実はウブなウォルバクさんとカズマの関係は、ここに来て遂に先に進みます。えぇ、本当に少しだけ進みます。
ただ、ウブな設定だからそう簡単にはいきません。
ということでラブコメ開始です。またお暇な時にでもお付き合いください。
弟子の成長を喜ばない師は居ない。それは自身の写し身であり成果。まさしく自分のやって来たことの体現である。それが成長を見せたのだから、喜ばないはずがない。だから、これは決して意地悪とかじゃない。それだけは本当に分かって欲しい。
「『クリエイト・ウォーター』!くそっ!風魔法で邪魔するとか流石にやり過ぎじゃないですか?!」
「と、届かせるだけで実戦で使えるなんて思わないで欲しいわね!さぁ、私をモンスターと思って本気で撃ち込んできなさい!」
激しく飛沫を上げる水魔法のぶつかり合いは、実のところ私も想定して居なかった。予定では簡単な妨害だけで済ませ、敗北したら素直に水着を見せてそのまま告白するつもりだった。でも、残念ながらそうはいかなくなってしまったのだ。数日前の、あの時に……
………………数日前……………
「だっさ!何だその告白のセリフ!こりゃ百年の恋も冷めるわ……」
「そ、そこまで酷くないでしょ!と言うかむしろ良いほうだと思うのだけど!」
カズマに気持ちを伝えると決めた以上、師匠として生半可な告白は出来ない。ということで会心の告白のセリフをセレナに聞かせ、私のセンスに平伏させてからカズマに言おうと思っていた。別に自信がなかった訳じゃない。ただ少しだけ今時の子の意見を聞こうと思っただけ。本当にそれだけだったのだけど……
「何が「恋の魔法も一人前ね?だって、私にもちゃんとかかったもの……」だよ!恥ずかしい通り越して痛いわこんなの!」
「流石に痛いは酷くない?!魔法使いの師弟関係なんだから、魔法にかけた告白が自然でしょ!」
それに、絶対そっちのほうがロマンチックでしょ!近頃の魔法は血なまぐさいのばっかりなんだし、こういう時くらい魔法で可愛い表現したって良いはずよ!
「いやねぇよ!告白に変な機転とか要らねぇんだよ!こういうのは普通な方が絶対に良いんだって!奇をてらうと絶対にろくなことにならねぇって!」
「奇をてらってなんか無いわよ!これはとても真面目に考えたの!私としては渾身の出来なの!!そこまで言うからには、セレナはもっと良いセリフを考えられるんでしょうね?!私の恋の魔法を馬鹿にできるだけの告白台詞を、ちゃんと持っているんでしょうね!!」
「はっ?!べ、別にあたしに告白は関係ねぇだろ!まぁ、だとしてもお前の恋の魔法よりはマシな告白を考えられるだろうけどな!」
「言ったわね!なら披露して見なさいよ!1時間あげるから考えてみなさいよ!!」
それでクソみたいなセンスだったら、思いっ切り馬鹿にしてやるんだから!!
…………
「くっ……完敗だわ……」
「ふっ、流石に恋の魔法には負けられねぇからな!これがあたしの実力ってヤツだ!」
こんなのでもセレナは聖職者。恋愛禁止のこの子にだけは負けないと思っていた私の告白は、その甘い台詞の前にいとも簡単に敗北してしまった。流石にこんなの予想出来る筈がない。まさかセレナの恋愛観が、こんなにもロマンチックだったなんて……
「「私を貴方色に染めて」なんて、それこそ好きの本気度まで垣間見える台詞じゃない。まさに穢れに染まってないプリーストだからこそ思い付く告白と言うわけね……」
「これでもプリーストだからな。これくらいは容易いもんだ」
普段ならそのドヤ顔に色々言ってやる所だけど、今回ばかりは認めるしかない。まさかこんな素敵な告白を考え付くなんて、そのドヤ顔にも納得せざるを得ない。流石は諜報と策略のプロ、人心掌握もお手の物ってことね。
「あの……お二人共凄くやり遂げた顔をされていますが、この調査報告はもう良いのですか?客観性がどうこう言ってましたけど……」
「お疲れ様ホースト。勿論それも重要よ?確かにセレナの告白は凄かったけれど、それでも私だって大敗はしてないと思うの。だから、この結果から支持率を知ることで、より良い告白が考えられるって訳ね!」
セレナの告白は確かに凄かったけれど、だとしてと万人受けするとは限らない。こういう時には客観的なデータが必要と言うことで、私はホーストに調査を依頼した。たった1時間の調査ではあるけれど、それなりの参考にはなるはずだ。ということで、私はそのレポートをめくった。
ペラッ
「えっ、何これ互角なんだけど?なんなら圧倒的に多い回答がどっちもダサいって回答なのだけど?!」
「えぇ……まさしくそれが結果ですから……」
いやいやいやいや、流石にそれはおかしくない?このロマンチックさ溢れる回答を前に、そんな支持率の低さある?!よほど特殊な方々に聞いてない?!
