※この作品はR-18です。

この怠惰な女神に信奉を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

カズマとアーネスが契約したことで、なんか良く分からない三角関係が成立!そしてカズマのパーティーにも顔を出すことで、ここから先アーネスに平穏はないです。って感じでアーネス回です。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この真面目な悪魔に新たな日々を

主を失って1年ほど経ったある日の事。あたしは懐かしい匂いに誘われ、人の書いた召喚陣へ手を出した。結果から言えばその匂いは本物で、あたしはまたウォルバク様と再会できた訳なのだが………

 

「くそっ!またこんな変態みたいな衣装を……今日という今日はぶっ飛ばしてやるからな!」

 

「ははは!バニーガールで凄まれても可愛いだけだぜアーネス!文句があるなら俺に勝ってから言うんだな!!」

 

何故かこんなのと契約することになり、慌ただしく大変な日々を送っていたりする。

 

………………………………

 

「くそっ!また逃げられた!カズマのやつ、日に日に魔力を隠すのが上手くなってやがるな!」

 

カズマと契約して1週間。あたしはウォルバク様の隠れ家に部屋を借り、カズマの鍛錬相手として毎日を過ごしている。最初こそ魔法の撃ち合いやら戦闘訓練をメインで行っていたのだが、最近では魔力隠蔽やら魔力探知の訓練……という名目の鬼ごっこばかりやらされている。ちなみに負けると変な服を着せられるので、あたしは一切手を抜いていない。

 

「また可愛いの着せられてるわね。でも、魔法を放つのも大切だけど、魔力を上手く隠したり、温存するのも重要な鍛錬よ。それにまだ本調子じゃないんだから、魔力を大量消費する訓練はアーネスとしても避けたいところでしょ?」

 

「それは確かにそうなのですが……やはり、これは私のことを考えての訓練なのでしょうか?」

 

カズマの訓練相手を買って出た所までは良かったが、あいつは少ない魔力で魔法を連発できる技量がある。魔力量から撃ち負けることはないのだが、それでも残機がないあたしにその手の訓練は辛い。だから、カズマにこの訓練を提案され、こちらとしても助かってはいるのだ。カズマにとって有益なのかは別として……

 

「カズマって、あぁ見えて女の子には結構甘いから。例えそれが自分より強い相手でも、人で無かったとしても」

 

「それは何となく分かる気がします。しかし、それでこの報酬を受け取るのは、流石に不相応な気がしてまして……」

 

実際カズマは見かけによらず優秀だ。もしこの鬼ごっこがゲリラ戦であったなら、あたしは敵の姿を確認さえ出来ずに殺されている。そう考えると、この訓練はカズマになんの恩恵もなく、ただあたしのリハビリに付き合っているだけにみえる。契約主義の悪魔としては、この状況は正直複雑だ。

 

「それは大丈夫!この訓練は間違いなくカズマの実力を伸ばしているわ。どんな理由かは私にも分からないけれど、余程集中して打ち込む理由があるみたいよ?」

 

「そうですか……そうであるなら、少し心が楽になります」

 

あたしには効果が見えなくても、この訓練でカズマはちゃんと強くなっているらしい。ふざけた奴だと思っていたが、意外とストイックな一面もあるようだ。それを見抜けないとは、私もまだまだ主への理解が浅いな。

 

「ところで、これってカズマはどうしたら勝ちになるの?アーネスは何でも良いから攻撃を当てるって聞いてるけど、同じ条件だとカズマはもう攻撃してきてる筈よね?」

 

「カズマの魔法は簡単には致命打にならないので、魔力で抵抗出来るスキルが成功したら私の負けになります。ですので、魔力を高めていれば負けは無いのですが、探索と同時に身構えるのは中々難しくて……」

 

「なるほど。アーネスは索敵と防御の両立を、カズマは隠密と魔力観察を両立しなきゃ勝てないわけね。これは意外と悪くない鍛錬かも知れないわ……結構実戦向きだもの……」

 

どうなんでしょう。そこまで言うと買いかぶりな気がします。このカズマの勝利条件は一見誠実に見えますが、カズマの勝ち方には少々問題が………

 

「あれ?でもカズマが使える攻撃以外の対人スキルって……ひゃうっ?!」

 

「ウォルバク様?!」

 

あっ、まさかこれって……

 

「ははははは!先生が居て油断したかアーネス!あえて何かは言わないが、今回もスティールが成功したから俺の勝ちだな!」

 

「あっ、やっぱりこう言う展開か…」

 

