※この作品はR-18です。

この怠惰な女神に信奉を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

アクアとウォルバクの女神対決。私の中ではメッチャ好きな回です。本編が面白過ぎてネタにしにくいですが……

と言う事で前哨戦です。お隙な時にでもお付き合いください。


この長き宿命に邂逅を

勇者と魔王軍の戦いとは、本来真っ向勝負であるべきだ。それはRPGの展開だとか、アクションゲームのボス演出に限った話ではない。その軍隊の代表がどう出るかにより、士気が大きく変わるからである。

 

「そう考えたら、今回の戦いは負けられない戦いになる訳だ。一騎討ちの結果次第じゃ、軍がバラバラになることだってあるみたいだし……」

 

先生達との強力を取り付けた俺は、戦いの準備にバニルの元を訪れていた。今回は珍しく攻める側、しかも相手の幹部はアークウィザードだと分かっている。これだけの情報があるのだから、準備も入念に行えると言うわけだ。

 

「小僧の言いたい事は分かるが、もう一度本日の注文を聞かせて貰えるか?」

 

「おいおい、しっかりしてくれよバニル……逃げる為の煙幕をください!」

 

「それ、自分で言ってて恥ずかしく無いか?まぁ、自己嫌悪の悪感情を感じる辺り、恥ずかしさは感じているようだが……」

 

「うるさい!俺は慎重派なんだ!他の幹部だって実力は本物だったんだから、最悪のケースも想定するだろ?!」

 

アークウィザードとして最悪の相手を想定した場合、俺の頭に浮かんだのはウィズと先生の2人だった。今までの幹部も強敵ではあったが、真っ向勝負を好む剣士のベルディアに、人を殺せないのが弱みとなるバニル、身体の仕組みから行動が単調になりがちなハンスとシルビアなど、明確に付け入る隙があったから搦め手でも勝てたのだ。しかし、あの2人を仮想敵とした場合、あらゆる魔法を使える相手にそんな小細工が有効とは思えない。となれば逃げ道の確保は必須だろう。生きて帰る事ができれば、俺としては勝ちである。

 

「虎の威を借る狐かと思えば、狐なりに化かす用意は怠らぬか……しかし、それならば丁度良いアイテムが有る。それがこちらの……追跡封じの煙幕である!」

 

「へぇ……なんか名前が露骨なんだが、それはちゃんとしたアイテムなんだろうな?」

 

バニルの目利きは信用しているが、だからって盲信する訳にはいかない。立場的にはバニルが上でも、ここの店主はあくまでウィズだ。元々追跡されないように逃げる為の煙幕に、敢えて追跡封じとか胡散臭いにも程がある。

 

「これは魔法の痕跡さえも抹消し、更には匂いや足跡等の近辺調査も阻害する大変優秀な煙幕である。効果は数日間残り、しかも魔法を使わないので発動も悟られないと、小僧には是非お勧めしたい逸品でだな?」

 

「ふ〜ん。じゃあここで1つ……」

 

「おい馬鹿な事を考えるな!それは魔封じの煙と共に物凄い悪臭が飛び出し、更に匂いが1週間は残る為に調査もままならないと言う恐ろしい煙幕であるぞ!ただでさえ客足が少ないと言うのに、誰も近寄らぬ魔窟になってしまうではないか!」

 

「おいふざけんな!こんなのただの悪臭玉じゃねぇか!こんなの魔王軍の幹部に通じる訳がねぇだろ!俺達は本気の戦いに挑む所で………ってあれは?」

 

そんな言い合いを繰り広げる中、俺は店の奥に見えるウィズの片足を見付けた。普段なら折檻の後だと思ってスルーするのだが、今回は何故か焦げていない……

 

「な、なぁバニル……あそこでウィズが倒れているのは……」

 

「あぁ、その煙幕のサンプルを嗅いで倒れたのだ。一緒にされるのは不本意だが、あやつも魔王軍幹部の1人。その効果は確かだとは思わんか?」

 

「さ、流石にウィズレベルのうっかり幹部なんて……」

 

