※この作品はR-18です。

NTR同人誌の世界で竿役を始末しながら人理を救う   作:成間饅頭(旧なりまんじゅう)

3 / 6
第三話

 

 転生してから、NTR系の同人誌を読むようにしている。奴らの生態を理解して、なんとか生き残るためだ。

 

 古今東西あらゆる人間の中でも、NTR同人誌をそんな動機で読んでいる奴は俺一人だけだろう。

 寝取られ系同人誌の世界に転生してしまった俺にとって、これはエロ本ではなく生存戦略を立てるためのバイブルなのだ。学術的な視点で見ている。エロ本を学術的に見るってなんだよ。バカじゃないのか? だが世界の方がもっとバカなのでどうしようもない。

 

 エロけりゃいいねんの精神で書かれたこれら同人誌には、ちょっと待てお前本当にそれでいいのかと思うような眼を疑う奇行がいくつも登場する。彼女とチャラ男が一緒に歩いてても「……勘違い、だよな……?」と見て見ぬふりをする主人公、内申書を餌に女学生に迫る体育教師、何故か盗撮写真で脅迫が成立すると思っているチャラい不良、そして更に何故かそれに屈してしまう女。

 

 お前いくらでも彼女と話すチャンスあるんだから彼女が悩んでそうだったら突っ込んで話聞けよとか内申書って実際入試の中でそんな配点高く無いだろ体育の内申がよかったところで入試どうにもならんわよくそれで交換条件いけるとおもったなとかなんでお前らは犯罪行為をしても後で堕とせばオーケーだよなの精神で生きてるんだ法律を守れ地元の権力者に繋がっててもちょっと警察に相談されたりネットに上げられたりしたらそいつ含めて即逮捕炎上で一生デジタルタトゥーえぐいぞとかなんでお前の頭の辞書には警察と弁護士という単語が存在しないんだ脅迫してくる教師とか不良なんてガバガバのガバなんだからお前の立ち回り次第でいくらでも勝てるんだぞとか、言いたいことがいくらでも出てくる。

 

 いや、仕方のない事なのだ。読者がエロを望み、作者がそれに応えた。この美しき需要と供給の円環の中で、ちょっと無理のある展開や思考回路があってもそんな事は些事に過ぎない。

 

 俺が読者だったら気にも留めなかったろうが、しかしこの世界に転生してしまった身としてはこんな地獄みたいな世界も中々ない。

 

 今読んでる本では、新婚旅行に行った夫婦がナイトプールではぐれた事をきっかけに妻がチャラ男に寝取られていた。いや普通に強姦だろ、ナイトプールも一発で営業停止だわと思うが、そんな事を愚痴っていても生き残れないのだ。

 

「……あれだな、コイツらは何かにつけて夫とか彼氏に見せつけようとするな。……これは、何かに使えるのでは?」

 

 知見を得た。こうやってエロ本の中から役に立つ情報を選別する作業、まるでゴミ山から砂金を探すような徒労感があるな。

 チャラ男系の竿役は「イエーイ、彼氏くん見てるー? 今から君の彼女喰っちゃいま~すw」という感じに、男側に精神的ダメージを与えようとする傾向が強い気がする。何故かは知らん。彼らの文化だとそれが面白いのだろう。

 

 つまりこの習性を利用すれば……うーん……なんかこう、証拠をつかむ的な感じで……いや、そもそも既にビデオレターとか届いてるしな……。

 

「駄目だな、なんも使えんわ」

 

 砂金を発掘したと思ったら全然ゴミだった。はいはいやめやめ。同人誌を閉じて、今日の勉強は終わり。

 

 

 

 

 

 NTRビデオレターというものがある。

 帰省したきり連絡がつかなくなった彼女。ある日差出人不明のビデオテープが届いて、その中には彼女の痴態が……! という奴だ。VHS機器なんてはるか昔の録画媒体が名前に付けられているあたり、発祥はそこそこ古いのだろう。今の時代に差出人不明のUSBが届いたら、それ普通にウイルスだもんな。絶対パソコンに挿さない。

 

 そのNTRビデオレターが、なんとだいたい週一で俺の所に来る。

 

 ふざけるな。

 

 この世界からビデオという文明だけを焼却してやりたい気分だが、多分それをしたところでどうにもならない。どうせまたVHSテープが無から生えて来るに決まっている。知ってるんだからな。

 

