※この作品はR-18です。

逆髪の結羅、異世界へ降り立つ   作:nenenene

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初戦果

「うっひょう!! 今日はついてるぜっ!!」

 

 いつものようにゴブリンの討伐で日銭を稼ごうとしていた俺たちの目の前には、見慣れねえダンジョンの洞窟が口を広げていた。

 いつもこのルートを使ってゴブリン狩りをしている俺たちが、こんなところにポッカリ空いた洞窟を見逃すはずがねえ。つまり、この洞窟はごく最近の二、三日のうちに出来たものだ。そして、このサイズの洞窟がそんなに急にできるとは考えにくいから、こいつはおそらく新ダンジョンだといえる。

 

「どうする? 中に入る?」

 

相棒のリリアがおれに問いかけてくるが、答えなんて決まってる!

 

「当然だろ!! 出来立てほやほやの新ダンジョンなんて大したモンスターもいねえし、階層も浅い。それなんて、攻略してくれって言ってるようなものだろ!?」

 

 そう、新ダンジョンはチョロイ。出てくるモンスターは精々がゴブリン止まり。場合によっては、スラミーのような下級モンスターしか出てこないものもあるという。また階層も非常に浅く、多くて2階層。ほとんどの場合1階層のみで、すぐにダンジョンコアにたどり着く。そして、ダンジョンコアを守る最後の壁、ダンジョンマスターもまたほとんど戦闘能力を有していない場合が多い

 その一方で、ダンジョンコアはたとえ新ダンジョンの物だったとしても、途方もない金額がつく。まさに、ノーリスクハイリターン。

 

「このルートは俺たち以外の冒険者たちも使ってる。ほかの連中がこのダンジョンに気付く前に、さっさと攻略しちまうぞ。」

 

 ダンジョンの中に俺たちが入り、暫くすると広めの空洞に出た。広さ15メートル四方の正方形状の空間だ。

 そしてその空間の先には、一つの扉が設置されている。

 ダンジョンの中の扉には二種類あり、一つは階層ボスの間への入り口。もう一つは、ダンジョンコアルームへの入り口だ。新ダンジョンには通常の場合、階層ボスなど存在しないから、おそらくあの扉の先にダンジョンコアがあることになる。

 

「えへへへ、楽勝だったね。」

 

横から相棒がニマニマ笑いながら、話しかけてくる。

 

「ああ、なんつってもスラミーが数匹出てきただけだからな。」

 

 スラミーは最弱のモンスターとして知られている。粘性のある液体がアメーバ状に広がっているモンスターで、殆どまともな攻撃手段が無い上に速度も遅く、防御力も無い。10歳ぐらいの子供が、棒でつつくだけで簡単に殺せる。そんなスラミーの弱さは、進化してスライムになってもほとんど変わることはない。

 

 その程度の雑魚モンスターを数匹倒しただけで、ダンジョンコア‐金貨数百枚はくだらない高価な鉱物‐が手に入るなんて夢のようだ。しかも、ダンジョンコアを持ち帰ったものには、名声もついてくる。ダンジョンコアを持ち帰ればおそらく、地元の冒険者組合事務所には俺たちの銅像が飾られるはずだ。

「行くぜ、リリア」

 俺はそう声をかけると、前に一歩踏み出した。

 

 だが、

 

「うふふふふ。獲物発見。」

 

 突然、横手から女の声が聞こえてくる。

 

「なに!?」

 

 俺が剣を構えつつ声のしたほうを慌てて振り向くと、そこには超のつく美少女が立っていた。

 美少女は、肩のところで切り揃えられたボブカット風の黒髪に、血のように紅い髪飾りをつけている。

 スイカのように巨大な胸。雪のように白い肌に、くるりとした紅玉の瞳。

 その美少女の漆黒の服装は、胸元を大きくひらいており、スイカのような巨乳を存分に見せつけてくる。

 そのうえ、女の子が穿いている黒いスカートはあまりに丈が短く、太ももがほとんど露出して絶望的なまでに面積不足であり、ちょっと歩いただけで下着が見えてしまいそうなほど。 

 俺が今までに見た中で、文句なしに一番の美少女だ。その上、その美少女はとびっきり扇情的な格好をしている。

 

