軍配が上がったことでラードはマックを絡め取っていた糸を消して彼を開放すると、妻マリアに駆け寄って彼女に何かを小声で伝えていた。
一方で自由になったマックのもとには、お腹を擦りながら歩いてきたマレーネが声をかけた。
「負けちゃったね」
「実戦じゃないんだし仕方がないさ。それよりもお前の方は無事か? あの子のパンチは滅茶苦茶痛いだろう」
「アタシは平気だよ。むしろアンタの方こそあんなに高く飛ばされたくらいだから心配だよ」
「それは……まだ少し痛いが大事はないさ」
敗因の主は術法の支援で底上げされていたであろうマリアの戦闘能力と判断したマックらは仕方がないと今回は諦めの雰囲気。
マックもマレーネもパートナーとの相性の良さが身体のキレに反映されているのを自覚したうえで上を行かれたからか脱帽しかなかった。
そんな二人の前に慰めと次の任務の指示を兼ねてロマニが来る。
彼が言うに──
「今日の任務はこれで終わりだ。明日は俺らと一緒に3組合同で初のダンジョンになるから寝過ごすなよ」
次の任務はダンジョンへの遠征であり、その準備時間も兼ねて今日はここまでのようだ。
スケジュールを聞いてそそくさと部屋に戻ったラードたちとと違い、ひとまず空腹を満たすために食堂で腹ごしらえをしたマックたちだったが、試合の疲れと午前中の練習の疲れで眠た顔。
遅れて自室に戻ったマックはドサリと音を立てながらマレーネをベッドに押し倒した。
「部屋につくなり押し倒してどうしたのさ。やっぱり模擬戦に負けたのが気になるのかな? アンタも男の子だし」
急なマックの行動に心臓を加速させつつマレーネは彼の頭を撫でる。
お姉さんとして歳下の旦那様を労る態度のマレーネに対して、顔を彼女の柔らかい胸元に押し当てながらマックは口を開く。
「負けたことなんてイチイチ気にしてねえよ。だけど……俺が至らないせいでマレーネが傷ついたことが悔しいんだ。今日のは模擬戦だから良いけれど、これが魔物相手だったらと思うと俺も流石にな」
「確かに明日から実戦ということは魔物と戦う可能性もあるわね」
「ああ」
「ホント……アンタって以外と臆病よね。自分のことには無頓着なくせに、アタシには優しいんだから」
「育ちのせいか、そういう性分なんだよ。マレーネは俺がこんなふうな性格なのが嫌だったりしないか?」
「アタシのことを心配してくれるぶんにはむしろ好きさ。だけどもう少し自分のことも大事にしておくれよ。アンタはもうアンタ一人の身体じゃないんだし」
「マレーネ……」
「あのさマクシミリアン……ところでなんだけど─」
マックが吐き出したのは「もしマレーネを失ったら」という恐怖心と言うべきもの。
お互いに両親に先立たれているわけだが、マックには親身になって支えてくれる他人がいなかった事や、母と二人で暮らしていた期間もあってか、彼は余計に「大切な人を失うことへの恐れ」が強い。
本来ならばシリアスな泣き言だし、こんな泣き言を漏らすくらいにマレーネとはすっかり仲良し夫婦なのもあるのだろう。
彼女を相手に色をおぼえた彼女専用の雄はこんな時にも彼専用の雌に反応していた。
「アンタのおちんちんがカチコチになって擦れるからこそばゆいよ」
「何だよふざけて……俺は真剣なんだぞ」
「ふざけているのはアンタの身体じゃないか。それともアタシを離したくないくらい身体も正直ってことでいいのかな? だったらアタシも嬉しいんだけど」
「そう……かもな。俺は母親以外の女性に対して好きとか失いたくないと思ったのはお前が初めてだし。それに──」
気持ちを告白する際の一呼吸。
その間は彼のモノを更に強調させる。
「女の身体に魅力を感じたのはお前が初めてだよマレーネ」
「アタシもだよマクシミリアン。アンタのも苦しそうだし、少し早いけれど今日はこのまま寝ちゃおうじゃないか。明日の準備はスッキリしてから考えましょうよ」
寝るというのは気絶するまで互いを求め合う激しいセックスの意味なのは言わずもがな。
顔を埋めた「そうだな」と返事をしてから谷間を出発したマックの頭はマレーネの顔の前に移動して、そのまま唇を重ね合った。