そろそろアニメ化するダクネスヒロインルートですが、そんなフラグへし折るのが私の作品です。物珍しいウォルバクファンの皆様、そしてカズマにダクネスは渡したくない勢の皆様。私の作品に脳をやられた皆様。避難所はこちらです。
またお暇な時にでもお付き合い下さい。
大好きな人を奪われたことがある。それは本当に突然の出来事で、あの時の無力感を俺は忘れたことはない。でも、あの時の彼女は幸せそうで、俺はただ意気地なしの自分を責めた。では、もし大切な人が泣いているとしたら?もしそれが望まぬ関係だったら?眼の前にある仲間の危機に、今度こそ俺は行動を起こそうと思う。先生に授けられたこの力は、きっとそのためにあるのだから……
「おいなんだこの服は?!何故乳首と股間の部分が透けるんだ!これでは変態ではないか!!」
「ひ、光の屈折魔法が仕込まれているようです!肌が触れたら発動するタイプで、どうやら事前に仕込まれていたらしく……」
「やり口が流石に悪質過ぎるだろ?!急いで屋敷から服を持ってこさせろ!このままでは式に出られん!!」
まぁ、正直こんなことをするために教えたわけではないだろうが、これこそが俺のやり方である。更衣室の前にボトムレススワンプの魔法陣を書きながら、俺は先生の到着を祈った。
「頼みますよ先生。何とか時間は稼ぎますから……」
「いったぁ!!靴の中に画鋲が入っているではないか!ここの警備はどうなっているんだ?!」
「そんな?!警備は万全だった筈なのに?!」
うん、これだけでも時間は稼げそうだけど、取り敢えず急いでください先生。アルダープも切れたら何するか分からないんで、この方法はそれなりに危険です。俺は楽しいけど……
…………………………………
「えぇ、カズマに良い手があるのなら、私も式場爆破計画は中止します」
「それで、私達は何をすればいいの?」
仲間の熱い信頼を受け取ったのは、挙式前夜の事だった。こいつらもダクネス奪還のために行動を起こそうとしていたらしいのだが、流石にテロ行為は辞めて欲しい。それで俺達の処刑を交換条件にされてしまえば、ダクネスはマジで嫁に行きかねない。
「裏で動いてくれてる仲間がいる。だから、ダクネスの結婚式をなるべく引き伸ばして欲しいんだ。悪魔が契約に関わっているみたいだから、あくまで中止じゃなくて引き伸ばしだ。契約違反がどんな事態を引き起こすか、俺達にはわからないからな」
「それなら任せて!貴族の挙式には色んな所から余興の申し入れがあるから、私の華麗な芸で観客を釘付けにしてやるわ!」
「それなら、余興の枠を確保する必要がありますね。そっちは私に任せて、アクアは余興の準備をお願いします」
「分かった!準備してくるね!」
…………
なんて会話を昨晩したのだが、そもそもこんな直前に余興なんて入れられるのだろうか?とんでもない権力者でも居れば話は別なのだが、めぐみんにそんな知り合いは聞いたことがない。隣で他の余興を楽しんでいるようだが、どうしてそんなに余裕なのだろう。俺達に気付いたダクネスだって、完全に目も合わせてくれないし、この状況は本当によろしくない。
「えぇ、以上が商人ギルドの余興でございました。と、本来ならここで挙式を予定しておりましたが、急遽次期紅魔族族長から余興の申し入れがございましたので、先にこちらをご案内させていただきます。ゆんゆんさん、壇上へどうぞ」
「………は、はい!」
あっ、そう言えばあの子は凄い身分の子だったわ。軍事国家の次期リーダーな訳だから、そりゃアルダープだって無視は出来ないだろう。ただ、流石にゆんゆんを壇上に挙げるのは可哀想な気がするな……
「おい、めぐみん。流石にこの仕打ちはあんまりなんじゃないか?こんな緊張する役回り、間違いなくゆんゆんの仕事じゃねぇだろ?」