高らかに勝利宣言するカズマは、いつも通り右手に何かを握り締めている。いや、何かと言ってもいつも盗られるものは同じだし、これは間違いなくアレなんだろう。ただ今回はあたしのじゃなく、多分ウォルバク様のなんだろうけど……

 

「お、おいカズマ!悪いことは言わないからそれを早くこっちに渡せ!そして可及的速やかに土下座しろ!」

 

「おやおや、いつもは真っ赤になってプルプル震えている癖に、今日は随分と強気じゃないか?まぁ、確かに何時もより湿り気があるし?普段より恥ずかしい気持ちは分からんでもない。しかし!それが勝者に対する礼儀かなぁ?!」

 

「そ、それは始まりの炎……」プルプル

 

あっ、これあいつ死んだのでは?

 

「お、おいカズマ。悪いことは言わないから早くそれを返したほうが良い!なんなら土下座も2割増で深くしたほうが良い!これは善意通告だからな!」

 

「今日は随分と必死じゃないか。偶然とは言え先生の前で下着を盗られてしまって恥ずかしいのは理解しよう。しかし、その態度は折角の可愛いバニーが台無しだぜ?まぁパンツはウサギより猫さん柄がお好みみたいだけどなぁ!可愛い趣味しやがって!しかも名前まで書いて…………あれ?!ウォルバクって書いてる?!」

 

あ、あいつ死んだな……

 

「ねぇカズマ……私のパンツについて、何か言いたいことはあるかしら?」

 

「ふ、普段は結構可愛いの履いてるんですね?」

 

「そう……良いからさっさと返しなさいよ!『エクスプロージョン』!!」

 

カッ!!!

 

……………………………

 

「うぅ……まだ全身がヒリヒリする……」

 

「自業自得だ。全く、これに懲りたらパンツ狙いは辞めろよな……」

 

技量による補正がどんなに高くとも、圧倒的な火力の前には成す術などない。だからカズマが五体満足なのは、多分ウォルバク様の加減のお陰だ。と言うか本気だったらチリも残らなかったと思う。カズマの張った防御魔法など、まるで薄氷のようにバラバラになったし……

 

「別に狙ってないんだけどな……むしろアーネスの普段着だと、あの水着みたいなの奪うほうがエロいじゃん?」

 

「そ、その2択だと確かに下着はマシな気が……いや、そもそも下着とアレしか着てないあたしにスティール選んだお前が悪い!先ずそこから反省しろ!」

 

「へ〜い」

 

全く、この男は性欲に関わることに関しては物凄い集中力を発揮しやがる。これをストイックな一面とか言って良いのか?少なくともあたしは見直して損した気分だぞ。

 

「さて、後片付けも終わったし、飯にしようぜアーネス。流石にそろそろクエスト受けないと仲間がうるさいし、午後はクエストを手伝ってくれよ」

 

「あぁ、例の欠陥品パーティーか……ウォルバク様も夜まで帰ってこないし、それくらいなら付き合ってやる。それと、あたしに人の食い物は要らないと前にも言ったぞ」

 

「一人だけ食わないのは場違いだろ?味は分かるんだから奢られとけよ。それと、相応に覚悟もしといてくれ」

 

覚悟ね……どれだけ欠陥の激しいパーティーなのか知らんが、アクセルのクエストに覚悟なんて要らんだろう。最近はマナタイトで調子も戻ってきた事だし、この機会に格の違いを見せ付けて、「アーネスさん!今まで馬鹿にしてすみません!一生ついて行きます!」って言わせてやるとしよう。どうせ相手は駆け出しの街のパーティーなんだ。あたしの相手になる筈がない。

 

………………………

 

「カズマ様、今まで馬鹿にしてすみませんでした!あたし一生ついて行きます!!」

 

「いやそこまでの事じゃ無いと思うぞ?うちの馬鹿2人を黙らせただけだし……」

 

カズマに呼ばれて食事会に参加したら、何故か宿敵と女神級の力を持つプリーストが居た。一体何を言っているか分からないだろうが、それはあたしが1番思っている事だと思う。今のあたしの悪感情を自分で食えたなら、多分半年は飲まず食わずで生きられると思う。

 

「離しなさいよカズマ!あれ絶対に悪魔とかそういう存在だわ!この場で消し去ってやるんだから!」

 

「私の拘束も解いてください!奴は間違いなく悪魔です!アーネスとか言うムチムチの悪魔です!」

 

「二人共落ち着け!アーネスとは使い魔の契約をしてるし、そもそも話が通じる良識的な悪魔だぞ!なぁアーネス?」

 

