本作のヒロインであるウォルバクと、キャラ……ではなくボディが被っているダクネス。そんなドスケベ悩殺タイプの2人が織り成す恋愛煩悩戦が今始まる!(誇張)
またお暇な時にでもお付き合いください。
アレクセイ・バーネス・アルダープ。現在アクセルを統治するこの男は、何処をとっても使えない無能な屑野郎である。私はこの男と直接会ったことはないが、この映像を見るだけでそれは誰もが理解するはずだ。
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「私はそんな約束をしていない!ほら帰った帰った!」
「そんな!確かに契約書を取り交わして……あれ?!何故領主殿の名前が?!」
「ほほぅ?ありもしない書面で私を誑かそうと……おい!こいつの荷物は全て没収だ!どうせ詐欺で得た商品に決まっている!」
「そんな?!私は今までも誠実な商売を続けてきたのに!」
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「いや……これ普通にサインしてるじゃない……なんで見えないのよこれ……」
見え透いた嘘と権力による恐喝により、この日も行商人が全ての荷物を失った。悪人のやる事は一通りやったと思われる程のクズが領主でいられるのは、恐らく悪魔か神々のアイテムを使用しているからだろう。何かの力で現実を捻じ曲げているようだが、私の力を込めた魔導カメラで撮れば、そこには真実が写っている。どうやって悪魔への対価を用意したのか、またはどうやってそのアイテムを手にしたのか、色々と気になる所はあるが、可能性として現実的なのはその辺だろう。
「しかしウォルバク様。何故今更あの男を標的にするので?あのクズがダスティネスの足を引っ張ってくれれば、我々としてはむしろ有り難いと思うのですが……」
「ダスティネスの事だけ考えればそうでしょうけど、ここまで来るとアレクセイの方も無視できないのよ。少なくとも、この悪事が許される理由だけは掴んでおかないと……」
と言う理由付けでここまで来たけれど、本当はカズマのいる街が心配だったって方が大きい。最近はダスティネスへの嫌がらせが露骨だと言うし、何よりカズマが殺されかけた事もあるそうだ。一応恋人にはなった訳だし、少しくらいなら心配しても良いと思う。
「でも、こんな小悪党に時間を使うのも馬鹿らしいわ。今回の調査は一週間以内に済ませるわよ」
「了解で……んっ?一週間後って、カズマとアクセルで泊まり……」
「さぁ行くわよ!別に私的な理由ではないけれど、決して下見とかじゃないけれど、仕事は早いに越したことないからね!!」
それに、これなら仕事でもカズマに会えるしね!
………………………
「勢いで来ちゃったけど、これなんて言って訪ねれば良いのかしら……」
カズマの家を前にして、私は第一声に悩んでいた。恋人の家を尋ねる事にはなんら違和感は無いけれど、問題はこの第一声だ。初めて恋人の家を尋ねるとして、そこにはパーティー仲間も居るという。となればイキナリ「来ちゃった♪」なんて浮かれたフレーズを出すのは危険だ。先ずは落ち着いてノック、そして「カズマくんはいらっしゃいますか?」と訪ねてから、カズマに向かって「えへへ、来ちゃった♪」って流れなら、間違いなど起こら……
ガチャッ
「おや、客人か?」
「か、カズマくん来ちゃった?!」
「いや、カズマは元々ここに住んでいるが……」
「…………ですよね」
いやそっちから来るのは流石にズルいでしょ?!なんかもう完璧に変な人になっちゃったじゃないの!ファースト・コンタクトやり直ししたいんだけど?!
