TS転生っ娘とへんたいお姉さん 作:ニンプキン
夏休みに入ってから数日経ったある日。
宿題を進めていた綾奈の部屋に従姉が入って来た。
「あやちゃん、ショッピング行こ?」
「えっ」
綾奈はあまり遠出をしない。どこへ移動するにしてもトイレの問題が付き纏ってくる都合、自然と家から出なくなっていた。学校の行事で外に出ても、その半分はトイレで過ごしている。
だから従姉が誘ってくれた時は不安の方が大きくて、それでも断りたくなかったから頷いた。
「あやちゃん、お腹大丈夫?」
「……うん」
バスに揺られながら、綾奈はお腹の上に乗せられた従姉の手を握る。白のワンピースの上からカーディガンを羽織った格好は夏にふさわしくないように見えるが、バスの冷房に対抗するためには必要な服装だった。
とはいえ普段ズボンを履いている綾奈にとって、ワンピースは少し冒険し過ぎたかもしれない。従姉が嬉しそうにするから休みの日はスカートを履くようにしているが、素足が擦れる感覚に慣れる気配は無かった。
キュルルルル……コポコポッ
「っ、」
お腹が動く感覚がして、綾奈は背を震わせた。バスの中でお漏らしなんてしてしまったら、取り返しのつかないことになる。
「次の駅で降りるよ。トイレも近いから、もう少しだけ頑張れる?」
従姉の言葉にこくりと頷いた。少し緩んでしまったみたいだけれど、我慢できないほどじゃない。綺奈は窓の外を見て、気を逸らそうとした。
バス停に着いてバスから降りると、蒸し暑い空気が肌を包んだ。下手に涼しいよりも、暑い方が安心できる。
「トイレあっちだよ、あやちゃん」
小走りになるとワンピースの裾がひらひらと当たってくすぐったい。その上めくれでもしたら下着が見えてしまうかもしれない。
「空いてるよ」
「うんっ」
綺奈は急いで奥の個室に入り、ワンピースをたくし上げる。押さえながら下着を下ろすと、ほとんど力を入れていないのに柔らかな便がずるりと落ちた。思ったよりも限界が近かったようで、間に合ったことに安心してほっと息を吐いた。
「んっ、」
ポチャポチャ、ビチャチャ、シュイィ――ッ
緩い便の後、無意識におしっこが漏れて落ちていく。お腹の中が軽くなっていく感覚に、綺奈は気持ちよさそうに目を閉じた。
何度か力を入れて残ってないことを確認した綺奈は念入りにふき取ってから個室を出る。従姉は掲示板を眺めていたが、綺奈が近づくとパッと笑顔に変わった。
「早かったね」
「うん。あんまり酷くなかったし」
「そう?」
「平気、だから」
緊張気味に答えを返す綺奈に、従姉は落ち着かせるように頭を撫でた。そもそも私用で出かけることも稀なせいで、敏感になったお腹がストレスを感じているのだ。
半歩だけ従姉の方に寄った綺奈は冷気が満ちた店内で深呼吸を繰り返した。頭の上と体の近くに従姉の体温を感じて、少しずつ気分が落ち着いて行く。
「……もう大丈夫」
「うん、わかった。でも無理しないでね」
綺奈はその言葉にこくりと頷いた。我慢し過ぎて迷惑をかけるより、少しでも違和感があったら言うこと。それは従姉との約束だったが、信用できる人の少ない外ではあまり守れていない。
「今日はどこに行くの?」
誤魔化すように綺奈が尋ねると、従姉は自慢げにスマホの画面を見せてきた。そこにあるのは『湯あみ着』の文字。記憶にない言葉に、綺奈は首を傾げた。
「ゆあみ……?」
「お風呂に入る時に着る服なんだって。あやちゃんと一緒に入りたくて」
「!」
綺奈がプールに入れないから気を遣ってくれたのだろう。
綺奈は申し訳なさと嬉しさが入り混じった表情を浮かべた。
「……ついでに私の水着も選んでくれたらなぁ~って」
「わ、わたしで良いなら」
「あやちゃんが選んでくれる水着だもん。行こ!」
僅かに曇った顔を見て、従姉は殊更に明るい声音で綺奈の手を引いた。温かな手に包まれた綺奈は安心したように眉を下げて、従姉の後に続いて行った。
