そろそろ宿命の戦いに向かう2人ですが、その前に1回関係を弄ります。大切なのは馬鹿な日常!真面目な敵対関係を描くには助走が必要なんです。ということで、いつものポンコツ女神です。
またお暇な時にでもお付き合いください。
カズマとの日々にアーネスが加わり、私の日常はより賑やかさを増していった。最近ではアクシズ教徒の悪夢も見なくなり、いっそ魔王軍を辞めてカズマのパーティーに加わる事も検討している。でも、そんな平和な日常と言うのは、案外簡単に崩壊すると、私は経験から知っている。
「確かこのお店の半額チケットがあった筈だから、今日は完璧に割り勘に出来るわね!」
「先生って意外と庶民的な所ありますよね……まぁ、得をするなら俺に文句はないですが……ってあれ?なんか落ちましたよ?」
ペラッ
『諜報部より緊急通達。ベルゼルグ王国のギルド連合より、魔王軍幹部の邪神討伐クエストが発令された。受け取ったのは他の幹部を討伐したアクセルに潜む英雄である。この通達を確認したら、急ぎ対応に取りかかれ。Sより』
「………えっ、これ何なんですか?」
「ほ、本当に何かしらね?これ……」
まさかこんな形でピンチを迎えるなんて、流石に予想してないのだけど……
……………………
「ねぇどうしよう!これ私の討伐クエストが出てるってことよね?!と言うか邪神って所までバレてんの?!ホースト知ってた?!」
「知らないはずが無いでしょう。魔王軍は邪神の率いる恐怖の軍勢としてこの部隊を宣伝してますからね。と言うか、その状況で良く誤魔化せましたね……」
カズマの前で指令書を落とした翌日。私はホーストとセレナを呼び出して緊急作戦会議を開いていた。カズマは「成程、流石は先生……極秘の指令ですか……」なんて言って納得していたが、少なくともカバーストーリー位は用意する必要があるでしょう。そして、2度とこんな事が起こらないように、作戦指令書の渡し方も話し合うべきね。
「まず、今回の問題はセレナが原因よ!貴女がこんな紛らわしい渡し方をするから、こんな事になってるって分かってるの?!指令書を渡すなら、もっと分かりやすく説明を添えて渡しなさいよ!」
「知らねぇよ。最近前線に顔を出してねぇのはお前だろ?仕方なく街で渡そうとしたら、ずっとカズマと一緒に居るし、これしか方法は無かったんだ」
「ぜ、前線に出なかったのは悪かったわよ……」
前線業務をサボっていたのがバレてるなんて、流石はプロの諜報員だわ。最近は貴族への不信感で戦力が少ないし、出番がないから良いかなって思っていたのだけど……やっぱりそうはいかないわよね……
「だが安心しろ。どうせやらかすと思っていたから、その指令書はどっちの立場の文書かは分からないように書いてある。つまり、ギルドや王国から密命を受けた凄腕冒険者として振る舞うことで、誰もお前が魔王軍の精鋭とは思わねぇ。顔もバレてなきゃオーラも無いしな。取り敢えず、カズマはそれで誤魔化せるだろ?」
「ねぇやらかすと思ってたって何?私これでも智将と言うことで通っていて、オーラだって相応に……」
「なるほど……確かにセレスディナ様の書いた指令書だけなら、どちらの立場から発行されたか分かりません。王国軍、または有力な貴族の極秘の指令書と言い張れば、上手く誤魔化す事は可能でしょう……」
「ねぇ待って?どうしてホーストまで私を無視するの?!私の扱い雑過ぎない?!」
と言うか私が1番の当事者なのだけど?1番会話の中心に居るべき立場じゃ……
「「どうせまたやらかすから、ちょっと静かにしててくれます?」」
「あっはい……すみません……」
なんか、最近の私の扱いこんなのばっかじゃない?