 さらに、俺がこれまで鍛えてきた、対象を観察しつつ周囲の警戒も行うという冒険者としての必須能力は、そんな巨乳美少女を睨み付けながら、自分の貧乳を見てため息をつく相棒の姿もまた捉えていた。

 

 超絶美少女の露出過剰な男をさそう格好を見るに、娼婦のようだ。

 

「しっかし、なんでこんなところに娼婦?」

 

 俺は、当然の疑問を口にする。

 

 同じ女でも、相棒のリリアとはえらい違いだ。リリアの胸は絶壁と言っていいものだし、その栗色の髪はバサバサだ。リリアの足はもともと太かったのだが、この数年の冒険者稼業でさらに図太くなっている。その上、母親譲りの低身長でがっしりした体格が合わさった結果、リリアは一見するとドワーフのような外見をしている。そんな相棒がスカートなんてはいた日には、俺のほうが絶望したくなる。

 などと、失礼なことを考えながら目の前の美少女の胸や太ももを眺めまわしていると、相棒の脛キックが炸裂した。

 

「イッテーッ!! 何しやがる!?」

 

「何バカなことやってんの!! あれはモンスターよ!!」

 

 脛の痛みに悶絶して蹲っている俺に向かって、相棒が怒鳴ってくる。

 

「モンスターだって!?」

 

 相棒に言われて、俺は目の前の美少女をよく観察する。可愛らしい顔、ピンと上を向いた巨乳、くびれた腰、肉付きのいい尻に、すらりとした脚。

 そして、その男の獣欲をたぎらせる躰を惜しげもなく晒す、余りにも卑猥で貞操をどこかに置き忘れたような服装。

 

「ふっ、何を言ってるんだ、リリア。どこからどう見ても、ただの娼婦の美少女だろ。いくら胸の大きさが段違いだからって、娼婦とモンスターを見間違えるなよ」

 

 俺の返答に相棒はがっくりとうなだれる。

 

「ただの、娼婦の、美少女が、一体全体何のためにダンジョンに潜ってんのよ!! 大体あんた!! その娼婦とやらが腰につけてる剣が見えないの!?」

 

 呆れたような口調で、相棒が突っ込んでくる。

 相棒に言われて俺がその少女の腰に注目すると、そこには確かに剣が差してあった。

 だが、単に剣を腰にさしているというだけでモンスターと判断するのは無理のような?娼婦が副業で、冒険者の真似事でもしているのかもしれない。彼はそう思ったが、口に出すのは止めておいた。

 

 目の前の少女がモンスターなら、殺して全く問題ない。それに、もしこの美少女が人間で冒険者の真似事をしているのだとしても、ダンジョンに潜っている以上は、少女もまたダンジョンコア狙いだろう。あんな高価な財宝を、他の冒険者に横取りされる訳にはいかない。である以上、あの美少女を始末するのが正解だ。

 始末したらついでに、あの柔らかそうなおっぱいと、締まりの良さそうな凹部を堪能しよう。あんな上玉、今後二度と遭遇しないだろうからな。

 頭の中で素早く算盤を弾いた俺は、美少女を始末するべく腰から剣を抜く。

 

 当然、目の前の美少女も同じようにこちらを殺す気でいたらしい。

 

「もういいかしら? 冥途の見上げに教えてあげるわね。あたしの名前は“逆髪の結羅(さかさがみのゆら)”。くすくすくす。あたしみたいな美少女の躰をたっぷり観賞して死ぬんだから、あんたたち、幸運よ?」

 

 そう妖艶に笑いながら言うと、結羅と名乗った美少女は、両腕を胸のあたりの高さにまで上げて、合掌の一歩手前のような恰好をした。

 その両手の指には、細い糸が巻きつけられている。

 

「うふふふふ。」

 

 少女が笑いながら指を高速で動かすと、少女の手から繋がっている糸がざわざわと蠢動を始めた。

 少女のその笑顔には見覚えがある。そう、その残虐な笑みは、小動物をいたぶって遊ぶゴブリンのそれと同じだった。

 

「何余裕ぶってんのよっ!!新ダンジョンのモンスターなんてどうせ雑魚でしょ!!」

 

 相棒が逆手で大型ナイフを持ち、美少女に突進する。

相棒は本気で相手をモンスターだと思っているのか? あるいは万一目撃者がいた時のためを考えて、モンスターと誤解している振りをしているのだろうか?