「良いんですよ。次期族長の癖にこの程度こなせないのは問題です。それに、本人もダクネスのためなら頑張ると言いましたし、ちゃんとカンペも用意しました。だから、何も問題はありません」
お前が用意したのかよ……むしろ不安が増していくんだが……
「ほ、本日はお日柄も良く!絶好の政りゃ…挙式日和となりました事を、お祝い申し上げます!」
「えっ、いま政略結婚って言おうとした?」「政略なのかな?」「そりゃ顔面偏差値見たら間違いなく政略結婚だろうけど……」「でも流石にこんな時に言うか?」
はいやった〜。なにかやるとは思ってたけど、これは流石にゆんゆんが可哀想だろ。人見知りが悪化したらどうすんだよ。アルダープも怒りで震えてるし……
「ちょっとめぐみん!カンペに政略結婚って書かないでよ?!流石に結婚挨拶でそれは無いから!私が常識ない子に見えちゃうから!」
「ソロオセロプレイヤーに常識なんて、誰も期待してませんよ。それに、私はそんなの書いてないので、悪魔か何かの仕業ではないですか?」
無意識なのか分かってやってるのか、遠回しに凄い煽ってやがる。アルダープも少し焦っているし、これでは強制退去なんて可能性も……
「いい加減なこと言わないで!私達紅魔族は悪魔の力に耐性があるでしょ!高い魔力で覆われたこの身体には、悪魔でもそう簡単には干渉出来ないんだから!」
「くっ!あ、後の予定がつかえているんだ。挨拶はもう少し手短に頼む……」
悪魔の力が効かないと分かると、身を乗り出したアルダープが自分の席へと戻っていった。どうやらこいつ等なりに作戦は立てていたらしい。切り札が効かない奴が相手となれば、そりゃ噛みつくなんて出来ないだろう。何せ紅魔族とやり合えば勝ち目なんて無い。こんなのもはや脅迫だ。
「で、では続きを……えぇっと、後はアドリブで頑張れ……って、えぇ〜〜?!」
「ぷっ!」「いやそれ読むのかよ……くふっ」「わ、笑ったら可哀想だけど…これはちょっと……」
「あ、あう……あぅぅ……」
真っ赤になって震えるゆんゆんを、一体誰が救えるというのか……会場は静かな笑いにつつまれ、こんなのタダのイジメである。まぁ、あれを読み上げたのは流石に迂闊すぎると思うが、それでも心が痛む光景だ。頼むアクア。もうお前が行くしか方法はない!俺のアイコンタクトに気付いてくれ!
「……ニコッ」
パチン!
「いやウィンクは求めてねぇよ!不覚にもちょっと可愛かったけども!はやくゆんゆんをフォローにいけ!」
「あぁ!そういうことね!」
くっ、つい焦って可愛いとかいっちまった。でも、取り敢えずこれでゆんゆんは助かるか……
「はーいみんな!ゆんゆんのショートコントはこれくらいにして……余興といったらやっぱり歌よ!新たな門出を祝うために、私からは歌を送るわ!会場のみんな!挙式に向けて盛り上げていくわよ!!」
「「「「「「「おぉー!」」」」」」」
「あ、アクアさん……ありがとうございます……」
その既に二次会みたいなノリなのは少し気になるが、やはり引き伸ばしと盛り上げならアクアの右に出るものは居ないだろう。会場を盛り上げれば無理矢理帰すことも出来ないだろうし、もし悪魔が干渉してもアクアなら返り討ちだ。さぁ頼むぜ宴会芸の女神様、二次会が常にオールになる手腕。ここで存分に発揮してくれ!!
「それでは1曲目……蛍の光!」
「おい待て!流石に1曲目にその選曲はおかしいだろ?!私の参列者帰らせようとするな!お前本当に余興する気があるのか?!」
「アルダープ様!企画者は紅魔族の次期族長ですので!ここはどうか抑えてください!」
これには流石のアルダープもツッコミを入れてしまっているし、何なら俺だってツッコみたい。でも、アクアの声を聞けばそんな言葉は出なくなる。さぁ歌えアクア!超一流の宴会芸、会場全体に響かせてやれ!!