…………
「すまない。カズマは魔道具販売の仕事で外していて、アクアとめぐみんも爆裂散歩に出掛けていてな。私ではこの程度のもてなししか出来ないが、どうかゆっくりしていってくれ」
「いえいえ、お茶とお菓子が出るだけで十分ですから……」
私にお茶を淹れたこの女性が、確かダスティネスの一人娘だ。カズマに出会えなかったのは不満だけど、彼女からアレクセイの事を調べておけば、ホーストに文句は言われないだろう。多少不本意ではあるが、取り敢えず今は良しとする他ない。まぁ、問題はどうやって聞き出すかだけど……
「と、所でカズマの先生は、本日はどういったご要件で……」
「えっと……近くに寄ったから顔を見に来たって感じかしら?」
本当は彼女だから来ちゃったって言いたいけど、今更そんな浮かれた事が言える雰囲気じゃないのよ。この子もなんか表情暗いし、「アレクセイの嫌がらせが大変じゃないですか?」とか仲良くない相手に聞けるコミュ力なんて無いもの。
「さほど親しくない人にこのような事を聞くのもどうかと思うのですが、貴女は高名な魔法使いだと聞いています。それで、少し相談があるのですが……」
「へぇ、私はそれなりに凄い魔法使いを自負してはいるけれど、それはカズマには言えない事なのかしら?私に出来る事は、工夫すればカズマも出来ることが大半よ?何せ、私の一番弟子なのだし」
向こうから話をしたいと言うのは好都合だけど、ダスティネスは魔王と敵対する立場にある。だから、ここで魔王軍幹部の私が手を貸すのも色々と不味い。出来ることならカズマを頼り、結果的に労せずに情報だけ欲しいのだけど、都合よくいってくれないかしら………
「カズマにもそれとなく聞いたのですが、残念ながら望みは無いようで……しかし、その師である貴女ならと……」
「カズマに無理な話ねぇ……まぁ、話だけでも聞こうじゃない?私はカズマの師である訳だし!」
カズマでも無理ならしょうがないか、たまにはカズマの師として威厳を見せるのも悪くないでしょう。それに、よほど大きな貸しを作れば、ダスティネスの家をコントロール出来る可能性だって………
「そ、即金で20億エリス貸して頂けたりなんて事は……」
「ごめん。私も所詮は人並みの魔術師だから、そんな大金は持ってないわ」
えっ、こいつはマジで何を言ってるのかしら。と言うか他人に相談できる金額じゃないわよそれ。国家予算を個人に相談しちゃ駄目でしょ。ポンと出されたら軽く恐怖でしょ?!
「そ、そうですよね……実は嫌味な貴族にお金を借りていまして、返済の目処が立たなくて……」
「それはまた凄い額を借りたわね……一体何があったのか聞いても良いかしら?」
「実は………」
……………………………
「と言うわけで、領民を救うために、ダスティネス家がアレクセイ家にお金を借りたって言うのが事の発端みたいよ。そして、運悪く今のダスティネスの当主が倒れたことで、ダスティネスの令嬢が狙われているのが今の状況ね」
カズマの家を訪ねた夜、私は宿でホーストとの報告会を開いていた。別に頼んだわけじゃ無いけれど、ダスティネスの令嬢が全てを話してくれたので、今回の調査はこれで終わりとして良いだろう。普段はホーストに「遊んでましたよね?」とか言われる私だけど、今回は完璧にマウントが取れる状況だ。悪いわねホースト、今日は私が「寝てたの?」って言う番よ!
「まるで当事者に聞いたような情報ですね。こちらでも色々と分かったので、少しすり合わせをしましょうか」
「えぇ、そっちの話も聞かせてくれるかしら!」
これだけキッチリ調べた以上、ホーストの調べた情報なんてちょっとした補足くらいでしょう。調査結果を聞いたら普段の仕返しに「あら、それだけ?」とでも言ってやるわ。
「借金の理由は例のデストロイヤー討伐とのことです。街の外の農地等は莫大な損失を受けたのですが、それをダスティネス家に泣きつくようにアレクセイが誘導しました。その際にダスティネスはサトウカズマ一行の借金建て替えで大変な状況にも関わらず、見捨てられずに援助をしたとの事です。その金の出所が、アレクセイの家からと言うことになります。更にはダスティネスの当主に何かしらの方法で呪いをかけ、借金のかたに娘を要求しているとの事で……」
「へ、へぇ……結構しっかり調べてるじゃない……」
えっ、何なのこの敗北感。ちょっと調べすぎじゃない?!と言うか一日で可能なレベルじゃないでしょ?!アレクセイの家に内通者でも居るの?!
