クライマックスに向かい始めたこの作品。魔法を覚えたカズマにとって、この世界には希望が……あるかも?って事で新たな日常編。男の夢を詰め込んで、結局最後はこのすばスタイルです。
またお暇な時にでもお付き合いください。
義務教育の素晴らしさを、諸君らは理解しているだろうか。俺は発展途上の世界に来て、初めてその素晴らしさを痛感している。それは読み書きや算数等の基礎知識だけでなく、合理的な判断をする為の考え方など、多様な状況で俺を助けてくれたのは、やっぱり知性の部分が多い。と言うことで、俺は本日も知性に従って行動している。
「ねぇ、カズマさん?いい加減魔王を倒しに行くべきじゃないかしら?これだけのお金と装備があるんだし、そろそろイケると思うんだけど?」
「おいおい、何を言っているんだアクア。確かに金も装備もあるが………なんで俺が危険を犯さなきゃならないんだよ?」
そう、こういったリスク管理も知性である。
「私が天界に帰れないからよ!それに、カズマさんだって魔王に狙われたらどうするつもり?!スローライフとか言ってるけど、あっちはそんなのお構いなしだからね!」
「馬鹿だなアクア……お前はアクセルでも楽しくやっていけてるし、俺達の人相書は金を払って美化しまくっただろ?向こうは幹部がやられて余力もないだろうし、魔王が来るなんてあり得ないって」
「そ、それは確かにそうかも知れないけど……」
ウォルバクに魔法を教わった事で、俺はこの世界の真理へと辿り着いた。「魔法は道具。所詮は目的の為の手段の1つ」というウォルバクの教えに倣うなら、「魔王討伐は金稼ぎの1つ」と言う事にしかならないのだ。だって良く考えて欲しい。魔王の狙いはこの国であり、そもそも俺は標的じゃない。そして生きる為に必要な金は、普通の仕事でも十分に稼げる。それでは魔王を何故狙うか……そう、ぶっちゃけ金しか旨味がないのだ。
「大丈夫よアクア。幹部の殆どがやられた事で、魔王軍は致命的な指揮官不足。こんな遠い、しかも駆け出しの街なんて、もはや眼中に入ってないわ」
「いや私が居るでしょ?!どんなに美化してもそれを上回り、悪の組織に狙われちゃうようなカリスマの塊……それがここに居るじゃない!」
「「えっ、誰それどこに居るの?」」
「なんでよ〜!!」
文明が発展していない世界というのは、こういう時は都合が良い。どんなに英雄らしい活躍をしても、その人相は正しく伝わらない。一応この世界にも写真はあるが、庶民の俺達には無用の長物である。
「ねぇ!めぐみんだって思うわよね?今こそ魔王を倒すべきって思うわよね?!」
「落ち着くのですアクア。確かに我々の人相書はちょこっと改変されましたが、とは言え師匠は顔を知られています。これだけの脅威が生きていたら、魔王が放って置く筈がありません。今は慎重に動くべきです」
めぐみんの言う事は正論だが、とは言えあれはちょこっとだろうか?改変と言う名の妄想により、もはやめぐみんはウォルバク級の胸囲である。よくもまぁここまで盛れたものだ。髪型を寄せている事もあり、下手するとウォルバクの人相書きにも見える。
「ねぇダクネス〜!」
「アクアの言い分も分からなくはない。しかし私達が敗走した場合、魔王軍はアクセルを狙う可能性が高い。領民の安全を守るためにも、私達は確実に勝たなければならないだろう。そう、例えこの身が朽ちたとしてもだ!」
「朽ちたって所で喜べんのかよ……お前マジで真性だな……」
「クルセイダーだからな!」
「いやそっちの神聖じゃねぇよ?!真性の変態って意味だよ!」
「くぅ!!」
「喜ぶなよ?!あっ、あたしも魔王相手は無理だぞ?」
この調子ならダクネスも暴走はしないだろうし、アーネスはそもそも勝手なことはしない。後はアクアを見張っていれば、当面の平和は望めるだろう。何せここは駆け出しの街、魔王の眼中にはないはずだ。
「と言うわけだから、魔王討伐はまだ先だ。馬鹿な考えで暴走するなよ?」
「私のこと馬鹿にし過ぎでしょ?いくら私が気高くて強くても、1人で魔王軍になんて挑まないわよ!」
そりゃそうか。実際一人で挑もうものなら、多分辿り着くことも無いだろう。人一倍逃げ足の速いアクアのことだ。そう言う危機管理は信用出来る。
「さて、それじゃ俺とウォルバクはいつもの商売に行ってくる。今日は家で食べるから、当番のダクネスは飯を頼むぞ?」
「では、私はアーネスと爆裂散歩にでも行ってきます。高高度からの爆裂魔法。今日こそ完成させますよ!」
「知らねぇよそんなの!勝手にやれ!」
新たな仲間の加入により、更に喧しさが増した俺達の館。そんな仲間達の喧騒を背に、俺は今日も仕事へと向かう。きっと世の親達も同じく気持ちなのだろう。この心地良い喧騒を守る為なら、意外と労働も悪くない。
「あっ、帰りに高級シュワシュワ買って来て!」
「買いません」
まぁ、だからってアクアに我儘はさせないが!
