※この作品はR-18です。

この怠惰な女神に信奉を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

ついに来ちゃった魔王城。私の作品では一応魔王をぶっ倒すまではやるのがモットーです。と言うことで最終局面、魔王やったろうやないかい!って感じです。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この選ばれし2人に決闘を

この世界の魔王と言う存在は、真っ向勝負を断れない。それは魔王が王として君臨し続ける為の誓約であり、断れば王としての威厳を失う。それでも勝ち続けて来たからこそ、現魔王の支配は盤石なのである。

 

「っていうから凄いのを期待していたんだが……あれ本当に魔王なのか?」

 

「あぁ、あれがお前の挑む魔王だ。まだ実感は無いかも知れないがな?」

 

セレスディナに付き添われて訪れた魔王城では、既に魔王に挑む先客が居た。と言われたら戦闘でも繰り広げられていると思うだろうが、目の前の光景はそんなもんじゃない。

 

「いっけー!魔界マグナム!」

 

「ははははは!魔王RG3の前にそんな加速は無意味!このまま一気に引き離してやろう!!」

 

目の前で子供とミ○四駆してるのが魔王だとしたら、流石に予想なんて出来る筈が無い。

 

「ここで魔界マグナムが抜いて先着!魔王様は少し遅れてゴールです!」

 

「おい!魔王負けたぞ!これであの子供が新魔王とか言わねぇよな?!」

 

「いや、流石に魔王の座は賭けてねぇだろ?賭けてたらあの子供が新魔王だが……」

 

「なんで自信無さげなんだよ?!」

 

それならそれで勝つのは容易だけど!流石に人としてそれは駄目だろ!

 

「私に勝つとは見事!小僧、お前は今日から魔族最強のミニ四駆カーを名乗るが良い!そして、魔王を倒した証として、魔王の頑張りましたシールを進呈する!ミニ四駆ケースに貼るがいいぞ!」

 

「ありがとうございます!」

 

「「「「「「おぉ〜!!」」」」」」

 

なんだこの盛り上がり?と言うか、まさか魔王ってこんな挑戦も受けなきゃ駄目なのか?!

 

「私の誓約を利用すべく、あの幼子が母親同伴でなく1人で私に挑むとは……魔族の未来は明るいな?」

 

「左様ですね」

 

挑戦だった!これ正式な挑戦だった!と言うかシール貰えるって何?!魔王そんなに人気なの?!

 

「さてセレスディナ?お前がここに来ていると言う事は、その男がサトウカズマだな?」

 

「あぁ、お前が話をしたいって言うから、適当なこと言って連れてきた。悪いなカズマ?詳しい話は魔王としてくれ」

 

「なっ?!お前ここまで来て俺を騙したのかよ?!」

 

馬鹿みたいな空気の中で告げられた真実に、俺も動揺を隠せない。確かにこの魔王城の平和さを見れば、ウォルバクの裏切りなんて無かったかのように感じてしまう。それならそれで良いのだが、それでは俺は何のために来たのか……

 

「セレスディナのやり方には謝罪しよう。しかし、私はどうしてもお前と話がしたくてな。我が配下を最も多く屠った男……サトウカズマとな?」

 

「ちっ!情報は制限してたはずだが、やはりセレナの奴が情報を!」

 

「いや、この情報はウォルバクからだが?」

 

「…………………えっ?」

 

ちょっと待ってタイム!流石にそれは予定にないパターンだからタイムさせて!情報を整理するからちょっと時間頂戴!

 

………………………

 

「すみません。ちょっともう1回確認してもいいですか?」

 

俺は正式に客間に通され、魔王とテーブルを囲むことになる。セレスディナがお茶を淹れているのは、きっと魔王なりの配慮なのだろう。魔物の群れの中で会話するのは、やはり精神的によろしくない。

 

「泥酔したウォルバクがここに来てからみ酒をしたことか?お前の活躍を大声で自慢して回ったことか?それとも、うちの 愛 娘 に 夜 の 性 活 を 語 っ て く れ た こ と か?」

 

「あっ、もうその態度で分かったんで大丈夫です……なんかうちのウォルバクがすみませんでした……」

 

そして、こっちが怒られる側と解ってしまえば、人前で無いのは最大限の配慮だった事がわかる。すみません。なんかありがとうございます。

 

「粗茶ですが……」

 

「すまんなセレスディナ。これで理解して貰えたと思うが、あの馬鹿を捕縛した経緯はそういう事だ。故に、現段階で我々が殺し合う必要は無い。先ずはお茶でも飲んで落ち着いてくれ」

ズズッ

 

「あっ、1杯300エリスです」

 

「ちょっ!お前は上司からも金を取るのか?!と言うか茶葉はうちのだろ?!」

 

「萌え萌えキューン。これでサービス料上乗せして1000エリスです」

 

「求めてないサービスは辞めろ!そしてやるなら700エリス分は気持ちを込めろ!」

 

いやなんだこの空間は?俺は1時間前まで命のやり取りをするつもりでここに居たんだぞ?!そしたらやらかしてたのはウォルバクの方だし、魔王は謎のコントを始めるし、なんかもう帰りたくなってきたんだが?!

 

「ったく……これだからガメつい女は嫌なんだ……さて、憂いが晴れた所で交渉に入ろう。サトウカズマ、私に仕えるつもりはないか?」

 

「なっ?!それは世界を半分くれてやるとかそう言う……」

 

やだこれ完全に勇者のあれじゃん!俺もう完全にVIP待遇じゃん!

