BL描写もあります。何でも許せる方向け
お昼時の喫茶店にカランとドアが開く音がする。
「いらっしゃいませ!山岸くんお疲れ…!」
「飯田お疲れ!おなか減った…」
やってきたのは黒髪にスーツと爽やかな見た目をした一流企業に勤めるサラリーマン・山岸高成。彼を出迎えた黒髪ボブの喫茶店の女性スタッフは飯田里帆という。
「はい。お冷です。こちら今日の日替わりランチになります。」
「あっミートソーススパゲティ!いいね、これにします。」
高成は里帆にそう告げて注文すると里帆は厨房へと消えていった。
「ミートソーススパゲティでーす」
料理を作るのは喫茶店のマスター、高成より小柄だが体格はしっかりとしている中年の男性である。いつも汗をにじませながら手早く美味しい料理や飲み物を用意してくれる。
…実は。里帆曰く彼女はこのマスターと肉体関係にある。聞けば喫茶店のマスターは奥さんと喧嘩し、彼女が出て行ってしまい憔悴していた所急激に仲が進展したのだという。
そんな里帆がマスターに穢されていく様子を里帆から聞き、妄想しながら1人快楽に溺れていくのが高成の最近の姿であった。
彼は里帆が自分以外の男達に穢されていく様子に快楽を見出していた。
しかしこの話はそれだけではない。なんと里帆が高成へ話している自身が犯され穢される話は、全て里帆の妄想であり、創作…作り話である。勿論マスターとの関係も里帆の作り話であり、実際はマスターは今もなお奥さん(妻)とはラブラブの関係で、2人3脚でこの喫茶店を支えていっている。里帆の生み出した妄想に高成がさらに妄想を重ねるこの関係は、高校時代からのものだ。
2人の関係についての説明はここまでとして、話を喫茶店へと戻そう。高成の注文を受けた里帆は厨房へその旨を伝えると、マスターは用意に取り掛かっていた。
するとそのタイミングである女性が厨房の中へとやって来る。
「あなた~!!ミートソースもう無いわよ~!」
「なんだって!?うわ、ほんとだ…」
マスターは寸胴鍋のふたを開けて中を確認するもミートソースは空である。彼は汗を垂らしながら急いで厨房を出て高成の元へ駆け寄ると頭を下げた。
「申し訳ありません。ミートソースがもう品切れになってまして…」
「いえいえ、じゃあどれにしようかな…カレーライスに変更で」
「かしこまりました。ご準備いたしますのでもう少々お待ちください。」
そんな中、傍で会話が聞こえてくる。奥の席に座っている年配の女性3名がマスターの妻となにやら話しているようだ。
「そういえばご主人さんと仲良いんですって?」
「ええ。喧嘩なんて結婚してから一度もしてないわ!」
「あらまあ!じゃあ…夜も?」
「勿論!週1は必ず…ね!」
「まあ~!!うらやましいわ~私なんかもう20年はご無沙汰よ~」
里帆の話ではマスターとは喧嘩して出ていったという事を聞いている。しかしマスターの妻が語る内容は里帆の話とは真逆である。
(…?どういう事?なんか飯田から聞いた話と違うぞ?)
高成がカレーライスを食べながら思考を巡らせている間、里帆はこれはまずいと内心冷や汗をかき始めていた
(どうしよう…どうしよう!嘘だとばれちゃう…!山岸くんに失望されたらどうしよう…!)
カレーライスを食べ終わった時。丁度高成のスマホが鳴る
「もしもし、お疲れ様です」
「山岸くん?今昼食かしら」
はいそうですけど…と高成が返すと、電話をかけた主は急がなくていいから終わり次第戻るようにと告げる。
高成は伝票と荷物を持ってレジへ向かうと、マスターの妻が会計をしてくれた。
「あなた里帆ちゃんと仲良いの?」
「あっ…まあそんな感じですかね」
「そうなんだ。じゃ、お仕事頑張ってね」
会計が終わると急いで喫茶店を後にした。里帆は高成の背中を遠くから眺めていた。
「山岸くん…」
会社へと戻り、指定された場所へやって来た高成は、ドアをノックし、部屋に入る。
「山岸です。部長、ただいま戻りました。」
「どうぞ。」
部屋へ入った高成を出迎えたのは170㎝ほどある長身の美女だった。黒い髪は襟足がぎりぎり見えるか見えないかくらいの長さに切りそろえられたワンレンショートヘア。黒いパンツスーツに黒い眼鏡姿は知的な印象を与える。すらりとした長い手足に値は90超えという豊かな胸と尻のダイナマイトバディが、これでもかと高成の目に飛び込んでくる。
彼女の名は菊川ローザ。部長職を務めており高成の直属の上司にあたる。。名前の通り父はアメリカ人のハーフである。
東京大学出身の彼女は頭脳明晰で仕事も気遣いもできる、まさに(表向きは)理想の上司と言ってよい人物だろう。そんな彼女だが、ある特殊な性癖を持っていた。
「さあ座って。」
「…はい。」
「じゃあ、始めて。」
「はい。」
ローザの性癖、それは男がオナニーをするのを真正面から眺める事だった。男が快楽に歪む顔をもっと見たいというのが彼女の快楽でもあった。勿論彼女はこれまで男に抱かれた経験は何度もあるが、やはり男が快感を感じる姿を眺めるのは格別なのだという
「今日は誰をおかずにするの?飯田さん?」
ローザは里帆の存在も高成から聞いているため知っている。高成ははい。と頷き早速ローザに言われた通りに自慰行動を始めた。
「はあっ…」
高成の脳内では里帆が変わるがわる様々な男に犯される映像が流れていた。
「どう?どんな感じ?」
ローザは腕を組み高成の様子をじっと眺めている。高成の脳内では喫茶店のマスターに里帆が抱かれる妄想に入ろうとした時、先ほどの客とマスターの妻が放った言葉がそれぞれ浮かび上がる。
「そういえばご主人さんと仲良いんですって?」
「ええ。喧嘩なんて結婚してから一度もしてないわ!」
「あらまあ!じゃあ…夜も?」
「勿論!週1は必ず…ね!」
「まあ~!!うらやましいわ~私なんかもう20年はご無沙汰よ~」
(あ…もしかして、これ…どちらかが嘘ついてる…?)
高成の動きが止まった。それを見てローザは異変を察知する
「どうしたの?手が止まっているわよ?」
「あ…」
この時。高成は胸の底で一瞬、ある仮説にたどり着いていた。
(奥さんは喧嘩した事無いって言ってた。もしかして、飯田は嘘をついてる…?本当は、あの人とはそういう事した事無いんじゃ?)
「しくん…山岸くん!」
「!」
ローザが高成を呼ぶ声に、高成はなかなか気づけなかった。高成はすみませんと謝ると、ローザは息を吐いて彼に近寄る。
「…とりあえずさっさと終わらしましょう。時間は限られてるし」
そう言ってローザは高成のそれを一気に口の中へほおばると、ずるずると音を立てて吸ったり舐めたりを繰り返す。
「あっ…」
既に快楽の奥へとたどり着いていた為か、わりとすぐに高成は絶頂を遂げた。ローザは白濁液を綺麗に舐めとる
「じゃあ、午後も頑張りましょう。」
ローザはそう言って部屋を後にする。高成も彼女についていくのだった。
夕方。仕事も終わり、珍しく残業も無かったこの日。高成は定時で退社できたのだった。ローザらへ挨拶をして会社のフロアに行くと、こーちゃん!と呼ぶ女性の声が聞こえてくる
「立花さん!お疲れ様」
「お疲れ様です。また明日も頑張ろうな」
高成に声をかけた黒いスーツ姿の女性の名は立花秋華(たちばな しゅうか)。高成とは同じ大学出身でその頃からの縁である。茶髪に短いボブヘアと眉が見える程短い前髪に丸い大きな金縁の眼鏡をかけている。
秋華の持つ独特な雰囲気はやはり里帆や上司のローザらとは全く異なっている。
「あっそや!これ言おうと思うとった!!こーちゃん土曜日暇?」
「ああ、暇だけど…」
「久しぶりにどっか遊びに行かん?最近うちも忙しかったき、中々誘えんでごめんと思て」
「じゃあ、行こっか」
秋華は嬉しそうにやったーと言うとじゃ、また明日なーと言って去っていった。ちなみに彼女のこの独特なしゃべり方は、幼い頃家族が所謂転勤族だった事に由来する。
高成がビルから出た時、今日の昼時の事が思い起こされた。
(やっぱ飯田…嘘ついてる?あんまり疑いたくはないけど…もしくは奥さん?でも奥さんがあんな嘘つくかなー?見栄張るとか?うーん…)
(直接飯田に聞くしかないか)
高成は里帆に電話をかけた。それは里帆は既に着替えて外の街を歩いていた時だった。高成からの着信を見て一度は切ろうと考えたものの、覚悟を決めて出る事にしたようだ。
「お疲れ。今いいかな?」
「うん。いいけど…」
「会えない?ちょっと話がしたい」
話がしたいという言葉からやはり自身の作り話についてだろうと里帆は感じていた。
(…正直に、打ち明けなきゃいけない時が来たのかな)
「…わかった。」
指定された場所は喫茶店から近い公園だった。2人は顔を合わせる。どちらも神妙な面持ちだ。
「ごめん、急に呼び出して」
「ううん、大丈夫」
ここで高成は切り出した。
「昼に喫茶店に行った時、奥さんいたけどさ…ほんとうは飯田は」
高成が語り掛けた時、里帆が突如遮るように叫んだ
「ごめんなさい!!それ、全部嘘!!」
「えっ?」
突然の反応に高成は一瞬固まる。
「やっぱり…飯田はあの人とは…」
「うん。全部私の作り話…そしてこれまで私が山岸くんに語って来た私が穢される話は全部、私の作った妄想なんだ…」
「飯田…」
これまでの話は全て里帆が自分で考えた妄想である。高成は驚きのあまり言葉が出ない
「パパ活とか、回された話とかも全部私の妄想だった…今まで隠しててごめんなさい…!!」
(飯田…)
必死に頭を下げて高成へ謝罪する里帆。彼女の目にはいつの間にか涙があふれかえっていた。ここで高成はある事を考えていた。
(じゃあ、本当は誰ともしてないって事、だよな…?ずっと…飯田は誰ともやってなかった?ビッチじゃなかったって事?)
