※この作品はR-18です。

この怠惰な女神に信奉を   作:熱心なエリス教

14 / 35
いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

両想いと確信しているのに、それでも上手くいかない恋愛アホの子2人。そんなの何時までも付き合っていられないので、良い加減ここらで決着です。少しはラブコメディします。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この不器用な恋路に決着を

ラブコメディ。それは恋模様を面白可笑しく描いた作風であり、この世界でも一定の支持を得ているジャンルである。しかし、それは人の恋路を娯楽にする悪趣味なジャンルとも言える為、毛嫌いする者も多いと聞く。ちなみに私はと言うと……

 

「あははは!酒に酔ってやらかして、そんでトドメに素面でやらかしたって?!いやそんなのマジで現実にあるか?!あぁ〜腹痛ぇ!」

 

多分、今日から嫌いになると思う。

 

………………

 

「ごめん。本当に悪いと思ってるから、ちょっとその魔法をぶっ放すのは勘弁してくれ……多分近隣がクレーターになるし……」

 

例の一件から数日経ち、遂に明日はカズマに会う日となった。あんなことがあったわけだし、当然対策は考えていたのだけど、どんなものにも客観性は必要だ。ということで、また例のごとくセレナを呼び出した訳だけど、やっぱり人選が間違っていたような気がする。

 

「こっちは真剣なのよ?それを笑い転げるなんて人としてどうかと思わないの?倫理観って知ってる?」

 

「魔王軍幹部に倫理観を求めんなよ……あと、その状況で何が不安なんだ?今更相談することあるか?」

 

やはり私は人選を間違えたらしい。確かに乙女な一面もあるけれど、セレナには根本的にデリカシーが足りない。と言うか、これはもうデリカシーなんて最初から備わってない気さえする。こんな駄目な子が唯一の信徒だなんて、もはやセレナがレジーナに懺悔すれば良いのに……

 

「はぁ、これだから彼氏居ない暦=年齢の女って嫌なのよ。男女の関係はそんな簡単じゃないの。お互いに気持ちが通じ合っていても、きっかけが無きゃ先に進めないことってあるでしょ?」

 

「その1文の中に「お前が言うな」とか、「あたしに聞くな」とか、「そもそも相談相手間違ってんだろ?」とか言いたい事はすげーあるけど、今は話が進まねぇから流しとく……で、お前らの関係だと何が問題なんだ?それを取り除けば、もうこの話は終わりなんだろ?」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

やる気のない返答をするくせに、嫌な所で核心を突くのがセレナという女だ。そりゃ問題は明確な方が良いのは確かだし、付き合ってもらっている以上これを隠しては仕方がない。話の流れで共感を得てから話したかったけど、もう伝えるしかないようだ。私のその問題というのは……

 

「勢いであんなこと言っちゃったけど、まだ初体験するの怖いんだもん……」

 

「………はっ?」

 

いや分かるわよ?そりゃあんなことして今更何いってんだって?って言いたいのは凄く分かるわ。でも、乙女にとってこれは大問題。主に2人の今後に響く大問題なの。

 

「まだ付き合って間もないのにしちゃったら、間違いなく私はビッチ認定されてしまうでしょ?清いお付き合いの先で愛し合うなら納得だけど、流石に付き合って直ぐは違うと思わない?あとほら、初体験って痛いって言うし……」

 

「そりゃ言いたいことは判るんだけどよ……じゃあなんで酒の力に頼ってあんなことしたんだよ?今の発言と真逆の行動じゃねぇか?」

 

「わ、若さの暴走……とか?」

 

「……そうか」

 

ちょっと、何その「もう諦めた」みたいな顔!良いじゃない!女神はずっと若いの!経過年数が年齢って訳じゃないの!ちょっとなんで椅子から立ち上がったの?!話はまだ終わってないんだけど?!

 

「じゃ、お疲れ様でした」

 

「待ってぇ!だからって何も手を考えていない訳じゃないの!今回セレナに来てもらったのは、私が考えた逆転の一手に客観的な評価を下してもらうためなのよ!だから回れ右しないで!ちょっと本当に帰ろうとしないで!」

ガシッ、ズルズル

 

「はぁ……仕方ねぇな。そこまで言うならその逆転の一手を聞いてやるよ。でも、それがマジで下らなかったら即帰るからな?」

 

「構わないわ。私のこの形勢逆転を意識した告白を聞けば、きっとカズマも思い直すし、セレナの中の私のイメージも一転すると思うのよ!」

 

「ほぅ、告白してねぇのを逆手に取ろうって話か……確かにそれなら可能性はあるな……で、その内容は?」

 

そう、男女の関係に告白が欠かせないと言うことは、その後の関係に告白が影響するのは明白。セレナのような性悪プリーストでさえロマンチックな告白を求めるのだもの。その内容1つで男をコントロールするのも余裕な筈なのよ!

