もっとも、糞尿を垂れ流しながら転げ回った結果、彼女の全身は汚物まみれになっていたので、せっかくの美少女が台無しになっていたのだが……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。