湯あみ着があるのは水着売り場の一角だった。綺奈はこの体になって以降実店舗で買い物をすることが増えたが、女性専用の場所に入るのにはまだ勇気がいる。今回は勢いで入ってしまったため、あまり悩むこともなかったが。
「あやちゃんはどれがいい?」
「わたしはこの、ワンピースのやつ」
「いいね。こっちのリラックス・ウェア? とかどう?」
何着かを選んだ二人は試着室へ向かった。従姉の水着も選んだのだが、露出の多いものを手に取っていたためあまりよく見られなかった。
先に入っていいと言われた綺奈は下着姿になってワンピースを手に取った。冷房が控えめなのがありがたい。
「どう、かな」
「かわいいよ。似合ってる」
下着の上に着る都合上不格好になりがちだが、それでも従姉は手放しで褒めてくれる。次に着たのは肩がむき出しになるもので、鏡の中の姿を見て恥ずかしくなってしまった。
「あやちゃん、大丈夫?」
「あ、うん」
外に出るまでが長くて従姉に心配されてしまった。手早く着替えて外に出る。
「どっちがいいかな」
「う……迷ってる」
「いいね。それじゃあ次は私の番だね」
◆◆◆
好きでもないクラスメイトと遊ぶ約束をしてしまってショッピングモールに来た私は、見事に待ちぼうけていた。待ち合わせをしていた場所に彼女たちは現れず、それどころか連絡もない。
来週学校に行ったら、どうせ『ごめ~ん』とか言って済ませる気なんだろう。
そう思って帰ろうとした私の足を止めさせたのは、知らない女の人に連れられて水着売り場に入って行く綺奈ちゃんの姿だった。
あの綺奈ちゃんが水着を買いに行くというのが想像できなくて人違いなんじゃないかと思ったけど、前に私があげたヘアゴムを付けていたからきっと本人だ。
私は気づかれないように、そして怪しく見えないように綺奈ちゃんの方に歩き出した。遠目に見た綺奈ちゃんは学校じゃまず見ない綺麗な笑顔を浮かべていて、出来ることなら女の人と場所を変わりたかった。
そのまま私も水着を見るふりをしてお店に入ると、タイミングが悪く綺奈ちゃんが試着室に行ってしまった。こっそり付いて行くにしては遠すぎるし、中で鉢合わせてしまうかもしれない。
控室から聞こえてくる女の人の少し高い声だけが、綺奈ちゃんの姿を想像させる。
綺奈ちゃんはどんな水着を着るんだろう。さっき着てたのと同じワンピース? それともセパレートだろうか。あの細い体がぴったりとした水着に包まれるというのは、ちょっと刺激が強すぎる気がする。
こうして綺奈ちゃんが出てくるまでの時間を過ごそうと思っていたけれど、そろそろ我慢できなくなってきた。ほんの少し、ほんの少し覗くくらいならバレないんじゃないかな。
一応言い訳用に水着を持って、試着室に向かう。すると綺奈ちゃんは外のベンチに座っていて、ワンピースの裾から覗く細長い足を揺らしていた。
「あれ、もしかして綺奈ちゃん?」
不自然じゃなかったかな。声を掛けてからそう思った。でも綺奈ちゃんは言っちゃ悪いけどあんまり人と話さないから、これでも騙されてくれる、はず。
「えっ……由希ちゃん?」
「うん、久しぶり!」
「久しぶり……? えっと、誰かと一緒なの?」
会わないうちに伸びた髪が、肩の上で揺れた。うーん、やっぱり綺奈ちゃんは髪を伸ばした方が似合ってる気がする。短い方が好きなのかもしれないけど、お願いしたらそのままでいてくれたりしないかな。
「ほんとは友達と遊ぶ予定だったんだけど、来られなくなっちゃったみたい。綺奈ちゃんは?」
「えっと、わたしは、」
「あやちゃん、どうかな? ……あれ?」
シャッと軽快な音を立てて、唯一閉まっていたカーテンが開く。綺奈ちゃんと一緒にそちらを見ると、抜群のプロポーションを見せつけるかのような水着を着た女の人が立っていた。
ていうか『あやちゃん』って、何?
「お友達?」
「う、その、」
「はい、そうです」
綺奈ちゃんは私を友達と言うのに抵抗があるみたいだ。もっと仲を深めないと。
で、『あやちゃん』って何?