「ほ〜た〜るの〜ひか〜り♪」
「あっ、帰らなきゃ……」「ここに居たら駄目な気がする……」「そろそろ夕飯の支度をしなきゃ……」「なんでここに居たんだっけ……」
凄っ!何これもう帰りたい!流石は宴会芸の女神様!一小節だけでお開きムード全開にしやがった!先生とのデートの時にも、何か歌ってもらおう!
「お、おい……この式場の予約は何時までだった?」
「落ち着いてくださいアルダープ様。我々は運営側なので、これで終わりではありません」
どうやらスタッフ側には効きにくいようだが、アルダープまで帰ろうとソワソワしているのは中々面白い。それならそれでアルダープから中止にしたことになるし、いっそ帰ってしまえ!
…………………………
「はぁはぁ……もう……喉が……限界だわ……」
「中々楽しませてくれたが、どうやらもう終わりのようだな……」
アクアのライブ開催から一時間。まるで最終決戦のような雰囲気を醸し出している2人だが、実際にはただライブを楽しんでいただけに過ぎない。アルダープも途中から立ち上がっていたし、後半にはおしぼりをブンブン振り回して盛り上げていた。ダクネスの目が死んでいるのは気になるが、作戦は間違いなく上手くいったと言えるだろう。
「お前ら、本当に何しに来たんだ……」
うん、それに関しては本当にごめん。理由は言えないけどお前のためなんだ。機から見たら完全にふざけているけど……
「では、余興も終わりましたので挙式へと移りたいと思います。と、言いたい所なのですが……」
「おい待て!まだ何かあるのか?!無駄な時間を取らせるつもりなら、そんなものは挙式の後で……」
「アイリス様より、ララティーナ様への表彰状が届いております。領主様の元へ嫁ぐのであれば、こちらを紹介した方が箔がつくかと思いまして……」
「ふむ……それならば認めよう。花嫁の活躍を喜ばん亭主など居ないからな!」
権力に汚い大人ってやつは、逆を返せば権力に弱い。これだけ大々的に人を集めた以上、王家からの表彰を断るなんて出来っこない。そして、これも俺の考えた罠だったりするのだが、そんなの夢にも思わないだろう。
「ダスティネス・フォード・ララティーナ殿。貴女は魔王軍との度重なる戦いにおいて、クルセイダーとして、そして人民の盾として、あまりに多大なる貢献をしてくれました。その活躍はサトウカズマ一行と省略して良いものでなく、騎士として、また多くの貴族の手本としてあるべき姿です。その誉れある貴殿の功績を称え、ここに王家よりふたつ名を与え、その貢献に報いるものとします!」
「ふ、ふたつ名を?!」「マジかよ……王家からの直接って……」「カズマでさえ貰ってないのに……」
「………拝命いたします」
どよめき立つ会場とは裏腹に、卑しい顔でダクネスを眺めるアルダープ。こいつにはその偉業さえ自分のもつアクセサリーか何かだと思っているのだろう。だが、余りに過度な装飾って言うのは、ただ使いづらいだけなんだぜ?
「では本日よりダスティネス・フォード・ララティーナの名を改め、ダスティネス・フォード・ドロッセル・ジュノー・フィアツェーンテス・ハイツレギスタ・フュルスティン・フォン・フリューゲル・ララティーナを名乗るように!」
「おい待て!なんで二つ名のほうが本名より長いんだ?!二つ名と言うのはもっと分かりやすく短いもんだろ!それでは本名より長いではないか!!」
「い、偉大な先人の名を取ったとの事で、そこ先人の名が長かったのかと……」
これも挙式を妨害する手段の1つだからな。そんな偉人は存在しないが、王家が言っては否定も出来ないだろう。何せネットのないこの時代だ。それを嘘と証明するなんて出来るはずがない。
「と、取り敢えず挙式には移りますので、こちらの結婚証明に記名を……」
「そ、そうだな。名前が長かろうと書ければ……………って記名欄が異様に小さい!私のフルネームがギリギリ入るか分からんレベルで小さい!もっと大きい奴は無かったのか?!」
「す、すみません!何故か記名欄だけが異様に小さく、そして祝福するエリス様の名前が当社比5倍くらいになる祝福を受けていると、エリス教会から連絡があり……」
「くそぅ!イカれた祝福をしよって!」
こ、これはエリス様の援護なのだろうか?ちょっと悪ノリが始まったようにも見えるが、これは中々に効果的だ。だって今のダクネスの名前って超長いし、こんな小さい枠にあの不器用な女が署名なんて出来るはずがない。これが法的な書類である以上、適当なサインでは通らない訳だし。
「くそっ!ならばもっと大きな紙を用意しろ!エリス教会の印があれば、別に紙の大きさなんて……」
バァン!
