※この作品はR-18です。

逆髪の結羅、異世界へ降り立つ   作:nenenene

5 / 5
ゴブリン

 

「あら、もう夜になったの?」

 

 あたしは、そう疑問を口にする。今日は、ダンジョンを開通したばかりだったけど、予想外に次々に人間達が侵入してきて、随分忙しかった。人間は昼行性の生き物だから、日が落ち夜の帳が辺りを覆った後は、暇が出来るだろうけど……。

 

 人間を殺すのが楽しくて、あたしがずっと前線に出て戦っていたけれど、今後はある程度配下のモンスターに任せた方がいいかもしれない。でもそうすると、初期状態で生成できるモンスターは全て貧弱なため、ある程度はやられてダンジョンポイントが赤字になるかもしれない。しかし、いくらあたしが鬼で疲労を感じないからといって、これから毎日毎日同じことをし続けると考えるのは億劫だ。確かに人間を殺すのは楽しいが、それにも限度がある。

 

 さて、どうしようか?とりあえず、メニュー画面を開くことにする。

「メニューオープン」

 そのコマンドを合図に、視界の中に半透明の板が浮かび上がる。

 

『基本情報』

『ダンジョン地図』

『ダンジョン内映像』

『ダンジョン作成』

『創生可能モンスター』

『モンスター図鑑』

『モンスター創生&強化』

 

 

 そこに書かれているのは、この項目のみ。

 一番上の、『基本情報』の部分をふれると表示が変わり、

『基本情報』

名前:逆髪の結羅

種族:デーモン

職業:ダンジョンマスター

 階層数:1

と表示される。

 

 表示される情報は以前に確認した時と同じ。まあ、これは当然の結果であろう。あたしは今回侵入者を撃退しただけで、階層を増やしたり、職業を替えたりはしていないのだから。

 それにしても、この表示欄はどうなっているのだろうか? 種族名が勝手に変えられていて、鬼のはずがデーモンになっている。同じと言えば同じなんだろうけど……何だか馬鹿にされているようで不快だ。

 

 ……考えても意味がない。

 あたしは軽く首を振ると、元の画面に戻り、次は『創生可能モンスター』に視線を移す。

 

『創生可能モンスター』

モンスター名:創生時消費ポイント数

 スラミー:1

 スライム:2

 青スライム:5

 緑スライム:5

 赤スライム:5

 

 白鼠:1

 黒鼠:2

 大鼠:2

 鼠鳥:3

 

 毛百足:2

 緑百足:3

 大百足:5

 青百足:8

 黒百足:10

 大王百足:12

 

 ゴブ:10

 ゴブリ:15

 ゴブリム:25

 ゴブリン(雄):50

 ゴブリン(雌):150

 ハイゴブリン(雄):120 new

 ハイゴブリン(雌):300 new

 

 ゴースト:100 new

 

 スケルトン:120 new

 

 こちらには変化がある。

 いつの間にかハイゴブリンとゴースト、それにスケルトンが項目に増えている。ハイゴブリンは名前からするとゴブリンの上位種のようだけど……。念のために、モンスター図鑑で確認する。

 

『ハイゴブリン』

 ゴブリンの上位種。ゴブリンに比べて屈強だが、消費するダンジョンポイントが多い。

 

 相変わらず情報が少ない。図鑑は、ダンジョンの規模が大きくなるにつれて記載される情報量も多くなるようなので、今のところは、こんな物なのだろう。とは言え、これでは何もわからないのとほぼ同じだ。

 ゴブリンよりも屈強といっても、どれ位強くなっているのか?唯のゴブリンは、あたしよりもかなり弱かったけど……。

 一匹だけ創生して、試してみるべき?