……………………………
「カバーストーリーは完璧なんだから、セレナまでアクセルに来る意味は無いわよね?まさか、カズマに色目を使う気じゃ……」
「んなわけねぇだろ。こっちはこっちで仕事だよ。アクセルに潜む英雄のこと、流石に調べない訳にはいかないからな……」
皆で考えたカバーストーリーは、私が有力な貴族の懐刀で、その密命を受けて暗躍しているという設定だ。まぁ、それに関しては余裕で演じられるでしょう。何せ私は魔王軍幹部。有能な懐刀に違いはない。
「流石にこんな所で想定外は起こらないと思うが、常に警戒はしておけよ?特にサトウカズマは知恵が回る。下手な発言1つで気取られる可能性もあるぞ」
「えぇ、流石は私の弟子よね?」
「……そこはノーコメントだ」
「えっ、なんで?」
カズマの誤解を上手く誤魔化し、更にアクセルの英雄について情報を得る。何の意味も無く身元を明かすのも怪しいと言うことで、そこの辻褄も合わせておくそうだ。それに本当に英雄が差し向けられているのであれば、ここでその英雄の情報を得ておきたい。私だって死にたくないし。
「着いたわ。カズマとはこの喫茶店で待ち合わせしてる。大丈夫だとは思うけど、もし不審な点があったら不調を訴えて一時離脱しましょう。そこで作戦会議をして、対策を考えてから再開よ」
「了解だ。っても、どうせ必要なんて無いだろうけど……」
そりゃ私だってそんなことは無いと思う。カズマは私が大好きだし、間違いなく他人の英雄より恋人の私を信用してくれる筈だ。でも、少し位は智将っぽい事を言っておかないと、そろそろ本当に残念な子として扱われかねない。カズマの考えた作戦とはいえ、私だってそれなりに日々頑張っているのに……
カラーン
「いらっしゃいませ。お客様は2名様で……」
「「「………は?」」」
最高の笑顔で私達を出迎えた店員に対し、私とセレナはその顔を引き攣らせる事になる。そりゃ喫茶店の店員が死んだと言われていたシルビアだったら、こんなの最早ホラーでしかない。そして、もし万が一シルビアが裏切っていたなら、むしろ私達が追い詰められたとも言える。と言うわけだからまず離脱、作戦を1度考えましょう。
「「………痛い痛い!あ〜なんかお腹痛い!」」
「まさか2人同時にそんなことある?!ちょっとセレスディナ!ウォルバク!奥の個室まで歩ける?!」
あっ、どうしようタイミング被った。と言うか名前を呼べるって事は、コイツ本物のシルビアじゃない!これむしろ私達がピンチじゃないの?!
…………………
「ふはははは!いやはや全く同じタイミングで腹痛を起こした変り者が居ると聞いて駆けつけてみれば、見知った顔が勢揃いではないか!」
「腹痛の客が居るって話だったんで薬を持ってきたんですが……まさかお二人だったなんて……と言うか、何処でバニルと知り合ったんですか……」
悪い事とは重なるもので、ここでまさかのバニルが合流。悪魔族は嘘を付かない特性上、これはもうどうしようもなく絶望的な状況と言える。こいつがここに居座った場合、何もかもがバレてしまう。
「まぁ、先ずは腹痛を治さねばお話にもなるまい。こちらに新製法の甘くて飲み易いポーションが用意されているが、お値段は29999エリスである。ちなみに、普通のポーションなら、お値段300エリスであるが、とても飲みやすいので前者をオススメするぞ。まぁ、その場合1エリスの小銭が無いので、お釣りを取りに行かねばならんのだが?」
「ねぇ、セレナいくら持ってる?」
「34000エリスだな……」
「私も偶然にも26000エリスなんだけど……」
何これ脅し?立ち去るのに有り金全部差し出せって脅し?何ならアンタに取っても弱みでしょ!裏切り者の癖によくこんな交渉出来るわね?!
「「すみません。甘い方でお願いします……」」
「まいどあり!では、吾輩はお釣りの用意に店に戻るとしよう!それまで好きなだけ思い出話をするが良い!」
もうっ!いつかあの仮面叩き割ってやるんだから!!
…………………
「へぇ、以前バニルとシルビアに出会ったことが……」
「そうなの。当時は二人共顔が知られてなかったから、後で知った時は驚いたわ」
バニルが居なくなった事を確認した私達は、取り敢えずそれっぽい嘘で私達の関係を隠すことにした。魔王軍は無差別殺人をする集団ではないので、町中で偶然出会うこともあるだろう。そういう当たり障りのない設定なら、カズマに怪しまれることも無い筈だ。折角弱味を消しに来たのに、弱味が増えるのは勘弁願いたい。
「あれ、でもそれなら面識のあるレベルになりますか?そこら辺で見かけただけの奴なんて、普通は覚えてないと思うんですが……」
い、言われてみれば何と言う正論!確かに人里に降りて問題が無いのだから、それを覚えているなら理由が欲しい。せめて、何か分かり易い接点を……
「し、シルビアは行き倒れていたのよ!それを私達が介抱して、後から魔王軍幹部と知ったの!」
「ちょっ!あんた何言ってんの?!」
ごめんねシルビア。でも他に良い言い訳が無くて……いや、あったかも知れないけど今は浮かばなかったの。でも大丈夫。セレナがフォローしてくれたら何とかなるわ!多分何とかしてくれる筈よ!