「残念だがそうはいかないぞ!」
勢い良く開け放たれた扉の向こうには、ダスティネスの領主であるイグニスさんが立っていた。どうやら引き伸ばしは成功したらしい。ダクネスの身体は清いままなので、取り敢えずそういう事にしておこう。
「お、お父様!」
「なっ、何故ダスティネスの領主がここにいる?!」
「ここに居るのは当然だろう?私は花嫁の父親なんだ。と言っても、この挙式は中止だ。アルダープ!貴様は法の下で裁かれるのだからな!」
イグニスさんの突き出した右手には、数多くの書類が握られている。それには先生の書いた解呪の魔法陣が貼られ、偽装した内容が全て浮かび上がっていた。これはどうやっても言い逃れなど出来ない。動かぬ証拠がこれだけあっては何を言おうと無駄だろう。
「そ、そんなものが何だと言うのだ!辻褄など後で合わせれば良い!ダスティネスの妻を娶った事実さえあれば、わしは何度でもやり直しが出来る!」
「きゃっ!」
「「「ダクネス!!」」」
追い詰められて自暴自棄になったのか、それともダクネスがどうしても欲しかったのか……いきなりダクネスを抱きしめたアルダープは、そのままダクネスの唇を奪いにかかった。しかし、アルダープの罪が白日の元にさらされた今、それにダクネスが従う必要など……
「や、辞めろぉ……こんな醜い犯罪者に……私の初めての唇がぁ……」
すみません。そこはもう少し本気で抵抗してもらって良いですかね?なんでこんな時に性癖爆発するかな?どこまで性癖こじらせてるのお前?
「むちゅ〜……」
「や、やめ……うぷっ…オロロロロロ!」
ビチャビチャ
「ぶふっ!」
「「「「「……はっ?」」」」」
迫るアルダープのキス顔をめがけ、ダクネスの吐しゃ物が降り注ぐ。流石にドMのダクネスとしても、あのキモい顔には耐えられなかったらしい。そりゃ気持ちは分かるけど、ただでさえ変態ヒロインにゲロイン要素を足すのはどうだろう……
「カズマ!君の横抜きされた報酬だよ!その20億は君の物だ!」
ブンッ!
「クリス!マジかよ最高のタイミングと金額じゃねぇか!」
ガシッ!
クリスから投げ渡されたアタッシュケースは、俺の報酬を横抜きしたものらしい。つまり、これをダクネスを助けるのに使ってもなんら問題は無いことになる。それなら……
「はぁはぁ…くっ!まさか大衆の前でこんな目に……もう許さんぞダスティネス!この契約書を持って貴様らを!」
「残念だが……その契約はこれで成立だぁ!!」
ズダン!
「ぶふっ!!」
吐瀉物に塗れたアルダープの顔面へ、俺は20億のアタッシュケースを叩きつけた。契約書にあるのが金かダスティネスのどちらかなら、金が入った瞬間にその契約は終わる。つまり、これで悪魔の力は及ばない!
「残念だったなアルダープ!どんな悪魔と契約したか知らないが、契約書が無きゃ手は貸してくれないだろ?それとも、なにか支払って契約し直すか?今のお前に、支払えるものがあればだけどな!」
決まった!実際には金を返しただけなのだが、これだけ決めておけば俺の責任は何となく許されるだろう。何せイグニスさんも味方に着いたのだ。根本原因が俺だとしても、これ以上怒られることはない。ないよね?
