雨が降ってきた。
由美子の身体にポツポツと雨があたる。
幸田は、悠然と煙草を吸いながら待っていた。
目の前の光景は、むごいものだ……。
匠の左の玉が切り取られていたのだった。
生き地獄を味わわせる事こそが、一番ケジメに効くのだ。
雨は、血を綺麗に洗い流す。
由美子の太腿や額に血が流れ落ちる……まさに悪夢でも見てるような感覚。
匠は、切られたが痛みも感じなくなっていた……。
切断面ではどくっ、どくっと言う音が聞こえるような錯覚を覚えるぐらいだ。
切り取られた玉とモノを、匠は持つ。
匠は痛みに耐えながら、必死の思いで雨の中を歩いていた……。
道には、かなりの血の道しるべになっている。
由美子は、匠のその姿を悲しい目で見ていたのだが……。
それを見る幸田は満足げに笑うのだった……。
血まみれで歩く匠。
匠「はぁ!痛い……!イタイ!」と苦悶の表情を浮かべ、目からは大粒の涙が流れていた……。
雨は汚れを洗い流すと言うけど、私の不倫、匠さんの浮気の末路を洗い流してくれないかな……。
雨に打たれている由美子に、幸田は浴衣を着せながら言う。
幸田「身体冷やしたらあかんで。身体に障る。」
由美子「はい……。」
由美子は今頃になって手と足が震えて来る。
「怖い……。自分が自分じゃないみたい……。」
っと呟くのだった……。
私は幸田さんに連れられ戻り子供の様に眠った。
匠さんと誠也さんに復讐を誓ってからあまり寝れてなかったあった。
その後、気を失う様に泥の様に眠った。
ねぇ……匠さん……?
あなたのした事はどう思った?
私を操ろうとしてたのにね?
全部バレてるよ?
……可哀想だけど、不倫を許した私も同罪だわ……。
いつか罰があたる。
その時は、匠さん一緒にね?
それから一週間経った。
家で浩太と優也が眠っている。
あれから匠さんは家に帰って来ていない。
大怪我をして病院にも入院してない。
のたれ死んだのかな?
それとも……愛人の元にいるかも……?
匠さんが帰って来ない間に色んな事があったよ。
誠也さんの奥さん水無月さんが優也を養子にしたいって言ってきたよ。
あっちの世界じゃ男が絶対だから、後継が欲しいらしい。
私は最初は嫌だったけど、本来なら誠也さんの子供なので……誠也さんの所で育てて貰うのが正しいと言う結論になったよ。
それに優也を見ると誠也さんを思い出すし。
誠也さんも家に戻ってないんだって……愛人の家にいるのかな?
優也は、養子縁組をして来月、水無月さんに引き取られるよ。
寂しいけど、頑張るんだ私……。
浩太も優也がいなくなったらどう思うかな?
弟が急に居なくなって、ショック受けるかな?
それとね……。
1番最初に産んだ子。
養子に出したけど、養護施設にいたの。
幸田さんが見つけ出してくれて、養子にしてくれるって。
普通に生きているんだって……嬉しい!!
会ったんだよ。
可愛い女の子だったよ?
めぐみって言うだって。
幸田の奥さん美世さんが喜んでた。
今、私が妊娠してる子は出産したら、幸田さんに養子として引き取る事にしてるんだ。
それて、私とは手打ち。
幸田さんと美世さんになら安心して預けられるし……。
本当に寂しいよ。
お家静かになっちゃうね?
匠さん?今、どこで何をしているの?
匠が居ないと……頑張れないよ……?
どこ?
もう復讐したし、怒ってないから……。
早く帰って来て……。
私は復讐をする事ができたのだから満足していた。
これからは本当の幸せを手に入れられた気がしたから……。
本当に欲しいものを手に入れる事ができたのだからそれでいいのである……。
電気も付けず、由美子は台所の机で腕を枕にして寝ていた。
ドタと音がする。
匠が尻餅をついた音だった……。
薄暗い中で、由美子が立ち上がる。
匠の服はあの日のまま血だらけだった。
由美子「匠さん……遅かったね…おかえりなさい。」
そして匠は、しりもちをついたまま後ずさりで逃げていく……。
匠「来るなーー!!来ないでくれ!!」と怯えた顔で叫んで逃げていく。
由美子は、静かに言う……。
由美子「今日は逃げなくていいの?」と冷たく言い微笑むのだった……。
匠「これ以上近付かないでくれ!お前を騙した事、悪かったと思ってるだから動くな!許してくれ!」と匠が叫ぶ。
由美子「もう怒ったないよ?でも匠さんは駄目でしょ……浮気までして騙そうとしたのだから。」
悲しそうに由美子が言う。
匠は首を振る。
由美子「どうして……私にあんな事したの?」
匠は俯いて答える。
匠の顔の前に影が掛かりその表情は見えないが、ぐずっと鼻を鳴らした後の静寂だけ聞こえていたのだった……。
由美子「子供じゃないんだよ?」
由美子は、匠に近づき、膝をしゃがみ匠と同じく顔の高さにする。
そして、匠を覗き込む。
その顔は、匠には恐怖を与えてる顔だった。
悲鳴を上げる匠。
匠「あ!あががあああぁぁぁ!!」と叫ぶ。
虚ろな瞳で慌てふためいている匠。
由美子「傷見せて?手当しなきゃ。」
由美子は、匠の首根っこを持ち、奥の部屋に連れて行く。
匠「あがっ!やべろ!!やめでぐでぇ!!」
由美子「痛いの?大丈夫だよ?匠さん?これからは、私は怒ったりしないし優しくしてあげられるよ?」
と言いながらも目は笑ってなく冷たく見ていた。ぱたんパタンと扉を閉める由美子だった……。
そこから匠の叫び声は翌朝の日が昇るまでリビングルームにまで聞こえてた……。
匠さん……愛してるよ……これからずっと。