「ストラ〜イク!色んな意味でストラ〜イク!」「石鹸洗剤石鹸洗剤……」「アソコがキュンキュンしちゃう!」

 

あれ、なんか魔王軍の幹部って………

 

………………………

 

「成程、それでこんなに厳重な箱を……」

 

「えぇ、命に関わるわけじゃないですけど。そんな匂いは味わいたくないですし……」

 

何か確信めいた物を感じ、俺は例の煙玉を買ってしまった。人が昏倒する程の匂いなのだから、使い方によっては優秀な武器と言えなくもない。ただ、厳重に保管しないと俺達にも危険な代物だ。うちのパーティーだけでなく、なんなら先生だってたまにやらかすタイプだし、匂いで失神なんてしたくない。特に今なんて馬車移動の真っ最中だ。これがもし誤爆でもしたら、間違いなく全滅するだろう。

 

「それはそれとして……ダクネスはなんで先生に熱視線を送ってるんだ?自分のけしからん身体が敗北して悔しいのか?」

 

「そ、そんな訳あるか!!コホン、ウォルバク殿。前回は色々あって渡しそびれたが、これは父から預かった勲章だ。ダスティネスの庇護下にある人物と分かれば、どこへ行ってもそれ相応の扱いを受けるだろう。どうかお礼として受け取って欲しい。ウォルバク殿の貢献には、これくらいしなければ報いることは出来ない」

 

「そう?そこまで言うなら有り難く貰うけど……これでファミレスのポテトが無料になったりとかするのかしら?」

 

「いやファミレスで出すものでは無いんだが……」

 

「じゃあ、替え玉が無料に……」

 

「すみません!ダスティネスの威光は飲食店には使えないんです!もっと精進して影響力を強めます!」

 

やはり先生の実力はダスティネスにも一目置かれるものらしい。まぁ、あんな変態に乗っ取られそうな所を何とかした訳だし、それ相応の扱いはあって然るべきだとは思う。ただ、先生の中の相応の扱いが庶民的過ぎるのは、やはり日々の生活によるものなのだろうか?

 

「あ、あの!」

 

「あら、今度は貴女なの?カズマを差し置いてパーティーメンバーにモテちゃうのは、流石にカズマに悪いわね?」

 

「茶化さないでください!やはり間違いありません!貴女はその……私に爆裂魔法を教えてくれた師匠ですよね?!」

 

「えっ……そうなんですか先生?!貴女がめぐみんの言っていたグラマラスで美人でエレガントでしかも実力派の魔法使いなんですか?!」

 

ただの移動時間だからって気を抜いていたら、突如出てきためぐみんの起源フラグ。確かに先生ならその要件を満たしているが、そう言うのは前フリからちゃんとやって欲しい。と言っても、コレに関しては何となく予想していたのだ。先生が頑なに認めようとしなかっただけで……

 

「ど、どうやらもう黙っては居られないみたいね……そう。私が貴女に爆裂魔法を教えたグラマラスで美人でエレガントな魔法使いよ!」

キリッ

 

「あっ、すみません。別にグラマラスとか美人って話を私はしていないので、そんなキメ顔されても困るのですが……」

 

「どういうことなの………あっ!計ったわねカズマ?!」

 

「なんか、めぐみんの髪型も先生に寄せてると思ってましたし、爆乳の爆裂魔法使いなんてそうそう居ないだろうなと思ってたんでカマを……」

 

ただ、ベタ褒めされたからって名乗っちゃうのは、流石にチョロすぎる気がしますけど……

 

「しかし、これで私は人生の目標を1つ達成できます。師匠、どうか私の爆裂魔法に採点を……」

 

「あ、それは20点」

 

「なっ?!」

 

めぐみんの数少ない人生の目標は、今日この時をもって完了した。良かったなめぐみん。ちょっと辛口採点だけど……

 

「何故ですか?!まだ直接私の爆裂を見たこと有りませんよね?!流石に20点は低すぎると思うのです!その理由を聞かせてください!」

 

「えっと……先ずは近隣への騒音被害と環境破壊が減点ポイントよね?これが何度も起きている訳だけど、日頃倒しているのはカエルとかゴブリンばかりでしょ?それじゃ宝の持ち腐れだし、何より迷惑な無差別破壊の方が問題になるわ。爆裂魔法にロマンを感じているとしても、その名前を貶める事をしては駄目よね?」

 

「あっ…はい……スミマセン……でした……」

 

えっ、何か思ったより厳格な採点ルール出てきた!そりゃ冒険者視点から見ればその通り何ですけど、ちっちゃいめぐみんが更に小さくなってますよ?!

