ウォルバクの恋愛観がポンコツであるなら、これより先は弟子のターン。拗らせた童貞によるアタックが始まります。
まぁ、気持ちを理解した上での告白なんて、ぶっちゃけ何も怖くない筈ですが、それでもやらかすのが私の話です。
またお暇な時にでもお付き合いください。
この世界に来てからと言うもの、俺は苦労の連続だった。土木のバイトに明け暮れ、冒険に出ればカエルに食われ、平和な日常には魔王軍の幹部が現れ、命さえ何度も落としたのに、そこに内臓売るレベルの借金まで背負わされた。しかし、そんな俺にも転機が訪れた。彼女との出会いがあってからと言うもの、冒険者としての活躍が増え、魔道具がバカ売れして借金はなくなり、遂には国の事業にまで呼ばれるようになった。あのハズレ女神とは違う。俺の師匠はマジの女神に違いない。そして、その女神様はと言うと……
「すぅすぅ……」
「今、俺の隣で寝てるぜ……」(イケボ)
いやこれ一度で良いから言ってみたかったんだよ。あの胡散臭いモテモテ広告だって、思春期の頃にはマジで憧れたりしたもん。まぁ、そうは言っても何もしてないんだけど……
「ほら先生、流石にそろそろ起きませんか?もう酔いだって覚めましたよね?時間が経てば経つほど傷は深まると思いますよ?」
「やだぁ……カズマの側でもっと寝るぅ……」
すりすり
なんだコレ最高かよ。これがマジ女神って奴なのか?すまんアクア。心の奥底ではお前のこと凄く大切に思ってるんだ。でも先生と交代ならマジで返品する。本当に申し訳ないけどそうする。
「って言っても、流石に今は手が出せないんだけどさ……」
本来なら完璧な据え膳であるこの状況。しかし、今だけは俺は手が出せないでいる。そう、それは昨日の朝のこと、全てはアレがきっかけだった。
……………………
「こ、これが全人類の憧れと名高いHOREGUSURIだと?!」
試験と筆おろし(願望)への緊張で早くに目が覚めた俺は、早朝からウィズの店を訪れていた。癒し系のウィズと話して心を落ち着かせ、ついでにバニルに助言(有料)でも貰う筈だったのだが、正直コレを見たらそんなことはどうでも良くなった。まさかこのタイミングでこんな素敵アイテムに出会うとは、取り敢えずエリス様に一億くらい手渡たせば良いだろうか?
「よく来たな小僧。本日は小僧の為に目玉商品を仕入れているぞ。まぁ、言わずとも理解しているようだがな!」
「流石は見通す悪魔。マジで何もかもお見通しってわけだな!」
店の中心にドンと置かれたその商品は、余りにも露骨で分かり易い。普通に考えたら直ぐに売れてしまう商品だろうが、あえて目立つところに置いているのだろう。俺に確実に買わせるために。
「流石にそれは私でも分かると言いますか、想い人が居なくてもカズマさんは欲しがるような気も……」
「ははは!ウィズは面白いことを言うなぁ!」
「あっ、やっぱり否定はしないんですね……」
そりゃ欲しいに決まってるもん!むしろ男子で欲しくないやつなんて居ないよねこんなの!
「あっ……一応確認だけど、これはウィズが仕入れたのか?」
「いえ、残念ながら私は最近仕入れに行ってないんです。カズマさんの為に色々とお手伝いがしたかったのですが……」
「そうか。ありがとなウィズ!」
「へっ?これは気持ちにありがとうですよね?仕入れに行かなかった事へじゃないですよね?!」
そりゃ勿論後者だよ。ウィズが仕入れた商品だと、なんか嫌な予感がするもん。
「それで、これの効果はどんな感じなんだ?まさかどんな女でも落とせるとか、直ぐに抱けるとかのチートアイテムだったりするのか?!」
「うわぁ……」
「うん、ごめんウィズ。流石に傷付くからその反応辞めて?ちょっと言ってみただけだから……」
まぁ、あったら凄く欲しいですけど。
「そんなもの間違いなく国から禁止薬物の指定を受けるであろうし、売れば吾輩の立場も危うくなるわ!これは飲んだ者の恋愛感情を増幅するもので、有効なのは互いに好感を持つ相手にのみ、更に効果には個人差があり、悪魔の吾輩やアンデッドの店主、そして女神のような高位な存在には効かない善良な薬だ。とまぁ、薬で乙女心を自由にしようとする輩には、全く無意味な商品である」
「べ、別にそんなこと考えてねぇし!そんな人として最低なことするつもりはねぇし!」
ただちょっと誤解による好感度低下を何とかしたいだけだし!