 

「私の考えた告白は……「優しくしてね?」これで勝てるわ!」

ドヤァ!

 

「………はっ?」

 

………あれ?なんか思った反応じゃないわね?「こ、これは大切にしたくなる!」とか「告白にお願いをいれるなんて頭脳プレイだな!」って反応が来ると思っていたのだけど、なんか呆れているような気がするわ。

 

「な、なによその反応!これなら間違いなくカズマは優しくしてくれるでしょ!痛くて怖い初体験なんてしないはずでしょ?!」

 

「いやするだろ。その言い方はむしろされる流れだぞ?なんで自分から墓穴を掘りに行ってんだよ」

 

「セレナこそ何を言ってるの!優しくするのになんで痛くて怖いことするのよ!そんなの絶対におかしいわよ!あなたどんだけ頭の中ピンク色なの!」

 

頭を撫でるとかキスするとか、もっと優しい愛情表現がある。なら、なんで痛くて怖い初体験をするなんて方向になるのだろう?若者の性が乱れていると聞いていたけど、まさかこんなにも深刻だなんて……

 

「誰が頭ン中ピンクだ!その言い方だと、「優しく」「する」って2つの単語に認識されんだよ!この場合のするって言うのは、つまり肉体関係って意味でだな!」

 

「そんな頭の中ピンクな人の常識なんて知らないわよ!するの2文字でセッ……クシュ…を連想するなんて、セレナってばまだ思春期なの?!」

 

「セッ…クス言えねぇ奴に思春期とか言われたくねぇんだけど?!つうかこれは冗談でも何でも無く、その言葉はマジで夜の誘いにしかならねぇんだ!良く使われる常套句だって知らねぇのかよ?!」

 

「セレナも言葉に詰まってるじゃない!それに、そんなのが常套句になるなんておかしいわ!どれだけ人類は頭がピンクなの!」

 

普通に考えたら人前でせっ……くちゅのお誘いなんてするはずがない。これが常套句になるには、もっと皆が大っぴらにそういう話をする状況が必要な筈。だから、そんなのビッチの集いでしか通じない。いや、通じちゃいけないの!!

 

「そこまで疑うなら証拠を見せてやる!近所の酒場でその殺し文句について聞きに行くぞ!間違いなく野郎どもは襲ってくるから覚悟しろよ!!」

 

「望むところよ!そんな頭の中ピンクな奴、セレナの周りだけって証明してやるんだから!!」

 

…………………

 

「はぁはぁ……どういうことなの…なんで男共があんなに群がってくるのよ……」

 

「ぜぇはぁ……だから言ったろ……と言うか、あたしら2人でやるべきじゃなかった……見てくれは間違いなく美女2人だし……そりゃ男共だって暴走するわ……」

 

売り言葉に買い言葉でヒートアップした私達は、どうやら酒場にとんでもない火種を放り込んでしまったらしい。一応「ねぇそこの貴方。私が優しくしてって言ったら、貴方はどうする?」とオブラートに包んだつもりだったんだけど、返ってきたのは「優しくとか無理だろ!そんなエロい身体で誘いやがって!ほら来いよ!まずは夜景の見えるレストランでディナーだ!そしてデザートはお嬢ちゃんだぜ!」と言う獣の回答だった。一応セレナが「そういう意識調査なんです!うちのエルフは世の中のことに疎くて!ちょっと調査してただけなんです!」ってフォローしてくれたけど、「なら俺達が色々と教えてやるぜ!避妊の大切さもな!」「あぁ手取り足取りどこまでも……まずは素敵なムードの作り方からだ!」と暴走する輩が増えただけだったので、結局カズマ製のスタングレネードを使って逃げてきたと言うわけだ。何気にあの輩が完全に悪人と言い切れないのがむしろ気になる所だけど、今は置いておくとしましょう。

 

「つうか、その光と爆音を出すつけ爪は何なんだよ……今回はソイツに助けられたが、お前そんなヤバいもん日頃から持ち歩いてんの?」

 