「はい!待てもお座りもキチンと出来ます!命じられれば足も舐めます!カズマ様には絶対服従の無害な悪魔です!」

 

「おい待て。それの説明は別の意味で誤解されるから辞めろ」

 

敵意むき出しの化け物2人を、カズマは手慣れた様子で拘束し無力化した。確かに魔法職なら魔法を撃てなくすれば無効化出来るが、あの手際はもはや熟練の傭兵だ。駆け出しの街の住人なのに、どれだけの修羅場を潜って来たんだよ……

 

「二人共落ち着け。カズマが自分にリスクのある契約なんてする筈がないだろう?アーネスと言ったな。私はクルセイダーのダクネスだ」

 

「あ、これはご丁寧にどう……もぉ?!」

グイッ!

 

クルセイダーなのに友好的なダクネスの対応に、あたしは完全に油断していた。掴まれた手はそのまま引っ張られ、この距離では完全に魔法より打撃の方が早い。どうやらカズマの仲間は、一人として悪魔に理解のある奴は居ないらしい。流石にこれは一緒に冒険なんて……

 

「それでカズマとはどんな凄い契約をしたんだ!良いんだ私は分かっているぞ!カズマみたいなクズ男と契約するなんて、その手のプレイを求めなきゃ絶対にしないもんな!!」

 

「なんか別の方向で理解の出来ない奴が来た?!金と魔力しか貰ってねぇよ?!」

 

なにこの興奮と喜びの感情!こんなのクルセイダーが出して良い感情じゃないだろ!これ本当にクルセイダーか?!

 

「魔力だと!女なら子宮に、男なら精巣に最も多く含まれるものじゃないか?!そんなのもう、いかがわしい受け取り方してるに決まっている!」ハァハァ!

 

「優性遺伝の為の機能をエロ目的みたいに言うんじゃねぇ!そんなのマナタイト経由に決まってるだろ!と言うか昼飯時にする話じゃねぇだろ?!」

 

私に詰め寄るこのクルセイダーは、残り二人とは違う方向に話が通じない。言葉が通じても意味がねじ曲がって伝わるのでは、わかり合うなんて出来る筈がない。

 

「これじゃ話が進まないし、俺から1つ提案をしよう。お前がアーネスを受け入れてくれるなら、今夜は歓迎会の意味も込めて焼き肉にする」

 

「いやいやいや!そんな馬鹿みたいな条件で受け入れられる筈ねぇだろ?!一度討伐された相手と、悪魔の天敵プリーストだぞ?!この変態はひとまず置いておくとしても、「ひゃうん!」後の2人が納得する筈が……」

 

「………シュワシュワの飲み放題は?」

 

「つけます」

 

「それは1番お高いコースですか?」

 

「そのつもりです」

 

えっ、何この真剣な顔と空気?今それ聞く状況だったか?そんなの一蹴してあたしの処分についてとかじゃ……

 

「「ようこそアーネス!」」

 

「いやお前らそれで良いのかよ?!」

 

あたしとの敵対心は焼き肉以下なのか?!

 

「良いのよ!悪魔倒すべしは教義だけど、腹が減っては戦はできないとも言うわ!それにカズマの使い魔って事は、実質私の眷属とも言えるわけだしね!」

 

「ほ、本当にそれで良いのかよ……」

 

何コイツ。もうプリーストの存在意義から覆りそうな事言ってるじゃん。しかも凄く真っ直ぐな目で……

 

「カズマの使い魔となったのであれば、それはもう仲間と同義です。過去の事は水に流し、ついでにちょむすけを可愛がる権利を与えても良いでしょう。えぇ、過去の事は水に流して…」

 

「おい待て。それ騙し取った金の事も無かった事にしようとしてるだろ?お前とあたしの関係については、あたしは間違いなく被害者だと思うんだが?」

 

「そ、それも水に流してください……返したくとも私の財産は、すべてカズマの手の中なので……」

 

「そうだな。これは近々立て替えとくわ」

 

こいつもそれで良いのかよ。そりゃ敵対しないのは好都合だし。ウォルバク様本人に会えたんだから、あの使い魔みたいなのに用はねぇけどさ……

 

「どうやら話はまとまったみたいだな。それじゃ、午後のカエル討伐に向けて飯にするぞ。アーネスも好きな物食べて良いからな?」

 

「わ、悪いな……と言ってもカエルが相手じゃ、あたしの出番なんてないだろうけどな……」

 

別に暇ならそれでも良いんだけどな。昼飯時にどっと疲れたし、休ませてくれるなら好都合だ。なにせ相手はジャイアントトード。カズマだけでも遅れは取らない相手だろうし……