 

「だめね」

 

 一瞬考えるがすぐに否定する。どれ位強いのかは知らないが、50ポイントも消費するゴブリンでさえ、タダの雑魚だった。それの上位種といっても、たかが知れている。単なるダンジョンポイントの無駄使いになるだろう。

 

 ゴーストとスケルトンは、不死族系のモンスターだろう。スライムやゴブリンは元の世界にはいなかったが、これらの妖魔は元の世界でもごく普通に存在していた。基本的には低級で殆ど強くない。寧ろゴブリンの方が強いぐらいだったことを考えると、創生してもダンジョンポイントの無駄にしかならない。

 

 そんなふうにあたしが考えていると、

 

『ビー、ビー、ビー』

 

 またも侵入者警報が鳴る。

 昼行性の人間は夜間に外出すること余りないはずなのに……。『ダンジョン地図』を使って、侵入者の確認をすると、地図内の入り口付近を4つの赤い点が奥へと進んでいるのがわかる。さらに『ダンジョン内映像』で確認すると、侵入してきたのはダンジョン外のゴブリンであることがわかる。

 確かに、ゴブリンは昼も夜も行動するから、人間が居なくなればそこにゴブリンが入り込むことは可笑しくない。

 対応するのは面倒だ。

 

 でも、

「好都合」

 あたしは舌舐めずりをする。外のゴブリンを捕獲して配下にしてしまえば、ダンジョンポイントの消費抜きに軍団を形成できる。

 

 

☆☆☆

 

 

 逆髪の結羅が、ダンジョンコアルーム前の広間でゴブリン達を待ち構えていると、程なくして緑色の小人達が姿を現す。尖った耳に、禿げた頭に、醜悪な顔。手足はガリガリで骨と皮だけのようだが、その反面、お腹はデップリしている。元いた世界にはいなかった種類の妖魔――こちらではモンスターと呼ぶらしいけど――ゴブリンだ。数は先ほどダンジョン地図で確認したのと同じ四匹。

 

「「「「ギャ!ギャ!ギャ!」」」」

 ゴブリン達は結羅の姿を認めるや否や、全力で結羅に向かい疾走する。その瞳は獣欲に黒く淀み、口からは涎を垂らす。また、ゴブリン達の三匹は裸でボロキレすらも腰に巻き付けておらず、その巨大化した凸部が丸見えになっていた。残る一匹は伽藍を巻いているので、直接生殖器は見えなかった。だが、そこがテントを張っている以上、その下がどうなっているかは明白だ。

 何て醜い。

 結羅は、そんなゴブリン達の様子に不快感がこみ上げる。

 

「いくらあたしが美少女だからって……。下劣ね」

 

 結羅は顔を歪めるが、彼女は寛大な精神の持ち主だった。

クイ。クイ。

 僅かに左手の小指を動かすだけで、ダンジョンに張った髪を操作し、ゴブリン達を捕獲する。ゴブリン達は拘束を解こうともがくが、ゴブリン程度の力では抜け出せない。その後は、先程と同じ要領。

 

「あんた達、あたしの下に就きなさい。功績次第ではあたしを上げてもいいわ」

 

 そう言って妖艶な笑顔を向け、スカートをたくし上げる。

 

「「「「ギャ!ギャ!ギャ!」」」」

 

 ゴブリン達は、結羅のそんな姿を見て増々興奮する。だが、どうにか拘束を解いて結羅を犯そうとますます激しくもがくだけ。結羅の下に就く気はなさそうだ。

 

 

「というより」

 

 結羅は呟く。言葉が分からない。

 これは当然だ。結羅の元いた世界にゴブリンなんて居なかったし、そんなモンスターの言葉が分かるはずもない。自分が創生したモンスターの言葉はわかるが、これはダンジョンマスターの特典みたいなもの。人間達の言葉を理解可能なのは謎だが……。こちらの世界は元の世界とは大分法則が異なっている以上、あまり考えてもしょうがない。

 

 それよりも、もっと重大な問題がある。それは、あたしに従うどころか、強姦しようとしている目の前のゴブリン達だ。

 

「死になさい」

 

 そう言って結羅は、ゴブリン達を拘束している髪の毛の拘束を強める。

「「「「ギギャ!?ググギ?!」」」」

 髪が絞まり、ゴブリン達の体が少しずつばらけていく。

 

 あるゴブリンはまず左手が切断され、次に右足。

「ギギガガ!!グェ!!」

さらに左足、右手と続き最後にゆっくりと首を落とされる。

 

 他のゴブリンは両手の八本の指を順番に切り落とされていく。

「ゴギガガ!!?ゴギャ!!」

 それが終わると、今度は足の指。それも終わると、足の先からゆっくりと少しずつスライスしていき、大腸のあたりまで切断したところでショック死する。

 