「なあ、飯田…藤野先輩とはしたの?」
「山岸くんと付き合ってからは、誰ともしてない。藤野先輩とは夏休みに3回くらいしてそれ以降はしてない。あの時は…先に断って部室から出てった」
そんな里帆に対し、高成はなぜそのような事をしたのか?嘘をついてまで…と疑問がわき上がる。
「あのさ、なんでそのような事したの?おれ以外とするのが嫌ならあの時、断ってくれたらよかったのに…」
「それは…」
「山岸くんが私にとって特別な人だからだよ。私は山岸くんがすき。ずっとすき…!!でなきゃ、こんな事しない…!」
里帆は高成を真っすぐに一途に愛していた。誰よりも深く愛していた。だからこその嘘であり妄想だった。
(飯田は、おれの事こんなに愛してくれていたのか…)
「ああ…」
ようやく。里帆の気持ちが高成の心の奥底まで届く事が出来た。
(おれは飯田の事ずっと誤解してたのかな…理想にとらわれ続けていたのかな…あと…おれは)
(これまでずっと飯田へ嘘をついていた、事になるかもしれない…)
「山岸くん…?」
里帆が高成の顔色を窺う。
「…あのさ、一旦場所移してもいい?」
高成の提案によって移動した2人が向かった先はラブホテル街。日が落ち妖しいネオンが照らし始めた街の一角にあるカジュアルなホテルへ入る。
部屋の中はモノクロカラーなシックな内装だ。里帆と高成はベッドへ座ると、話を再開させる
「おれも…嘘ついてたというか、今まで飯田には隠してきた事がある。」
「え…?」
こうして。里帆の嘘が明るみになった所で、高成が隠してきた過去も明るみになる事になるのである…
…まずは大学時代から振り返る事にしよう。
講義中。高成の横にある女性が座って来た。顔、特に目元はしっかりメイクされておりきりっとした印象に茶髪の内巻ボブヘアはのどぼとけくらいの長さである。そこにおしゃれな服装と丸い眼鏡をかけた、高成にとっては話した事どころか見た事のない姿だった。そんな彼女こそ学生時代の立花秋華なのだが、勿論当時からも里帆や優里らとは雰囲気は全く異なっている。
そんな女性が、いきなりちょいちょいと高成の腕をつっついてきた。
「ごめん。なんか紙もっとらん?ノート忘れてしもうてさ。」
「えっ…」
高成はとっさにノートを一枚めくって綺麗に破ると、彼女へと渡した。
「ありがとー。助かるわー。」
彼女はそう言って高成に会釈した
講義が終わると先ほどの彼女が高成へと歩み寄って来た。
「さっきはありがとなー。そういや名前なんて言うん?」
「ああ、山岸高成。よろしく。」
「こうせいくんかあー、かっこよくてええ名前やんか。あっ、うちは立花秋華(たちばな しゅうか)って言います。よろー。」
秋華は高成の手を取り握手をした。今振り返るとこれが高成と秋華の出会いとなる。
「早速やきど、こーちゃんて呼んでええ?」
「ああ、いいよ。」
高成が了承すると秋華は嬉しそうにしながら、じゃあまた今度ねー!と友人らの元へ去っていった。
(なんか飯田や茜谷さん達とは全然雰囲気違うな。喋り方からして違うし。)
そう考えながら高成は同じ高校出身の男子2人と食堂へ向かっている時だった。秋華が女子2人を引き連れてまた現れる。
「なあ、夕方暇?」
いきなりの秋華からの問い。高成らは困惑しながらも暇だけど…と答える
「じゃあ一緒に飯食いに行こうよ。色々話したいし」
「えっ?」
高成ら男性陣はこれってもしかして合コン的なヤツ…?とざわつかせながら、結果的に同行する事になった。
(いきなり誘われた…もうおれ飯田以外の女の人とは縁ないかと思ってたけどなあ)
まさかの誘いに高成はやや顔を赤らめていたのだった。
「ついたでー」
やって来たのはビュッフェ形式の和風レストラン。色とりどりの様々な食材が配置されている。
(おいしそう…こんなとこあったんだ)
「じゃあ各自取ってこ!」
秋華の友人がそう呼びかけると、各々トレイを手に品を取りに行った。高成が海藻サラダを取り、チキン南蛮に手を伸ばした時、秋華が話しかけてきた。
「こーちゃんそれすきなん?」
「ああ…すきかな。たまに食堂とかで食べるけど…」
「うちもそれすきや。おいしいき、ごはんめっちゃすすむ!」
嬉しそうにはにかみながらチキン南蛮とトングで掴み、お皿に盛っていった。
(やっぱ話し方とか独特な子だなあ…関西の方出身?)
品を取り終えてテーブルにつき、全員揃うと乾杯の合図だ。そして話が弾んでいく
「山岸くんはどこの高校出身?」
「〇〇高校」
「へー、そういえば中学のとき同じクラスの子がそこ行ってた」
秋華の友人がそう答えたので高成は誰?と聞くと、彼女は新山智乃って子なんだけど知らない?と返す
「あー…しってる」
智乃の名前を聞いて高校時代のあれこれを思い出した高成は少々気まずそうに、そう答えた。
智乃は藤野先輩という1つ年上の男子の先輩が好きだった。夏の騒乱の後。智乃は彼のいる大学へ進学を目指し、高3になってから目の色を変え、予備校へほぼ毎日のように通うほど勉学に対して熱心になった。進級時高成とは別のクラスにはなったが、彼女の熱心さは同学年の中では知らぬ者はいないと言っても良い程だろう。
結果。智乃は見事藤野先輩のいる大学へ合格を果たした。今は彼と同じ医師の道を目指して日々研鑽を積んでいる。
「話したことある?」
「あるよ。まあ色々と」
「へー…あいつ付き合ってたりはしてた?」
「付き合ってはいないけど、好きな人はいたよ。その人追っかけて大学同じとこ入ったみたい」
「智ちゃん結構一途だからねえ~そうだろうと思った」
秋華の友人はにやにやしていた。
「立花さんは?どこ出身?」
「うちはねー高校は高知の女子高やったん。小中は親が転勤族やったき色んなとこしょっちゅう転校しよった」
「そうなんだ…この辺で住んでたりもしてたの?」
「ちょっとだけなー。そん時仲良くしてた子はおったよ。優里ちゃんて言うんやけど」
「苗字は?」
「ちょい待って…ああー、茜谷…だったと思うわ。間違とうたらごめん」
茜谷優里。高校時代に高成と予備校で出会った女である。里帆とは非常によく似た見た目ではあるが、気が強く快活で頭脳明晰でどこか見栄っ張りな性格は里帆とはまた違う雰囲気を醸し出していた。
結果的には高成は優里を振って里帆を選んだため、今は連絡は取っていない。
「茜谷さん?とはどこで会ったの?」
「中1の時やな。あの子学級委員長しとったき面倒見良くて、うちと仲良くしてくれたんや。すぐに友達になれたけど半年で転校決まってそれからは連絡とってない。今更やけど連絡先交換しとけばよかったなー…」
秋華は当時を思い起こしながら後悔交じりに語る。
「優里ちゃん元気にしとるかなー」
秋華の呟きでその場の空気はしんみりとしてしまう。これを嫌った彼女はさっ、はよ食べよ!!と皆に向けて言った。
(…元気にしてるだろうか)
優里をふった事は、高成にとってはやはり今も心の小さな傷として残っている部分である。それらを忘れるために選んだ料理をがつがつと食べていく。
この後も料理を取りに行きつつ、高校時代の話などに華を咲かせていた。
「いやー…ようけ食べたわあ」
「美味しかったよねえ。また行きたい」
高成もこのレストランの料理にはかなり満足していた。
(炊き込みごはんもカレーもチキン南蛮もどれも美味しかったな…また行きたい)
食べ終わった後は各自料金を払い、そのまま現地で解散…という流れかに思えた時。帰ろうとする高成の腕を秋華が引っ張った。
「こーちゃん、この後時間ある?」
「へ?あるけど…」
「ちょ~っと付き合ってくれん?」
秋華に言われるままに高成は早足で歩く彼女を追いかけていく。
「…立花さんて、この辺知ってるの?」
「あー…ちょっとな。迷子にはならん程度には知っとる」
(なんか怪しい)
「今怪しい思うたやろ?」
「思ってない思ってない」
「ほんまかぁ?」
見透かされたようなその言葉に一瞬高成はどきっと肩がびくつく感触を覚える。
「まあ気持ちは分かるよ。誰だって初めての場所へ行く時はそんなもんや」
「あ、話しとったらついたわ」
2人が訪れた場所は…ラブホテルだった。
「あ…」
高成は立ち止まる。これから秋華とするのかと考えただけで体が石のように硬直するのが分かる
「こーちゃん?」
実際あの里帆と上手く行かなかった時から高成は一度も最後まで女を抱いていない。1人で里帆が犯されていく妄想をしながら吐き出す日々が続いていた。
「こーちゃん大丈夫?不安?」
秋華はやはり高成の感情を的確に当ててくる。高成は今ここで秋華を抱く事は出来ないと口から出そうになった時、秋華は高成の手を両手で優しく握る。
「初めて?」
「はじめて、ではないけど…」
「緊張しとる。リラックスリラックス」
高成の手を秋華がそっと手を握ってもみもみとマッサージをすると、なぜか高成の不思議と緊張とこわばりがやんわりとほどけてきた。そしてそのまま入店し受付を済ませるといつの間にか部屋へ到着していた
「こーちゃんとするのは初めてやね。じゃあ横になって。マッサージするき」
秋華の持つ母性のような姉性のような不思議な魅力に高成は溺れつつあった
「立花さんて、そういうの詳しいの?」
「よくじいちゃんばあちゃんの肩とか足つぼとかマッサージしよったからね。自信はある」
自信はあると言い切った秋華の腕はなかなかのものだ。そうこうしていると秋華の腕は高成の股間にのびる。
(あ…)
このまま反応せず秋華を傷つけたらどうしようと一抹の不安が高成の脳裏によぎった。そんな中秋華は自身のバッグからあるものを取り出す
それは白くて丸い容器に緑色の蓋がかかっている。容器の中身は半透明の黄色い軟膏のようなもの?に高成からは見える
(なんだろう?)