 

「その無駄にでかいオッパイを切り落として、フライにして食ってやるわ!!」

 

 相棒の本気の速攻だ。ほとんど影しか追うことができないその攻撃は、確実に少女を討伐するだろう。

 だが、相棒は途中で急停止したかと思うと、空中に浮かび上がる!!

 いったい何がと疑問に思ったが、よく見ると相棒の全身に、少女の指から伸びた糸が絡みついている。どうやらあの糸によって、体を拘束されているらしい。

 

「何が無駄にでかい胸よ。このピンと伸びた美乳の良さがわからないなんて。自分の胸が貧相だからってあたしに当たらないでほしいわ。」

 

 美少女はそう言って艶やかにほほ笑むと、右手の小指を軽く丸める。そうすると、相棒の体に巻き付いた糸が徐々に絞まっていく!!

 

「このっ!! このっ!! どうしてほどけないのよ!?」

 

 相棒が焦った声を上げながら、じたばたと暴れる。

 

「リリア!!」

 

 俺は相棒を助けるべく剣を構えて、彼女のもとへ向かう。

 

 だが、遅かった。

 

 相棒の、首にも、糸が、巻き付き、シュルっと、絞まる。

 

 相棒の、頭部は、あっさり、胴から、分離、する。

 

 ぼんっと、音を、立てて、相棒の、体が、地面に、落ちる。

 

 相棒の、首は、シュルシュルと、浮遊し、少女の、もとへと、向かう。

 

「あら、栗色の髪の毛なんて珍しいけど、髪の手入れはしていなかったのね。ぼさぼさじゃない。それにずいぶん痛んでる。ダメねえ、髪は女の命なんだから、きちんとお手入れしておかないといけないのに。」

 

 そう言いながら少女は、相棒の首を持ってあれこれ観察している。

 

「うふふふ。ちょっとだけ味見」

 

 そう言って少女は、相棒の首を一通り弄ぶと、首から滴り落ちている相棒の血を舐め取る。その姿はまるで、ご馳走を手に入れたゴブリンそのものだ。

 

 だが、

 

「何これ。世界が違くても、やっぱり人間は人間。なんて不味いのかしら」

 

相棒の血を舐め取った少女は、顔を顰め、ペッと吐き出す。

 

 なんてひどい奴!? 見かけは美少女のようだが、目の前の少女がやっているのは最悪の行為だ。相棒を笑いながら殺し、それだけでは飽き足らず、死体を弄ぶなんて!!

 

「貴様ああああああ!!! よくもリリアを!!!」

 

 

 

 そんな彼自身、金貨を独占するために、目の前の美少女を始末しようとしていたし、始末した後は美少女の躰を死姦しようとしていたのだが……。

 

 そんなことはすっかり頭から消え去り、相棒を殺された怒りに支配された彼は、美少女へと突撃する。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「貴様あああ!!! よくもリリアを!!!」

 

 そう叫びながら、剣を構えた男があたしに向かって突進してくる。

 その表情はひどく歪んでいて滑稽だ。きっと、一緒に行動していた女を殺されて、怒りに感情を支配されているのだろう。

 この男女の関係はどんなものだったのだろう。単に一緒にモンスター狩りをしていただけなのだろうか? それとも恋人同士? あるいは主人とその従者といったものだったのかもしれない。

 だが、もう終わった。女はすでに死んでいるし、男もすぐに後を追うことになる。

 

 というか、男は自分で気づいているのだろうか? あたしの姿を見て、男の一物が大きく膨れ上がっていたことに。そして女が殺され、あたしがその首を弄んでいるのを見たときには、その表情を怒りに染める一方で、腰の一物はその中身を一気にぶちまけていたことに。

 そう、男というものはなんて滑稽な生き物なのだろう。相手が美少女なら、相手が別の種族で、人間を殺して回っているにも鬼でも欲情するなんて。

 でも、それもここまで。

 

「ほーら、あたしの髪の毛があんたの首に巻きついたわよ?」

 

 あたしはそう言って、男を嘲笑する。

 

 後はその髪を引絞るだけで男もまた、女の後を追うことになる。

 

「うふふふふ。死になさい。」

 

 あたしが髪を引絞ると、憤怒に顔をゆがませた男の首が、あっさりと宙に舞った。

 