「くっ!冒険者風情が……マクス!早くこの場から儂を連れ出せ!契約の義務を果たせ!!」
「いいよ〜」
「「「「「なっ?!」」」」」
先程まで何も居なかった空間へ、突如として頭の欠けた悪魔が現れた。それは見て分かるほどに禍々しいオーラを放っていて、並の悪魔では無いことが見て取れる。不味い。これは下手するとアクアじゃなきゃ……
「セイグリ……ぜ……あっ、喉が……」
「お前!本当にこういう時駄目な女神だな?!」
何と言うか、マジでエリス様を見習ってくれません?
「でも先に……」
バキンッ!
「あぁー!!な、何をするマクス!何故私の足を折ったぁ!」
マクスと呼ばれたその悪魔は、突然アルダープの右足を踏み抜いた。それは余りにも無慈悲な一撃で、踏まれた足は明後日の方向に向いている。
「なぜだ……何故こんな事をする!ワシが今までの対価を払って来なかったからなのか?!それなら今からでも払う!だから、わしをここから連れ出してくれ!」
「あぁ、それならボクの家に行こう。今までの対価も貰えるなら、きっとその方が都合がいいもんね……」
バキンッ!
「あぁー!!な、何故だ!!何故わしへの攻撃を辞めない!対価なら払うと言ったのに!どうしてわしを攻撃する?!」
今度は魔法による攻撃か、マクスの手が振り上げられると、反対の脚まであらぬ方向に曲がった。悪魔は人を殺さないと言うが、コレは一体……
「ボクの貰う対価は苦痛の悪感情だからね。今までの契約分を全部含めたら、これを300年は繰り返さなきゃ終わらないよ。それに、侵入者に手酷くやられたから、早く悪感情を集めたいんだ……」
「ま、待ってくれ…まさかこんな対価だなんて……それが300年も続くなんて……」
「大丈夫だよアルダープ……ボクは君が大好きだからね……ちゃんと老いない様に力を与えてあげるよ……また300年経ったら、その時はまた国一番を目指そう?ボクらの契約は、君の夢が叶うまでだもんね?」
「い、嫌だ……こんな終わり方は嫌だ……眼の前に欲しかった物があるんだ……こんな所で終わりなんて……ごふっ!」
ミシッ、バキッ……
おられた骨が軋む音と、それを無理矢理治す音。苦痛を表現したかのような音を鳴らしながら、アルダープの身体は闇の中へ沈んでいく。それは身勝手な形で悪魔を利用した報いであり、これが悪魔という存在なのだろう。まぁ、悪人にはお似合いの最期か……
「………終わったのか?」
「多分な。悪魔は嘘をつかないらしいから、これで300年は安心だろうよ。さぁ、帰ろうぜダクネス?お前の帰るべき場所へさ?」
結局俺は嫌がらせと借金返済しかしていないが、今は少しくらいカッコつけても良いだろう。眼の前で泣きそうになってる仲間が居るんだ。たまには頼り甲斐って奴を出してもバチは当たらない筈だ。
「カズマ……カズマぁ……うぐっ……私……私はぁ……」
ガバッ
「はいはいカズマですよ。ったく、泣くくらいなら最初から相談しろよ。でも、良く頑張ったなダクネス?」
ちょっと酸っぱい匂いのするダクネスを受け止め、そのまま優しくダクネスの頭を撫でる。馬鹿で無謀な奴だと思うが、それでも大切な仲間に違いはない。だから、これは浮気じゃないですよ先生……
「おや?どうやら私の娘は、カズマくんに20億で落札されてしまったようだ。他に出資者が居ないのであれば、このまま娶って貰う他無いのではないかな?」
「お、お父様!こ、これは決してそういう意味の包容では……」
「良いじゃねえかララティーナ!」「もう結婚しろよララティーナ!」「カズマのストッパーはお前しか居ないぞ!」「それなら俺達も喜んで祝福してやるよ!」「お礼にチューくらいしとけララティーナ!」
「「「「「「「ララティーナ!ララティーナ!ララティーナ!」」」」」」」