 

「でも、あのバニルを倒す程の火力は相当なものだわ。この短期間でそこまで爆裂魔法をモノにしたことには、花マルを上げてもいいかしら」

 

「し、師匠!!」

 

いやそれは何点だよ?と言うツッコミは流石に野暮だろう。あんなに嬉しそうに笑う2人を見たら、俺だって少しは空気を読む。どうせ最寄りの街まで時間はあるのだし、募る話くらいさせてやろう。本当はアクアも紹介したかったのだが、それは宿に着いてからで良いだろう。なにせそのアクアはと言うと……

 

「くか〜……もう飲めない〜…」

 

これがうちのプリーストだと、なんか紹介したくない状況だし……

 

………………………

 

「よし!それじゃこの密林を超えて、敵陣の横っ腹に突っ込むぞ。何か質問ある奴はいるか?」

 

魔王軍と王国軍の戦場は、数多くのチート持ちが一進一退の攻防を繰り広げている。今日は王都からの招集を受け、前線にはキサラギも参加していて、そのイケメンっぷりに士気が上がっているそうだ。となれば俺のやる事は1つだ。正面に注目が集まっているなら、横か背後からの闇討ちである。

 

「そうは言うけど、この密林は両軍の仕掛けた罠で溢れ返っていて、どちらも進行不可としてる危険地帯よ?上空はワイバーンの領空だし、バレずに突っ込むのは流石に……」

 

「確かに俺の罠感知があったとしても、全部避けてたら何日かかるか分かりません。でも、うちにはダクネスが居ますから!」

 

「成程。露払いが前に居れば、カズマの負担はかなり減ると言う訳か……良いだろう!先陣は任せておけ!」

 

地雷やらブービートラップと言うのは、あえて殺さない物が多い。死亡ならば無視して進むが、負傷なら治癒や搬送に人手が居るからだ。つまり罠の威力は程々であり、うちのダクネスならかすり傷で済むだろう。早い話がバニル人形対策と同じである。

 

「そ、それは人として大丈夫なの?プリーストの回復能力は1流だって聞いてるけど、当然当たれば痛いわけよね?」

 

「あぁ、回復を繰り返されても痛いモノは痛い。だが、それがクルセイダーの仕事だろう?」

 

「そ、それならせめて魔法防壁を……」

 

「お構いなく」

 

「大丈夫よ!私は魔力量が多いから、これくらいなら後に響くなんて事は……」

 

「お構いなく!」

 

「えっ、何この子怖い!本気で拒絶の顔してる!まさか痛いのが嬉しいの?!」

 

「……お構いなくぅ」

 

すみません。何となくお察しだとは思いますが、そいつの中身はド変態です。

 

…………………………

 

ドーン……

「き、緊急連絡!西側の密林にて爆発音を確認!どうやら暗殺者が密林に入った模様です!」

 

「あらあら、また無謀な馬鹿が居たものね?どうせ突破は不可能よ。私達はウォルバク様の指示通り、どっしりと構えておきなさい」

 

「さ、流石はボス…こんな時にも狼狽えねぇ…」「ウォルバク様よりリーダーシップがあるぜ……」「おい辞めろ!聞かれたら爆裂されちまうぞ!」

 

ドーン………ドーン……ドーン!……ドーン!!

「な、なんか音が近付いて……あぁー!」

 

ドーーン!!!