「ちょっと塗ってみるわな。大丈夫やとは思うけど痛いとかあったら言うて」
秋華はそれを指先につける。大体人差し指の先端くらいの量だ。高成のそれに直に塗り込み、手で上下にしごいていくと、なんと高成のそれがまるで魔法にかけられたようにみるみるそこが大きく硬くなっていく。
(なんだこれ…?!…もっもしかして媚薬?!!)
「あのさ、これって…」
「媚薬やね。ああ、体に悪いもんはなんも入っとらんき安心してええよ」
秋華は高成の隣に座り手でしごき続ける。起き上がって座り直した高成はすっかり反応しきったそこを見つめていた。
(ああ…やっぱりおれは…したいんだ…したいんだ…きっと…理想の飯田が穢されて犯されて傷つく姿に興奮するだけじゃなくて、自分にも女を穢して犯したい欲求があったんだ…)
(だからあの時、飯田としたんだ…それに飯田とは付き合ってなくて、飯田が他の男とやってるんならおれも他の女としていいんじゃないだろうか?)
秋華は高成の顔を見る。
「そろそろしよっか、こーちゃん」
秋華は高成に仰向けになるよう指示をする。高成はそのまま素直に従った。そして高成のそれへ手早く慣れた手つきでゴムをつけると、ズボンごとパンツを脱いだ。
秋華のそこは脱毛処理が施されているのだろう。所謂つるつるの状態だ。高成のそれを自身の中へ挿入し、激しく腰を動かし始める
「ああーっ!めっちゃええ!!」
秋華の中はまるで与えられた手を離すまいと握り締めるような里帆の中の締め付けとは違い、複雑にうねるように締め付けていく。もてあそぶような、包み込むような…そんな感じだ
(飯田のと全然違う!なんだろう…飯田が…消えていく…)
高成は自身の中の理想の飯田里帆像が消えていくような感覚を覚え始めていた。微笑を見せながらぱんぱんと激しく腰をうちつける秋華の姿は、里帆のどこにも重ならない
「こーちゃん、キスしよ」
秋華は高成の顔に迫り、キスをする。その間も腰の動きは変わらない
「あっ…はあっ…」
(やば、出そう…!!)
高成は秋華の中へゴム越しに精を吐き出した
「はあ…はあ…」
「あはあ…こーちゃんのおっきくて硬くてええわあ…まだこんなもんちゃうやろ?」
秋華は上着を全て脱ぎ、一糸まとわぬ姿となる。彼女の体は里帆や優里よりも肉付きも胸も豊かである。身長も2人より高い。秋華は新しいゴムを高成に渡すとベッドで仰向けになり、股を広げる
「ほら…来て…?」
「うん…わかった」
高成は秋華と自身の奥底に眠る欲に応え、そのまま秋華をずっと抱き続けた。何度も体位を変えて精を吐き出していく姿は雄のそれだった。
秋華はそんな高成を拒むことなく凪いだ大海原のように穏やかに受け止める。秋華の姿に高成はかつて里帆を抱いた時とは全く違う感覚に到っていた。
(全てを優しく受け止めてくれるような、不思議な雰囲気がする…飯田や茜谷さんはこんな雰囲気持ってはいなかった)
気づけば夜明け。そのまま一糸まとわぬ姿で眠りについた高成は時計を見て驚くと秋華を起こそうかと迷う。
(疲れてるだろうし、このままにしておこうか)
するとそのタイミングでううーん…と秋華は起床した
「…おはよー。よー寝れた?」
「ちょっとは寝れたと、思う…」
「…まだ時間あるし、寝たら?無理はよくないで」
秋華に勧められて2度寝した高成。しばらくして起き上がると、テーブルには朝食が置かれていた。
「これ…」
「ああ、うちが頼んどいた。こーちゃんの好みよーわからんき、和食の方にしといたけど…食べれる?」
「マジ?ありがとう…てかおいしそう…」
お味噌汁の匂いが高成の鼻腔と食欲を刺激する。高成が寝ている間に、秋華はシャワーを浴びて服に着替え朝食の注文をしていたようだ。
「いただきまーす。おいしい」
「うまいよな。じいちゃんが作る味噌汁と味が似とるわこれ」
聞けば祖父母は朝が早く、しゃきしゃきとした部分も祖父母の影響があったようだ。
「うちめんどくさがりだから家事とか高校入る前は色々苦手なとこあったんや。でもじいちゃんばあちゃんのおかげでちょっとはましになったというか」
「そうなんだ…」
「料理作れるようになったんはデカいと思う。こーちゃんは料理する?」
「まあ自炊はやってるかな」
「へえ~今度食べに行ってもええ?」
秋華の提案に高成はいいよと答える。秋華は嬉しそうに今度いこーと答えていた。
…秋華との初の絡みはこれでおしまいである。この後も高成は秋華に誘われるまま、何度も何度も彼女と絡み合う事になる。
進級して2回生となった高成は夏に、とんでもない事を迎える。それは高成が勤めていたバイト先が突如閉店を迎えたという事だった。聞けば店長が夜逃げしたらしい
「うわ、どうしよ…」
早急に新たなバイト先を見つけなければならない。そんな高成へ同じバイト先で働いている当時の友人の八知(やち)が高成を見かねてある誘いをした。
「おれんとこくる?」
八知は複数バイトを掛け持ちしていた。その中の1つへ高成も来ないか?という事である。
「どんなとこ?」
「端的に言えば女性向けのセラピスト」
「…女性向けのセラピスト?」
高成はその言葉を上手く呑み込めず思わずおうむがえしをする。
(セラピストって…お悩み相談とかそういうの?)
「あ、そういや高成はやったことあんの?あんま童貞っぽくは見えないけど」
(は?てかあんま童貞っぽくは見えないってなんだよ)
いきなり問われた質問と八知の高成評へ心の中で突っ込みながら、普通にやった事あるけど…と呟くと八知はそれなら大丈夫かなと意味深げに答えた
(嫌な予感…)
ただ、お金の事となると仕方ない。八知曰く給料もかなり良いという話だったため高成は八知とその職場へ向かう事に決めた。
あれやこれやあって訪れた場所はビルの一角。そこには既に男性複数と女性が2人いた
「店長ー!やーさんと新入りが来たよー」
「マジ?今から行く!!」
店長は30代くらいの女性だった。黒いショートヘアに眼鏡をつけている。高成へ挨拶し彼が書いた履歴書を受け取り、面接をするのでこちらへどうぞ、と高成を空き部屋へ案内した。
「山岸高成くん、ですね。初めまして。店長の岩田と申します」
「初めまして。山岸高成です。よろしくお願いします。」
「では、お座りください」
高成は岩田に指定された椅子へと腰かけると、岩田の面接…質問が始まった
「大学2年生なんですね」
「はい。そうです」
「当店の志望動機は…履歴書に書いてある通りで間違いないですか?」
志望動機の欄の部分には、簡潔にまとめるとバイト先が潰れた事と、生活費を稼ぐためという内容の文言が書いている。高成は間違いありませんと答えた。
「大変ですねえ…1人で暮らしてるの?」
「はい。進学してからは親元を離れて」
「そうでしたか…では当店についてはどれくらい知ってますか?」
「あ、はい…八知さんからは女性向けのセラピストだと伺ってはいますが…」
高成がそう答えた時、岩田はですよねえ、と言いたそうな表情を浮かべた。
「あー…実は当店は女性用の風俗店でして。セラピストなのはそうなんですが」
「えっ?!!」
(なんか嫌な予感がしたと思った!!)
やはりと言うべきか。高成は驚きを持って答える
「女性用の、風俗…?!」
「そ、そうなんです…!八知からは説明無かったですか…?」
「あの、その…女性向けのセラピスト。とだけしか…!」
「そうなんですか…!すみませんでした!!八知くんにはこちらから言い聞かせておきますんで…!!あっ質問はありますか?!」
岩田は高成へ頭を下げる。
(やっぱあいつぼかしたな…)
八知へ心の中で愚痴りながらも、質問という事は一応仕事内容と給料だけでも聞いておいた方が良いのかな?と脳裏によぎった高成は、2つについて聞く事に決めた。
まず仕事内容については、セラピストという事で指定された待ち合わせ場所へ客を迎えに行き挨拶。そしてホテルないし客の自宅などへ移動する。そこでまずは無料のカウンセリングを行い、施術内容やNG行為をしっかり確認してから料金を前払いがある。シャワーを浴びたのち施術を行う…という流れだそうだ。ちなみに本番行為は勿論NGとなっている。
続いて給料は表を岩田が高成に見せてくれた。
(えっ前のバイト先よりめっちゃ高い…!)