「まぁ、これ全部アレクセイの馬鹿が自室で酔って暴露してたんですけどね。「もうじきララティーナはワシのもんだ!」とか言ってました」
「そ、それはもうわざとやってるんじゃないかって思う程に迂闊ね……と言うか独り言でどこまで暴露するのよ……流石に過信が過ぎるわよ……」
まぁ、私もダスティネスの令嬢ダクネスの愚痴を聞いて得た情報だし、決して人のことは言えないのだけど……
「しかし、本来ならサトウカズマ一行の補填も、領民の管理も全てアレクセイの管轄の筈です。それをダスティネスに押し付けて領地の剥奪が無いとなると……」
「えぇ、これはもう間違いなく悪魔の力でしょうね。呪いなんて露骨過ぎる手段を使っているし、天界のアイテムならエリスが動かない筈が無いもの。対価を何処から用意しているかは不明だけど、アレクセイが悪魔との契約者だとするなら、私達が出る幕はないわ」
しかし、そうなるとアレクセイ家とぶつかるのはカズマと言うことになる。純粋な戦闘ならカズマが負けるなんて有り得ないけど、そこに政治が絡むと話は別だ。お尋ね者になった冒険者など、間違いなく何処かで野垂れ死ぬ。やるなら目撃者の居ない暗殺か、悪事隠蔽の証拠を突き付けるしか無い。でも、カズマにそんな事が出来るとも思えないし……
「今回の件、上手くやればダスティネスとアレクセイの両家を労せずに没落させることが可能です。ダスティネスがアレクセイに取り込まれた後、アレクセイの悪事の証拠を公表すれば、この街は統治者を失って大幅に弱体化する事になります。その状況で軍事的な圧力をかければ、恐らくは戦闘さえ起こらないかと……」
「そうね。勝手に潰し合うなら、傍観しておくのが得なのは間違いないわ。きっとカズマでもそう思うでしょうし、きっと魔王だって同じ手段を取るわ。だから、私もそれに倣うしか……」
ただ、カズマはきっとそうはいかない。ダクネスがパーティーメンバーである以上、分が悪いと分かっていてもアレクセイ家に挑むことになるだろう。何せあんなキモいおっさんに大切な仲間を取られようとしているのだ。そう、大切な……何となく大切なエピソードを聞いた事が無いような気がしないでもないけど、きっと大切な仲間の筈だから……
「やれやれ……俺様はウォルバク様の忠臣ホースト。貴女がそう決めたのなら、俺様はどのような戦いにも身を置きます。例えそれが、魔王軍より愛する人を優先しようともです。だから、そんな顔をせんでください。貴女が後悔しない道が、俺様の進む道なんですから……」
「ホースト……」
何よ、いつも素っ気無くてツッコミ厳しめの癖に、こういう時はちゃんと忠臣してるじゃない。なら、その言葉に甘えようかしら……
「それじゃ、アレクセイのおっさんは生理的に無理だし、カズマの方が大切だからアレクセイを潰しましょ?契約してる悪魔が出て来ても、私達なら余裕よね!」
「いや軽すぎます!確かにそれでも良いとは言いましたが、普通は葛藤とか決断とか色々あるべき所ですよね?!「ありがとうホースト……私は、愛する人の為に戦いたい!」とか言いますよね?!国王の懐刀を仕留められるかどうかって話なのに、あまりにも理由が雑過ぎませんか?!」
「そんなこと言われても、ここで嘘付くのも違うと思うし……」
「あんた本当にいい加減にしろよ!それで良く魔王軍幹部やってんな?!」
何か勘違いしているみたいだけど、私はそもそも王国に恨みなんて無い。この身分だって戦闘力の高さで得たものだし、今回の件はカズマかアレクセイかの2択だからカズマなだけで、魔王かカズマでも私はカズマを選ぶと思う。だってもう恋人になった訳だし、あのクソ上司と恋人を天秤にかけるなら、そりゃ恋人を選ぶに決まっている。ごめんね魔王。なるべく楽に死なせる予定だから、その時にはちゃんと諦めてね!