………………………
「それで、実際にはいつ頃魔王に挑むのかしら?ちまちま作ってるその装備って、魔王に挑むための装備でしょ?」
「そりゃまぁ、上手くいったらそのつもりだけどさ……」
工房の角の小さな部屋。普段は締め切られたその場所には、俺専用の装備がいくつか置いてある。こうしてこっそり作ったのは、下手に世間に広まれば、おそらく混乱を招くからだ。
「この銃って武器は、上手く使えば子供でも上級悪魔を殺せる程の凶悪な武器だ。でも、俺の世界じゃその手軽さで、人間同士の殺し合いに使われててさ……これを世に出すって言うのは、やっぱり気が引けるんだ……」
「つまりそれって自分に向けられたら困るってこと?」
「雰囲気出してんだからそういう事いうなよ。つまりそういう事だけどさ……」
この世界の唯一の救いは、戦闘員と非戦闘員の線引きが明確な所にあると思う。確かに危険な魔物は多いし、魔王軍の侵攻は危険だろう。しかし、非戦闘員が明確に戦えないと知っているが故、彼らが戦場に立つこともなければ、自ら死地に向かうこともない。それが道具により戦えてしまえば、事態はもう泥沼である。
「なら自分で戦うしか無いわね!ほら、早く準備して行きましょう。カズマの切り札、まだまだ練習が必要でしょ?」
「あぁ、今日も頼むよ。先生?」
「えぇ、任せなさい一番弟子。今日も容赦なく鍛えてあげる!」
………………
「うわぁ……ギルドの報告の2倍は居るじゃん……流石に数増えすぎだろ……」
「報告だと20だったのに、なんか50匹くらい居そうよね?ホワイトウルフが50も居たら、流石に騎士隊が出てきそうだけど……」
現在の先生との特訓は、基本的にモンスターを相手に行う。これらの装備製作には金がかかるので、少しでも稼いでおきたいのだ。そして、もう1つ重要な理由として……
「それじゃあ始めましょうカズマ。私はここから見ているから、5分で決着をつけなさい!」
「当然!5分もかけないつもりだけどな!!」
今の俺が先生に刃を向ければ、殺す危険もあるからだ。
「変……身!」
ガシャン!
バックルに当てた白銀の魔道具が、俺の身体を徐々に包み込んでいく。いくら火力の高い装備を持とうと、ステータスが貧弱な冒険者のままでは活用出来ずに死んでしまう。と言うことで編み出したのが、この白銀騎士と名付けたマジックアーマーだ。弱い人間が巨悪に挑むなら、やはり変身ヒーローは外せない。
「ねぇ、その変身って流れいる?誰がどう見ても隙だらけだし、持ち歩くより着てたほうが絶対に楽だと思うんだけど……」
「こ、これはロマンだから必要なの!本当は決め台詞とか決めポーズもやりたい所だけど、そこは何とか我慢してだな……ぐっ?!」
「えっ、どうしたのカズマ?!まさか、起動の魔力が足りなかったなんてことは……」
「て、展開する鎧の結合部に……ち○こ挟んだ……」
「……どういうことなの?」
魔法やら魔力を使っていようとも、やってる事は早着替え。ウォルバクに話しかけられて姿勢を崩せば、こういう事も十分あり得る。ここら辺は、もう少し改良が必要そうだ。魔王の前でち○こ挟むとか、別の意味で伝説になる。
「しかし!そんな時の緊急脱出!!」
バシュッ!