思わず表にかぶりついて見てしまうほどの、違いであった。しばらくして再度岩田から質問は無いですか?と尋ねられると、高成は無いと答える。
「ここまで色々話してきましたが…当店でバイトしてみるという気持ちはありますか?」
(給料めっちゃ良くて本番は絶対NGとはいえなあ…てかこれ仕事だし、飯田とは一応別れてるんだし、立花さんとはそもそも付き合ってないし。よし、覚悟決めろ!おれ!)
「あります。頑張ります」
高成は覚悟を決めた。
「分かりました。…最後に、顔もスタイルもばっちり…合格ですね!!」
「ありがとうございます!」
一応最後に上半身裸になるよう岩田に言われた高成は指示通り服を脱いだ。
「これなら大丈夫ですね。うちはスタイルもかなり厳しく基準がありますので。八知くんからはその点お墨付きを得ていますからご心配なく」
(…あいつそこまで言うたんかい!!)
こうして高成のセラピスト生活が幕を開けた。一応大学生という事でばれて公にはならないよう、八知に進められて出勤時はメンズウィッグと伊達眼鏡を使う事になった。いわゆる高成の源氏名は「りお」だ。
講習もしっかり受け、最後に店長である岩田への実技も行う事になった。
「はあっ…良い…」
結果は合格。よく秋華とやってるからだろうか、慣れた手つきと評された
(なんかはずい)
そんな高成もこつこつ指名を重ねて、最終的にはセラピストたちの中でも1.2を争うほどのセラピストに成長したのである!…がこれは後程語る事にしよう。
この日は出勤前に里帆と出かける約束をしていた。里帆とは別々の大学に進学していた為、話す頻度は減ったものの、こうして時々出かけてはゆっくり例の里帆が穢されていく話などをしていた。
なお手を握ったり、頭を撫でたり、里帆が肩を揉んでくれたりというのはあったが、性的な行為には至ってはいない
里帆が帰宅し、いよいよ出勤した高成。入店後女性の事務員から明後日予約が入った事を告げられた。
「明後日に予約入った方なんですが、山岸さんとやり取り希望されてて…」
「わかりました。データ見せてもらっても良いですか」
事務員から詳細を聞くと、その女性の名前はなんと「茜谷優里」という名前だった。年齢も同じだったためおそらく本人だろうと高成は推察した。
(茜谷さんが…?なんで?!もしかしてばれた?!)
優里へ専用のショートメールを使って『りおです。この度はご指名いただきありがとうございます』と定型文のような挨拶を送ると、すぐに返事が来た
『初めまして。茜谷優里と申します。初めてなので緊張していますが、どうかよろしくお願いいたします』
…とこちらも定型文のような内容のメールが届いた。
(どう返そうか)
しかし時間がないので一旦切り上げて、客の元へ向かう事にした。
「りおくんだ~初めまして、谷川です」
「初めまして、りおです。今日はよろしくお願いしますね」
接客中も、集中しつつどう返信すべきか少しだけ迷っていた
「ああっ…そこっ…気持ちいいです…」
「どうですか…?もっとしてみます?」
「あっ…!いっ…!!」
この接客が終われば次の接客。高成はこの日全ての接客をこなすとくたくたになりながら職場へと戻った。八知からはお疲れさん、と声をかけられる
「これでも飲むか?店長から差し入れだって」
それは近くの自販機で買ったコーンポタージュだった。飲むと全身がぽかぽかと温まる
「店長、ありがとうございます」
「いえいえ!お疲れ様です」
ふとショートメールを確認すると、優里からメールが来ていた。
『あともしかしたら対話がメインになっても大丈夫ですか?』
施術はせずに会話やカウンセリングがメインになっても全然問題は無いため、高成はそのように回答を送ると『よかったです!』と優里からの返信が来た
(まあ最初はそうだよなあ…てかメールの内容的にまだばれてないよな?いやまだ分かんないけど)
実際、初めての利用となる客の内施術はせず、カウンセリング主体を希望する者は多い。中には「私にはあまり触れないでほしい」と希望する者もいる。
高成はばれないでくれ…と願いながら、当日まで過ごすことになる
当日。いつも通りバレ防止の変装をした高成は身だしなみを確認して、優里を迎えに行く
「初めまして。茜谷優里です。今日はよろしくお願いします」
優里は先に来ていた。髪型はあの時と同じショートヘアのままだ。だぼっとした黒いジャケットにグレーのフードがついた服と紺色のジーンズにスニーカーを着用している。
「初めまして。りおです」
互いに挨拶を交わすと、施術を行うラブホテルへ向かった
「では、カウンセリング始めますね」
「お願いします」
「今日のコースはこちらでお間違いなかったですか?」
高成が専用の用紙を取り出し、優里の申し込んだコースを指さすと優里は間違いないです。とはっきりと答えた。そして施術内容についても確認を行うと、料金の前払いとなる。
「はい、こちらです」
優里は料金を茶封筒に入れて高成へと手渡した。おつりはない辺り優里らしさは変わらない。高成が受け取り金額を確認した所で、いよいよコーススタートとなる。
高成は優里へシャワーを浴びるように案内すると、優里は素直に応じた。この間に高成は先ほどセットしたタイマーを見ながらオイルやパウダーなど必要な道具の最終チェックを行う
(ばれて…ないよな?)
「おまたせしました。こんな感じで良いですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
バスローブ姿の優里がシャワールームから出てきた。高成は優里にベッドで横になって待つよう案内し、シャワールームへと入っていく
手早く終わらせた高成の鼓動はいつもと違い早まっている。知らない女性なら仕事だと割り切れたが、相手はまさかの優里だ。自ら優里を振ったにも関わらず心の奥底でどこか何かを期待するような自分がいた。そんな自分を高成は強引に振り切って、シャワールームから出ていった
「お待たせしました。では施術を開始しますね。痛みがあればすぐにおっしゃってください」
「はい。お願いします」
優里にはバスローブを脱いでうつぶせになってもらってからいよいよ施術がスタートする。パンツだけの姿という事で優里の顔は恥ずかしさで赤くなっていた。
まずは足つぼやふくらはぎ、腰を入念に指圧マッサージでほぐしていく。ここで高成は優里にこう尋ねてみる。
「ほぐしてほしい所があれば遠慮なく言ってくださいね」
「ふくらはぎをお願いします。結構むくみがひどくて」
高成が触って確認すると、優里のふくらはぎは確かにむくんでいた。ごりごりと力を加えてほぐしていく
「ああ~気持ちいい…」
「日ごろからお忙しんですか?」
「そうですねえ…バイトとか講義がある関係で寝る時間が取れなかったりして、疲れが取れない日は確かにありますね」
(やっぱ忙しいんだろうなあ)
高成は無理はしないでくださいね。と声をかけると、優里はありがとうございます。と返した。ちなみに足つぼマッサージをしたところ、優里は痛さを訴えたので即中断する事になった
「いったあ…ちなみに痛かったところってどのつぼです?」
「ここは子宮とか生殖器で、ここは胃、ここは膀胱ですね」
「えっ…」
思った以上に悪い所が多いと悟った優里は絶句してしまう
「気になるようでしたら、健康診断受けてみるのも手かと」
「ですよねえ…前向きに検討します」
下半身の指圧マッサージが済むと次は上半身へ移る。やはり優里の肩や背中の肩甲骨周りは岩のように凝っていた。ここも力を入れてぐりぐりと指圧していく
「あ“~」
気持ちよさそうにしている優里。その顔は完全にリラックスした雰囲気である
指圧マッサージが終わったところで、いよいよ性感マッサージへ進む。オイルを垂らし、先ほどほぐしたふくらはぎから順番に刺激を与えていく
「ん~」
鼠蹊部のリンパをマッサージするとここも凝っていた。高成は日ごろから多忙なんだろうなと考えながらマッサージをしていく
ここまで優里は特に快楽を感じているような表情には見えない。それはやはり快楽より日ごろからの疲れが勝っている証拠であろう。
高成はじわじわと焦らしつつ、凝っている部分を念入りにほぐしていく。
「すー…」
(もしかして、寝てる?!)
なんと優里は寝てしまった。高成は起こすかどうか迷ったが、声をかけて起こすことにした
「茜谷さーん。大丈夫ですかー?」
「ん…高成くん…」
(!)
自身の名前を呼ばれ、思わず高成は動揺してしまう。
(お、おちつけ、おれは今はりおだし…)
「あ、茜谷さーん、起きてくださいー」
「あ…ああ、すみません。気持ちよすぎて寝ちゃってました」
「いえいえ。…高成くんて知り合いですか?」
「あっ…りおさんの事、昔好きだった人と間違えてそう呼んでしまいました…違う人なのに。すみませんでした」
そう謝罪する優里の顔はどこか寂しげだった
「高成くん。私の好きな人だったんです。好きだったのに、彼の事傷つけてしまってフラれてしまったけど。大学の知り合いににここのお店紹介されて…試しにサイト見たらりおさんみつけて。高成くんに似てるなって思って指名したんです」
(ばれて、ない…?)