「でも、それで私がカズマ側についたとして、この状況を打破する手はあるの?こんな隠し撮りの山を証拠として出したら、間違いなく私達の方が捕まるわよね?」
「そうですね。そもそもこれを証拠として出したとしても、悪魔の力で隠蔽された証拠と矛盾します。となれば、身分の低い方が裁判では不利。確実にアレクセイを追い詰めるなら、叩くべきは悪魔の方でしょう」
ホーストの言うことは分かるけど、流石に領主の屋敷に殴り込むのは危険だ。悪魔を飼うだけの力があるなら、お抱えの魔術師か、またはそれなりの設備が用意されていると思ったほうが良い。その状況で多くの護衛まで相手にするのは流石に分が悪いし、なんなら使用人を何人も巻き込むことになる。流石にそれは、私もカズマも望んでは居ない。
「なら、作戦の決行は来週の日曜の朝よ。その日なら間違いなくアレクセイの屋敷は手薄になるし、アレクセイが最も悔しがる日でもあるわ」
「また随分と自信があるみたいですが、その日は一体何の日なので?」
「ダスティネスの借金返済期日であり、アレクセイとダスティネスの挙式予定日よ!」
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「なんてカッコつけて言ってみたけど、良く考えたらダスティネスの娘が大人しく挙式するとも限らないのよね。私達が何とかするからって事で、大人しくするように念を押しておかないと……」
挙式当日は両家が教会に行くため、屋敷の警備が手薄になる。なんて自信満々に言ってみたけれど、その話をするダスティネスの娘から「ぶっ殺してやる……」って単語が度々出てたから、あの子が早まった行動をする可能性はかなり高い。となれば、これは本人に念押しをしないと共倒れだ。私情を挟んでやられたりなんかしたら、それこそ目も当てられない。
「まぁ、それでもコソ泥みたいに忍び込むのは、流石にどうかと思うけど……」
本当なら今頃カズマとイチャイチャしていてもおかしくないって言うのに、どうしてこんな厄介な事になってるのだろう。カズマに心配をかけない為とはいえ、恋敵の為にここまでするなんて、流石に人が良すぎる気がする。これでカズマに迫ってたりしたら、助けるのは初夜が終わった後にしてやろう。
「さて、こんばんはダスティネ……」
「頼むカズマ!性欲の捌け口だって良いんだ!私のこと、お前のものにしてくれ!!」
…………はっ?ちょっと何いってんのコイツ?人の男に手を出して何言っちゃってんの?カズマの初体験は私の物なんですけど?!いや今直ぐはまだ怖いけど、それでもアンタにくれてやるつもりとか無いんですけど?!ほらカズマ断って!情け容赦無く断って!!
「いきなり何言ってんだお前は?!いくら変態性癖持ちでも、流石にそんな気持ちで抱けるか!」
いや違うでしょ?!そこは「俺にはウォルバクと言う心に決めた最高の女性が居るんだ!お前みたいな頭おかしい主食が鉄の女なんてお呼びじゃないんだ!」って断言しなさいよ!主食が鉄かは未確認だけど、それじゃその子にまだ脈があるみたいじゃない!そんな態度じゃその変態は……あれ?なんか様子おかしい?
「お願いだから……初めてくらいカズマの女で迎えさせてくれ……人生で1度くらい、愛する男のもので居たいんだ……」
「えっ、ダクネスが泣いてる?」
メンタルまで鋼鉄だと思っていた変態クルセイダーが、今は涙を流しながらカズマに縋り付いている。私はてっきり「はぁはぁ……どうだアルダープ……カズマの精子が染み付いた身体の抱き心地は……お前の前にカズマの子が居るかもな!」とかやるんじゃ無いかと思っていたのに、貞操観念は意外にも普通だったのね。まぁ、だからといってカズマをくれてやるつもりはないのだけど、その、なんていうか、一応ごめんね?
「私は貴族令嬢として、来週末には嫁に行かなきゃならないんだ……本当なら望まぬ男に無理矢理抱かれる理想のシチュエーションの筈なのに、ここまで来て私は怖くなってしまった。私は、どうかしてしまったんだと思う……」
「嫁入りって……そんなのお前の親父さんが認めないだろ?!今までだって詰め寄る奴らを殴り倒して断ってきたのに、なんで今更そんなことを……」
望まぬ男に無理矢理抱かれるのが理想なのも、貴族殴り倒して結婚を断るのも、普通に考えたらそっちの方がどうかしてるけど、どうしてカズマとダクネスは真顔で会話が出来るのかしら。貴方達、実は内心余裕なんじゃないの?
「そ、それはダスティネスの問題だ!領主として実力不足だったのが原因だから、カズマが気にすることじゃない!ただ、それでも私を不憫に思うなら、今だけでも恋人のように愛してくれないだろうか……」
「ダクネス……」
本当はカズマが原因なのに、こういう所は本当に一途なのね。まぁ、それでプラス・マイナスでマイナスなんだから、欠点が相当致命的なんでしょうけど……
「は、初めてだし不器用だから、きっと上手には出来ないと思う……でも、カズマと繋がれるなら痛くても構わないし、カズマにだったら何でもしてあげたい……だから、今夜だけは私を見てくれないだろうか……」
「そ、それは……えっと……」
いやいやいや!確かに健気で可哀想だとは思うけど、それで人の男に手を出して良い理由にはならないから!と言うかカズマも雰囲気に流されてんじゃないわよ!スケベなのは知ってるけど、流石に鼻の下伸ばしすぎでしょ!もしヤバかったらスリープかしら?それともパラライズで拘束すべき?どちらにせよ、詠唱は済ませて……
「ごめん!!どんな理由があったとしても、俺はダクネスを選べない!俺には本気で好きになった人が居るんだ!だから、ダクネスがどんなに都合の良い条件を持ってきても、俺はその人を裏切れない!」
「カズマ……」
えっ?嘘やだ私の彼イケメンじゃない!てっきりバレなきゃ良いと思って手を出すと思っていたけど、疑ってごめんねカズマ!今度ちゃんとさせてあげる予定だから、今後もちゃんと私だけを見ていてね!