「こ、これはアレだろ!アクシズ教徒とか紅魔族にも話を聞いたんじゃないか?じゃなきゃアタシの告白の支持率がこんなに低いはずはねぇよな?!」
「えぇ、漏れ無くと言うのでアクシズ教徒にも紅魔族にもアンケートを取りました。アクシズ教徒はセレナ様の告白推しで、紅魔族はウォルバク様の告白を推していました。そして、その他の一般人は両方ダサいと言う結果にまとまったので、このような結果になっております」
「あ、あたしの支持者が……アクシズ教徒……ごふっ!」
バタン
セレナが逝った?!と言うか私も紅魔族のセンスって言われたら結構傷付くのだけど?!私は厨二病じゃ無いのだけど?!
「で、出てしまった結果は仕方無いとしましょう。ただ、そうなるとこれでカズマに告白なんてしたら……」
「あいつは紅魔族ではないので、客観的に見てダサい奴と思われるかと……」
………そうよね。
…………そして現在に至る……………
「はぁはぁ……まさか、私に足まで使わせるなんてね……本当に腕を上げたじゃない……」
「はぁはぁ……先生が走った段階で合格じゃないんですかこれ……合格基準厳しすぎますよ……」
師匠としてダサい告白など出来る弾もなく、私は必死にカズマの魔法を避け続けた。こちらの反撃も水である以上、それでカズマを倒すには至らない。結局魔力と体力が尽きるまで撃ち合いは続き、やっとの事でカズマを魔力切れでリタイアさせたと言うわけだ。まぁ、結局汗でびしょびしょだし、どっちの負けかは傍目には分からないけど……
「しょ、しょうがないわね。カズマの成長は間違いなかったし、水着はこれで解禁にしてあげるわ。これを励みに、もっと頑張るのよ?」
予定ではそのつもりだったし、私のためにここまでしてくれた事に変わりはない。そして何より、水着披露と同時に告白して、もし告白の方が霞んだら私は立ち直れそうにない。告白がダサいと言われた以上、比較対象はなるべく無い方が良いだろう。
「えっ、マジで良いんですか?!俺もう頑張らなくなるかも知れませんよ?!」
「いやそこは頑張りなさいよ!ご褒美の意味ないじゃない!」
まったく!こういうところはマジで半人前だわ!魔法より指導すべきはこっちかしら!乙女心とかムードってわからないのかしら!
「ほら、汗で張り付いて気持ち悪いから、早くカズマの手で脱がせてよ……」
「わ、分かりました……ちなみに、まだ護身用の魔法を撃つ魔力が残ってたりは……」
「……上級魔法なら2発かしら?」
「そ、そうですか……ちょっと聞いてみただけです……」
いや本当にこの子は……そこはビビらずに迫る所でしょ?まぁ、流石に野外だと迎撃するけど……
「そう言えば先生って、いつも良い匂いがしますよね?こんなに汗だくなのに、今もシャンプーと石鹸の匂いがしますし……」
「ふふっ……水着だけじゃなくて体臭まで楽しむつもりなの?残念だけど、それはそう簡単には楽しませてあげられないかも……」
「べ、別にそんなつもりじゃないですけど……」
丁寧にシャツのボタンを外しながら、カズマはいつも通りのセクハラ発言を繰り返す。なんて、以前の私ならそう思っていたことだろう。でも、それなりの付き合いになるとカズマのコレが強がりだと解る。余裕がなくて必死で、童貞丸出しの自分がカッコ悪いと思っての強がりだと……まぁ、それでセクハラを選ぶのはどうかと思うけど、その強がりは少し可愛いとも思う。ちなみに女神に体臭はないわ。フェチだったらごめんね?
