セラフィナ=メルヴ=アトラクシア。
親しい者からは『セラ』と愛称で呼ばれる、聖獣の伴侶となるべく箱入りで育てられた深窓の姫君。
民のために身を捧げた、心優しくも儚げな美姫。
たまに市井に出た際にはそんな風に遠巻きから眺める民衆から噂される少女は。
「うわぁ……ねえミリア、この服えっちすぎない?」
……案外と、楽天的な性分の少女だった。
そんなセラがしきりにスカート丈を気にしながら摘んでみたりして興味深そうに眺めている、現在纏っている衣装は……ギリギリ大事な場所は透けていないと言った風情の、丈の短い夜伽用の装束。
当然ながら、王族、それも聖獣様への捧げ物としてその純潔を最重要視されていたセラに、他者の劣情を煽るような装いが許されるわけがない。
このような胸元や背中、太腿が露わになるような衣装を纏うのは、もちろんこれが初めてだ。
最高級の素材で仕立てられた、しかしまるで夜街の娼婦が着ているかのような扇状的な衣装を興味津々といった様子で確かめて、そんな砕けた口調で感想を述べていた。
「言葉遣い。はしたないですよ、姫様」
「そんな固いことはいいじゃない、今はこの館に、私たち以外の誰もいないんだから」
どうせ、長い付き合いであるセラフィナ姫付き筆頭侍女であり、セラにとってはもう一人の姉みたいな存在である彼女……ミリアには、セラの人目がない場所ではぐうたらになる本性など全てバレている。
今この場所には、いつものように優しげな微笑みを浮かべて淑やかに話さなければ幻滅されるような相手など、誰もいないのだ。
「それにしても、誰も居ないのね」
「まあ……聖獣様とセラフィナ姫様の神聖な儀式の場になりますので、全ての者は退去していますからね」
現在セラたちが居る、この聖獣様の寝所……とは違う、御子を産み育てるためにと供犠の姫のため用意された離れの館には、いつもならば管理運営している神官や侍者たちがいる。
しかしこの日はそうした者たちも全て人払いされており、シンと静まり返っていた。
「……そっか。もう、今日なのよね、私が聖獣様の御子様を授かるお役目に就くのは」
これまで明るく振る舞っていたセラの言葉に、震えが混じる。
いかに楽天家とはいえ、セラはまだ年端もいかぬ少女だ。たとえいくら覚悟して来たとはいえ、この数日中にはもう、人ならざる仔を自らの胎に宿し育むのが決まっているというのが、怖くない訳はない。
そして、それはミリアもよく理解している。だからこそ……彼女はセラが躊躇って不安に押しつぶされぬよう、淡々と物事を進めていく。
──私が迷いを見せても、あなたは全部無視して事を進めて。
それは事前にセラ自身が彼女に頼んだことでもある。故に。
「では……セラフィナ姫様、僭越ながら筆頭侍女であるこのミリアが、姫様の純潔を確認を行わせていただきます。そちらの椅子に膝を抱えて座り、秘所を見せてくださいませ」
ミリアの言葉に、ひくっと口元を引き攣らせたセラが顔を赤く染める。
入浴などいつもやってもらっている身であり、裸など全て見られている関係ではあるが、さすがにこれは恥ずかしい。
「えぇと……本当に、その、調べないとダメ……?」
「はい、決まり事ですから」
「でも私に、何者かに純潔を汚される余地なんてどこにあったかしら……」
釈然としない様子で、セラが首を傾げる。
思い返してみても、セラにはそもそも聖獣様の番として身を捧げることが決まって以来、全く一人になった記憶がない。
セラのそばには常に最低二人以上、身の回りの世話をする侍女が控えており、外出時などはそれこそ男など父と兄の二人以外は近くにすら寄ることも許されない徹底ぶりだった。
更には選抜された女性による近衛たちが、ずっと一定範囲内に付きっきりで護衛に当たっていたのだ。
それも全て、この日、聖獣様に捧げられる日のために。
「えぇと、これでいい?」
椅子の上へと腰掛けて、膝裏を抱えるようにして足を座面に載せる。
ただそれだけで、元々「そういう目的」の服であるために下着など身につけていなかったセラの秘唇が容易に姿を見せる。
申し訳程度にほわほわとした産毛がある程度の、幼いとも言えるほとんどピッタリと閉じた淫裂には、小陰唇のはみ出しはほとんど見えない。王女という肩書きに相応しく、清楚な佇まいの女性器だ……もっともセラ本人としては、入浴の手伝いをしてくれていた際に見える侍女たちのものと比べると幼いように見えるその場所が、微妙にコンプレックスだったのだが。