「もしかして、『ゆきちゃん』?」
「! はいっ」
「そっか~、あやちゃんと仲良くしてくれてありがとね」
綺奈ちゃん、家で私の話をするんだ。しかも結構好感触みたい。
恥ずかしそうに頬を染める綺奈ちゃんを横目に見ながら、私は緩みそうになる口元を押さえつける。お姉さんはすぐに引っ込んで服を着ると、カゴを持って出てきた。
「ゆきちゃん、お昼ご飯は食べた?」
「え、まだですけど、」
「一緒に食べない? ジュース買ってあげる」
「へっ?」
私と綺奈ちゃんはお姉さんに連れられて、フードコートに向かった。私とお姉さんはハンバーガーを、綺奈ちゃんはうどんを買って席に着く。ジュースは断り切れずに一番小さいサイズを買ってもらった。
「いただきまーす」
「いただきます」
「い、いただきます」
つるる、と白い麵が綺奈ちゃんの口の中に吸い込まれた。細い喉がこくんと動いて、少しずつうどんを食べていく。私も冷めないうちにハンバーガーを食べ進めるけれど、綺奈ちゃんの様子が気になって仕方がない。
一生懸命麺をすすって食べる姿は、小動物のようで可愛らしい。そういえば背が伸びないことを気にしてたっけ。私はどんな綺奈ちゃんでも好きだけど、もしかしたら成長して体が丈夫になったりするのかな……それはちょっと、嫌だな。
「ごちそうさまでした! ちょっと片付けてくるね」
お姉さん、食べるの早いな。ゆっくり食べてる綺奈ちゃんはともかく、私だってまだ半分も食べてないのに、
「待って、おねえちゃん」
「……ぇ?」
「大丈夫。置いてったりしないから」
今のは、本当に綺奈ちゃんなのだろうか。あんなに甘え切った声色で、いや別に嫌いではなくてむしろかわいいと思うけど……信じられない。それに対するお姉さんの対応も、慣れているようなものだった。まさか家ではいつもあんな感じなのか。だとしたら、羨ましいなんて言葉では表せない。
あんな風に見上げられたらまともな返事が出来るかどうかわからないけど、それでも、いつかあの声で名前を呼んでほしい。そう思った。
「……ごちそうさまでした」
結局一番時間がかかったのは綺奈ちゃんだった。わかっていたことではあるけれど、私たちを待たせてしまうことを気遣ってか、途中から明らかに急いで食べていた。あれだと帰ってからお腹を壊してしまうだろう。いや、もしかしたらすぐにでも……
「それじゃ、帰ろっか。由希ちゃんはまだ用事ある?」
「私も帰ります。バスが途中まで一緒なので」
「うんうん、一緒に帰ろう」
お姉さん、ずっとにこにこしてる。私が綺奈ちゃんと喋ってるせいで荷物を持ってるだけになってるのに。でも、あんなにお姉さんに懐いている綺奈ちゃんが私と話してくれるのはちょっと嬉しい。
「あ、バス来てる」
お姉さんの言葉にバス停を見ると、時間前なのにバスがゆっくりと近づいてきていた。今なら走れば間に合うかもしれない。
「行こう、綺奈ちゃん」
「うんっ」
ぱたぱたと駆け出してぎりぎりで乗り込む。まだ発車まで時間があったからか、結構余裕があった。一番後ろの席に三人で座ると、少し揺れながらバスが出て行った。
ふと隣を見ると、綺奈ちゃんがお腹を押さえている。
「綺奈ちゃん? どうしたの?」
「え、あ……お腹が、ぐるぐるして」
その答えに、思わず唾を飲み込んだ。やっぱり無理して食べてたんだ。それにさっき走ったせいで、お腹の中がかき混ぜられてしまったのだろう。
「あやちゃん、気分悪い?」
「まだ、大丈夫」
そう言う綺奈ちゃんの顔色は不安からか青白くなっていって、気持ちを落ち着けるように深呼吸を繰り返していた。いつその小さな口から汚物が飛び出してくるかと思うと、少しずつ気持ちが高まってくる。
ゴポポ……グゥゥ~ッ
微かに聞こえた音と共に綺奈ちゃんがお腹を抱えた。俯いてしまって顔が良く見えないけれど、薄い肩が小さく上下している。
吐き気と一緒にお腹まで下してしまって、綺奈ちゃんの頭は不安でいっぱいなのだろう。そう考えるとお腹の奥がじんわりと熱くなった。
「次で降りるけど……あやちゃん、我慢できそう?」
「ん……」
ぎゅう、と綺奈ちゃんのお腹に回された手に力がこもった。
私はあと三つ先のバス停で降りるから、綺奈ちゃんが戻してしまったりお腹を下しながら帰るところは見られない。だから、友達として最低なことを願ってしまう。綺奈ちゃんが我慢できませんようにと。
「降りるよ。立てる?」
「うん……ぁ、由希ちゃん、またね」
「またね。その、お大事に」
結局、綺奈ちゃんが失敗することはなかった。窓越しにお姉さんに支えられながら歩いて行く綺奈ちゃんを惜しみつつ、下腹部に伸びそうになる手を必死に押さえつけた。
◆◆◆
「ふぅっ、うぅ……」
ぎゅるぎゅると音が聞こえるほどお腹を壊したあやちゃんが、一歩一歩歩いて行く。私の両手は荷物で塞がっているから、背中を撫でることもできない。
「もう少しだからね」
「あ、」
もう返事をする余裕もないみたいだ。ゆるく纏められた髪が肩から落ちて、冷や汗が首筋を流れていくのが見えた。
ブビッ、ブビビィッ!