「先生のボタン、取れました……それでその……」
「うん……そのままカズマの手で脱がせて良いわよ……水着を見せる約束だもんね……」
ボタンを外し終えたカズマの顔は、興奮と緊張で真っ赤になっている。混浴には慣れてきたようでも、自分の手で女を脱がせるなんて経験はないのだろう。こうして余裕がなくなると、かえって無害になるのが可愛いと思う。
スルッ
「おぉ……やっぱり大きい……」
「もう、こういう時は服の感想からでしょ?本当に欲望に忠実なんだから……」
「す、すみません……凄く似合ってて魅力的で、思わず本音が漏れました……赤いビキニを着た先生も、とても素敵だと思います……」
「……うん、ありがとう」
何これ凄く良いわ!その見たいけど恥ずかしいって感じの顔が凄く可愛いわよカズマ!どうしよう、いっそチューくらいしてやろうかしら!もっとメロメロにして困らせてやろうかしら!
「そう言えば、俺まだリタイアしてないって気付いてます?」
「えっ?それはそうだけど……でもカズマの魔力は……はっ?!」
「『クリエイト・ウォーター』」
バシャッ
しまったぁ!そりゃワイシャツ掴んでればほんの少しの水でも濡れるわよ!魔力切れって残弾0って訳じゃないものね!水を飛ばさなくても濡らせるなら、少し垂れ流すだけで良いものね!だとしてもそれは今じゃないでしょ!私のトキメキ返してよ馬鹿!
「待って!流石にこれはズルくない?!これは課題クリアとして不成立じゃないかしら?!」
「それなら先生が走り出した段階で不成立でしょ?!遠くまで到達させる試験だって言うのに風魔法で防御するし、魔法で何とかするなら解りますけど走って逃げるのは露骨過ぎますよね?!」
「そ、それを言われるとそうだけど……」
だってダサい告白とかしたくないもん……水着の披露と被るのもなんか嫌だったし、嘘は直ぐバレるから他に逃げ方とか思い付かなかったし……
「俺、先生の涙の理由を色々と考えたんです。でも、やっぱり本当の事は先生じゃないと解らなくて……だから、合格じゃなくて構いません!涙の理由だけ教えてください!俺、少しでも先生のこと支えたいんです!」
「か、カズマ……」
何この急展開!まさかこのタイミングでカズマから?!それならもう私はオッケーするだけでいいじゃない!後はカズマに身を委ねれば……はっ?!
「そ、その言葉は凄く嬉しいのだけど……それはワイシャツから手を離して、胸じゃなくて顔を見て言って欲しかったかしら……」
「…………すみません」
「うん……まぁ良いけど……」
危なかったぁ!危うく谷間ガン見されながらの告白に落ちるところだったわ!と言うか握られたのが手だったら間違いなく墜ちてた気がする!落ち着くのよ私!胸の鑑賞中に堕とされるのも、ダサい台詞で告白するのも、後々凄く後悔するもの!
「そこまで言うなら、次の授業の時に話してあげる。でも、カズマが気に病むことじゃないから安心して、決して悲しいことじゃないから」
「分かりました!安心ついでに期待しておきます!」
うん、期待はハードル上がるから辞めてほしいかな。
「さて、それじゃお風呂に行くわよカズマ!汗びっしょりで気持ち悪いし、修行の疲れを癒やしましょう!」
「風呂は疲れてなくても行くじゃないですか……まぁ、勿論お供しますけど!」
でも、その前に色々落ち着かせてね?多分通報されるから……
………………………
「さて、折角だし何か飲みますか?気持ちが軽くなったので奢りますよ!」
雑談しながらお風呂まで来ると、カズマは既に普段通りに戻っていた。まぁ、良く考えたら当たり前なのだ。いつもこうして混浴しているのだから、水着の披露なんてそこまでの刺激ではないのだろう。なんて、それで終わる私ではない。魔性の女である私にかかれば、水着と言う武器はまだ利用価値がある。さぁ、また可愛く悶えるのよカズマ!これが嫌いな男子は居ないって、ホーストによってリサーチ済みなのだから!