「あぁ、これはカズマお手製のスタングレネードつけ爪よ。魅力を込めて投げると、激しい炸裂音と閃光で相手の目と耳を潰すの。非売品だけどね?」

 

「なにそれすげぇ!!お前の弟子、マジであたしの配下に欲しいんだが?」

 

「うん、絶対にあげない」

 

でも、まさか本当にセレナの隠語が通じるなんて思わなかった。カズマにも同じように伝わったら、きっと夜景の見えるレストランで食事をして、一緒にお風呂に入ってから、心と一緒に身体も結ばれてしまう。最後がなければ最高なのだけど、カズマもお年頃の男の子。そんな生殺しに耐えられるとは思えないし……

 

「あっ、そう言えば一時的に関係を引き伸ばす方法ならあるな……」

 

「えっ、本当なのセレナ!と言うかそんな裏技があるの?!」

 

「いや、相手が童貞で繊細な時にしか使えないんだが……」

 

何そのカズマにピッタリの裏技!それよ!私が求めていたのはまさしくそれなのよ!一時的じゃなきゃ将来的に困るわけだし、まさにそれが理想だわ!

 

「教えて!それを今すぐに教えて!!」

 

「ん〜、とは言えこんな馬鹿な事に付き合わされて無報酬じゃなぁ……分かるよなウォルバク?」

 

くっ!まさかプリーストに金品を要求されるなんて思わなかったけど、流石にこれは無償で得られる情報では無いわよね。なら仕方ないわ。背に腹は代えられないし……

 

「いくらよ?悪いけど財布には2000エリスしか無いわよ?」

 

「予想以上に持ってねぇな……まぁ、金には最初から期待してねぇよ。こっちも同じ収入源だしな。だから、その爪を3つ……いや、5つで手を打ってやるぜ?」

 

「ま、まさか私のお気に入りの猫さんネイルを狙っていたと言うの?!これはカズマが書いてくれたお気に入りだから、流石にセレナにもあげられないわよ!」

 

「別に柄なんざどうでも良いわ!あたしはその爪の利便性を評価してんだ!無地でも良いから5つ寄越せ!」

 

「くっ……仕方ないわね……選びなさいよ……」

 

カズマのプレゼントを差し出すのは抵抗があるけれど、これも私とカズマの健全な関係のため。確か単色のネイルセットが何セットかあった筈だし、それならまだ……

 

「………これにする」

すっ

 

「ちょっ?!さっき無地で良いって言ったじゃない!なんで可愛い子犬シリーズを取ったの!それは私の2番目のお気に入りなんだけど?!」

 

「そっちが差し出したんだから良いじゃねぇか!こんな毛の細部まで描かれた子犬とか……あたしだって着けるなら可愛いほうが良い!と言うか沢山あるならケチんなよ!」

 

「さっき利便性って言ってた癖に!これでその方法が使えなかったら許さないからね!」

 

と言うか、顔に似合わず犬派だったのねセレナ。あんたはどう見ても、餌くれる方に懐く猫タイプだと思うのだけど……

 

「約束は違えねぇから安心しろ。しかもその回避方法は複数あるんだが、今回はこの可愛い犬に免じて全部教えてやるから、どれか1つくらい役に立つだろうよ」

 

「へぇ、あんたにしては気前が良いわね。で、その方法は?」

 

「簡単なことだ。抱かれるって思ったら「私のお口を我慢できたら、最後までさせてあげる」って感じで妖艶に止めりゃ良い。男はそういうの好きだからな。それで初体験は回避できるって訳だな」

 

「成程。エッチだけど初体験はしないと言うことね……」

 

確かにそれなら痛いことは発生しないし、カズマだってやぶさかでは無いでしょう。それで私のテクニックで骨抜きに出来れば、主導権は間違いなく私が持つことに………

 

「って無理だけど?!私処女だし!男の人のを口でするなんて流石に抵抗もあるし!」

 

「童貞相手なら余裕だと思うぞ?まぁ、それで駄目なら「私の手コキを我慢できたら……」ってパターンもあって……」

 

あっ、分かったこれ騙されてるわ。その複数回答って本番意外の全プレイを片っ端から言ってくつもりでしょ?そりゃ複数パターンできるでしょうけど、それ全部処女の私には目茶苦茶ハードル高いやつよね?と言うか私のキャラが痴女になるやつよね?