「最初は指名するの恥ずかしかったんですけど、気づいたら指名してました。私にはそれくらい高成くんに未練があるのかもしれません」
「りおさん。他人を重ねてしまってすみませんでした」
優里は起き上がってベッドの上で丁寧に謝罪した。
(そんなにおれの事を…)
高成は未だに自身を愛してくれている優里の気持ちを知り、感謝の気持ちとどう接して良いか分からぬ気持ちの2つに押しつぶされてしまいそうになる
(どうしよう。なんて話せば…でも、ここは仕事中。今の自分は高成じゃなくてりおだ。最後までりおでいないと)
「そうだったんですね。僕は全然気にしないので、大丈夫ですよ」
「でも…」
「そう言う方はたまにおられます。茜谷さんだけではございませんので」
(実際間違った事は言ってないし)
優里はそうですか。と一言呟くとしばらく考え込んで、高成へ提案があると告げた
「じゃあ、高成くんの真似。してくれませんか?」
(おれの真似をしてくれって事か。…よくわかんないけど、あの時のおれを演じたらいいんだよな?)
高成は優里の傍に座ると、彼女をそっと抱き締めた。優しく頭を撫でると、優里は目を閉じた
「どうですか?多分優しい方だと判断してみたんですが…」
「合ってます。続けてください」
背中に腕を回し、さすっていく。さらに脇から腰にかけてのボディラインにも触れていく
「んっ…」
高成はゆっくりと丁寧に優里をベッドの上に押し倒した。
「…っ」
優里の顔が赤くなっている。高成はここだと判断して、彼女にパンツを脱がしていいかと、声かけをした
「私から、脱ぎます…」
これで優里は一糸まとわぬ姿となる。
「じゃあ、そろそろ…」
優里が高成の手に触れた。中へ指を入れるとんんっと優里の声が漏れる。
中はぎちぎちに閉じきっていた。あれから男とはそういう関係は無かったのかもしれないと高成の頭によぎった
「ああっ…」
声を出し、あっという間に快楽に溺れていく優里の姿を見て、高成はほんとうにおれとやりたかったんだなと感じる。
「ああっ、もっと…!」
ぐちゅぐちゅとかき回すと更にもっと激しく、と懇願してくる
(茜谷さん…!)
「ああーっ…!高成くん、すきぃっ…!」
優里はびくびくと体を震わせながら絶頂した。
「はあ…はあ…」
息が落ちつくのを待って、部屋内にあるウォーターサーバーから水を専用の紙コップに入れて優里に渡した
「ありがとうございます…とても良い演技でした。まるで高成くんとしているみたいでした」
優里はそう言ってお辞儀をしたのだった。
その後。優里は店を利用する事は無かった。あれが最初で最後のつもりだったのだろう。はたして満足出来たのか出来なかったのかは、優里のみぞ知る。
そして優里の指名以降、高成は店で1.2を争うほどのセラピストにまで成長を遂げた。もしかしたら優里の指名が一種のターニングポイントになったのかもしれない。
ある日。高成は街を歩いていると智乃と再会した。
「あっ山岸じゃん。久しぶり」
「おう、新山。久しぶり」
「元気そうじゃん」
2人は近くのファーストフード店に立ち寄り、そこで話すことになった。聞けば智乃は実習やら講義やらで忙しい毎日を送っているという
「こんなに忙しいとは思わなかったなーって。山岸は?」
「おれもかなーバイトもあるし。そろそろ就活にも力入れなきゃだし」
「あー、そろそろ就活か」
お互いに近況を話し合った所で、智乃が目を細めながらある事を聞いてきた。
「里帆とはどうなってんの?結局別れたんだよね?」
「ああうん。時々会ってるよ」
え、マジ?と智乃が驚いた様子で反応する。
「喧嘩とかしてないわけ?」
「してないしてない。普通にだべったりご飯食べに行ったりしてる」
「へえ~…なんだ。やっぱお似合いなんじゃん。てかそれならべつに別れなくて良かったんじゃね?…あ、いや、友達の方が気が楽ってのも、あるのか…」
「新山?」
「まあ…愛の形はヒトぞれぞれなんだなーって」
「新山なんかあった?」
「あー…実はさ…」
智乃は藤野先輩を追って同じ大学へ進学した。しかし、高3の時にある男子ともかかわりがあった。相手は2つ年下で智乃の幼馴染である颯太である。彼の存在は高成も噂で知っていた。
颯太は幼い頃から智乃を姉のように慕っていた。それは高校になっても変わらなかった。智ちゃんと笑顔で手を振る彼の姿はずっと変わらなかったのである。
そして颯太はやはり、智ちゃんが好きだと告白した。この話も高成は高校時代に智乃から聞いていたのだが、智乃はいまも返事を出せていないのだという。
「わたしは先輩が好きで、颯太の事も嫌いでは無いけど今も異性としては見られないというか…」
高成は今もそう思っているのか?と聞くと、智乃は頷く
「颯太は私にとって彼氏とか恋人とかそんなんじゃないんだよ。弟分というかそんな感じ。そういう関係の方を大事にしたいと思ってるし、とにかく付き合うのは解釈違いってコト」
「そうなんだ…」
どうやら藤野先輩とは以前より気楽な関係を築いているのだという。
「私が大学入学して、ようやく心を開いてくれたように思う」
注文したティーラテを正面から眺めながら、智乃は複雑そうに言った。
「色々あるんだな」
「そうだよー。逆に山岸はそうでもないわけ?」
智乃がややぶっきらぼうに質問したところで、ある人物がやって来た
「あっこーちゃん!!こーちゃんやん!!」
「立花さん…!」
「どうもー。あれ、こーちゃんの知り合い?」
秋華がやって来た。丸眼鏡越しから智乃へ興味ありげに目線を向ける
「あー、初めまして。新山智乃って言います。山岸…さんとは高校一緒だったんで、まあ、はい」
「何か聞いたことあるわ。あっはじめまして。立花秋華と言います。こーちゃんとは同じ大学通おてます。」
秋華が智乃の横に座り少し会話した後、秋華はまた今度、と言って去っていった。おそらくは邪魔しないように彼女なりに気遣ったのだろう
「あの子、山岸の友達で合ってる?本人はそのように言ったけど」
「うん。あってる」
「…やったの?」
「…もう何度も」
「やっぱそっちの意味での友達か」
智乃はふうと息を吐いた。
「なんか山岸さあ、藤野先輩と似てきてない?」
「え、そう?」
「なんか、うん、そう思うわ」
智乃の高成を見る目がだんだんと細くなっていく。
「なんか、高校時代の方が可愛げあった」
「えー…うっそ…マジで?」
高成は飲み込めずにいた
「まあでも、皆そうやって大人になるのかもね…まあ話を元に戻すと、わたしは山岸の事羨ましかった。」
「…なんで?」
「2択を突きつけられてもちゃんと選べられるとこ。わたしは未だに選べられないから。山岸はちゃんと選んだ。たとえそこに正解も不正解も無くてもちゃんと選んだじゃん。でも私はまだ選べられない。多分変化が怖いからだと思う」
「…」
「ごめんね、いきなり重い話して」
高成がいや、全然…と言うと智乃はしばらく黙った。
「別に無理して選ばなくてもいいんじゃないかな。…選んだ先にそもそも正解や不正解があるかもわからないしさ。…てか新山は2択よく外すよねって言ってたけど」
高成が絞り出した言葉がそれであった。智乃は…うん。と答える
「あれは今思えば若気の至りっていうか、山岸に嫉妬してたからというのもあるかもしれない。2択選べられて自分なりに行動できている山岸が私はほんとうに羨ましかった」
智乃は顔を上げて天井を見ていた、涙が目元からこぼれないようにしていたのは高成からも明白だった。
こうしてしばらく会話した後智乃と解散した。去り際、智乃からはこう声をかけられた
「立花さんとはほんとうにセフレ以上でも無ければ以下でもないんだよね?」
「うん。入学してからの付き合いだけどそれ以上でも以下でも無いと思ってる」
「そっか。なんかあの子の考えがよく分からない気がしたから。じゃ」
…その後も時々彼女と会っては愚痴を聞いたりしている。
3年の夏。いつものように秋華に誘われ、高成はラブホテルにて彼女を抱いていた。昼時になって彼女からお昼ご飯を食べたいので休憩したいという内容の提案を受けた高成は快く承諾する。
(何食べようかなー)
秋華はいつものようにきつねうどんを頼んでいた。秋華は麺類が好みで特にうどんは食感やだしの味が好きなのだそうだ。
「こーちゃんは何するん?」
「うーん、じゃあ立花さんと同じやつで」
「りょーかい。せっかくやしたこ焼きも付けよ」
しばらくして注文が届く。きつねうどんはだしにお揚げが染みて優しい味だ
「関東のうどんてやっぱだしちゃうなあ。何回も食べてるけど」
「そうなの?」
「うん。結構違う。関東の方が濃いかもしれん」
「そうなんだ…」
関東と関西でだしに違いがある事を高成は当時知らなかったので、へえ~と言いつつうどんを食べている。
(ここでちょっと切り出してみようか)
「あのさ、立花さんてさおれの事なんて思ってるの?」
「え?」
秋華は絵文字のように目を丸くさせた。聞かれるのは想定外だったのだろう
「いや、あれからさ、よくおれとやってるじゃん。だから…」
「…わかった、正直に話すわ。引かんといてよ?」
秋華がくぎを刺す。彼女の声を聴いて高成はどんな内容であれ、正面から受け止める事に決めた。
「こーちゃんはうちの大事な「ともだち」なんや。うちの家族、転勤族って話前したやろ?」
「うん」
「そやき、ともだち少なかったんや。優里ちゃんも当時は大事なともだちやったん。やから失いたくない。大事なもんなんや。それにうちは、恋愛がどういうもんか分からんし、そもそもそういう気になった事がないん。男も女も関係なくみんなうちの大事なともだちなんや」
「…」
「うちの中には、恋愛という感情は無いと思うちょる。仲よおなりたい。ともだちになりたい。ってそれだけはあるんや。エッチはその中でも大事というか…」
「仲良くなりたい人となら、誰とでもやれる?」
無意識に出た高成からのその問いに、秋華はうんと頷いた
秋華に恋愛と言うものは存在しない。あるのは友情だけで、恋愛的に男が好きとか女が好きとかそういうのも無い。高成はようやくその事実を知る事になったのであった。
(まあ、その辺はいろいろあるよな…)
だが、高成は彼女が自身に恋愛的感情を抱いていないという事に対しては、少し安堵もしていたのである。
「打ち明けてくれてありがとう」
「ううん、いつかは言わんといかん事やとは思うとったき。こーちゃん、やっぱうちなんか変なん?」
その問いに対し、高成は否定した
「変じゃないよ。おれは変じゃないと思う」
(そうだ。そういうのは本当色々あるんだし…多分こうして悩んでるのは立花さんだけじゃないだろうし)
高成は秋華に正面からそう言い切った。秋華は目を丸くして高成を見つめている
「ほんま?ほんまに?」
「うん」
力強く頷いた高成を見て、秋華は安堵の表情を見せる
「良かった…ほんま良かった…嬉しい」
ぽろぽろと秋華は涙をこぼす。聞けばこの事でずっと悩んできたらしい。高成はかつて優里にしたように頭を撫で優しく抱きしめた
「ありがと…」
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その後も秋華との交流が続き、2人は同じ就職先へ進んだ。就職が決まった際、高成は長らく勤めてきた女性風俗の店をやめた。店長の岩田からは花束をもらい、仕事仲間からもお疲れ様と言ってくれたのを高成は覚えている。
こうして大学を卒業し、就職して配置された部署にて。
「部長を勤めている菊川ローザです」
高成の上司であるローザとも、そこで出会った。…と高成は思っていたのは最初だけ。よく見てみるとローザはどこかで見覚えのある顔をしていた。
(この人…大学時代バイトでセラピストやってた時に施術した人…?)