「あぁ〜!その時は失恋して何も喉を通らないとか言ってた気がします!私もまさかこんなのが魔王軍だなんて思わなくて、気付いたのは数日後でした!」
「ちょっとセレナまで!と言うかこんなのは酷くない?!」
行き倒れていたかは別として、アンタは割とこんなのって感じだと思うわよ。
「ありそうだな……その日出会った男にも、命かけるタイプだもんなぁ……」
「坊やも納得しちゃうの?!」
そりゃもう貴方の恋愛脳は病気だもの。下手したら愛に付け込まれて殺されそうだし。それにしてもナイスよセレナ!流石はプロの諜報員!なんか口パクで『馬鹿か?』ってやってる気もするけど、取り敢えず上手く言ったから良しとしましょう!
「じゃあ、バニルとはどんな出会い方を……」
「バニルも行き倒れていたわ」
「まさかの2連続?!と言うか悪魔って行き倒れるんですか?!」
あっ、しまった今のは流石に不味いかも。セレナのフォローがあって調子に乗ったけど、悪魔って主食が悪感情だから行き倒れるって聞いたこと無いわ。なんかセレナの口元が『馬鹿なのか?お前本当に馬鹿なのか?!』って言ってる気がしなくもないけど、取り敢えずウィンクして後は任せよ!
パチンッ……ビキッ!
「………すみません。この先は長くなりますので、良ければコーヒーなど頼んでも良いでしょうか?」
「あ、それなら俺が頼んできますよ。先生は砂糖3つの4割ミルクで、セレナさんは……」
「私は砂糖250粒で」
「まさかの粒単位?!その注文通るかな……」
カズマがカウンターに向かうと同時に、セレナの笑顔が私を捉える。それは笑っていると言うより引き攣っていると言うほうが正しく、多分メチャクチャ怒っているんだと思う。まぁ、こんな無茶振りされたら多少は仕方ないと思うけど、貴女も時間稼ぎに凄い無茶振りしてたわよね……
「お前馬鹿なのか?!なんで悪魔が行き倒れるんだよ!と言うか魔王軍で行き倒れを流行らせるな!どんだけ愉快な連中だ?!」
「ごめん!なんかシルビアはイケたし、そういう組織って事で通せないかなって………」
「いやあたしも行き倒れた事はないからね?!流石に適当が過ぎるでしょ!あんたどんな組織だと思って魔王軍に入ったの?!」
どんな組織と言われても、報酬の高い傭兵位にしか思ってなかったのよね。あと、戦闘力で歩合なのが魅力だったし……
「まぁ良い。その話は後だ。カズマが戻る前に口裏合わせるから、お前らもちょっと知恵を貸せ」
あれだけ騒いで今さらな気がするけれど、取り敢えず今はセレナに従いましょう。バニルが戻る前に、バニルの行き倒れる理由を考えて置かなきゃならないし……
………
「成程。一見愚痴に見える悪感情を食べたら、それは愚痴に見せかけたノロケだったと……確かにこれなら吐き戻しそうだわ……」
「だろ?たまに懺悔と言いつつこのパターン来ると殺意沸くからな。多分悪魔でも吐き気がすると思うんだよな」
「アンタ達、悪魔をなんだと思ってんの?私も一応悪魔の一種何だけど……」
「「あっ、ならむしろこれでイケそう!」」
「私の事もどう思ってんの?!」
このクリスマスに決戦を仕掛ける嫉妬の塊が悪魔なのだから、バニルだって少しくらいカップルに殺意が湧いても良いはずだ。少なくともイカリングかと思って食べたらオニオンリングだったとか、それくらいのダメージは有るはず。後はもう、別の悪魔でも現れなきゃいくらでも誤魔化しが効くと………
「失礼します!ウォルバク様の為、このアーネスがお飲み物をお持ちしました!」
「……………チェンジで」
「そんな!私めが何か粗相を?!」
いやこのタイミングは流石におかしい!どうせカズマがコーヒー持ちきれないから呼び出したとかだろうけど、このタイミングでアーネスは駄目でしょ!と言うかコーヒー持たせて日給二万払うの?!カズマの使い魔ってホワイト企業過ぎない?!