ミリアは露わになったそのすぐ前に跪くと、そっと固く閉じられていた幼い淫裂の左右に指を掛ける。
「それでは姫様、失礼します」
「……っ」
くぱ、と割り開かれる秘唇。内部に隠されていた、色素の薄い女性器が露わになる。普段ぴっちりと守られている場所が外気に晒されて、ピクっとセラの肩が震えた。
せいぜい、入浴時にそっと洗う程度の場所。
自分でさえまともに見た事すらないその場所を、いくら最も信頼している侍女とはいえ他者にまじまじと確認されているという事態に、羞恥で顔に熱が集まってくるのを感じていた。
外側をざっと確認し、僅かに膣口を開き……やがてミリアは頷く。
「……問題ありませんね」
「あ、当たり前でしょう……も、もういいのよね?」
「いいえ、この後の準備がありますので、今しばらくそのままで」
「そんなぁ」
ようやくこの恥ずかしい仕打ちから解放されると思いそそくさと座り直そうとしたセラだったが、すぐにミリアに制止される。
少し涙目になっているセラを他所に、ミリアは絹の手袋を嵌めると、何やらここまで携えて来ていた小さなバッグから瓶のような物を取り出して、蓋を開封していた。
「……それは、何?」
「この場に勤めている神官たちが、セラ様がせめて少しでも辛い目に合わないようにと用意した薬液ですよ」
「薬液?」
「痛みを麻痺させ、快感を増大させる薬だそうです。あとは……潤滑を良くする役目ですかね」
つまり、媚薬だ。それとまぐわいの際に女性の負担を減らすためのローションの役割もあるらしい。
「はぁ……そんな物を持ち出されると、嫌でもこの後何があるか実感してしまいますね……」
「まあ、仕方ないかと。姫様は乙女なのですから、準備も無くお役目に臨んでは辛い目に逢うだけですよ」
そう言って、ミリアは手袋を嵌めた右手で瓶の中身を掬い取る。
色は薄い紅の混じった透明、とろりと蜂蜜くらいはありそうな粘度を帯びた瓶の中身。ミリアはそれを軽く指先でねぶって滑り具合を確かめると……。
「……ひぁ!?」
ドロっとした軟膏の冷たい感触と、すべすべとした絹手袋に包まれたミリアの細い指の感触が、薄くデリケートなセラの幼い秘唇に触れる。
急な刺激を与えられたセラの口から艶っぽい声が漏れた。セラは自分が発した声の恥ずかしさから慌てて手で覆い、声が出るのを我慢する。
「んっ……な、なんだかムズムズする……」
軟膏が塗布された場所が、じんわり熱を帯びていく感触。
戸惑いを見せるセラだったが、しかしその間にも襞の隙間一つ一つまで塗り込もうとするかのように動くミリアの指。セラを労っての優しいその手付きが、酷くもどかしい。
「……っ、……ふっ、…………んんっ」
そして……じんわりと、しかし着実に熱を帯びていく秘唇。
これまで無垢だった花弁が強制的に開花されていく感覚。
意思に反しピクッ、ピクっと両足が椅子から浮き上がり、食いしばったセラの口の端からは堪えきれなかった吐息が断続的に漏れ始める。
「……ひゃん!?」
やがて、ミリアの指が、ここまでの流れで充血しはじめ、可愛らしく包皮から頭を覗かせた淫核に触れた瞬間──セラの口からこれまで我慢して来た嬌声が漏れたのと同時に、ビクッとその体が跳ねる。
「あ、あの……ンッ、そこ、だめ……ッ!」
執拗に舐られる肉芽からの激しい快楽に、セラにいよいよ余裕がなくなっていく。そして……。
「あっ……あっ、だめっ、なんかだめ、来ちゃう……キちゃ……くぅんんンッ!」
必死に口を両手で押さえて、これ以上恥ずかしい声が漏れぬよう我慢するセラ。
初めて軽い絶頂を体験した少女は、やがて快楽の波が少し引いていくのに合わせ、ぐったりと椅子の背もたれに体を預ける。
とろんと蕩けた目で、虚空を見つめるセラ。その口の端をツッ……と溢れた唾液を指で拭いながら、ミリアはいつもの鉄面皮を微かに恍惚に染め、ボソッと呟く。
「……ふふ、お可愛らしいですよ、姫様」
「はっ……はっ……え、ミリア、何か言った……?」
「いいえ、何も」
しれっと言いながら何事もなかったように元に戻り……セラの膣口全体に軟膏を塗布し終えたミリアが、先ほどの鞄から新たな物体を取り出していた。