 

「まぁ、最悪は後ろの尻の穴を使うってパターンも……ごめん悪かった!悪かったから魔力を高めて構えないでくれ!それを食らうとあたしは死ぬぞ!」

 

「ならもっとマシな回答を用意しなさいよ!関係がおかしくなる解決策じゃなんの意味もないじゃない!」

 

と言うか、それプリーストが勧める方法として最低よ!レジーナの信徒はこれでいいわけ?!

 

「わかったよ。ならマジの取っておきを教えてやる。ただ、先延ばしにした結果に関しちゃ、あたしは責任取らねぇからな?」

 

「それは構わないわ。先延ばしにするのは私の身勝手。その後の事は私が何とかすべきだもの」

 

「よし分かった。なら耳を貸せ………」

 

「……えっ、なにそれだけ?!それだけなら私にも余裕じゃない!」

 

「まぁそうだな……それだけだから多分余裕だ……後のことさえ考えなきゃだが……」

 

よし!これで勝ったも同然だわ!この恋愛の主導権は、もう私が握ったも同然ね!

 

……………………………

 

「久しぶりねカズマ……数日見ないうちに、中々良い顔つきになったんじゃないかしら?」

 

「ありがとうございます。先生は相変わらず、人並外れた美貌ですね。数日見ないだけで、鼓動が跳ね上がってしまって困ります……」(イケボ)

 

久々の……といっても一週間も経過していない私達の再会は、お互いに軽い牽制から始まった。あんな事があったのだから予想はしていたけれど、やはりカズマは私のことを女として落とすつもりなのだと思う。普段なら照れて終わりの私の言葉にも、見事な返しを入れてきた。でも、残念ながらそれも想定済みだから、私は簡単には崩れない。ちょっと表情筋が緩んでいるけど、これはまだセーフってことにして……

 

「良い店を予約しているんです。立ち話もなんですし、良ければそっちに移動しませんか?」(イケボ)

 

「あら、それは楽しみね。エスコートしてくれるのかしら?」

 

「勿論です先生」(イケボ)

すっ

 

「あら……これは……」

 

私が冗談半分で差し出した右手を、カズマは自然と左手で受けた。カズマのこの立ち振舞は、まさに名門貴族のそれに近い。一体何処で学んだのかは知らないけれど、やはりカズマも私を落とすために対策を練ったということなのでしょう。でも残念、私のこの数日に必勝法を学んできたから、そんなポーズだけで落ちるとは思わないことね。まぁ、ちょっとドキッとしたけど……

 

………

 

「あぁ〜……まさかこんなにもハイレベルなもてなしを受けるなんて、正直侮っていたわ……」

 

カズマに案内されたレストランの食事は、私の予想を遥かに凌駕するレベルのものだった。しかもカズマが椅子を引いてくれるし、昼なのに高級な食前酒も出るし、デザートの頭の悪いクリーム量のパンケーキが少し気にはなったけど、間違いなく国でも有数の名店だと思う。どうしよう、あまり本気で口説かれたりしたら、秘策を使う前に流されてしまう気がする。気を強く持たないと……

 

「気に入って貰えたみたいで何よりです。俺がここまで来れたのは先生のお陰ですから、今日は心ゆくまで楽しんでくださいね?」(イケボ)

 

「そ、そしてこのハイレベルなマッサージ……んっ……自然と声がでちゃうこのテクニックぅ〜……はふぅ……」

 

いっそ出会い頭に告白してくれた方が対策しやすかったのに、カズマの奉仕は丁寧が過ぎる。私達が両想いなのは解っている筈だから、きっとこの奉仕の目的はその先……つまり私のことを抱く為の下準備なのだと思う。しかし、そうと分かれば対策は容易い。告白はちゃんと受け取った後、セレナの秘策を使えば万事解決ってわけだもの。ただ、あんまり気持ち良くされちゃうと、拒む自信がぁ〜〜……あふぅ………

 

「それでその……俺は先生に言わなきゃならない事があって……」

 

「あら、改まって何かしら?」

 

来たわね!これは間違いなく「先生好きです!今まで必死に我慢してきたけど、もう先生の美し過ぎる顔と身体に我慢できません!必ず幸せにするので、俺の子供を産んでください!」って来る流れだわ!遂に本性を現したわねカズマ!マッサージでガードも緩ませようという作戦かも知れないけど、今ならまだギリギリ理性は生きてるのよ!ちゃんとセレナの作戦通りカウンターを決めれば、いきなり初体験なんて事には……

 

「俺のために、毎朝お味噌汁を作ってくれませんか!」

 

「えっ、無理だけど?」

 

「ごふぅ!」

 

えっ、どういうことなの?なんか良くわからない要求を跳ね除けたら、突然カズマが倒れたんだけど?