「おや?ではこれも使えんな。増幅とは言え薬の効果、人の心を惑わす事に変わりは……」
「すみません買います!」
「まいどあり!」
「えぇ……」
ウィズのジト目が突き刺さる中、それでも俺はこれに頼る事にした。だって好きじゃなきゃ効かない訳だし、確認に使うには最高のアイテムだ。決してこれをきっかけにイヤらしい事をするつもりはないから、だからその目は辞めて欲しい。
…………………
「ってなると、やっぱ手は出せねぇよな……」
俺はその薬を酒に混ぜ、温泉で先生に飲ませていた。先生の行動がおかしいのはそれからなので、きっとこの薬は効いているのだろう。ただ、まさかここまで効くとは流石に予想していなかった。あの先生がこんな事になるなんて、個人差とは恐ろしい言葉だ。
「えへへ……歳上が好きなんだぁ……むにゃむにゃ…」
「いやこれもう狙ってますよね?俺が手を出せないの分かってて狙ってますよね?!」
出会ってから数日間は、素の先生は凄く格好良い人だと思っていた。先生もそんな生き方を目指していたようで、今でも人前では格好良い姿でいることが多い。しかし、この頼りなくて甘えん坊の方が素の性格だと知り、俺はもっと先生に惹かれてしまった。だらし無くて面倒臭がりで、それでも俺のために理想で有り続けようとするその姿が、たまらなく愛おしかったのだ。
「まったく、惚れてるってわかってる弟子にこんな無防備な姿を晒して、慣れないセクハラしてむしろ自分が赤くなって……本当、先生はどこまで俺を夢中にするんですか?」
でも、だからこそ今は手を出せない。心から好きになってしまったから、彼女を裏切ることはしたくない。あんな薬に頼る形で、先生を抱くなんて出来るはずがない。
「ははは!その自己嫌悪の悪感情、大変に美味であるぞ!このクズのくせに小心者の小僧めが!」
チラッ
「ははっ……窓の外でバニルが笑ってる幻聴まで聞こえてきた……こんな物に頼ったところで、本当に欲しいものは手に入らないのにさ……」
増幅だから問題ない。確かに最初はそう考えていたし、先生から迫って来たらそれは合意だとも思っていた。でも、こんな露骨に人が変わるところを見てしまえば、その認識は間違いだと分かる。アクアのこともちゃんと好きに部類されるが、決して抱きたいなんて関係ではない。しかし、この薬の効果で好感度が増幅されたら、俺はアクアのことを……
「カズマさ〜ん!早く助けてカエルが来てる!!」
アクアのことを……
「えっ、私が好き?それは仕方ないわね!私は麗しい女神だもの!嫌いな方がおかしいわよね!」
抱いたら……
「痛いんですけど?!初体験とかあり得ないくらい痛いんですけど?!ちょっと早く抜いてよ!どうせ早漏ニートなんでしょ?!」
………いや、ごめんアクアは無理だわ。頑張ったけど挿入した後でも萎える自信あるもん。逆に凄いなアイツ。
「でも、やっぱりこれで関係持つのは駄目だよな。今日の事は忘れたことにして、薬が抜けてからちゃんと告白しよう……」
目が覚めたら先生の薬も抜けているだろうし、その時にはちゃんと謝ろう。そして、改めて想いを伝えるんだ。それまでは、ちゃんといつも通りに接して………
むくっ、シュバッ!
「…………恥ずかしくて死にたい」
俺は先生が動いたのを感じ取り、咄嗟にベッドで背を向けた。いやそれにしたって今起きます?そして第一声がそれですか?!叫ばれるよりは良いですけど、それはそれで凄く反応に困るんですけど?
「あぁもう!暑いから脱ぐってなに?絆創膏あるからセーフってなんなの?!恋人でもないのにそんな姿晒さないわよ!私のファーストキスは安くないって、それで出した金額が30億で、それでも手を出すな添い寝はしろ?!馬鹿なの?!半日前の私は本当に馬鹿なの?!!」
すみません!それ全部俺が薬を盛ったからなんです!絆創膏おっぱいも添い寝も最高でした!そして先生のファーストキスになら30億出せます!と言うかもう用意しようと思ってました!