 何が悲しくてNTRビデオレターを週刊で見なきゃならんのだとは思うが、このNTRビデオレター、なんと見ずに捨てたら次の日にもう一度送りつけられてくるのだ。呪いの人形かよ。呪いのビデオレターならまだ怖そうだが、呪いのNTRビデオレターとなるともう怖くもなんともない。変な笑いが出て来る。これを俺に見せるためにダビングを繰り返す竿役の姿を想像すると涙が出そうだ。その根気、絶対ほかに使い所あるって。

 

 何がお前をそうさせるんだ? その執念はどこから来るんだ? お前が子供の頃を思い出してくれ。お前、やってる事完全に異常者だからな。お前がまだ幼く、純真無垢だった頃の夢はなんだった? わざわざ苦労して寝取って得た恋人の痴態を撮影して他人に送り付ける事がお前の将来の夢だったのか? 本当に? もしそうだったとしたらレイシフトして殺してやるからな。

 

 人類最後のマスター。人理を救う、人類最後の希望にして救世主。そんな俺にわざわざNTRビデオレターを送りつける意味が本当に分からない。どういう屈折を経た破滅願望なんだ? 何がお前をそうも駆り立てる?

 

『いえーい、マスターくん見てる~~~? 今から君の大切なサーヴァントちゃんとセックスしまーすw』

『マ、マスター、ごめんなさい……私、もうこの人のおチ〇ポじゃなきゃ満足できないんです……♥』

 

「えーと……ああ、職員の○○さんか。うわ、腹めっちゃブヨブヨじゃん」

「マスター、はい♡ コーラとポップコーンです♡」

「……? いや、いらないけど……。慣れたからとはいえ、これでポップコーンボリボリ貪ってたらヤバいでしょ……」

「あら、じゃあ私だけ失礼して……♡」

 

 いつの間にか背後にいたキアラは、そのままソファの反対に座ると彼らの生命の営みを見ながらポップコーンを食べ始めた。勝手にマイルームにいる事はもういいとして、いくら何でも振る舞いが自由過ぎるだろ。

 

「いつものですか、マスター♡」

「そうそう、週刊のやつ。いっつも思うんだけどさ、これを送りつけて俺にどうして欲しいんだ? 毎回不思議なんだけど。これを送ってくる奴の心理状態って異常じゃない?」

「うふふ♡いつの世も、オスは手に入れたメスで己の価値を示すものですわ♡ 今や人類最後の希望となったマスターを羨む人間はことのほか多いのです♡ だからあなたのメスを奪い、我こそはあなたを凌駕するオスであると、自らの価値を示したいのです♡」

「……? まったく分からん。どういうこと? 非常に屈折した闇のホモってこと?」

「うふふ、そう言われてしまっては彼らも形無しですねぇ♡」

 

 こういう時、たいていキアラは適当な事を言ってるだけなので真に受けてはならない。元セラピストの経歴を持つだけあって、咄嗟にホラを吹く事に関しては超一流なのだ。

 そもそもサーヴァントって別に俺の物じゃないし。わざわざ英霊の座から人類を救いに来てくださった皆さんをアクセサリー扱いとか、なんて言い草だよ。

 

『お゛っ♥ チ〇ポぉっ♥ このおチ〇ポ様に忠誠を誓います♥ 私はこのおチ〇ポ様の忠実な肉便器ですっ♥♥』

『……って事なんでぇ、君の大事なサーヴァントちゃんはもう俺のもんになっちゃいました~~w こんないい女が近くにいて手も出さなかったヘタレマスターくんはぁ、一生ひとりで頑張ってて下さ~いw』

 

「いい女……? どうも俺とこいつでいい女の認識が違うみたいだな」

「ふふふっ。ちょっとマスター、笑わせないでください♡」

 

 ゴブリンに負けて触手に負けて現地人のおっさんにもクソガキにも負けて、じゃあもうお前逆に何なら勝てるんだよって奴らがいい女……? ちょっと何言ってるのかよく分からないが、このビデオに映るチャラ男くんがいい所探しの天才であることだけはよく分かった。

 

『このビデオはぁ~、コイツがもうマスターの事なんてどうでも良いってとこまで堕ちきった時に送りまーすw つまり今これをマスターくんが見てるってことはぁ、もうコイツはお前の事なんてどうでも良くなっちゃったってことで~~すwww ギャハハハハハハww』

 

「わーすげー。かなり大爆笑」

「うふふ、私はとっても面白く見てますわ♡ 丁寧に編集してあってとっても見やすいですし?」

「コイツら、何でか知らないけどカメラのピントはズレないし画面全体の構成とかカラーバランスもちゃんとしてんだよな。カルデア職員って全員映画業界から採ったの?」

 