「ははははは!どうだ辿り着いたぞ!やはり支援魔法など不要だっただろう!」

 

「どういうことなの……なんで鎧にヒビが入ったのに、あの子は立っていられるのよ……」

 

地雷原を猛ダッシュして抜けたダクネスは、それはもう晴れやかな顔で笑っている。踏む必要がない地雷まで踏み抜き、目についた全トラップに引っ掛かったせいでこっちはボロボロだと言うのに、それはもう晴れやかな笑顔で笑っている。と言う事で……

 

「帰ったらお前は本気で泣かす」

 

「な、なんだご褒美の話か?!これからの戦いが本番なのだから、そういうプレイの話は後に……」

 

「違うわ馬鹿!でも、後で話すのは賛成だ。敵さんがお待ちかねだからな!」

 

地雷原を抜けた俺達の前に、立ちはだかる魔物の軍勢。出会い頭に斬り掛かって来ない辺り、話をする気はあるのだろう。流石は魔王軍幹部だ。普通のオークじゃこうはいかない。

 

「大胆な奇襲に女性ばかりの少数精鋭パーティー……成程、お前がサトウカズマだな?」

 

「いえ違いますミツルギキョウヤです」

 

「「「「………えっ?」」」」

 

敵味方問わず同じ反応をしているようだが、悪いが俺は名前を売りたくて戦っている訳じゃない。そりゃ今回はご指名のクエストだし、ここまで魔王軍の幹部を倒してきた以上、どこかで情報が漏れたと言うことはあるだろう。しかし、俺はあくまで平和主義。ここで認めて刺客を送られるより、ミツルギに押し付けて平和な日々を過ごしたい。

 

「う、嘘を付くな!ミツルギは前線に居ると聞いているぞ!それにほら!蘇生さえ可能な青髪のやり手美人アークプリーストに!」

 

「えっ?私そんな感じで通ってるの?!えへへ〜やっぱり溢れ出るオーラかしらね♪」

 

いつも出すのは吐瀉物だけどな。

 

「爆裂魔法を操る若き天才紅魔族!」

 

「ふっ!やはり知られていました……かっ!!」

バサッ!

 

そのローブをバサってするの、アクセルだと頭おかしいってジェスチャーになりつつあるぞ。

 

「そして、魔王軍幹部と渡り合っても倒れなかった美しく誇り高いクルセイダー!」

 

「そ、そんな風に言われているのか?!なんか照れるな……」

 

誇り高い部分はどこだよ。

 

「それとえっと……美人でグラマーで大抵のことはなんでも出来ちゃう上司にしたいカリスマアークウィザードNo.1のウォルバクさん!」

 

「そ、そこまで知られてるなら、今更かくせないわね!」

 

いや喜ぶなよ!名前と特徴が知れてるって事は、狙われる可能性があるってことだぞ?!と言うか先生まで知られてるのか?まさかデートとか見られてたのか?!

 

「ほら見ろ!このパーティー構成は間違いなくサトウカズマだろうが!何故そこで頑なに認めない?!」

 

「いやすみません。ここの方々は日雇いで雇ったので、ちょっと良くわからないです」

 

「ここまで言われると違う気がしてくるな……」「あぁ、サトウカズマの特徴は割れてないしな……」「日雇いでサトウカズマのパーティーが派遣されてるだけって可能性もあるのか?」

 

そうそう。サトウカズマはここには居ないぞ。だから、そのカリスマオークを倒したとしても、敵討ちはミツルギに……

 

「女神様ー!」

 

「なにっ?!前線の方向から人が来るだと?!」

 

「剣一本でここまで斬り込むなんて、間違いなく英雄クラスの強者だぞ!」

 

おい待て!何でここでミツルギが来るんだよ!前線突破して駆け付けるとか、今はそんなイケメンムーブ要らないんだよ!

 

「はぁはぁ……無茶な奇襲をした別働隊がいると聞いて駆け付けてみれば……やっぱり君かサトウカズマ!君は本当に女神様を危険に晒すな!」

 

「おい馬鹿!いま俺の名前を呼ぶんじゃない!俺は今ミツルギの振りをして、敵討ちの標的をお前に押し付けてるところなんだぞ!」

 

「君は何処まで最低なんだ!それ本人に言うことじゃないだろ?!」

 

くそっ!俺の完璧な作戦がこんなところで崩れるなんて……やっぱり俺コイツ嫌いだ!