 またあるゴブリンは両眼に髪が食い込み、目玉がつぶれる。

「ゴギャアア!!」

 そのまま目玉を潰した髪の毛は頭骸骨の中に侵入し、中からゴブリンの脳味噌を掻き混ぜる。

 

 最後のゴブリンは、股間の凸部に巻きついた髪に膀胱を潰され、情けない悲鳴を上げる。

「ガガガガ!!」

 その開いた口から侵入した髪の毛が、胃や腸、膵臓を無茶苦茶に破壊する。破壊された消化器官からは消火液が漏れ出ていき、その哀れなゴブリンは自分の消化液で自分の体を溶かされ、死んでいく。

 

 そうやってゴブリンを嬲り殺した結羅は、恍惚とした表情を浮かべる。

「いい気味。美少女に恥を掻かせるからよ」

 ゴブリンのように汚らしい妖魔が存在していいのは、あたしに従っている時だけ。汚らわしいのに加えて、あたしに従わない何て……そんなものは存在する価値もない。

 

「モンスター達。こいつらも片付けなさい」

 そう指示を出すと、今度こそ残っていた男の死体から髪の毛を回収し、結羅はダンジョンコアルームに戻る。

 

 

 

☆☆☆

 

 ダンジョンコアルーム

 

 そこに戻った結羅は『ダンジョン内映像』を使って、先ほど殺した野良ゴブリンの回収作業を監視していた。

 

「ギャ!ギャ!」

「ギギ!!」

 

 配下のゴブリン達が、侵入者してきた野良ゴブリンの死体を回収していく。その姿からは、同族を殺したダンジョンマスターへの恐怖や怒りは見受けられない。結羅は、もしかしたら同族を殺した主人に反逆するゴブリンが出てくるかもしれないかもと思って警戒していたのだが、そのは杞憂に終わりそうだった。

 結羅の観察する限り、配下のゴブリン達は、野良ゴブリンを単なるものとしてか認識していない。

 まあ、元の世界でも、知能の低い低級妖魔は平気で共食いをしていたし、高い知能を持つ上級妖魔でも、同士討ちをするものは大勢いた。そのことを考えれば、違うコミュニティーに所属する同族を歯牙にもかけないというのはそれほど不思議なことでもない。寧ろ普通だ。

 

 そう一人で納得した結羅は、『ダンジョン内映像』を切る。すると結羅の視界が通常のものに戻る。

「?」

 結羅の目の前に、三体のゴブリン。

彼らの入室を許可した覚えはない。なぜここにいるのか?一瞬、警戒していた反逆を企てる個体が出てきたのかとも考える。だが、ゴブリン達は無防備で、反乱が目的でないのは見ればわかる。

 

「何?」

 考えてもわからいと判断した結羅は、本人達に直接誰何する。

「ギ!ギ!ギャギャ!ギ!ギギャ!!ギギガ!!」

 中央の妙に筋肉が発達して、ごつい外見をしたゴブリンが返答する。

 

 こんなゴブリンいたかしら?

 少しだけ疑問に思う。ただ、ゴブリンは成長が早く2,3日で様態から成体にまで発育するものらしいから……単に成長しただけなのだろう。

 

 それはそうと、ゴブリンの回答だ。

「外に出たい?」

 それは意外な内容だった。しかも外に出る目的は、外部のゴブリンの集落を支配下に入れて、ダンジョンの戦力を強化するというもの。すでに一度、結羅がそれをやろうとして失敗している。

 一度失敗したものをもう一回試すよりも、単純に野良ゴブリンを殺してダンジョンポイントにしてしまった方が得では? 結羅は自問する。

 

 だが、

「いいわ。好きにしなさい」

結局は許可を出す。

 良くも悪くも結羅は鬼であり、自尊心がかなり高い。そのため、ゴブリン等というのは正直かなりどうでもいい存在だった。そして、どうでもいい存在である以上、やる気のあるゴブリンが外に出ようと出まいと、仲間集めに成功しようと失敗しようと、別にどちらでも良いのだ。

 勿論、ゴブリン全てが外に出るという話ならば、結羅も許可しなかった。ダンジョンポイントはそれなりに貴重なのだ。しかし、三体程なら失敗して野垂れ死んだとしても、どうということはない。成功すれば、儲けもの。

 結羅にとって、その程度の話だった。

 

 

 

 

 こうして、三体のゴブリンが外の世界へと旅立つことになった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。