「や、辞めろぉ……これは本当にその……女として困る……」
赤面するララティーナの可愛らしさに、正直俺は何も言えなかった。先生の存在は頭を過っていたが、これ程の美人を前に童貞の俺が動けるはずがない。そう、だからこのままエロいことになったとしても、俺は魅了された哀れな被害者って事で……
バァン
「ちょっとカズマ!!」
「はい!」
ポイッ
「ひゃうん!感動のシーンでこの仕打ち……たまらん!」
なんてダクネスの雰囲気に呑まれかかっていたら、先生本人が会場に飛び込んできた。ここで咄嗟にダクネスから離れられるって事は、ちゃんと本命は先生ってことで良いのだろう。どうやら怪我もしていないようだし、取り敢えず一安心だ。
「なんなのよこれ!宿に戻ったらこんなの置いてあったんだけど?!何なのこの30億エリスって!!」
「さ、30億?!」「ダクネスの買い取り金額より10億も多いぞ?!」「でも、あれ程の美人になら出せるような……」「いや物理的に出せねぇだろ……」
周りは随分とどよめきたっているが、俺は先生を金で買おうなんてしていない。そこは訂正しないと俺の愛が疑われるので、ちゃんと説明責任を果たそうと思う。
「先生のファーストキスを奪ってしまったので、その支払いです。ほら、酔ったときに30億くれたらあげよっかな?って言ってたじゃないですか?」
「き、キスに30億?!」「嘘だろ……」「ララティーナが20億で、あの美女はキスだけで30億かよ……」「とんでもない差が出たな……」「まぁ、取り敢えずアレだな……」
「「「「どんまい。ダクネス」」」」
「んなっ?!」
何故かダクネスが敗北宣言されているが、それに関しちゃ仕方ない。だって相手はあの先生である。見た目互角でも中身に圧倒的な差があるのだ。
「あの、カズマ?あの人にはやはり見覚えが……」
「もう……もうカズマの気持ちなんて知ったことか!」
ガバッ!どさっ!
「いって!おい何すんだダクネス!と言うか酸っぱい!風呂入るまでちょっと離れてろ!」
突然のダクネスのタックルにより、俺は硬い床に押し倒された。めぐみんがなにか言っていた気がするが、正直今はそれどころではない。何せ俺はいま、ダクネスに寝取られそうになっているのだから!
「奪ってやる!私をこんな気持ちにしたカズマが悪いんだ!お前の記憶に、無理矢理にでも私を刻み込んでやるからな!!」
「お、おい辞めろダクネス!そういうのはよろしくないぞ!お前はそういう所だけは乙女だっただろ!あとやっぱり酸っぱい臭いするから!せめてシャワーを浴びてからだろ!」
完全に暴走してしまったダクネスの顔は、もはや羞恥を超えて発情している。こんな獣を相手にしたら、このまま皆の前で筆下ろししてしまうかもしれない!いや落ち着け我が息子。いま反応したらある意味同意だ!ちゃんと刺激されてからスタンバイをだな?
「や、辞めたほうが良いと思うわ……その、上手く言えないのだけど、その先はカズマが喜ばないから……」
「うるさい!私だってカズマが好きなんだ!貴女には遠く及ばなくても、それでもカズマの心に……オロロロロロ!」
ビチャビチャ
「ひぎゃー!!」
完全にエロい寝取られを期待した俺の顔面へ、容赦なくダクネスの熱いものが降り注いだ。それは先生とのファーストキスより印象深く、そしてある意味では誰よりも深くつながったと思う。まぁ、こんなの二度とごめんだけどな!!
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
すみません。こういう最低な話は直ぐに筆が乗るんですよ。ということでここから複雑に絡み合う人間関係がスタートします。いやまぁ私の言う複雑なんてそれほどでもないですけど……
そろそろちゃんとラブコメします!
また不定期ですが、お暇な時にでもお付き合い下さい。