「ねぇカズマ、そんなことより脱ぐの手伝ってくれない?汗で張り付いてビキニが解けないの……」
「えっ、良いんですか?!勿論お手伝いさせていただきます!」
ふふふ、やっぱりこういう所は可愛い男の子って感じよね。後ろから紐を解くだけだから見えないのに、それでもこんなに興奮しちゃうなんて……
「えいっ」
スルッ………ぬるっ…ペチャッ
「……ふぇ?」
ちょっと待って!なんで下の腰紐を解いたの?!そこは届かないはず無いでしょ?!と言うかちょっと恥ずかしい音したわよね?!汗じゃない液体音がしたわよね?!いや落ち着くのよ私!ここで下手に取り乱すと勘付かれる!下をいやらしく濡らしていたなんて、告白前にバレたら死にたくなるわ!
「な、なんで絶対に手の届く下を解いたのかしら?こういう場合、普通は上よね?」
「えっ……でも先生のビキニはフロントホックじゃ……」
「へっ?………あっ」
そうだったぁ!身体が固くて背中のフックは辛いってコレにしたんだったわ!胸が邪魔で見えないから忘れてた!
「ま、まさか胸の下で見えないから俺に外せと?!そう言うことなら!」
ワキワキ
「ごめん!これは私の勘違いだったから忘れて!そして可能なら私の顔もあまり見ないで!!」
「わ、わかりました……取り敢えず、先に風呂に行ってますね?」
うぅ、こんな筈じゃなかったのに……カズマがオドオドしながらトップスを外した所で「ドキドキした?」「……しました」「えへへ、私も……」「せ、先生可愛すぎる!好きです!」ってなる筈だったのに!いや下でもそれは出来たけどもね!流石にそんな度胸は無いわよ!
…………………………
「はい先生。キンキンに冷えたシュワシュワです」
「あっ、ありがとう……さっきは取り乱してごめんね?」
ドキドキ水着脱がせ作戦は失敗した。取り乱した私を見たカズマは、温泉の癒やし効果もあって、むしろ普段より落ち着いてしまっているように思う。あぁ、どうして次回なんて約束をしたのだろう。完全に失念していたが、その次回というのは明日なのだ。珍しく連休が取れたから、ついカズマとの予定を入れてしまったのを忘れていた。浮かれ過ぎでしょう私……
「気にしないでください。明日のことを考えて落ち着かないのは、俺も同じです。楽しみ過ぎて!」
「そ、そう……そんな期待されると困るかもだけど……」
どうしよう。既にこの期待に応える自信がない。せめて今日のうちにカズマをドキドキさせて、明日に向けたムードを作るくらいはしたい。ちょっと流行りではない告白かも知れないけれど、最高のムードならウルトラロマンティックな告白になるかも知れないし!
※未だに恋の魔法は素敵フレーズだと信じている○世紀超えの処女、ウォルバク
「そう言えば、次のテストは何をするんですか?」
「そう言われると、魔力コントロールでそこまで出来たら、正直もう教えることは無い気もするわね……」
と言うか、それ紅魔族でも難しいコントロールだし?むしろこの短期間で仕上げてきた方法が気になるくらいだわ。頑なに教えてくれないけど……
「えっ……それじゃ卒業ってことなんじゃ……」
「課題がなくなったと言う意味では、そう言えるかも知れないわ……」
まぁ、それなら仲間とか恋人とか、別の関係で一緒に居れば良いと思うわ。なんなら、そろそろ名前で呼んでくれても良いと思うし。
「嫌です!俺まだこの関係を続けたいです!」
「そ、そんなこと言われても……あとはレベルを上げていけば自然と伸びる部分だし……」
それに私としては、出来れば次の関係に進みたいし……
「だとしても!まだ先生からの卒業は早いですよ!先生で卒業するなら大歓迎ですけど!」
「ちょっとそういうところ!そうやって自然とセクハラを割り込ませるの辞めなさいよ!嬉しい告白がただの汚い欲望のカミングアウトになったじゃないの!」
そういうのはせめてムードを作って言いなさいよ!そしたらえっと……3ヶ月くらい付き合ったら考えるから!!