それは、かなりの大きさのある、ガラス製のシリンジだ。その先端に針は無く、代わりに硬めの樹脂製のチューブ、そして先端と側面にいくつもの小さな穴が空いている、膣内を傷つけないようにするためであろう丸みを帯びた先端を持つガラス管がセットされている。
「い、挿れる、の……?」
すっかり充血して物欲しげにひくひくと蠢動し、とろとろと愛液を溢れさせ始めているセラの秘裂へと入り込むべく、細めの試験管のような形状をしたガラス器具が近づいてくる。
その光景に、セラは普段とは全く違うか細い不安げな声を漏らす。
そんな不安に瞳を揺らして見つめてくるセラを安心させるように、ミリアは優しい声色で語りかける。
「大丈夫です、細いガラス管ですから隙間に十分通ります、絶対に姫様の純潔に傷つけるような真似はしません」
「それは、信じているけど……ひんっ」
ちゅぷ、という微かに湿った音と共に、すっかり敏感になって微かに綻びをみせていたセラの狭隘にガラス管の先端が触れた。
その、すっかり濡れそぼり熱を帯びた粘膜との温度差からくるガラス管の冷たさに、セラは思わず小さな嬌声を上げる。
「は……は……はっ……ぁ……」
セラ自身から分泌され溢れてきた液体を塗布して中に侵入するための潤滑剤にするべく、秘裂の入り口付近をこねくり回される、ガラス管の丸みを帯びた先端。
一方で、未だ何も受け入れた事のない場所に侵入されるのだという予感に、セラは緊張から細かく浅い呼吸を繰り返す。
そのまま、充分にガラス管がぬめりを帯びたところで……ガラス管がつぷりと秘裂を掻き分けて膣内へと進み、乙女の狭隘をさらに狭めている純潔の証、その隙間からぬるりと差し込まれた。
「〜〜〜〜ッ!?」
体内に異物が挿入ってくるという感触に、思わず反射的にぎゅうっと目を瞑るセラ。
そんなセラの戸惑いなど無関係に、ガラス管はすぐに、あまり深くない最奥にある、これから仔を宿す事になる部屋の入り口へと到達した。
「それでは、少し我慢してくださいね」
ミリアは一言断りを入れると、器具のピストン部分をゆっくりと押し込み始めた。
セラの膣口に埋没した棒、その全方位にいくつか設けられた穴から、シリンジの内容物である軟膏が膣内最奥へ一気に塗りたくられていく。
「は、ぁ……あぁぁああんッ!?」
膣内、そして子宮入り口に吹き付けられる粘液の感触に、これまで必死に恥ずかしい声を上げるのを堪えてきたセラも、たまらず嬌声を漏らす。
どろりとした液体は膣内から溢れてくることもなく、先ほどまでとは比べ物にならないくらいの熱が、セラの胎内から発せられていた。
「まっ……て、ミリア、これ……やだ……っ」
「我慢してください、きっと無いと後が辛いですよ」
たまらず懇願するセラだったが、しかしミリアはそんなセラの頭を落ち着かせるように撫でてくるだけで、手を止めるようなことはしない。
やがて……シリンジの中に結構な量があったはずの軟膏が全てセラの胎内に納まってしまったところで、ようやく器具が膣内から抜き取られた。
「はあっ……はあっ……、うう、お股が中までヌルヌルしていて気持ち悪いです……」
気を抜けば意識を持っていかれそうなほどの胎に灯った熱に、湿った吐息を吐き出しながら、ようやく脚を崩して座り直すセラ。そんな動き一つ取っても、鋭敏にされてしまった感覚は膣内に居座る粘液の存在を克明に伝えてくる。
その胎内でずくん、ずくんと甘ったるい疼きを発する器官が、否応なしにこれまでの生活には戻れないほど決定的に変わってしまったのだとセラに思い知らせていた。
「それでは……姫様、私はこれで失礼します」
「え……えぇ、そう……ね」
後片付けを手早く済ませて、お役目の邪魔にならぬよう併設された使用人の棟へ退出しようとするミリア。
思わずその背中に声を掛けたセラだったが、彼女はそんなセラの方へと振り返ると。
「ちなみに、明日の朝食で何かリクエストはございますか?」
「えっと……ベーコンエッグがいいわ、黄身がトロトロのやつ」
「承知しました……支度は少し遅めに行いますので、朝はどうぞごゆっくり」
若干悪戯っぽい表情で告げて、退出していくミリア。
全くもう、と少しだけ苦笑したセラは、次に窓の外へと視線を移す。
どうやら、思っていたよりも時間が経過していたらしく、外の空はもう既に赤を通り越して黒に変じつつある。
──もうじき、陽が落ちる。
聖獣様が活動する時間は、日没後から日の出まで。セラが『供犠の姫』のお役目を果たすべき時は、もうすぐそこまで迫っていた。