 

「ぱ、パンケーキでも良いんですが……」

 

「いやそれも無理だけど……」

 

「な、なら毎日一緒に爆れ……朝の散歩に!」

 

「朝は弱いから勘弁して欲しいかも……」

 

「貴方は俺が守ります!」

 

「私のほうが強いような気がするのだけど……」

 

「魔王の首を捧げます!」

 

「いやそんなの普通に要らないけど……」

 

「畜生!!あいつらなんの役にも立たねぇな!」

 

「ごめん!ちょっと意味がわからないから説明して!この会話の意味を私に分かるように説明して?!」

 

…………………

 

「あははは!それで全部試すなんて、本当にカズマは予想外のことをやらかすわね!はぁ〜、お腹痛い」

 

「……くそぅ…何が味噌汁だよ……クレアのやつ覚えてろよ……」

 

恋愛経験のないカズマにとって、私への告白は一世一代の大勝負。ということで知り合いの女の子達の理想とする告白を使ってみたものの、どれも私には刺さらなかったということらしい。だって味噌汁とかカズマが作ったほうが美味しいし、そういうのは相手との関係性も考慮しなきゃ意味がないと思う。やはり私の恋の魔法は正しかったのよ。ちょっと時代を先取りし過ぎただけで、ちゃんと恋愛感情が伝わる告白だったもの!

 

「告白の内容も気になるけど、どうして告白を焦ったりしたの?この夜景の見える温泉旅館と言うのも素敵な場所だし、ルームサービスにはお酒もあったわ。それなら、ここで告白したほうが勝率が高い気がするのだけど?」

 

そして、マッサージの次は温泉旅館へ連れてこられた訳だけど、ここで告白をしなかった理由が分からない。何せ同じ部屋に泊まって一緒にお風呂に浸かるのだから、手を出したいならこれほど都合の良い場所はないでしょう。まぁ、実際それをやられてしまったら、私の貞操が危ないわけだけど……

 

「いやその……先生のガードが緩い所を狙うのはなんかズルいかなと思いまして……ほら、一応大切な話な訳ですし…」

 

「あら、意外と紳士的な理由ね?」

 

「まぁ、そりゃ大切なことですし……」

 

お酒に頼った私には耳が痛い言葉だけど、そんな真剣に私に向き合ってくれたのは素直に嬉しいし、今日のデートは殆ど満点と言って差し支えない程に楽しかった。だから、私も少しくらいは勇気を出そうと思う。ずっとカズマに頼り切りでは、やっぱり師匠として情けないものね。

 

「しょうがないわね。下手くそでもしょっぱくても良いなら、あと寝坊してお昼になっても良いのなら、お味噌汁くらい作ってあげるわ。だから、私にちゃんと作り方を教えてよね?」

 

「えっ?別にそんな無理させるつもりはないですし、それなら俺が作ったほうが早い気が……」

 

あっ、駄目だこれ通じてない。さっきの告白にYESの返事したなのにまるで通じてない!回答に反応できないなら、何でそれ選んだのよ?!

 

「えっと……パンケーキも焼いてあげるけど?」

 

「……この前焦がしてませんでした?」

 

「あ、朝の散歩に付き合っても良いけど?」

 

「俺も朝は弱いんでいいです」

 

「これからも守ってあげるから!」

 

「それは、いつかは俺が守りたいと言いますか……」

 

「もう魔王の首を落としてくる!」

 

「なんでいきなりそんな血生臭い話に?!」

 

「いやカズマも大概使えないわよ?!これ完全にオッケーの返事よね?!」

 

「はっ?!そう言えば確かに!」

 

うそ!まさかオッケーされた時の反応を想定してなかったの?!それで良く他人の告白台詞を流用したわね!絶対にカップル成立しないじゃない!

 

「あれ?それじゃ先生は、俺の告白に答えてくれてたってことじゃ……」

 

「いや……それは……その…」

 

ど、どうしよう!この流れで違うとか絶対に言えないじゃない!でも、だからってこんな流れで付き合うのはなんか違う気がするわ!これでも私は女神なんだし、付き合うなら素敵な食事と夜景の見えるロマンチックな部屋とかじゃなきゃ……あっ、どうしよう全部揃ってる!!