 

………………………………

 

「いやいやいやいや!何がどうなったらこんな事になるんだよぉ!!」

 

あたしを(色んな意味で)追い詰めたパーティーにとって、ジャイアントトードなど取るに足らない雑魚である。しかもクエストでは5体討伐すれば良いので、間違いなく苦戦などする筈がない………そう思ってしまった事が、多分フラグって奴だったんだろう。

 

「良いから走れアーネス!最悪めぐみんを捨てて飛べ!お前だけは戦える状態で居て欲しい!」

 

「そうはいきませんよ!貴女が役に立つと言ったんですから、今日はヌルヌル無しで帰らせて貰いますからね!」

 

「くそっ!無駄に強靭な握力しやがって!人一人抱えてちゃ飛べねぇぞ!」

 

私達を追うカエルの数は、軽く見積もっても20匹以上。本来なら餌と縄張りの問題でここまで集まることは有り得ないのだが、それを可能にしたのがあのプリーストのチート級の魔力である。

 

「飲み込まれちゃう!このままだと本当にカエルに飲まれちゃう!お願いカズマさん!早く私を救い出して!!」

 

「誰のせいでこうなってると思ってんだ!各個撃破なら安全だったのに、ここら一帯のカエル全部集めやがって!何が効果の薄いヘイトスキルだ!メチャクチャ集まってるじゃねぇか!」

 

フォルスファイアと言うヘイトを稼ぐスキルがあるが、あれは本来カエルには効かない。こいつらは食欲で人を襲う為、敵対心を煽るスキルでは効果が望めないのだ。そう、本来ならその筈だったのだが……

 

「産卵期は卵を守る為に敏感になってますからね。効きにくいからと全力でヘイト魔法を放てば、そりゃ集まっても来ますよね」

 

「チャンスです!とか言ってカエルの卵のあった貯め池ごと吹き飛ばしたのお前だけどな。お陰で凄い数に狙われてる訳だし……」

 

「………」プイッ

 

成程、こんな感じで修羅場を繰り返してきたのか。パーティーに上級職しか居ないのに、カズマが苦労するのはそう言うことか……

 

「くっ!私がその敵を引き付けられれば……あっ!や、辞めろぉ〜!ベロベロ舐めるなぁ!」

 

「……ところで、アイツは最初から何してんだ?」

 

「硬くて食えないから舐められてるんだろ。どうせ役には立たないからほっとけ」

 

「それじゃアイツは何の為に居るんだよ?!」

 

ただでさえ使い捨てみたいなのを1人抱えているというのに、前衛はまだ一匹もカエルを倒していない。本来のクルセイダーなら単体でもクエストクリア出来そうなのに、これじゃアイツの存在意義が……

 

「よしアーネス!そのまま目の前の池に飛び込め!そこなら攻撃される心配はない筈だ!」

 

「それ本当か?!信じるからな?!これで食われたら恨むからな!!」

 

バシャッ!

カズマの示した池の中へ、あたしはめぐみんを抱えたまま飛び込んだ。カエルにとって水なんて、なんの障害にもならない筈だが、今はカズマのことを信じるしかない。まぁ、最悪この馬鹿を水に沈めれば、あたしは空を飛べる訳だし……

 

「あれ?マジでカエルが襲ってこねぇな……」

 

「成程。この池にもカエルの卵がありますから、カエルは下手に手出しが出来ないって訳ですか、考えましたね」

 

さっきその卵を吹っ飛ばしてヘイトを集めた奴には言われたくないだろうが、確かにあの巨体が飛び込めば卵は無事では済まないだろう。流石の頭の回転の早さだ。これなら詠唱時間が稼げるし、少なくとも急接近される心配はない。

 

「ふっ、どうやら上手くいったみたいだな。卵のために必死になるなら、その卵を盾にすれば相手は思うように動けない。俺の読みは当たったみたいだ……」(イケボ)

 

「あぁ、流石だよカズマ。あの状況でそんな事を考えるなんてな。そして、この状況でドヤ顔出来るなんてな………」

 

もちゃもちゃ……

カズマの下半身、もうカエルの口に飲まれてるし……

 

「ごめん。今朝撃ったスティールに魔力を込め過ぎて、カエルを倒すだけの魔力も残ってなかったわ。だんだん飲み込まれて来たんで、出来れば早く助け……ごぼぼぼ……」

 

「いやそれは先に言えよ!!」

 

もはやお前もポンコツになってんじゃねぇか!!