「さあて、髪の毛を回収しないとね。」

 

 あたしは、自慢の胸の谷間に手を伸ばすと、中から一つの櫛を取り出す。あたしの服は深刻な布不足で、ポケットのような収納スペースがないので、胸の谷間を小物入れに利用しているのだ。

 

「ふふふ。あんたみたいな貧乳女には、谷間を小物入れにするなんて想像もできないでしょ?」

 

 そう嘲りの言葉を掛けながら、地面に転げ落ちている貧乳女の頭部を掴むと、その髪を櫛でとく。

 

 ざわわわわ。

 すると、女の髪は、ひとりでに整列し一本の長い髪の毛になって、あたしの指から伸びている髪の毛のうちの一本に連結する。

 ヒュンヒュン。

 女の髪を軽く動かしてみると、問題なく制御できる。また、操作するときの感触にも違和感がなく、元世界の人間たちの髪と同じような感覚で行える。

 同じ手順で男の髪‐こちらはもとの世界で一般的だった黒髪だ‐も支配下に入れる。

 

 異世界での初戦果に、ゾクゾクする。

 後は侵入者たちの髑髏の回収だ。

 あたしがコレクションしているのはあくまで髑髏で、余分な肉など不要だ。もとの世界なら、いちいち肉を落とす作業が必要で面倒だったのだが、こちらではそんなことを気にする必要はない。

 

「モンスター達、命令通りにこいつらの肉を処分しなさい。」

 

 そうあたしが声をかけると、洞窟の隙間に隠れていたゴブリンやスラミー達がのそのそと出てきた。ゴブリン達は侵入者の死体を担ぐと、洞窟の入り口のほうからは死角になっている隠し通路に向かって運び始める。

 

 その通路の先には、ゴブリンの居住空間がある。

 侵入者の肉の解体作業はそちらでやらせる。そして、肉については居住空間内の食糧庫に貯蔵し、肉処理が終わった髑髏はあたしの部屋の中に入れコレクションに加える。

 これは、死体の解体作業をいちいちダンジョンの迷宮部分で行っていては迷宮部分がすぐ一杯になってしまうためと、別の侵入者に死体を奪われないようにするための措置だ。

 

 

『ピロピロリン』

 

 あたしの頭の中で、直接音が響く。一瞬身構えたが、これは敵を撃破してダンジョンポイントが入ったことを知らせる音だということが、ダンジョンマスターとしての知識からわかる。

 あたしが、メニュー画面(これも前の世界にはなかったものだ)のダンジョンポイントの記録を確認すると、女を殺したことによるダンジョンポイントが50ポイント、また、初回撃破ボーナスとして1000ポイント入っている。

 他に、男を殺したことによるダンジョンポイントも50ポイント入っている。

 こちらの損失としては、スラミーが3匹なので、その創生にかかった30ポイントを失ったことになる。

 つまり、今回の侵入者撃破で1070ポイントを得たことになる。

 ダンジョンポイントの初期値が2000ポイントだったことを考えると、かなりの収穫のようだが、このうち1000ポイントは初回撃破ボーナスであり、次回以降は存在しない。

 つまり、実質的には70ポイントしか得ていないことになる。

 これに、雄ゴブリン創生に必要なコストが50ポイント、雌ゴブリンの創生には150ポイント必要であることを考え合わせると、ほとんど大した収入ではない。

 

 ダンジョンポイントを貯めるためには、もっともっと沢山の侵入者たちを殺さないといけない。

 収入を増やすにはどうしたらいいか?

 簡単だ。

 あたしがここで侵入者を待ち伏せさせればよいのだ。

 人間たちを嬲り殺しにして楽しむ一方、ダンジョンポイントも増えて自身の強化もできる。そして獲物の肉の処理は、モンスター達に食べさせていればよい。

 あたしがそう考えている間に、ゴブリン達はすべての死体を運び終え、さらに、スラミー達が残った小さな肉片と床についた血糊を舐め取り終ったようだ。

 

 あたしがいったん部屋の中に戻ろうとすると、

 

『ビー、ビー、ビー。』

 

と、あたしの頭の中でまた音が響いた。これは、侵入者の存在を知らせるためのものだ。

 

「うふふふふ。早速次の獲物ね。モンスター達は巣に戻っていなさい。侵入者の相手はあたしがするわ。」

 

 

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