 人生を張ったピンネタを見せてくれてどうもありがとうな。君たち、週一はちょっと公演回数多すぎるからもっと減らしてくれていいよ。

 

「……キアラ、これ見てポップコーン進む?」

「はい、とっても♡ 人生を懸けた見世物ですもの、楽しまなくては損ですわ♡」

「そうかー……俺はちょっと無理だなー、グロ画像見ながらご飯って食べれないタイプで」

 

 画面の中では、チャラ男とサーヴァントが関節どうなってんねんと思うような体位で躍動している。お、今の構図凄かったな。このチャラ男、映画監督が天職だったんじゃないのか? なぜ竿役の道を選んでしまったのか。

 

 その後もチャラ男はサーヴァントに俺を罵倒させながらヤったり、土下座させた頭を踏みつけたり、なんか色々頑張っていた。観客を飽きさせまいとするエンターテイナー魂を感じたよ。知らんけど。

 

「……あ、終わった」

「うふふ、今回も力作でしたねぇ♡ 私、よく考えればこのサーヴァントの方とマスターがレイシフトしたのってたった一回だけって事に気付いてから、より一層愉しめましたわ♡」

「その一回でゴブリンの巣に突っ込んでったからな。あの時はしんどかったなー……。ゴブリンの他にも触手とか色々いたし。……そうか、この人ゴブリンにもチャラ男にも寝取られてるのか」

「うふふ、二冠達成ですね♡ それにしても、そんな方でもあなたに向けてこんなものを送ってくるなんて……マスターも、随分慕われているものですね♡」

「ヤな好かれ方だな……。そんな事言ったら、一回なんの面識もないカルデア女職員のNTRビデオレターが送られてきたこともあったぞ。その時ばかりはどういう感情になればいいか分かんなかったね」

 

 知らない男と知らない女がセックスしてる映像、もうただの出来の悪いAVじゃんね。あの時はこいつらがどういうつもりでこの映像を送りつけてきたのかほんとに分からなかったな。考えに考えた挙句、『カップル同士のそういうプレイ』って事にして自分を納得させたんだったか。

  

「後にも先にもビデオレター関係で犠牲者が出なかったのはあの時だけだね。カルデア職員同士のカップルが誕生したっていう微笑ましいニュースだったよ」

「うふふ、なんともすぐ破局しそうなカップルですね♡ ……では、行きましょうか♡」

「了解。 えーと……○○の部屋はすぐ近くだな。手間が無くて助かるわ」

 

 なんで個人情報満載のビデオレターを送ってしまったんですか?(現場猫)。

 人類の切り札である英霊召喚。それによって呼び出されたサーヴァントを私物化するとどういう報いが下るか、きっちり教え込んでやるからな……。

 

 

 

 

 その後、チャラ男職員はカルデア倉庫の警備員という栄誉ある仕事に名誉の転職を遂げた。

 

 だいたい同じ流れだ。少し前に聖杯を拾ってサーヴァントを洗脳していたカルデア職員をアミダアミデュラしたことがあったが、彼と言っている事もだいたい一緒だった。

 

 『あんなエロい体見せられてよ、男なら我慢できる訳ねぇだろ!』とか『テメェが手を出さねぇなら俺がやってやったんだよ!』とか、クスリやってんのか? と思うくらい支離滅裂な自己弁護を披露いただいた。お前が男全体を語るなよ。主語のデカさには要注意ですぞ。

 

 あ、何でわざわざビデオレターを送ってきたの? って聞き忘れたな。それよりも彼が映画業界にいたかどうかが気になってしまって。あのフォトショの技術、どこから生えてきたの? また無から?

 まあいいや。もしキアラが言っていた通りに屈折した闇の感情だったら最悪だし。

 

『いいか? この遊園地を一晩掃除してくれたら、俺はアンタの車の修理費をチャラにしてやる。明日また迎えに来るからな』

『あなたを助けに来たの! この遊園地は呪われてて、マスコットが人間を襲うの!……って、何で無視するのよ!』

 

 画面の中ではムキムキマッチョの清掃員が、襲ってくる怪物たちをその有り余る筋肉で返り討ちにしている。あ、ゴリラが粉々に解体されて便器に突っ込まれた。

 

「……やっぱ、見るならこういう映画が一番だよな。あ、ポップコーンありがとね」

「どういたしまして♡ ふふふ、私こういう男性もタイプですわ?」

「へー。……あれだな、こういう奴ならオスがどうだこうだ言われてもあんまり気にならないかも」

 

 やっぱり言葉って何を言うかより誰が言うかだよね。

 あと、映画を見ながら飲み食いするコーラとポップコーンは最高。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。