 

…………………………

 

「うぅ〜、まさかあたしまで飲みすぎるとは……」

 

「あと少しで部屋だ。もう少しだけ頑張れ」

 

カズマの機転が上手くハマり、カエル討伐クエストは無事達成することが出来た。と言っても、本来なら苦戦さえしなかった簡単なクエストだ。最終的には空からの一方的な展開となり、それほどに達成感を感じるものでも無かった。あたしが飲み過ぎてしまったのは、ただ宴会が盛り上がったからである。

 

「到着っと……アクアと酒で競うなんて、アーネスは意外と負けず嫌いなんだな?」

 

「あんな足手まといには負けてられねぇからな。それに、どうしてか今日の酒は美味かったんだよ。何度も飲んだ銘柄なのにさ……」

 

ウォルバク様を探していた頃、あたしは酒の苦さを知った。騙され、利用され、時には悪魔だからとプリーストに追い立てられた辛い日々を忘れる為、あたしは酒を頼るようになった。でも、今日飲んだ同じ銘柄の酒は、なぜだか凄く美味く感じたのだ。自分でも良く分からない程に……

 

「楽しかったなら何よりだ。また次も頼りにしてるぜ?」

 

「しょうがねぇな。ほっといて死なれちゃ寝覚めが悪いし、宴会付きならまた付き合ってやるよ。あたしが居なかったら、どうせカズマ1人で無茶するんだろ?」

 

「あぁ、それに関しちゃマジで助かる」

 

こういう時、悪魔族と言うのは少々厄介だ。あのポンコツども相手にカズマがどんな感情を向けているか分かるからこそ、あたしが見捨てたらカズマが無茶をすると分かってしまう。そして何より、あいつらに向けられているのと同じだけの信頼が、あたしにも向けられている事も分かってしまうのだ。散々騙された反動もあるだろうが、こんなの嬉しくない筈がない。

 

「あっ、そう言えば今日の報酬はまだ貰ってなかったよな?」

 

「げっ!朝から訓練してたから金もマナタイトも渡してなかったんだっけ……やばいな。今は持ち合わせがないぞ……」

 

「おっと、それは契約不履行になるぞ?悪魔との約束を違えて良いのかな〜?」

 

「ちょっと待って!なんか考えるから!」

 

こんなの大した違反じゃないし、なんならさっきまであたしも忘れていたことだ。でも、あれだけ苦労させられた身としては、これくらいの仕返しはしても良いと思う。それに、今夜はもう少しカズマと話していたい。別に深い意味はないんだが……

 

「さぁどうする?帰ったら契約違反だぞ?恐ろしいペナルティがあるかもだぞ?」

 

「よ〜し分かった!なら直接魔力を渡してやる!それなら文句は無いよな!」

 

「直接って……ふぇ?!」

 

あたしが馬鹿な事を言ったからなのか、それともカズマも酔っているのか……あたしの隣に座ったカズマは、その両手であたしの頬を包み込んだ。確かにダクネスの言った通り、身体を重ねれば魔力は渡せる。しかし、これはウォルバク様への明確な裏切りだ。だから、直ぐにでもカズマを押し退けなきゃならないのに……

 

「や、優しくするなら……良いけど……」

 

そんな理性の警告など、酔ったあたしには関係ない。この身体が女型であるが故か、それともただカズマに惹かれてしまったからなのか、アルコールで鈍った思考回路は、拒絶ではなく受け入れを選んだ。これは後で間違いなく後悔するだろう。そんなの考えなくても分かると言うのに、何故か身体はカズマを求めてしまうのだ。これはもう、ウォルバク様に消されるかもな……

 

「じゃあ、いくぞアーネス……」

 

「うん……カズマ……ん〜」

 

ごめんなさいウォルバク様。やはり私は最初の契約を果たします。これもきっと悪魔の特性によるもので、この一夜だけで全て忘れます。だからどうか、一夜の気の迷いとして許してくださ……

 

「『ドレインタッチ』」

 

「…………へっ?」

 

頬に伝わる温かな魔力の感触に、あたしの酔いは急激に醒めていく。そもそもマナタイトに魔力を込められるんだから、魔力の譲渡手段は間違いなく持っている筈だ。どうしよう、冷静になると凄く恥ずかしい!これでカズマにバレてたら、あたしは生きていけないんだが?!

 

「……意外と可愛いキス顔するんだな?」

 

「畜生!もういっそ殺してくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

ウォルバクさんとカズマパーティーの邂逅を前にして、先にアーネスでウォーミングアップです。宿命の出会いは考えているのですが、先にちょっとだけアンジャッシュしてからやりたいと思います。

また不定期ではありますが、お暇な時にでもお付き合いください。
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