………………………
「はぁ、私はいったい何をしているのかしら……」
一応お風呂でも策を弄してみたけれど、これといった成果は出なかった。このままではダサい告白しか出来ない女というレッテルを貼られてしまう訳だけど、正直もう打つ手がない。と言うか恋愛経験のない私には、水着を脱がせてドキドキ作戦が既に切り札だったりする。いやもうマジでどうしよう……明日は風邪を引くことにしようかしら……
「先生、早くしないと店が混みますよ。それとも、今度は着るのを手伝いますか?」
「今行くから待ってて!それと、服くらい自分で着れるから!」
はぁ、こんな事なら水着以外の小道具も用意するべきだったかしら。でも、付き合って直ぐに身体を許すって言うのは違うと思うし、露骨な色仕掛は私としても本意じゃない。だから、出来ることならもっと女としての魅力で勝負したいのだけど、カズマのほうが家庭的だし……
がさっ
「あれ、なんか下着がない?おかしいわね……流石にノーブラで出掛けるはずが……あっ」
これ、まさか内側に水着を着てて下着忘れた?!いやいやそんなベタなことある?!いやでも用意した記憶ないし、思えばずっと下に水着を着てた気がするし……
「くっ!苦肉の策だけどまた水着を着るしか無いか……流石に下着無しで出歩くなんて……」
ぐちゅ
あっ、ヤバいコレ詰んだわ。着替えるつもりで適当に袋に突っ込んだせいで、完全にあれが染み渡ってるもの。流石にこれは着れないし、そうなるともう……
………………………
「えっと、なんか今日ペース早くないですか?」
「な、何を言ってるのかしら?別に普段通りよ?!」
下は履かなくても見えないけれど、上は形が浮いてしまう。なので私は苦肉の策として、秘密兵器の絆創膏を用いることにした。取り敢えずこれで浮くことは防げた訳だけど、流石にこれで落ち着いてなど居られるはずがない。ということでアルコールの力を借り、なんとか自我を保っていると言うわけだ。というか女神って酔えるのね……下世話なこと考えていると酔えるって聞いたことあったけど、あれ本当だったんだ……
「そう言えば、今日で卒業なら明日の授業は何をするんですか?」
「ん〜、取り敢えず身体の仕組みについてのお勉強かしら?」
「へっ?そ、それは男女の違いとかそういうのですか?!」
以前はお酒に酔うなんて馬鹿らしいと思っていたけれど、実際に酔ってみると案外悪くない。胸の絆創膏は気にならなくなるし、多少の羞恥心も気にならない。これなら魔性の女も演じられるし、むしろこれはチャンスな気さえする。
「ふふふ、一体何を想像したの?魔法を効果的に使うためには、使う相手の生態に詳しい方が良いと思うのだけど?」
「そ、そうですよね!そりゃそうですよね!くっ!マジで予測が当たったと思ったのに……」
これだわ!こうして情けなく悶えるカズマと、それを大人の余裕で眺める私!これこそが私達の理想的な関係なんじゃないかしら!
「ねぇカズマ、貴方は一体どんな予想を立てたのかしら?怒らないから言ってご覧なさい?」
「そ、それはえっと……先生を相手に童貞を……と言うか先ずに恋人に……」
あらあらあら〜?ひょっとしてこれは普段の仕返しが出来るんじゃないかしら?私が恥ずかしがるからって調子に乗ってたみたいだけど、アルコール補正のかかった私にはそんなの通じないわよ!さぁ、今日は立場が逆みたいだし、トコトン可愛がってやろうじゃない!
「ふぅ〜ん。私のことそんな目で見てたんだ?私がセクハラを止めなかったら、いったいどんな事されちゃってたのかしら?」
「えぇっと……それを人前で言うのは流石に……」
「へぇ、人に言えないことをする気だったのね。カズマがそんな変態なら、もう少し距離を置こうかしら……」
「そ、そんな変態的なことじゃないですよ?!ただ、恋人でもないのにすることでも無いことですけど……」
モジモジ
なにこれ最高!あのカズマがこんなに可愛い反応するなんて、良い意味で予想外だわ!ついでに理想の告白とか聞いちゃおうかしら!お酒があれば何でも出来そう!