「いや早い早い!なんで脱ぐ方はそんな迅速なのよ!そのスピードは着る時に発揮しなきゃ意味ないでしょ?!戦闘終わってから早くても仕方ないでしょ?!」
「この世界で凄いもの作ると、大抵暴走するからな!何なら最重要機能として設計した!」
「そ、そうなんだ……なんか嫌な思い出があるのね……」
この世界には凄いチートアイテムもあると言うのに、それらは大抵人間の方へ牙を剥く。それで死ぬ思いをしたからこそ、絶対に保険に手は抜かない。
「所でカズマ、騒ぎを聞き付けてオオカミたちがこっちに来てる訳だけど……それって着直すのにどれくらいかかるの?」
「収納状態に戻すのに数分、着るのに数分なので、取り敢えず5分はかかるかなと……」
ホワイトウルフは20秒くらいで来ちゃうだろうし、間違いなく食われるほうが早い。やはり変身ヒーローの見せ場だけあり、中々上手くいかないものらしい。これも次回までの課題だな。
「取り敢えず、今日のところは具足……シルバーレッグだけ試験します」
「普通に履けば10秒じゃない!それと、無理に名前は付けなくて良いから、まず戦闘に使えることを重視して!さぁ、1陣が来……」
スッ……パァン!
杖を構えた先生の声が、そこまで聞こえて突如途切れた。ただその理由は俺には解らない。俺が大地を蹴る音に驚いたのか、それともその音が俺に追い付いて居ないのか、この距離では確かめる術はない。そう、500メートルも離れていたら、間違いなく声など届く筈がない。
「加減するのは難しいが、性能はイメージ通りだな。衝撃も慣性も魔法で耐えられるし、ハイスピードバトルゲームをやり込んできた俺なら!」
パァン!
「まぁ、ざっとこんなも……ぐっ!」
カランッ
「「「ぎゃん!」」」
再びウォルバクの元へ駆けつける時、俺はすれ違いざまに3体のホワイトウルフを斬りつけた。普段ならさほどの威力もない斬撃だが、本人が速く動いていればその剣先は達人の域になる。まぁ、ただ1つ問題があるとしたら……
「凄いわカズマ!これなら本当に魔王でも倒せ……えっどういうことなの?なんで膝から崩れ落ちてるの?!」
「手首が…反動で……折れたみたいで……」
「いや、本当にどういうことなのよ……」
その反動が俺の手に来て、俺がそれに耐えられないってことである。どうしようキツイ。すごいキメ顔しちゃったし、恥ずかしさのあまり帰りたくなってきた。
「『ヒール』!クソッ!日本刀なら動物くらい両断できるんじゃ無いのかよ?!ここにエンチャントまで重ねたりしたら、流石に魔力が保たないしな……」
「その調子よ。失敗しても直ぐに切り替えて次の手を考えなさい。貴方の強みはその機転の早さ。思考を止めない限り、常にそこに勝機はあるわ」
勝機っていうのはあくまで確率なんだけど、ウォルバクはそこら辺容赦ない。そりゃ確実に勝つ方法なんて無いだろうけど、少しくらい気を遣ってくれても良いと思う。
「まぁ、それでも期待に応えたいって思えるから、美人ってのは本当に得だよな!」
パァン!