「ゃ、」
ぴたりとあやちゃんが立ち止まった。水っぽいおならの音が、あやちゃんの限界が近いことを示しているようだった。
家はもうすぐそこに見えている。後はどれくらい我慢できるかだけど、
ブジュッ!
「あ、ぁ……!」
「あやちゃんっ!」
ワンピースの布越しにつんとした臭いが漂ってくる。久しぶりのおもらしに高ぶる気持ちはあったけれど、こんな道路のど真ん中でしたらあやちゃんは今度こそ立ち直れなくなってしまうかもしれない。
無理やり荷物を片手にまとめて、あやちゃんの背中を押す。そしてなんとか玄関に入った時、それは訪れた。
ブビュビュッ、ブヂュッ、ビヂビヂビヂッ!
すっかり力が抜けて膝をついてしまったあやちゃんのワンピースの中から、すっかり水のようになったうんちが漏れ出す音がした。荷物を放り出してあやちゃんの体を支えてやると、荒く息を吐きながらもたれかかって来た。
「ごめ、なさ……」
「大丈夫。このままでいいからね」
少し重くなってきたあやちゃんを持ち上げる。汚れないようにスカートの中に手を入れると、ひたりと濡れたような感覚が手に付いた。
「っぷ、う」
「ごめんね。今お風呂に行くから」
靴を脱いでお風呂場に走る。あやちゃんは靴を履いたままだけれど、私が運ぶから大丈夫。それよりさっきの声は吐く一歩手前くらいだったから急がないと。
「着いたっ!」
「げぷっ……う、ぇ、げえっ!」
胃液と一緒にぐちゃぐちゃに溶けたうどんが床に撒き散らされる。四つん這いになったあやちゃんの背中を擦りながら、ワンピースの裾をめくり上げた。
ショーツのお尻の部分がこんもりと膨れていて、隙間から茶色い筋として漏れ出ている。私の手にも、さっき抱き上げた時に下痢が付いてしまっていた。
「あやちゃん、一旦服脱がせていいかな」
お湯を出して口元を洗ってからワンピースを脱がせる。その間にもお尻が気持ち悪そうにしていて、ショーツを下げると惨状が良く分かった。
あやちゃんのお尻の間には泥状のうんちがべったりとついていて、前の方にまで汚れは及んでいる。足を上げてもらって下着まで脱がせてしまうと、汚れたお尻を向けてくるあやちゃんの姿がやけに艶めかしく見えた。
「おねえちゃん?」
「あ、ごめん。もうお腹大丈夫?」
「……うん。全部出しちゃったみたい」
普段と違ってお腹を壊した原因が出てしまったからか、意識が朦朧としているなんてこともない。その分恥ずかしさは一入のようで、青白かった顔がほんのりと赤みを帯びてきている。
「お尻拭くね」
「ぁ……うん」
お尻にお湯を掛ければ出したばかりだからみるみるうちに汚れが落ちていく。そっと指を這わせてみると、あやちゃんの体がびくりと震えた。そのまま大事なところに進んで行こうとする内に、裸の胸がぷっくりと膨れているのに気がついた。
(あやちゃん、もしかして)
まだ毛も生えていないそこをそっと割り開くと、あやちゃんは大げさに反応した。そのせいでシャワーを掛ける場所がずれて大事なところに直接かかってしまう。
「ひぁうっ!?」
どたりとあやちゃんの体が崩れてお風呂場の床に倒れた。慌てて顔を覗き込むと、目が涙で潤んで頬は真っ赤になっている。
「いま、の、」
あやちゃんは明らかに混乱していた。体を起こすことも出来ずに、目だけが私と私の指の間を行き来している。……このままごめんねと謝ってなあなあに済ませてしまうこともできる。でも、
「あやちゃん、明日お休みだよね」
「そ、うだけど」
「うん……今日の夜、私の部屋に来て。その時に説明するから」
「え? あ、うん……うん?」
よくわかっていなさそうなあやちゃんを起き上がらせて、全身を洗い流す。体調は回復してきたみたいだから着替えは自分でしてもらって、その様子を横目で覗き見た。
そっとお腹に当てられた手がいつもとは違う意味を持っているように見えて、改めて自分が怖くなった。私はもうとっくにおかしくなっているのかもしれない。
だって、夜のことが今から楽しみで仕方ないのだから。