 

「ははは!やはりお前がサトウカズマだったか!まさかミツルギ本人が証明するとは、中々愉快な光景だったぞ?」

 

「ちっ!バレたらもう仕方ない!ミツルギ!悪いが手を貸して貰うからな!」

 

「本当に君は勝手だな!だが女神様の敵を倒す為だ。今回は喜んで手を貸そう!」

 

普段はウザいだけのイケメンだが、隣で仲間になると本当に頼もしい。今まで酷い扱いをはさた件も兼ねて、今回はミツルギに譲るべきだろうか……何よりアレだ。オーク相手に接近戦はしたくないし!

 

「まぁ待て二人共。私達はお前達2人を高く評価している。寝返れとまでは言わないが、中立に立ってもらう訳にはいかないか?」

 

「断る!そうやって人を誑かして来たんだろうけどな。人にまで騙され、裏切り続けられてる俺に、今更そんなの効くと思うなよ!」

 

「女神様の願いの為!俺は戦いを辞める気はない!」

 

あっ、俺もそっちにすればよかった。こういう所でイケメンムーブを積み重ねるからモテるのかこいつ……

 

「なんか思ってた理由と違うな……だが、この砦を突破した先には、あらゆるモンスターの集落があるのを知っているか?人に豊かな土地を奪われ、辺境で貧しく奪い合いながら生きてきた魔物が、やっとそれなりの日々を過ごす集落がいくつもある訳だ。貴様らはそこを血で溢れさせたいとでも?」

 

「ひ、卑怯だぞ!民間人を盾にするなんて……」

 

「何を言う!戦う意志のない者を殺しているのは、そもそも人間たちだろう!魔物を悪と断定して殺し、住処を奪ってきたのはお前達だ!故に魔王様が国を支配し、この国を真の意味で平和に……っておいサトウカズマ聞いてるか?なんか上の空じゃないか?!」

 

「あっ、良いですから続けてください」

 

「そんな適当な?!」

 

どうしようこれ長くなる奴だ。どうせ交渉した所で、魔王軍がここを放棄するつもりなんて無いだろうし、王都を攻めるのも辞めないんだろう。なんならその集落だって罠かもしれないし、結果的に戦うのなら変な引き伸ばしは辞めて欲しい。

 

「どうしましょ〜!これじゃあ人と魔物のどっちが悪か分からないわ〜!カズマ、ここは中立の立場を受け入れてはどうかしら?私としても、戦う意志のない人が死ぬのは間違ってると思うの!」

 

「そうだろうとも!そこの美人は分かっているな!我々魔王軍は民間人を殺していないし、はぐれの魔物は流石に面倒みきれないが、魔王軍がお前とその身内を襲わないようにするのは可能だ!どうだ?中立は悪くない話だろう?」

 

「み、耳を貸すなサトウカズマ!あんなの罠に決まっている!」

 

「いやお前もちょっと揺らいでるだろ?根が善人だから仕方ないけどさ……」

 

なんか先生まで乗り気だし、少しくらい話をするか。これで停戦に持ち込めたら、1番楽な解決法だし……

 

「そうだな。例えばこの国の王女は俺の妹分なんだが、もう王都を襲撃しないって約束は出来るのか?」

 

「おいサトウカズマ?!」

 

「そ、それは流石に困るが……しかし、捕虜として捕らえた際にはお前に引き渡すと約束しよう。我々としても、血筋だけで殺すような野蛮な組織でないアピールになる。だが、王政を潰すのは認めてもらうがな」

 

おやおや?これはマジで話が分かるタイプの奴だ。ここで俺が戦線を離脱しても、アイリス王女を盾にされたと言えば誰も俺を責めないだろう。何せ相手は魔王軍の幹部であり、しかも爆裂魔法を使える猛者だ。つまり、俺は誰にも後ろ指を刺されず、アイリスを守ったと言う栄光を得て極めて平和的に隠居ができる訳だ。魔王軍にも狙われず、先生と甘い生活をして過ごすというのも、決して悪くはないんじゃなかろうか?