「ごめんね!アーネスにはなんの罪もないの!でも今だけは何と言うか!間が悪いからその……チェンジで!」
「うぅ……ウォルバク様がそう言うならぁ……」
ゴメン泣かないで!でも貴女は嘘が付けないから!悪魔は嘘が付けないからこればっかりはどうしようもないの!カズマを騙す私達の都合なの!
「アーネスを責めないでやってください!遅くなった件なら俺が悪いんです!以前うちのプリーストが「やっぱり私って可愛すぎるのでは……」って言って溢れ出た悪感情を食ったバニルが、凄い勢いで吐き戻したって話を聞いて、つい続きが気になって………」
「すみません……ウォルバク様のお飲み物を早く届けるべき所、でも熱いコーヒーは飲めないので少しくらい冷ましてから他の方のを注文した方が良いかと思い雑談を……うぅ…私は忠臣失格ですぅ…」
えっ、なにそれバニルって本当に吐き戻すの?これはもう勝ち確定パターンじゃない!
「ごめんねアーネス!これは私が悪かったわ!私の胸にいらっしゃい!」
「ウォルバク様ぁ!」
ポヨンッ
「いや、それはそれで極端が過ぎるでしょ……なんか悪質なホストみたいよ……」
「ちょっとシルビアは黙ってて。この子は勝利の女神だから!」
「ただ、悪魔の例えに女神はどうなんですか?」
あっ、それに関しては私もちょっと違う気がする!
………………………………
「へぇ、色々あって今は有力貴族の懐刀に……やっぱり只者じゃ無かったんですね……」
無駄に遠回りをした気もするけれど、私達は無事カズマの信用を得ることが出来た。と言うことで本題に入ろうと思う。緊張感が無くて忘れそうだけど、私は今英雄に狙われている。ここでその正体を知ることが出来れば、今後の展開がかなり有利になるわけだ。カズマには申し訳ないけれど、王国を裏切って貰うことにしよう。なんか今更な気もするけれど……
「その貴族から魔王軍幹部を倒す為に英雄に協力しろって指令を受けたんだけど、私はその英雄の事を知らないの。それで、カズマなら知ってるんじゃないかと思って頼りにして来たんだけど……えっ、シルビア何その顔?私なんか変な事言った?」
「いや、あんたこそマジで何言ってんのよ……魔王軍幹部を倒した英雄って………」
「それは、俺です」(イケボ)
………………へっ?
「あれ?ウォルバク様はご存じないのですか?カズマは助平でだらし無い奴ですが、魔王軍幹部を倒した英雄ですよ?」
「ねぇ、スケベでだらし無いってところ必要だった?そこはもっと持ち上げてくれない?今キメてる所だったよ?」
いやアーネス知ってたの?!なんか楽しそうな日々を送ってるなとは思ったけど、まずそっちの話を先にすべきじゃないの?!カズマが英雄だって事とか、街に地獄の公爵が居るとか、カエルに食われてた話より先にそっちを話して欲しかったわ!
「あれ?でもそうなると、ベルディアの攻撃を受け止めて、バニルの洗脳に耐えたクルセイダーって……」
「ダクネスですよ?あの結婚させられそうになったり、風魔法に吹っ飛ばされて喜んでた奴です」
あれかぁ……そう言われると硬かったもんなぁ……中身も真性だったし……
「つまり、蘇生さえ出来る奇跡のプリーストと、良くカエルに食べられてる酔っ払いのゲロインプリーストは……」
「同一人物です」
「それじゃ爆裂魔法さえも操るアクセル最強の魔法使いと、頭のおかしい爆裂魔法しか使えないカエルに食べられてる爆裂魔は……」
「同一人物です」
「何よそれぇ!!」
結び付く筈ないでしょそんなの!と言うかこんなのに負けないでよ魔王軍幹部!あんたら死に様がそれで良いの?!もっと大物感出しなさいよ!