「そうか、カズマの決心は硬いのだな……なら、無理矢理されてしまったらカズマに罪はないな!ほら、気持ち良くしてやるから大人しくしろ!!」
「なっ!いきなりそこで力技かよ?!今の流れでそれはおかしいだろ!そこは美しく諦めろよ!」
「うるさい!!どうせ一夜しか結ばれないんだ!それならもう手段なんて選んでられるか!私をエロネスだとか言ってくれたが、本気でエロに走った私を止められると…「『スリープ』」…あうっ」
暴走を初めた飢えた獣に、私は詠唱を済ませたスリープをかけた。さすがにこの使い方は想定外だけど、正直コレしか方法は無かった。何せ相手はプロの変態だし……
「えっ、今の声って……先生?!」
「あっ、うん…え〜と……き、来ちゃった……」
「…………はっ?」
「ごめん……今のは私が悪かったです……」
………………………………
「成程……それでコイツはそんな無茶を…だからエリス様があんな事を……」
少し想定とは違ったけれど、私はアルダープの企みについてカズマと話すことが出来た。ダスティネスの抱えた20億の借金のこと、アルダープが何かしらの悪魔と契約していること、そして、ダスティネスの領主に呪いがかけられていること……それらの解決に裏で私が暗躍することを含め、実に建設的な意見交換が出来たと思う。こんな事なら、最初からカズマと話せば良かった。仲間のクルセイダーがここまでポンコツだなんて、流石に私も想定していない。
「それで、先生の作戦には勝算があるんですよね?ダクネスを式に参加させるとして、もし失敗したらうちの前衛が嫁入りしちゃうんですが?いや嫁入り自体は別に良いんですよ?相手がちゃんとした人だったらですけど……」
「そこは確実とは言えないわ。それに、アレクセイとダスティネスの婚姻は20億エリスとの交換条件だから、花嫁を拐うとかは危険過ぎるわ。契約が果たされない場合、下手すると悪魔が出てくる可能性があるもの」
カズマの協力は心強いけど、それでも嫁入りの阻止は困難だ。悪魔の絡んだ双方合意の契約は、不履行になれば魂さえ奪われる可能性がある。となれば契約は遂行させて、その上で悪魔とアレクセイを仕留めるほうが安全だし、何よりリスクが少ないと思う。いや、一応安全に結婚の妨害も出来るのだけど、それには20億エリスが必要になるし……
「これが20億の花嫁ねぇ……まぁ、馬鹿な変態でも大切な仲間なんで、今回ばかりは本腰入れて協力します。全部きっちり片付けてからの方が、俺達も気兼ねなくデート出来ますからね?」
「ふふっ、そうね。私達のデートの日に政略結婚なんて予定したこと、地獄で後悔させてあげなきゃね」
それにしても、カズマはこの短期間で本当に頼もしくなったわね。そりゃこの変態が惚れるのも仕方ないわ。といっても私の彼氏だから、もうチャンスは無いけどね!
「そう言えば、どうして先生はアルダープの悪事に気付いたんですか?悪魔が裏工作してるなら、それに気付くなんて普通は無理ですよね?」
「あら、カズマは知ってる筈でしょう?私の仕事は、人よりちょっと凄い魔法使いだもの。悪魔だってお手の物よ」
私は最高の笑顔でカズマに返事をすると、そのままテレポートの魔法陣を展開した。再会シーンは少し外したけれど、去り際は最高に格好良い師を演出するために……
「うぅ、カズマぁ……」
ついでに、この変態はキスしようとしたらゲロを吐く呪いを……いや、貞操を守る祝福を与えておきましょう。私は人よりちょっと凄い魔法使いだから、アフターケアも忘れない。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
ここから少しずつカズマのパーティーに絡むようになるのですが、ネタを差し込みすぎて展開が実にゆったりペースです。まぁ、焦る話でもないのですが、気長にお付き合い頂けたらと思います。
あ、明けましておめでとうございます。