踏み込む瞬間の破裂音は、炸裂魔法の破裂音。空気の抵抗を風魔法で受け流し、障壁魔法の角度で軌道をずらす。炸裂魔法は一発だけ、風魔法はぶつかる風を受け流すのみで、魔法障壁は薄く広い。効率を重視した事で連続的に使える戦術である為、攻撃に回せる魔力は僅か。と言うことなら、今あるものを使うしかない。
「『ウィンドカッター』!」
「「「「「ぎゃう!」」」」」
すれ違い際のウィンドカッターにより、瞬時に10匹のホワイトウルフが真っ赤に染まる。本来なら速度と威力は込めた魔力に依存するのだが、加速した俺が撃てば最小限の魔力で威力が出る。何より俺に反動がないので、これなら連続使用も可能と言うわけだ。そして……
「からの『ドレインタッチ』!」
仕留めたばかりの死体からなら、それなりに魔力を補充できる。不足があれば他から補うのもまた、正しい生存戦略である。次は無意味にちゅんちゅん丸を鞘に納めたりしてみよう。居合の達人みたいに見えそうだ。
「どうだウォルバク?この速度と攻撃力を兼ね備えた戦闘スタイル!もはや俺は師を超えたと言っても……」
「と言っても?」
「……すみません。何でもないです」
なんだろうこの敗北感。俺が10数匹倒す間に、ウォルバクは既に30近い討伐数を誇っている。しかも、突っ込む俺に一発も当てず、最初に居た場所から一歩も動かず、同じウィンドカッターだけでこの戦果。まさに完全敗北である。
「さて、それじゃ反省会がてらご飯にでも行きましょう!カズマの鎧についてのダメ出しは、一杯やりながら話すとするわ!」
「それ絶対に笑い物にするつもりだろ?!アルコール入れたら反省会にはならないって!」
まぁ、それはそれで楽しいのも事実だし?なんなら課題は自分でも分かっているので、これは打ち上げと言えばそうなのだろう。しかし、一応表向きは修行だと言うことを忘れないでほしいところだ。
「そんな焦んなくて大丈夫よ。カズマは着実に強くなってるわ。きっと近い内に魔王も倒して、私を一生養えるようになるわ」
「……本当に美人ってのは得だな畜生!夕飯は家で食べるんですから、飲み過ぎたりしたら駄目ですからね!」
「大丈夫!夕飯は別腹よ!」
突然の笑顔の激励に、俺の鼓動は早くなる。心から笑った時のウォルバクの顔は、今でも息を呑んでしまう。そして……その笑顔を見た翌日の朝。ウォルバクは突然姿を消した。
…………………………………………
「魔王軍に顔を知られていたからだろうか……だとしたら、私達の事を案じて……」
「それなら私は呼ばれる筈だ!ウォルバク様の忠臣として、生命をとして仕えると誓っている!」
ウォルバクの失踪から2日経ったが、消息はまだ掴めていない。思い当たる場所は調べ尽くし、何ならお気に入りの温泉もしらみ潰しに探し回った。だが、それでも手がかりが無いとなれば、最悪の想定が頭を過るのも仕方がない。
「ごめんねカズマさん……実は私、最後の夜にウォルバクとお酒を飲んだのだけど……」
ガッ!
「な、何か話をしたのか?!ウォルバクはなんて言ってた?!」
「い、痛いよカズマさん!ちょっと落ち着いて!」
「あっ……ごめん……」
アクアの肩を掴む手に、自然と力が入ってしまう。最近は仲良くしていたが、やはり何かしらの居心地の悪さはあったのかも知れない。だが、それならアクアを追い出しそうだが、一体何があったのか。俺は静かにアクアの言葉を待った。
「本当はこんな事言うつもりはなかったんだけどね?でも、ウォルバクがあんな事言うから私……」
「大丈夫ですよ。落ち着いてください。ゆっくりで良いから、何があったのか話してください」
めぐみんが俺とアクアの間に割って入ったのは、きっと俺を止めるためだろう。アクアが何を言ったのかによるが、場合によっては今度は俺がアクアを炙るかも知れない。そんな事は無駄と分かっているが、きっと抑えられないと思う。
「私、私……二人の夜の声が煩いから、やるなら宿に行けって言ったの!だって夜の性活自慢するんだもん!私だって女の子なのに!恋に憧れることもあるのに!」
「………はっ?!いやアクアは一体何を言って……」
「「「あぁ〜」」」
「あれ?!全員その反応?!」
そんな馬鹿な!俺達は確かに声を抑えていたし、声を出すにも陽動作戦を使っていた筈だ!こいつらに関係がバレるなんて、いくらなんでもそんなはずは……
「不思議そうな顔をしていますが、私達はバレてないと思っていた事に驚きですよ。何ですか?まさかシャワーの音であの嬌声が隠せるとでも思ってたんですか?獣みたいに盛っていた癖に、あれではバレない方が不思議ですよ?」
「そんな!あんな強めにしているのに?!」
「煩いからって声が消えるわけじゃないからな……あれだけ響く声で喘いでいるから、てっきりそう言うプレイなのかと……」
「お、お前と一緒にするな!俺たちはそういう所は奥ゆかしくてだな………」
「奥ゆかしい人はお風呂で始めたりしないわよ……」
「うぐ……それはその……若さが暴走しまして……」
まさか全員にバレていたとは、流石に俺も想定していなかった。しかし、これならこれで理由は分かる。仲間全員に痴態が知られていたのなら、家出くらいしても不思議はない。なんなら、今直ぐ俺も家出したい。
「しかし、恥ずかしさが原因の家出だったら、ほとぼりが冷めたら帰ってくるのでは?そこまでの路銀は持ち歩いて居ない筈ですし、居なくなるならカズマも連れていきそうなものですよ?」
「確かに、カズマに何も言わないのはおかしいな。辱められたとしても、せめて慰謝料は取りそうなものだが……」
「とんでもない変態プレイでもやらせたんじゃないの?それで顔も見たくないとか……」
「だったら代理人でも立てるだろ?なんなら、あたしが取り立てても良いしな?」
あれ、おかしい。なんか俺が悪者にされている。確かに最近はトイレしないウォルバクのお尻を弄んだり、失禁するまで舌で虐めたりしたが、取り敢えず逝ってるし合意の筈だし……
※逝ったら合意なんてルールはありません。
バァン!