「ねぇカズマ、良い機会だから貴方のことが知りたいわ……ほら、お酒の力を借りて良いから、私に全部教えてよ……」
トクトク
「くっ!本当ならアルハラなのに、この柔らかさと可愛さに抗えない!いただきます!」
あははは!そうよこのまま落ちなさい!そしてたっぷり痴態を晒して、「恥ずかしくて死にたい……」ってなるまで辱めてあげるわ!
…………………………
「………恥ずかしくて死にたい」
あれから一夜経った早朝、隣で寝息を立てるカズマを尻目に、私は酷い自己嫌悪に頭を抱えていた。
「あぁもう!暑いから脱ぐってなに?絆創膏あるからセーフってなんなの?!恋人でもないのにそんな姿晒さないわよ!私のファーストキスは安くないって、それで出した金額が30億で、それでも手を出すな添い寝はしろ?!馬鹿なの?!半日前の私は本当に馬鹿なの?!!」
カズマを辱めるという私の目論見は達成されたが、それより失うものの方が多かった。恥じるカズマは可愛かったが、その代償に恐らく私は痴女認定された事だろう。もう二度とお酒には頼らない。例えまた飲むことがあるとしても、何世紀か禁酒する。
「でも、本当に我慢してくれたのね。私が言い出した事だけど、裸の女に添い寝を要求されて抱かないなんて、なんの冗談って思うわよ……」
私から誘ったこの状況でも、カズマは私を抱いていない。何度も心配して声をかけてくれて、私の馬鹿な色仕掛けにも律儀に返事をしてくれた。こんなワガママな女に最後まで紳士的な対応をしてくれるなんて、嫌でも愛されていると実感してしまう。まぁ、色仕掛けは本当に効いていた可能性もあるのだけど……
「でも、いつも大切にしてくれてるのは事実だもんね……ありがとうカズマ……恋人になってくれたら、次はちゃんとエッチさせてあげるね……」
なんて、寝ている相手になら言えるけど、やっぱり起きている相手に面と向かっていう度胸はない。先ずは恋人にならなきゃだけど、流石にこんな痴態を晒しておいて、今日告白するのはハードルが……
「ジーーー」
いや起きてる!!カズマが小声でじーって言いながらこっち見てるんだけど?!今の完全に聞かれてたってことよね?!恥ずかし過ぎて顔が直視できないのだけど?!
「俺はたった今起きたので全然先生の話とか知りませんが……愛しています先生!!健全な関係で良いので、取り急ぎ俺の恋人になってください!そしてもう一泊していきませんか!」
「いや嘘よね?!前半の話は絶対嘘よね?!と言うか取り急ぎなんて恋愛で聞いたこと無いわよ!恋人のくだりでハリキリ過ぎて、言ってること変になってるじゃない!そんな性欲に流された告白は普通に嫌よ!」
もう!この馬鹿みたいな状況はどうすれば良いの?!告白は嬉しいけど動機が最低すぎるでしょ!そりゃ気持ち的にはYESだけど、この流れでYESって言いたくないんだけど?!
「安心してください!先ずはキスって分かってますから!そんな手順を無視した迫り方はしません!取り敢えずキスして前戯ですよね?」
「それ交際の順番っていうか性行為の手順じゃない!違うから!私が気にしてるのはそういうことじゃないから!」
カズマとのこの馬鹿なやり取りは、そのまま宿屋の店員に怒られるまで続いた。結局話の決着は付かず、私達の関係は今もなお師弟関係ということになる。ただ、私達の関係は、決してそのままと言うわけではない。結局流れてしまったけれど、次こそはウルトラロマンティックな告白を成功させようと思っている。まぁ、そんなセリフが思い付けばだけど……
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
ダストとリーンの丸分かり両想いが可愛いので、こいつらも少しだけそんな期間があっても良いかなって言うオチです。そして、付き合ってない=介入の余地があると言うことで、ラブの方でも一悶着起こします。
また不定期ではありますが、お暇なときにでもお付き合いください。