実は高成がセラピストを始めて半年たったくらいの頃に客として来ていたのがローザだった。この時、マッサージだけでなくオプションで高成が自慰行為をする場面も見たいというローザからの要望があり、高成はその通りにした記憶がある。
「山岸高成さんですね、一緒に頑張りましょう。わかんないとこあったらいつでも聞いてね」
ローザはにっこりと微笑むと、持ち場である部長のデスクについた。聞けば彼女は部長になったばかりではあるが非常に優秀で頼れる人物なのだという。更には東大出身という事も彼女の強みの1つになっていた
高成にとって仕事を覚えるのは大変だったが、やりがいも感じており、ローザや先輩達の助けも得てめきめきと成長していった。
同時に。ローザとも関係を持つようになっていく…時は少しさかのぼって、入社して2週間たった時の事。部署内で新人たちのための親睦会がある居酒屋で開かれた。
「新人君たちの今後の飛躍を祈って~かんぱーい!!」
会はアルコールが入ってどんどん盛り上がる。高成も先輩らと酒を酌み交わしていた。
「山岸くん。こっちもいい?」
ローザと乾杯を交わす。その後は美味しい食事も合わさって高成は会を楽しんでいた。そんなこんなで時間だけは慌ただしく進んでいつの間にか深夜になる。
「二次会どうするー」
「いこうぜー」
ほとんど酔っぱらっていた中で、高成も頭の中が良い感じにふわふわとしていた。
「山岸くん時間ある?うちで飲み直さない?」
ローザから誘いを受けた高成ははい。と承諾した。ローザに言われるままに彼女の自宅へ向かう。彼女の家はやはりと言うべきか高級マンションの一角にあった。
「どうぞ。入って」
「おじゃましまーす…」
モノクロのシックな内装はより高級感を際立たせている。高成はローザに着替えてくるからそれまでソファで座るよう指示を受けた。おとなしく座って待っていると、現れたのは下着姿のローザだった
「山岸くん。あのセラピストのりおさんでしょ?覚えてるわよ」
「え」
高成の酔いが全て吹き飛ぶほどの衝撃。それからはローザに言われるがまま、彼女の目の前で何度も自慰行為を行い、最後は朝まで彼女と絡み合う事になった。
その過程で高成は里帆の事もローザに告げた。ローザは里帆については面白い子ね。と一言言っただけだったが、弱みを握ったかのように、彼女の話を繰り出すこともあった。というか今もある。
こうして、彼の告白は全て終わる
ーーーーー
「長くなって、ごめん…これがおれの嘘…」
高成は里帆に頭を下げる。里帆は正面から彼の姿を見ていた。互いにしーんと静寂が流れる。先に切り出したのは里帆の方だった。
「あのさ、もっと山岸くんの話…聞きたいかも」
高成はえ?と反応してしまった。対する里帆の顔はいたって真剣である。
「私が知らない山岸くんの姿をもっと、知りたいというか…駄目かな」
里帆は遠慮がちとはいえ、その声には熱量がこもっている。ここで断っても引き下がらないだろうと直感した高成は、里帆の望み通り、話を続けることにした。
「じゃあ…続けるね」
里帆は頷き、彼の顔からそらすことなく、話を聞き続ける。
「へえ~…」
途中、里帆の顔を見て高成はある事を感じた
(飯田の話を聞いている時のおれもこんな感じなんだろうか)
話し終えた後、里帆はこう高成に頼んだ。
「これからもさ、山岸くんの話が聞きたい」
里帆の目線は高成を食い入るように見つめている。悪い気はしなかった高成は了承すると、里帆は喜んだ。
「泊まる?」
時刻は夜の21時を指している。もう夜遅い時間という事もあって、高成と里帆はそのままホテルで一泊する事になった。夕飯を注文して食べると、各々シャワーを浴びたりテレビを見たりしてくつろぐ。
夜が深まってきた所で、下着姿の里帆が高成の傍へ訪れた
「…やる?」
(うっかり誘ってみてしまったけど、どうしよ…)
この時の里帆の心情は上記の通りである。もし断られたらそれはそれでこれ以上深追いするのはやめよう。里帆はそう考えていた。
(飯田から誘ってきた…どうするか)
高成もまた、どうすべきかと悩んでいる
「反応しなかったら、どうしよう」
「…わたしが犯されている所を、想像しながらする、とか…?」
里帆の言葉によって2人は久方ぶりに絡み合える事になった。これまでの事が嘘のように、高成のそれが里帆の中で締め付けられている
(すっげえ飯田と久しぶりにしたけど…気持ちいい…)
(山岸くんの気持ちいい…)
「わたし、ずっと山岸くんとしたかった…」
里帆の言葉に高成は不思議とやっている最中なのに涙が溢れそうになる。
「山岸くん…?大丈夫?」
「…ごめん。嬉しかったから」
2人は正面から抱き合った。
何度も絡み合った後、気づけば夜明けが来ていた。2人は朝食を食べてホテルを出てそのまま職場へと向かった。
「おはよう、山岸くん。いつもより元気そうね」
出社すると珍しく先に来ていたローザが、そう高成の顔を見ていた。
「そうですか?」
高成は里帆と繋がれたことがたまらなく嬉しかった。その嬉しさが顔に出ていたようだ。
「今日夜空いてる?社長がね、山岸くんと一緒に出掛けたいって」
「そうなんですか?!勿論空いてます…!」
「分かったわ。私も同伴するから、よろしくね」
ローザはウインクをしてデスクへ戻っていった
(社長が…?)
高成はどきどきしながら業務にあたっていた。そして約束の時間がやって来る。高成とローザがビルの玄関で待っていると、社長の奥山和哉(おくやまかずや)がやって来た。
和哉は会長の跡取り息子でローザと同じ東大出身である。三十代前半と社長としてはまだ若いが優秀で、爽やかな短髪にどこかイケイケな雰囲気を纏わせていた。
高成は緊張しながら和哉に挨拶する
「社長!お疲れ様です!」
「山岸くんお疲れー」
紺色のスーツを着用している和哉は、高成に挨拶するとそこまでかしこまらなくても良いと告げる
「でも…」
「今日くらいは楽しもうよ、ずっとそんなんじゃもたないし」
3人は高級車に乗り込み、目的地へと移動する。
(そういやどこにいくんだろ、レストラン?)