「でも、本当に我慢してくれたのね。私が言い出した事だけど、裸の女に添い寝を要求されて抱かないなんて、なんの冗談って思うわよ……」
それに関してはマジですみません!でも原因は俺なんです!先生がおかしくなったのは俺が原因で……
「でも、いつも大切にしてくれてるのは事実だもんね……ありがとうカズマ……恋人になってくれたら、次はちゃんとエッチさせてあげるね……」
………はっ?いやいや今のは幻聴か?俺の耳元で今なんと?薬が抜けた状態で、先生は俺になんて言った?!間違いなく今のは告白!と言うかもはや告白以上のメッセージではないか?!いや待て早まるんじゃない!先生の身体から薬が抜けていない可能性も配慮すべきではないか?落ち着け俺は出来る男だ!全ての可能性を考慮しろ!先生は薬が効きやすかったが、だとしてもこんなに長く効果を発揮するだろうか?そもそも先生は人でなくエルフ。下手をすると一切効かない可能性のほうが高い。それなら間違いなくこれは据え膳だが、それではそれであの行動が不可解だ。酒はいつも呑んでいるわけだし、多少酔ったからってあんな風になるとも思えない。だから薬は効いたと仮定する。しかし高い魔法耐性を持つ先生に一晩も効果が保つとも思えない。そして効いている状態と今朝の状態は明確に違うことを考えると……やっぱりさっきの台詞は本音の可能性が高い!!
※この間0.1秒
でも、だからってそれを自分から追求する勇気はない。だって俺童貞だし?女の子を口説く度胸とかないし?なんならどうして良いかも分からない訳ですよ。となれば、もう後は先生に任せよう。俺が普段通りで居れば、きっと先生から来てくれる。ということでお願いします先生。俺は自然な目覚めを演出して、いつも通り求婚するので!
「俺はたった今起きたので全然先生の話とか知りませんが……愛しています先生!!健全な関係で良いので、取り急ぎ俺の恋人になってください!そしてもう一泊していきませんか!」
「いや嘘よね?!前半の話は絶対嘘よね?!と言うか取り急ぎなんて恋愛で聞いたこと無いわよ!恋人のくだりでハリキリ過ぎて、言ってること変になってるじゃない!そんな性欲に流された告白は普通に嫌よ!」
「安心してください!先ずはキスって分かってますから!そんな手順を無視した迫り方はしません!取り敢えずキスして前戯ですよね?」
「それ交際の順番っていうか性行為の手順じゃない!違うから!私が気にしてるのはそういうことじゃないから!」
あれ、おかしい。普段通りの俺を演じたのに、何故か先生は焦るだけだ。どうやらこれは作戦を練り直す必要がありそうだ。交際と筆下ろしはまた次回に見送り、今日は絆創膏おっぱいを目に焼き付けて満足しておこう。
…………………
「しかし、あの状況でも攻略できないって、やはり先生は一筋縄じゃいかないな。ここは誰かに相談するべきか……」
赤面して半泣きだった先生と別れ、俺はアクセルの街へ帰ってきた。次の約束は取り付けたが、今のままでは恋人にはなれないだろう。やはり淫魔と悪魔が相談相手では駄目だ。普通に人に相談すべきだろう。
「遅いぞカズマ!今日は王女に謁見があると言っただろう!それをまさか朝帰りとは……お前は何を考えているんだ!」
「あぁ、そう言えばそんなこと言ってたな……」
家の前で待ち構えていたダクネスは、酷く焦った様子で俺に詰め寄った。そう言えば今日は王女様に謁見するとか言っていた気がするが、俺としてはそれより先生のほうが重要だ。と言うか、なんなら行くもの面倒だし。
「カズマ、早く準備しなさいよ!魔王軍幹部の討伐を認められての呼び出しなんだから、間違いなく豪華な食事とか報奨金があるわ!たっぷりお高いタダ酒を楽しんだあと、報奨金を使ってギルドで楽しく飲み明かすの!それこそが幸せなお酒の楽しみ方って奴よ!」
「いやそれは間違いなく吐くから辞めろ」
「何を言うのです!王女様が来たらこれはもう国の存亡をかけた戦いへの幕が上がると言うことです!まさしく英雄への道!私達は覇道の一歩を踏み出したのです!」