 

「なら、一応側近の2人も頭数に入れてくれ。それと、この仲間とアクセルの街も対象だ。政治的な問題で戦っているなら、俺もそっちを悪とは断定はできない。剣を納めて大切な人を守れるって言うなら、悪くない取引だと思ってる。それで良いよな?魔王軍幹部」(イケボ)

 

「あぁ!我々は王政妥当の最も大きな障害を排除する事ができ、お前は大切な人たちとより良くなった国を見ることが出来る。この取引は間違いなくWin-Winだ。やはり話が分かる男だったようだな!」

 

いや本当に、今回は来てよかったと思うわ!これから俺のスローライフが始まるって訳だしな!

 

「おい待てカズマ!お前は本当にそれで良いのか?!私達やアクセルを大切に思ってくれるのは嬉しいが、だとしても魔物なんかと取引なんて!」

 

「魔物なんか……そういう偏見が魔物を貶めて戦争を起こし、今は貴族なんかって連中が魔王軍にやられてるんだろ。なぁダクネス。自分本位のクソばかりの貴族共に、誇れる正義はあるのか?」(イケボ)

 

「ど、どうしたと言うんだカズマ!お前は本当にどうしてしまったんだ?!そんな真面目なことを言うやつだったか?!」

 

「………言う奴だったよ?」

 

自分が得する為ならだけど?

 

「多分これ、格好つけて戦いたくないって言ってるだけよね?」

 

「そうですね。平和のために何かすることは無いでしょうから、体の良いサボる口実を見つけたとか思ってるんじゃないですか?」

 

「君は本当に最低なやつだな……」

 

えっ、何これおかしい。真の和平を願っているというのに、何故か俺が非難されている。これが偏見の恐ろしさって奴なのか……

 

「ちなみに、私達が政権を握ったらアクシズ教徒はテロリストに指定して弾圧する。それが我らの最初のマニュフェストだ。あいつらには人にも魔物にも問わず困らされているから、お前達としても望むところだろう?」

 

「くっ!何故か私も、向こうに正義がある気がしてきました!」

 

「ちょっと!めぐみんまで何言ってるの?!うちの子達はテロリストじゃないから!私を崇める可愛い子たちだから!」

 

「……うちの子?」ピクッ

 

おや?なんか今先生の方から殺気が出たような……

 

「良いカズマ!あいつら人を悪者扱いしてるけど、元はと言えば悪いのは魔物よ!そもそもこの国が出来た経緯だって、あいつらが我が物顔で人を虐げていたから人が団結したの!それをお前達が先とか言って、どんだけ都合の良い脳みそよ!私は全部見てたんだからね!」

 

「数千年前の歴史を……見てた?」

 

えっ、なにこれ寒っ!!先生の方から冷たい殺気が出てる?!

 

「ねぇ?貴方って、ひょっとして本物の女神アクアなの?」

 

「最初からそう言ってるじゃない!私こそが水の女神にしてアクシズ教の御神体……そう!女神アクアその人で……」

 

「遂に見付けた……『カースド・ライトニング』!」

 

「女神様危ない!」

 

パァン!

突如としてアクアに放たれた闇魔法を、ミツルギが魔剣を使って受け止めた。いつもならそのイケメンムーブに腹が立つ所だが、今だけはそれどころではない。こんな怒りに満ちた先生を、俺は今まで見たことがない。

 

「おいアクア!お前先生に何したんだ?!こんなマジギレする先生見たこと無いぞ!」

 

「私だって分からないわよ!なんなの!なんで私がこんなに恨まれてるの!私が何をしたっていうのよ!」

 

いや、お前は無自覚に色々とやらかすから。正直、俺はお前の責任だと思ってるよ?