高成は車内と外の景色をぐるぐると見渡しながら、どこへ行くのかと考えていた。
その内、ネオンが彩る街の中へと入る。ネオンの光は宝石箱のように色とりどりだ。
「ついたよ」
車が高級感ある建物の前で止まる。建物の前にはスーツを着用したボーイが2人出迎え、車のドアを開けた。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
和哉の後を高成はやや猫背になりながらついていく。大広間はシャンデリアがつられており、高級なホテルのフロントと言うようなありさまだ
「こちらへどうぞ」
通されたのはこれまた高級そうなソファや机が置かれている大部屋である。机のには和洋中と様々な料理がたくさん並べられていた。
「すごい…」
高成が小さく呟くと、和哉がそろそろ来るから…と言った
「お待たせいたしました。本日はようこそ」
この支配人らしき女性が、ドレスを着た2人の女性を伴ってやって来る。
「いえいえ。ありがとうございます」
挨拶を交わすと、立食パーティーが始まった。ローザと共に食事を楽しむ高成のもとにドレスを着た女性がワインを持ってやって来る
「…山岸くん。覚えてる?」
容姿は変われど、その声には高成は覚えがあった
「塚原さん…」
話しかけてきた女性は塚原日向であった。髪は降ろして先端がウェーブがかっている。更に顔は高校時代よりも更に整っていた。体型もスレンダーなのは変わらないが、胸が大きくなっている。ちなみにこれらは整形手術によって得たものである。
「あら。リリーさんだっけ?山岸くんの知り合い?」
ローザが日向に目線を向けると、一瞬日向は委縮したように見える。この店では日向はリリーという源氏名を使用しているようだ。
「はい。高校時代に色々あって」
「そう」
ローザの微笑みに日向もニコニコと微笑み返す。そこへ和哉が支配人の女性を伴いやってきた。
「山岸くんはリリーさんと?」
「あ、いえまだ決まった訳じゃ」
和哉のとりなしがあって、高成はリリーこと日向とペアを組む事になる。
「では個室に移動しましょう。部屋にもお食事はご用意させて頂いておりますので」
日向にいざなわれ、高成は個室へと移動する。
「…ここはどういう場所なんですか?」
高成はおそるおそる尋ねると、日向は敬語じゃなくてもよいと笑って前置きしたうえでこう言った
「ここはソープ。だけどただの店じゃない。国内外の金持ちしか利用できないvip専用のお店だよ」
通された個室には、手前に待機用スペースがあり、その奥には大きな浴室にベッドの置かれた寝室のような部屋、そしてリビングのような部屋があった。料理もデザートもドリンクも既に用意されている。
「うわ…」
高成は思わずうなった。まるで豪華なホテルの一部屋のようだったからだ。
「すごいでしょ」
日向のにやつく顔も高校時代からは変わっていなかった。
「うん。すごい」
高成の言葉に、日向はふーんと息を鳴らした。
「あれから色々あったんだからね…」
日向はテーブルにワインを置くと、いきなり高成を押し倒してキスをする。
「んっ…」
ここで、なぜ日向がこうなったのか。その昔話をしよう
優里はあの日、高成にフラれてしまった。しかし思いっきり泣いてあっという間に立ち直った優里は、今までとはまるで別人になったかのように、日向らとは距離を置いて1人黙々と東大合格の目標を掲げて勉学に励むようになった。
優里の変化に戸惑った日向は、優里になにがあったのかと問うたところこのように帰って来た。
「別に?」
日向にはこの返答と態度が最高に気に食わないものだったのである。次第に口論に発展し、そこで彼女が高成にフラれた事を知ると、彼女が止めるのも聞かずに日向は高成の元へ向かい、彼に手を出してしまった。
ただ彼の顔を見て日向はふと自身が優里に送ったアドバイスを思い出した。
(…あかねちんが変わったのは山岸くんのせいじゃない。私のせいだし、あかねちん自身が決めた事だったのか)
彼女の目には里帆に介抱される高成が映る。そこでようやく高成にしてしまった事と、自身が与えた影響を自覚したのだった。日向の後ろでは土下座しながら想いをぶつけ告白する高成と正面から受けて了承する里帆、それを訳も分からず嘲笑する事しか出来ないクラスメイト2人がいた。
(気づくのおせーよ、私…)
しかし事件はこれでは終わらなかった。その場には他にもクラスメイトが何名かその場面を目撃しており、スマホで写真が撮られていたのである。学校に事態が知れ渡り教室は無論大騒ぎとなった。
「塚原が他校の男子を殴ったらしい」
「多分塚原のセフレじゃね?あいつビッチだし」
根拠も根の葉も無い噂だけが日向を無視して広まっていく。それは勿論優里の元にも伝わった
「塚ちゃん、山岸くんの事好きだったの?」
開口一番。優里の口から出た言葉がそれだった。優里はなおも続ける
「私が高成くんにフラれてほしくて、あんなアドバイスしたの…?」
「ち、違う…!」
「じゃあ、なんで高成くんにあんな事してしまったの?!?!暴力はいかなる理由があろうとも許されないって知ってるでしょッ!?」
優里の剣幕に、日向はたじろいだ。ここで教師が日向を呼び、騒ぎは一時解散となった。
その後。学校から停学処分となった日向は、学校や家族を通じて高成に対して丁寧に謝罪し、高成やその家族とは示談成立となる。この件はそれで一件落着とはなったが、優里とは絶縁状態となってしまった。
進級後、優里や仲良くしていた永瀬雄也らとは別のクラスとなった。しかし友人にはあまり恵まれず日向をめぐる噂話が卒業までずっと独り歩きしていた。更に日向にはずっと高成へしてしまった過ちと引き金を引いた自身への後悔が緒を引いていたのである。
事実。日向は高成に対しなんら興味を抱かなかった…という事でもあながち無かったからである。まあセフレ候補として狙っておいて損は無いか。という感じではあったのだが。
日向はそれからセフレを更に増やし、パパ活にも精を出したが、負の記憶が消える事は無かった
高校卒業前。日向はパパ活相手からある話を受けた
「ひなたちゃん大学進学するんでしょ?もしよかったらだけど、いいバイト先紹介しようか?」
そのパパ活相手は議員だった。彼が紹介した店こそが今高成らがいるvip専用超高級ソープ店である。彼の勧めと面接試験を突破した日向は、大学での生活とコンパニオンとしての生活の2つで頑張っていく事になった。
大学卒業後はそのまま店で働く事を選び、今に繋がっていく。
「んっ…」
高成から口を離した日向は、自身のこれらの身の上話を語り、ドレスを脱いだ。黒いレースのブラジャーとパンツ姿は妖しくも品がある
「楽しもうか。ここはお店だから浮気にもならないしね?」
そう言われた高成は里帆とは関係は続いてはいるが恋人同士では無いと正直に語る。
「ふーん…別れても関係続いてるんだ。別れなくてもよかったのに。まあいいや、続きしよっか」
高成は服を脱ぐよう言われその通りにすると、日向もまた全裸になり、浴室へ誘導を受けた
「じゃあ、当店のコースをじっくりとお楽しみくださいって事で」
ーーーーー
その頃。ローザと和哉は支配人の女性ともう1人のコンパニオンと共に4Pを楽しんでいた。
「はあっ…あっ…」
ローザと和哉は愛人関係にある。和哉は色んな愛人を持つプレイボーイでもあった。食事を楽しみながら快楽に溺れる様はまさに酒池肉林の様だ
「んっ…」
「和哉さんこっちも…」
そして和哉はローザと高成がそのような関係にある事をもちろん知っていた。だからこそ彼をこの場に呼んだのである
「山岸くんはリリーちゃんともうしてるかなあ」
「してるんじゃないでしょうか?あの子ああ見えてエ ロいから」
「だよねえ。おれもそんな気がしてたよ。見た目は爽やかで可愛い系の感じだけど」
2人が予想するまでも無く、高成は日向と浴室でプレイに入っていた。
「滑らないように気をつけてね。ここ結構滑りやすくて怪我した人もよくいるから」
「わかった」
高成は慎重にグレー色のマットの上に乗り、日向に言われたようにうつぶせになる
うつぶせになった高成の太ももやふくらはぎ、肩を日向は入念にマッサージしていく。その技はセラピスト時代の高成自身を想起させた
「痛いところは無い?」
「無い。大丈夫」
足つぼや腰等細かい所までマッサージすると、背中の上に馬乗りになって更に進めていく。
「どう?」
「うん。良い感じだと思う」
ねちっ…という音が淫猥さを少しずつ醸し出していく。
「ん。じゃあ、仰向けになって」
日向に言われてゆっくりとマットの上で仰向けになる高成。すると日向は下半身をマッサージしつつそれへと触れる。
「しごいてくね」
手で上下にしごき、焦らしつつ徐々に刺激を与えていく。
「んっ…」
「硬くなってきたじゃん…」
大きくなっていく。もしかしたら里帆と久しぶりに絡み合った事で、箍が外れたのかもしれない。
「どう?出そうになったら言ってね」
日向の笑みはいかにも妖しげだ。
(すごい…)
「んー、せっかくだしここで出される前にやった方が良いか」
日向はどこからともなくさっと避妊具を取り出し、装着させるとその上にまたがり、上下に動く。素股というやつだ
「んふっ…」
腰の動かし方は艶めかしい、やはり経験の差及びプロの差だろうか。里帆がこのような姿をするイメージも妄想もこれまで湧いた事は無かったくらいだ。
「すごい…」
高成からはそれしか言葉が出なかった。
「こう見えて上手いねってよく褒められるんだよねえ」
「確かに…」
そしてそのまま中に入れた。ずりゅっという音と共に、中でぐっと思いっきり締め付けられる感覚に高成は快楽を覚え、そのまま精を吐き出した
「あらっ、もう?」
「はあ…はあ…」