 

「愛しています先生……さっきまでの告白は忘れて貰って、今から仕切り直しといきませんか?」(イケボ)

 

「い、今更そんな事言われても、あんな流れで付き合うなんて、流石にムードってものが……」

 

「なら、そのムードの作り方も先生が教えてください。先生の為なら、俺はきっと頑張れると思うんです」(イケボ)

 

「それはその……でも……」

 

ヤバいどうしよう!あんな馬鹿みたいなやり取りの直後なのに、カズマが凄く格好良く見える!なんか私もう落ちかけてない?!凄いチョロい事になってない?!これ女神として大丈夫?!

※とっくにお気付きかと思いますが、この女神は元からまぁまぁチョロいです。

 

「言葉では拒むのに一歩も引かないなんて、こんなの期待するなって方が無理ですよ。良いんですよね、先生?」(イケボ)

そっ

 

「だ、駄目なのに……あっ……んんっ!」

ちゅっ

 

理想とは程遠い雑な告白に、強引に奪われたファーストキス……本当なら文句の1つでも言いたくなるシチュエーションなのに、何故か私の身体は抵抗の意志をみせてはくれない。まぁ、なんとなく予想はしていたけれど、どうやら私は自分で思う以上にカズマのことが好きらしい。それこそ、キス一回で下着を変えたくなる程度には……

 

「好きです先生。もうキスだけじゃ止まれそうにないです。良いですよね?最後までしても……」

 

「駄目って言ってるのに……あっ……強引過ぎっ……んんっ!」

ちゅっ、ちゅっ

 

繰り返し重ねられる唇の感触に、私の理性はどんどん削り取られていく。きっとこのまま数分もすれば、私はカズマの女になるのだろう。今となってはそれを嫌だとも思わないけれど、それでも伝えるべきことは伝えよう。私はそんなにチョロくないと、言い訳程度にはなるはずだから……

 

「あっ、ちょっと待ってカズマ……その、先にカズマに言わなきゃいけない事があって……」

 

「どうしました?ちゃんと優しくするつもりですけど、他に何か不安な事でも?」

 

「えっと……その……わ、私『チロウ』なの!だからその……カズマが早いわけじゃないからね?!」

 

「…………へっ?」

 

必死に振り絞った私の言葉に、突然カズマの動きが止まった。その表情には緊張感と興奮が入り混じり、恐らくは何かを考え込んでいるのだと思う。まさか、本当にこんな言葉1つでカズマが止まるだなんてことは……

 

「すみません先生。俺、性欲に流されていました。本当に先生を大切に思うなら、告白から直ぐになんて間違っていますよね?」(イケボ)

 

「そ、そうね!本当は私が止めようと思っていたけれど、自分からそれに気付けるのは素晴らしい事だと思うわ!もう恋人になったのだから、焦る必要なんて無いもの!今後はじっくりお互いのことを知りましょう!」

 

ちょっとなにこれ凄いんだけど!あの狼になったカズマが子犬に戻ったわ!なんかちょっぴり残念な気がしなくもないけれど、これでビッチ女神とは呼ばれないわね!

 

「そ、それでですね?先生が遅漏なのは理解したのですが……男性経験がお有りだったりは……」

 

「えっとその……カズマが初めてじゃ、駄目だった?」

 

「………すみません。ちょっと長めのお手洗いに行ってきます。なんなら先に寝てても構いませんから……それじゃ!」

 

何かを考え込んだ様子のカズマは、私の答えを聞いた途端に急いで部屋を出ていってしまった。トイレなら部屋の備え付けがあると言うのに、どれだけお腹が痛かったのだろう。やっぱり緊張による腹痛だったりするのだろうか?もしそうなら、ちょっと嬉しかったりするのだけど……

 

「まぁ、詳しいことは明日にしましょう!取り敢えず今は……このグチャグチャに濡れたショーツと浴衣を何とかしなきゃ……」

 

こうして後始末に追われた私が眠ったのは夜が明け始めて空が明るくなった頃だった。恋人として過ごす初めての休日は、残念ながら殆ど布団の上だったことになる。なんて言ったらセレナに「えっ、初日からお盛ん過ぎじゃね?」って言われたので、取り敢えずセレナは爆裂しておいた。




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

年末の繁忙期に忙殺され、更新が遅くなりすみません。
そろそろイチャイチャさせなきゃなぁと思いつつ、ネタを放り込むとどんどん話数が増えていくのです。

今後も不定期更新ではありますが、またお暇な時にでもお付き合いください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。