 

「忘れてるなら思い出させてあげるわ……数百年前、悪魔と人が共存してた街があったのを覚えているかしら?」

 

「えっと……なんか邪神と悪魔が人々を虐げていた街があって、それを颯爽と救ったような?」

 

「ちゃんと共存してたわよ!それを悪魔を囲っているからだとか、司るものが悪そうだとか、そんなフザけた理由で私を邪神として封印したのよアンタは!あの封印で身体が2つに割れるし、信者の子たちは皆死んじゃってるし、挙句の果てには神格まで失ってこの有り様よ!」

 

そう言えば、悪魔が悪いって話は女神の価値観による物が大きいと聞いたことがある。言われてみればアーネスは良い子だし、ホーストだって話せば分かる奴だった。ぶつかった相手に因縁ふっかけたりする女神と比べたら、間違いなく共存の難易度は低そうだ。いや、しかし今はそれより……

 

「先生ってマジで女神だったのか?!確かに可愛さと若々しさとプロポーションが人間離れしてるとは思ったけど、遂に女神チェンジの願いが聞き届けられたのか?!」

 

「笑えないんですけど?!退場方法が抹殺とか笑えないんですけど?!先ずは止めてよカズマさん!カズマさんの先生なんでしょ?!」

 

「いや、本気の先生を俺が止められるわけ無いだろ?取り敢えず、先ずは本気で謝って貰って……」

 

「諦めないでよ!お願いだから諦めないでよ!」

 

そんな事を言われても、先生の周りで渦巻く魔力は只事ではない。あの濃度に高められた魔力に突っ込んだりしたら……

 

「くっ!女神様は俺が守る!」

 

「あっ、馬鹿辞めろミツルギ!」

 

「邪魔よっ!」

ペッ

 

「あーー!!」

ぴゅ〜ん

 

あのミツルギように、盛大にふっ飛ばされてしまう。と言うか、今こそイケメンムーブを決めてくれよ!お前そのために居るんだろ?!

 

「さぁ、どうやって料理してやろうかしら……カズマと一緒にトレーニングしたお陰で、コントロールだけなら現役時代を取り戻しているからねぇ!!」

 

「カズマさぁん!カズマさぁ〜ん!!」

 

「さぁ、復讐を始めましょう……『インフェ……』」

 

「「「「ストォ〜〜ップ!!」」」」

ガバッ!

 

「ちょっ?!なんでアンタ達が邪魔するのよ?!離して!手足を抑え込まれたら魔法が!」

 

そんなアクアの絶対的ピンチは、何故か魔王軍により救われる事となる。と言うか、さっきから先生は魔王軍と距離が近過ぎるような気がするのだが……

 

「待ってください!貴女がサトウカズマのパーティーを殺そうとしてどうすんですか?!」

 

「これでサトウカズマが中立でなくなったら、残りの幹部が危ういって分かってますか?!」

 

「大局を見てくださいウォルバク様!今は個人的な因縁より、この戦争の行く先を見てください!!」

 

「この男は戦況を変えるって言ったのウォルバク様ですよ!あの魔道具を作る技術が軍事利用されたりなんかしたら、本当に我々に勝ち目は無くなりますから!!」

 

えっ、今ウォルバク様って言ったよね?と言うか、俺への評価凄く高くない?!

 

「くっ!まさかウォルバク殿が魔王軍側だったとは!」

 

「そんな?!再会した師匠がすぐに敵になんて、好みですけど残酷過ぎます!」

 

「ほら!やっぱりアイツ邪神よ!私やっぱり悪くないもん!!」

 

「また邪神って言ったわね?!」

 

狼狽えまくるうちの連中と、激しく内輪揉めする魔王軍幹部。先生が魔王軍関係者であるなら、俺達の今後はどうなってしまうのか……それと、やっぱり俺には、シリアスな対決は許されないのだろうか……

 

「畜生!今回も結局こんな感じかよ!!俺にもイケメンムーブさせてくれよ!!」

 

 




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

次回は堕女神と駄女神の直接対決です。酷いことにしかならない私の作品なので、引き続き酷い話が続きます。

今後も不定期ではございますが、またお暇な時にでもお付き合いください。
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