その後、マットで1回とベッドで1回それぞれ日向と絡み合った高成は慣れない場所と言うのもあってくたくたになってしまった。着替えてベッドで横になっていると、内線がかかって来たので既にドレスへ着替えていた日向が受話器を取って応対した。
「はい。分かりました」
どうやら絡みを終えた和哉とローザが一階の広間で待っているらしい。
「…だって。ゆっくりで良いから降りようか」
「うん。わかった」
高成は荷物を持って部屋を出る。
「料金は社長が払ってくれるみたいだから」
「そうなんだ…そういえば、つ…リリーさんて社長ともしたことあるの?」
「普通にあるよ」
そう言った日向の口ぶりは特段変化も無くいつも通りだった。日向は広間まで高成を送り、支配人と共に見送ってくれた
「またのご利用をお待ちしております」
支配人と日向ともう一人のコンパニオンが手を振って、高成らが乗る車が見えなくなるまで見送ってくれている。和哉は車内で高成へどうだった?と告げると、高成はまあ…良かったですと無難な返しをするにとどまる
「良かったらさ、おれの家でもう一杯やろうよ」
思いがけぬ提案に、高成はえ?と返してしまう
「せっかくだし明日会社ずる休みする?」
「社長それはまずいですね。ずる休みだなんて」
「冗談冗談。まあ寄ってよ。1人だと寂しかったしさあ」
結果、ローザと高成は和哉の家へ寄る事になった。
…その頃。既に帰宅していた里帆は自室にいた。目の前にはノートパソコンがある。
「…」
そのパソコン内にはこれまで高成に伝えてきた自身が犯される作り話が備忘録としてメモ帳アプリに収められている。
「もう…メモしなくていいのかな」
自分は高成の話をもっと聞きたいが、自身の作り話が高成にばれてしまった以上、もう彼に話を聞かせなくてよいのかもしれない。そう思った里帆の目からは涙が出て来た
「…っ」
パソコンの画面が涙でぼやけて見えなくなる。
「私は…」
ふと、スマホが目に付いた。里帆は涙をぬぐうとスマホを取り、高成へのライン画面を見た
「…」
気づけば、「会いたい」とメッセージを送っていた
しかし、いくらたてども返事は来ない。
「…」
ベッドに入った里帆の空虚なまなざしが天井を見つめている。
ーーーーー
その頃。和哉の住まう超高級マンションにて、3人の絡みが行われていた。
ここだけの話、和哉は両刀、つまりはバイセクシャルである。ローザだけでなく高成とも絡みを楽しんでいた。高成自体はノンケではあるが、彼の誘いを断れずに流されている状態にあった。
(このまま断ったら色々昇進とかに関わっても嫌だしなあ…自分はノンケだけどとりあえず…)
相手は社長。当然ながら断るのはさすがに気が引ける。その為高成は彼の誘いを拒まずにいた。
「あら、こっちもお願い…」
ローザに腕を掴まれた高成は、そのまま彼女の中へ指を入れた
「んっ…」
快楽に歪んだローザの顔はまさに美しさとエ ロスがこれでもかと醸し出されている。
(わ…)
その顔を見た高成が思わずつばを飲んだタイミングで、和哉は高成にキスをする
「んふっ…」
絡み終えた3人は一旦ソファで休憩していた時、高成は自身のスマホに里帆からメッセージが来ていたのを確認する。
(飯田…)
時刻は夜の3時過ぎ。今から会うのはさすがにきつい。そう判断した高成は明日はどう?と返信を送った。
「もしかして彼女?」
和哉が後ろから高成に抱き付く形で彼のスマホ画面を指さして言った
「いえ、友人です」
思わず高成はそう言った。
「ふーん…」
和哉は目を細める
「おーい、ローザちゃん」
和哉がローザを呼んだ
「山岸くん。この子おかずにしてさ、ローザの目の前で抜いてみてよ」
「…え?」
和哉の提案に高成はしばらく硬直してしまう。それを見たローザは無理はしなくてよいと彼を気遣う姿勢を見せたが、和哉は見たい意志を曲げなかった
「…っ」
高成は和哉に言われるままに、ローザの目の前で里帆を妄想しながら1人でやり始めようとする
(あれ…)
しかし肝心の犯される里帆の姿が妄想できない。代わりによぎるのは高成に抱かれる里帆の姿だった
「山岸くん…」
妄想の中でも里帆は高成を求めてくる
(ん…?思ったよりたたない、かも…)
そう感じた時、異変に気付いたローザが高成に近づいて彼のそれに手を添えた
「無理はしなくていいからね…」
ローザがしごき始めるとあっという間に反応し、そのまま精を吐いた。その間彼の頭からは里帆の姿は消えていた。ローザがそれを口に咥えて綺麗に舐めとると、お疲れ様と小さく呟いた。
「もう社長、こういう無理強いやめたほうがいいですよ?」
「はは、ごめんごめん。ちょっとやきもち?ついてさ…おれリア充見ると爆発しろって思うっていうか?」
冗談だと笑って言った和哉の目だけは笑っては無かった。高成は彼の表情を見て思わず心の中で不気味だと呟く
(社長こわ…)
「もうこんな時間ですか。どうしましょう?」
「2人ともうちで泊まりなよ。なんなら朝までやる?」
「うーん、申し訳ありませんが、私は体力が持たないかも」
ローザが断ると、和哉の目は高成へ向けられる。それはどう見ても獲物のウサギを狙う猛禽類か狼の目つきのそれだった。
「山岸くん、どう?」
(あー…やっぱり。体力持つかなあ)
高成が頭をひねっている所を見たローザは、すかさず和哉へ明日も仕事があるので休憩にあてるべきと告げた。
「確かにそうだね。じゃ、ひとまず休もう。仕事がおろそかになってもいけないし」
和哉は2人をベッドルームへ案内する。それぞれ大きなベッドのある個室へ案内されたがその高級感とベッドの大きさに高成は開いた口がふさがらなかった。
「シャワーとトイレはこっち。遠慮なく使っていいから。じゃあ」
和哉は手を振って自室に消えた。
「…ありがとうございます」
「いえいえ。困ってるように見えたから。あなたは私の大事な部下でもあるんだから、倒れてもらっては困るしね?ゆっくり休みなさい」
「…はい」
高成はベッドの上でスマホを見ていた。里帆からは「ぜひ明日会いたい」という返事が届いていた
(起きてたんだ…)
スタンプを送信すると、仰向けに寝転がって天井を見つめる。
「はあ~…」
(今更だけどもう犯される飯田を妄想しても、あんま興奮しなくなってきたかも…飯田が好きなのは変わってないけど)
高成は自身の胸の内を振り返りながら、就寝した。
翌日。和哉お手製の朝食を食べ3人は出勤した。ローザによく眠れた?と聞かれると高成ははい。と答える
(うん。眠りは良かったはずだ)
出社後は秋華とも話したりして、仕事も順調にこなした。
「もうこんな時間か」
夕方。高成は帰社し里帆の元へと向かおうとした時、ローザが話しかけてきた
「今日これから時間ある?」
「あー…えーと、用事が…」
「もしかしていつもおかずにしてる里帆ちゃん?昨日スマホ見てたけど、あれもそう?」
やはり勘の鋭いローザからはバレバレだった。高成は嘘偽りなく正直に明かすと、ローザはちょっといい?と言う
「私も連れてって頂戴」
「え?」
「いいでしょう?ちゃんと自己紹介するから」
結果、ローザも付いてくることになった。里帆に指定された公園へ向かうともう里帆が先に来ている。
「えっ…」
ローザを目にした里帆は思わずたじろぐ。長身から見下ろされて蛇に睨まれたカエルにようになっている。
「飯田里帆さんですね?初めまして。菊川ローザと申します。うちの部下がいつもお世話になっております」
「あっい飯田里帆です…初めまして…」
互いに挨拶を交わした後、ローザに連れられてやって来たのは高級和食料理店だった。和のたたずまいをした大きな建物に入り受付をすると、畳敷きに黒い漆塗りの大きな机が置かれた個室へと通される。
「どうぞ。こっちのおごりにしとくから」
高成と里帆はありがとうございます…とローザに頭を下げた。
「まあ好きなとこ座って。わたしあんまり堅苦しいの好きじゃないじゃから気にしないし」
2人が座った所で仲居さんが湯呑に入ったお茶とメニュー表、おしぼりを持ってきた。各自メニューを注文すると、ローザは本題に入っていい?と問う
「はい。大丈夫です」
「わかったわ。まず飯田さん。ズバリ聞くけど山岸くんに自分「が」犯される話を聞かせてたのよね?…正直に言ってちょうだい?」
里帆は一瞬ためらう。横目でちらっと高成を見ると観念したようにこう云った
「はい。でも全部嘘なんです。私の作り話なんです」
「…そうなの?他人から聞いたとかじゃなくて、全部飯田さんの作り話?…嘘じゃなくて?」
「はい。嘘じゃないです。参考程度にAV見たりはしましたが…一応全部私が考えた話です。」
「そう…じゃあ、なんで?」
里帆は真っすぐにローザの目を見ていった
「山岸くんの事が特別で…好きだからです」
「…その気持ちに嘘偽りはないわね?」
「はい。無いです」
里帆は力強く即答した。少し間を置いて、ローザが続ける
「じゃあ…誰ともセックスしなかったって事?」
「はい」
「どうして?…正直、辛くなかった?」
里帆は一度口をつぐむが、臆することなく気持ちを述べた
「…辛くなかったと思えば嘘になります。でも、それ以上に山岸くんへの気持ちが勝っていたと思います」
「ふーん…そう…一途なのね。そして自分でストーリーを考えて山岸くんに伝えた、と…。飯田さんはもしかして何か小説でも書いたしてるの?山岸くんも何か知ってる?」
その問いに対しては里帆は否定する。高成は文化祭で看板製作時に彼女がイラストを描いたりしていたのを思い出し、それを述べた
「…もしかして飯田さん、そういう才能があるんじゃない?私が言うのもなんだけど。」
「え?」
同じタイミングで高成と里帆が驚いた
「…そうだ。飯田さん。これまで山岸くんに伝えた犯された話を使って物語書いてみたら?」