※この作品はR-18です。

導帝と108の夫婦   作:どるき

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レクチャー

 自室に戻ったラードたちに先駆けてスザク演舞場に向かったマックらは軽い体操で身体を温めようとするのだが、それを見て早速ファラはダメ出しをした。

 

「そんな生真面目に準備運動をする余裕は戦場には無いわよ。うちらの準備運動はコレで充分」

 

 コレとは愛する夫との軽い前戯である。

 説明しながらロマニに抱きついたファラは胸を押し当てながら上目で彼を誘い、彼もそれに応えるようにお尻を鷲掴みにして持ち上げて唇を重ねた。

 マレーネは自分が人前でやるのは気恥ずかしいとは思いつつも知識としては純藍の夫婦はこういうモノと知っていたのだが、そんな知識もないマックは当たり前のように赤面する。

 破廉恥な先輩だと言う意味も勿論あるが、それ以上にマレーネと同じようにキスしたら興奮しそうだという意味で。

 なので今回はマックが先に手を出した。

 

「──俺らもやろうぜ」

 

 マックは膝を曲げて背の高さを合わせると、がっつくようにマレーネの可愛い顔に唇を重ねた。

 初夜での初キスとは異なり唇を重ねるだけの軽いプレッシャーだが、それだけでもスティグマに熱いものが込み上げてくる。

 先輩方が言うように全身がほぐれて、これから愛するパートナーと抱き合うのだと身体が訴えかけてくるようだ。

 だけどこれからやるのは戦いのレクチャーなのでベッドの上での戦いはしばしお預け。

 どうやらこの込み上げた力をえっち以外にどう使うのかがレクチャーのキモのようだ。

 

「マレーネはこういうのは恥ずかしがるから心配していたが、いい男と夫婦になれたものだ。お兄さんも嬉しいよ」

「家族自慢は後にしましょうよ貴方」

「それもそうだな。では早速だが二人は俺に対して好きなように攻めてみてくれ。まずは今身体の中を駆け巡っている血潮に身を任せてな」

 

 ロマニが言うようにマックもマレーネも身体の血が鼻血が溢れそうなほどになっていた。

 言われるがまま挑むのが力を扱う第一歩ならば従おう。

 先手はマックが夫として妻の盾になぞらえて切り出された。

 

(俺から挑みかかるから、マレーネは隙を突いて術法で援護してくれ)

(了解)

 

 シヴァの加護による夫婦間のテレパシーで意識合わせをしてからマックは飛びかかる。

 キスで補充したスティグマによって得られる精気の力──又の名を気愛いと呼ばれるエネルギーを乗せた蹴り足は急な坂を駆け下りるような加速をマックに与えて、腕組みをして待ち受けるロマニの懐に1秒にも満たない時間でたどり着かせた。

 そのままマックは顎を狙ったジャンプアッパーを遠慮なくぶちかます。

 

(これなら行ける)

「なかなかいい筋をしているようだ」

「あだっ!」

 

 マックは手応えを感じたのだが、そんな自信を砕くかのようにロマニは組んだ腕から取り出した双剣で十字受けをして腕を弾いた。

 この剣は実体ではなく気剣と呼ばれる剣の形に形成した物理的な干渉能力を持たせたエネルギー体である。

 柄だけの術具を用いたり何らかの術法で柄も含めて生成したりと種類はいくつかあるのだが、威力の調整が容易なことで特に模擬戦での用途に重宝されていた。

 術法を苦手とするマックはロマニが空手だったのを知っていたので突然の気剣に面を食らったのだが、この剣こそシヴァの加護の力の一つ。

 気愛いを固めた精剣がロマニの手に握られていた。

 

「俺が気剣を出したのに驚いたようだな」

「さっきまで何も持っていなかったのでね」

「マクシミリアンくん……コレが頭になかったあたりキミはどうやら術法が苦手なようだね」

「そういう先輩はあれだけ瞬時に剣を出せるということは術法がお得意なようで」

「いやいや、これはシヴァの加護によって作った精剣だ。あれくらい出来ないと純藍では一人前と認められないよ」

(おしゃべりは後。弓で撃つからマックはタイミングを合わせて伏せて)

「後でやり方を教えてくださいよ」

「それは当然──」

(今よ!)

 

 マレーネは術法に疎いマックをよそに、彼の背を目隠しの壁にして射撃術法の準備をしていた。

 弓とはエネルギーの矢を術法で加速して打ち出すボーゲン。

 相手に当たれば霧散するかわりに衝撃が内蔵を駆け巡るように調整した矢がロマニを襲う。

 だがマックらが合図を送ったようにロマニも妻であるファラとは当然繋がっている。

 彼女の目を通してマレーネの狙いもお見通しであり、ロマニは的確に矢をさばいた。

 

「スタン封じにはデコイ。マクシミリアンくんはよく見ておけよ」

 

 ロマニは右手の剣を横に構えたあと、空間を掻きむしるように腕を振り下ろす。

 すると彼の手を離れて回転する剣が円盤に変化して、マレーネの矢を防ぐ盾となった。

 デコイと言うように防御力は高くないのだが、マレーネが放った矢は下手に剣先で弾いても衝撃を受けてしまう。

 ロマニが取ったように触れずに遮るのが一番被害が少ない。

 

「マレーネの方は義務隊でよく勉強をしてきたようだけどまだ経験不足は否めないか」

「あん!」

 

 そして残った左の剣先をマレーネに向けると、炸裂音と共に射出された切っ先が彼女の胸に突き刺さった。

 先程マレーネが放った矢と同室のスタン攻撃に痺れた彼女が漏らす声は艶やかだが、その音色に聞き惚れる暇など今のマックにはない。

 伏せていた身体を起こす頃には新たな剣を生成し終えていたロマニがチェックメイトとして剣先を彼の頭に軽く押し当てていた。

 

「今のキミらの力量は概ね理解した。とりあえずマレーネはファラに色々と教わるといい」

「じゃあ俺は?」

「キミは俺と特訓だよ。一通り精剣を操れるように基本を覚えないとお話にならないしね」

 

 ロマニのお節介によるレクチャーはこのあとしばらく続き、かれこれ昨日からろくに食べていない胃袋が悲鳴を上げたのは10時を過ぎた頃。

 ある程度は加護の力による体力回復が空腹を紛らわせていたが流石にもう限界である。

 やれることはやったので今夜は夕飯をしっかり食べて明日に挑め。

 ロマニは食堂に二人を案内し、マレーネは3年ぶり、マックは初めてとなるアモルテル城の食事に舌鼓を打った。

 出てくる料理がいわゆる性がつくものばかりなのはご愛嬌だろう。

 マックはもちろん、マレーネだけではなく案内をしたロマニとファラも今夜は激しいことになりそうだ。

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