「それ、魔王軍幹部を倒す前にやることだからな?」
「どちらも違う!話を聞きに来たと言っただろう!!良いから早く馬車に乗れ!」
アクアとめぐみんは相変わらずだが、このクソみたいな国の王族に何を期待すると言うのだろう。面倒な事になりそうだから顔は出すが、何かを期待すべきでは無い。と言うか、むしろ馬鹿をやって処刑されない事の方が重要だ。
「まっ、社交界になれた奴がいれば、恋バナくらい出来る奴も居るだろう。俺の周りは欠陥品ばかりだし、相談相手を探す為と思えば悪くないか……」
……………………………
「遅いです。いくら何でも遅すぎます。一体何をしていたのですか?この街の冒険者は時間も守れないのですか?」
無駄にデカい屋敷の中の、無駄にデカい玄関の前で、俺達は小さな幼女に無駄にデカい態度で責められていた。金髪碧眼と実に可愛らしい姿だが、それにしたってこれは生意気が過ぎる。俺は一応王族に呼ばれたVIPだと言うのに、なんだこのクソ生意気なガキは……
「何だガキンチョ迷子か?親とはぐれて心細いのは解るけど、目上の相手にその口の聞き方は良くないぞ?」
「が、ガキンチョですって……」
「お、おいカズマ!何を馬鹿な事を言ってるんだ!その御方がアイリス王女だぞ!」
がっ!
「……は?」
俺は焦ったダクネスに頭を捕まれ、そのまま深々と頭を下げられた。えっ、この子供が王女様なの?いや流石にそれは反則だって!こんなのが王女とか初見じゃわからないって!と言うか今の不敬罪?!俺出会い頭にやらかした感じ?!
「ほぅ!アイリス様をガキンチョ呼ばわりとは……冒険者風情が、地下牢に入る覚悟はあるのだろうな!」
「いや待て待て!今のは流石に悪かったって!!だって王女様って外交的な事とか気にして、高度な教養とか身に付けてると思うじゃん!立ち振舞とか気品があって!こんな生意気さ丸出しの小娘とは思わないじゃん?!」
「生意気……小娘……」
「お、お前はもう喋るな!!違うんですクレア殿!コイツはちょっと頭がおかしくて……」
「そうかそうか頭が……なら、その中身を確認してやる!」
ブンッ!
クレアと呼ばれた女騎士は、そのまま俺に向かって容赦なく剣を振り上げた。流石にこれは笑い事では済みそうにないが、露骨に抵抗しても後が面倒だ。となれば、自衛手段は事故と見えるように……
「『パラライズ』」
ボソッ、ヒュッ
「なっ?!」
すぽっ
剣を振り上げたクレアの右手へ、細く針のように練り上げた麻痺魔法を放つ。普通に使えばレベル差や魔法抵抗で不発になったり、そもそもモーションが大きくて回避される可能性が高い麻痺の魔法。しかし、針のように圧縮すれば回避が困難になり、更には筋繊維に届けることで魔法抵抗の影響を最低限に出来る。そりゃ剣もすっぽ抜けるだろうし、これなら何処からどう見ても事故で……
「あっ、不味い!」
「えっ?」
すっぽ抜けた剣の向かう先には、あの生意気な王女様がいる。このクレアとか言うのが俺達の間に割って入ったのだから当然だが、流石にそこまで想定していなかった。いや、これはマジで大事になる!と言うか普通に死刑になる!!
「アイリス様!」
誰より早く駆け出したダクネスだが、その速度ではまず間に合わないだろう。となれば、俺のやるべきは!
「『炸裂魔法』!」
パァン!!
「んな?!」
右手の炸裂魔法でダクネスを射出し、その身体を剣へと向かわせる。そして、左手に爆発魔法、右手に風魔法を込め、跳躍と同時に後方へ!
「間に合えぇ!!」
パァン!
「きゃっ!」
ガバッ!
「がふっ!」
カァン!!
俺は魔法による急加速で王女を押し倒し、そのまま上に覆いかぶさった。どうやらダクネスの射出が上手く行ったようで、俺達の元へ剣は飛んでこない。まぁ、これだけやれば王女様も不敬くらい許してくれるだろう。ついでにあの騎士にも貸しを作れただろうし、今回の立ち回りは悪くなかったと思う。
「無事か王女様?さっきは子供扱いして悪かったな。でも、それもこれでチャラに……ぐふっ!」
ドスッ!!