「ちなみに、アクセルで有名なパンツ奪い魔の鬼畜男もカズマです」
「おい待てアーネス。今その話は…」
「あっ、それはこの前盗られたから予想してたわ」
「すみません。でも、本当に狙ってる訳じゃないんです……」
あれ、でもカズマが英雄ならむしろ話は早いんじゃないかしら?シルビアがここで生きてるって事は、少なくとも魔王軍即殺って訳じゃないのよね?上手くやれば良い感じに話し合いで……
「でも、先生が仲間になってくれて助かります。今回の魔王軍幹部は爆裂魔法を使うとかで、うちの頭のおかしいのが「どうやら、魔王軍に最強の爆裂魔法使いは誰かを証明する時が来たようですね……」とか言い出しまして……断るに断れない感じだったんですよ」
「そ、それはまた厄介な仲間を連れてるわね……」
あっ、どうしよう駄目っぽい。爆裂魔法で競ったら間違いなくどっちか死ぬし、だからってあの子を手にかけたくないし、やっぱり何か手は打たなきゃ駄目ね。
「ところで、先生はその魔王軍幹部の邪神を知ってるんですか?戦場の場所は教えられたんですけど、俺達も相手の顔が分からなくて……」
「いやそれはえっと……」
「あっ、私知っていますよ」
「ちょっとセレナ?!」
ま、まさか私をここで売る気?!保身の為に私を差し出すつもり?!ごめん!さっきの事は謝るから考え直して!私達結構仲良くやってきたと思うの!ズッ友と言えなくもない関係だったと思わなくもないの!
「見た目は見目麗しい女性で、とてもグラマラスな体型をしています」
「見目麗しくグラマラス……」
ジ〜
本当に辞めて!そんなジワジワ来る裏切り方辞めて!カズマが見てるから!カズマが物凄い私を見てるから!!
「そして頭脳明晰で戦術家。更には部下からの信頼も厚く、冷静沈着で理想の上司と名高い……」
「す、凄い優秀なんですね……」
あれ、どうしましょう?なんかちょっと気持ち良くなって来たかも。これ、もう少しだけ続けても良いわよ?なんなら理想の花嫁とか付けても……
「そんなやり手のオークです」
「………ちょっとぉ?!」
なにその評価の急降下?私の評価オークなの?!流石にこれは戦争じゃない?!ちょっとセレナ表に出なさいよ!
「あ、あぁ〜!オークなんですか!俺は最初の方で先生みたいなタイプをイメージしたんですけど、後半からは全然違うタイプでしたし、そうですよね!」
「ねぇ待って?最初の方って何処まで?理想の上司って所まで?せめて頭脳明晰って所は入っているわよね?!」
「…………どんな先生でも、俺は愛してますよ」
「そ、その誤魔化し方はズルいわよ……もう……」
どうしよう許しちゃう……カズマにそれ言われたら許しちゃうじゃない……ちょっとセレナとシルビアの目が冷たいけど、乙女心は理屈じゃないもん……
「チッ……では、当日は私とウォルバクさんが邪神討伐をお手伝いします。移動に3日ほど必要でしょうから、準備を加味して1週間後に最寄りの町で落ち合いましょう。ほら、ウォルバクさん、私達も準備しますよ!」
がっ!
「痛い痛い!耳を引っ張らないで!更に伸びちゃうから引っ張らないで〜!」
と言うか準備って何するのよ〜!
……………………………
「成程。それでメスオークを副官にして、魔法のトレーニングを行ったと……」
「えぇ、セレナの話に合わせるなら、それなりの役者は必要だもの」
カズマとの約束を明日に控え、私は影武者の成果を確認しに来た。影武者に完成度が必要かと思う人も居るだろうが、私は殺すための影武者は用意していない。私と熱く議論を交わし、分かり合うことでカズマに手を引いてもらう。そう、私は冷静沈着で出来る上司。部下に無駄死になどさせるつもりはない。
「励んでいるようね。もうその立場には慣れたかしら?」
「ウォルバク様!まだまだ分からないことだらけですが、少しずつ慕ってくれる仲間も増えました!今回の作戦を成功させ、意味なく魔物を憎む人を少しでも減らせたら、この命も惜しくはありません!」
うんうん。やっぱり私の影武者だけあって良いことを言うわね。これだけの完成度なら、間違いなくカズマは騙されるわ。
「流石は支持率95%の副官だ。俺様も期待しているが、決して無理はするんじゃないぞ?」
「ありがとうございます!」
支持率95%なら、私が不在でもこの子が軍を動かせるわね。焦って育てるんじゃなくて、もっと人材育成に力を入れておくべきだったわ。それならサボってもバレないだろうし!
「それじゃ私はカズマの所へ行ってくるわ。今回の作戦、必ず成功させるわよ!」
「はい!」
さぁ見てなさい魔王!私は戦いだけじゃなくて、交渉術もあるって見せてあげる!そして、来月のボーナスは増額して貰うんだから!
「あっ、ちなみにウォルバク様の支持率は64%です」
「それ今言う必要なかったわよね?!」
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
次回は全く緊張感がない直接対決。ウォルバクの策略は上手く行くのか?いつも通りの酷さでお送りします。
また不定期ではございますが、お暇な時にでもお付き合いください。