「ふはははは!謎の自分ルールで性犯罪に走りそうな男よ!吾輩が商談に来てやったぞ!!」
「来たわね悪魔!アーネスの為に結界を解いたからって、悪魔がこの家に入って良い理はないのよ!帰って!匂いが移る前に帰って!!」
「いや、それあたしどうすりゃ良いんだよ……」
扉を勢い良く開け放ったバニルが、突然俺の目の前に座る。アクアとアーネスの関係は良くなったのだが、バニルの存在は今も認めたくないらしい。余り商談なんて雰囲気でも無いんだが、このタイミングで来たことには意味があるのだろう。一応話だけでも聞いておくとしよう。
「で、今回は何を持ってきたんだ?人探しの道具だったら、即決で金を出すつもりだが?」
「残念ながら、吾輩は人は探せるが女神は探せん。故に、今回の商談は以前相談を受けた大量のマナタイトと、馬鹿店主の買占めた攻城兵器各種である」
やはりバニルでも知らないのか、そりゃ知ってたら直ぐに来そうだし、今回はあくまで商談って訳で……
「っておい待て?ウォルバクの事が気になって見逃したけど、攻城兵器って何だよ?」
「城を攻めるための大型兵器だ。バリスタ、投石機、破城槌、城壁に登るための攻城塔もあるぞ?」
「いやなんであるんだよ?!それ個人で取引するもんじゃ無いだろ?!」
と言うかどうやって仕入れたんだよ?!あと、どこに売りつけるつもりだったんだ?!
「仕入先は別の領地でな?領主が防備を固めようとしたら、魔王軍に弱みを握られて無条件降伏したのだ。と言うことで宙に浮いた製品を見て「不安な社会情勢!大切な人を守るのに、強過ぎる力はないと思います!これは売れます!」などと置き場のないこれらを買い取ったのだ。何者かがアクセルを攻めてきたと勘違いされ、危うく捕まりかけたがな……」
「また思い切った買い物したな。でも、悪いがうちにも置き場はない。そのマナタイトだけは買わせてもらうが、大型兵器は他所へやってくれ」
まぁ、間違いなく買えるやつ居ないだろうけど……
「ふむ、目録だけ置いてゆく故。気が変わったら連絡するが良い。それと、用心するのだな小僧。汝の運命を見通した所、この数日より先が見えん」
「はっ?!いやそれってどういう……」
「不安の悪感情は美味であるが、残念だが吾輩にも分からん。遂にこの世界が嫌になるか、はたまた完全に消滅するか……恐らく決めるのは汝である」
背筋が凍ることだけ言い残し、バニルは俺達へと背を向けた。嫌になる理由はいくらでもあるが、だからって数日でそんな事になるだろうか?全てを失って転生し直すなんてこと、今じゃ考えることさえ無かったのに………
コンコン
「な、なんだよバニル!やっぱり話には続きが……」
「ご無沙汰しておりますカズマさん。貴方にとても大切な……そう、ウォルバクさんとこの街の存亡をかけた大切なお話をするために、本日は参りました」
そうして不安が嫌な確信を持った時、門の所でバニルがガッツポーズしているのが見えた。いや、流石にそれは今じゃない。そんな何とも言えぬ不満を感じながら、俺はセレナを家の中へと招き入れた。
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
ちゃんとクライマックスに向かってます。えぇ、セレナが来たら終わりの証です。私の作品だと割と出てますが!
と言うことで、次回から最終局面です。
また不定期ではありますが、お暇な時にでもお付き合いください。