「へっ?!」
ダクネスの接触で弾道が変わったと思われた剣は、大きく弧を描いて結局俺の所へ落ちてきたらしい。俺の腹から突き出た剣は、取り敢えず王女様には届いていない。取り敢えず今回はこれで良しとしよう。せっかくだし、エリス様にお金を渡す方法を聞きに……行こう……か……
ガクッ!
「「「カズマァ!!」」」
………………
「30点です」
「顔を見るなり変な採点された?!」
久々のエリス様との再開は、何故か良くわからない採点から始まった。いつもの説教とはまた違う流れではあるが、最近はエリス様も俺の死に対して冷たい気がする。やはり慣れたってことなのだろうか……
「お姫様を守るために死ぬのは勇者っぽいですが、別に死ななくても守れたのに死ぬのは無駄死にです。カズマさんはもう少し正しい死に方を覚えてください」
「俺だって死にたくて死んでるわけじゃないですが……あっ、でも日頃の幸運には感謝してますから、それを伝えられるのはありがたいと思ってます!」
「感謝のために仕事を増やされるのも困るのですが……まぁ、どういたしまして……」
しかし、やはり謝礼金等は持ち込めないらしい。一応、何も書いてない小切手を懐に入れていたのだが、そういうのもここには来ないようだ。仕方ない。たまに遊びに来ているお忍びの姿を見つけるとしよう。結構身近に居るみたいだし……
「さて、貫通した剣の傷を治すのに時間がかかりそうですし、今日は恋バナでもしましょうか?意中の先生との件、悩んでいるみたいですしね?」
「さ、流石はエリス様!これで死んだことにも後悔はありません!」
「それは後悔してください。仕事が増える一方なので」
「……それについてはすみません!」
でも、俺はまた来ると思います!
……………
「あっ、やっと生き返ったわね!カズマがさっさと起きないから、泣いちゃってもう大変だったのよ?」
「誰がだよ……お前らはもう慣れたもんで……んっ?」
「うぅ……ぐすっ……あうぅ……」
蘇生した俺のシャツを掴むのは、先程まで生意気だった王女様だった。その目には大粒の涙を溢れさせ、俺の死を本気で悲しんでくれている。なにこれ可愛い。蘇生を急かすだけのあいつらとは大違いだ。
「心配かけたな王女様。俺は大丈夫だよ」
「大丈夫じゃありません!お腹からずっと血が出てて!身体はドンドン冷たくなって!私のために人が死んだのかと……本当に怖かったんですから!!」
おや?王族なんて人を盾にするのが当たり前だと思っていたのに、意外にも人の死には敏感らしい。そりゃ目の前で死なれたら寝覚めは悪いだろうけど、だとしてもこんな泣いてくれるなんて、どうやら根は優しい良い子のようだ。これは間違いなく許されたな。(ゲス顔)
「俺のことは気にするなよ。お前が無事なら、それで良い……」(イケボ)
「お、お兄ちゃん……」
キュン
ごめん。自分でやっといて今更だけど、マッチポンプで許されようとしてる俺にそんなピュアな目を向けないでくれ。お兄ちゃんは嬉しいけど、その純真さには心が痛む……
「どうやらお前には助けられてしまったようだな。アイリス様も懐いているし、先程の不敬は不問としよう。では、改めてお前の冒険譚を聞かせてくれ。魔王軍幹部を倒した冒険者、サトウカズマよ」
「しょうがねぇな!それならポテチとシュワシュワを用意してくれ。今夜は朝まで語ってやるよ。可愛い妹の、為だからな!」
「は、はい!お兄様!」
こうして俺は事なきを得て、ついでに愛らしい妹も手に入れた。先生との約束まであと数日あるし、せっかく出来た繋がりを活用させてもらうとしよう。少なくとも俺の妹は、普通の可愛い女の子みたいだしな!
「いや、語る程の冒険譚あったかしら?」
「カズマの活躍に限定するなら、多分数分で終わりますよね」
「自分から期待値を上げての羞恥プレイとは……悪くないな……」
いや本当、うちのパーティは可愛くねぇしな!
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
ラブコメはまだ続きます。童貞のカズマに新たな力を授けるのは、頭の悪い処女達です。
ということで、次回は馬鹿な告白を携えて急接近!するかな……