 

「この世界の全てを支配してたとして、個人に半分は現実的じゃないと思うが……管理も大変だしな……」

 

「あっ、すみません。今のは聞き流してくれて良いです」

 

そりゃ言われてみたらその通りだよな。ちょっと勇者感覚で答えちゃったけど、そもそも俺にそんな価値ねぇし。

 

「お前が仲間になると言うなら、こちらが提示する報酬はアクセルの支配権とウォルバクだ。今後、駆け出しの街は一切魔王軍に狙われることが無くなり、ウォルバクの裏切りも水に流そう。二度と逆らえないように魔法はかけるが、お前たちは今までの日常に戻れる。悪くない話だと思うが?」

 

「そりゃ願ったり叶ったりの条件だが、あんたは俺に何を望んでるんだ?悪いが、俺は人殺しには加担しないぞ?」

 

魔王が提示した条件と言うのは、俺からしたら破格の条件だ。しかし、俺にそんな価値は無いだろうし、罠と言う可能性も捨てきれない。

 

「いや、お前は命を駒として認識できる人間だ。そして知恵が回り思考も柔軟、我軍の参謀として招くことが出来れば、間違いなく支配は飛躍的に進む。何せお前は、見ず知らずの他人には何の興味もない人間だからな」

 

「お、俺はそんな危険思想じゃないぞ!俺は戦争の道具には絶対に……」

 

「お前、領主の屋敷を吹っ飛ばした時も、仲間のせいで街が襲われた時も、基本的に保身と金の話しかして無かったと聞いているが?」

 

「……………そんなことないよ?」

 

どうしようバレてる。そりゃ戦争とか災害とか飢餓の話をテレビの向こうで眺めてた日本人だもの。他人事には興味無いだろ。そんなことより自分が可愛いもの。

 

「お前も貴族に金目当てに殺されかけただろう?不当な扱いは日常茶飯事だと聞いているし、お前の守りたいのは身内だけ。それなら、魔王軍に入るのが最適解じゃないのか?」

 

「そ、それは否定出来ないが、ちょっとウォルバクと話をさせてくれ。これであいつが無事じゃなかったら、そもそもこの話は不成立だろ?」

 

「ふむ、良いだろう。拘束は解けないが、話くらいはさせてやろう。人生を左右する決断だ。後悔のない選択をするんだな……」

 

…………………

 

ガチャッ

「ウォルバク無事か?!」

 

「カズマ!助けに来てくれたのね!」

 

魔王に連れられて地下牢に降りると、そこには囚われたウォルバクの姿があった。囚われのヒロインには背徳的エロさがあると思うのだが、やはりこの世界は何処かおかしい。俺が目にしたウォルバクの姿は、健全な思春期男子として許容出来る物ではなかった。

 

「あっ、すみません。確認ですけどこれあってます?」

 

「どういうことなの?!囚われの恋人にそれは酷くないかしら?!」

 

そりゃ間の前に簀巻きにされて目隠しまでされたミノムシが現れて「はい。こちらがヒロインです」って言われて納得するとでも?エロい拷問とかは流石にNGだが、せめて手錠とか拘束椅子とか、俺が嬉しい拘束はあっただろ?

 

「こいつは火を吐く魔法も使えるし、指でも足でも魔法陣が書ければそれだけで戦える。となれば、簀巻きにして宙吊りにするしか拘束方法がないのだ。と言っても、こうするのにとんでもない数の被害が出てるんだがな……」

 

「くっ!そんな真っ当な理由じゃ仕方ないのか……」

 

「カズマは何を気にしているの?!先に私を気遣って!」

 

でも、せめてボディラインが見えるくらいの縄の量にしてくれていれば……なんて、それは今度プレイで頼もう。今はまず話をしないとな。

 

「正直、無事だったことは安心してるよ。だがな!俺はスゲー心配したんだぞ!それなのに、自分から魔王城に乗り込んだってのはどういう事だ?」

 

「あっ……いやその……酔ってる時にカズマの自慢がしたくなって……アクアが聞いてくれないから、昔の同僚に話をしようかなと……」

 

えっ、なにそれどういうこと?彼氏自慢しに殺されるかも知れない相手の懐に飛び込んで行ったの?!馬鹿なの?!

 

「ほ、本当は直ぐに帰るつもりだったの!でも、魔王の娘がエッチな話に興味津々だから……」

 

「適当な事をいうな!うちの娘はそんなビッチではない!娘に胸と口でのご奉仕など教えよって………思春期の興味で試したらどうする?!」

 

いや魔王も馬鹿だろ!裏切り者だぞ?他にも追求すべきことあるんじゃないのか?!

 

「違います〜!そこ深掘りしたのは娘です〜!アンタがそんなだから行き遅れを気にして聞いてきたんです〜!」

 

「し、信じられるか!うちのパーフェクトな娘が生き遅れになど……」

 

「親が魔王ってのは致命的だもんな」

 

「セレスディナまで?!」

 

どうしよう。この会話の流れを聞く限り、魔王も相当面倒だぞ。参謀として働くなら楽だとは思うが、それでも上司がこれはちょっと……

 

「しかし、もう私には逆らえんぞ!貴様はサトウカズマを仲間に引き入れる為の報酬として、その神格を封印されるのだ!ただのか弱い女となって……なっても滅茶苦茶暴言は吐きそうだが、取り敢えずこちらの身の安全は保証される!」

 

「お、おい待て!ウォルバクの神格は命に関わる!それを封印するのは流石にやり過ぎだろ!」

 

「本来なら裏切りの罪で即処刑の所を、人の人生くらいは活かしてやろうと言うのだ!滅茶苦茶譲歩しているではないか!」

 

くっ!それは何という正論!確かにそれはその通り!いくら譲歩してたとしても、首輪もなしに狂犬は放てない!

 

「それとも、譲歩ではなく勝ち取ってみるか?私との一騎打ちで勝利すれば、私の決定など容易に崩せる。だが、戦闘力のないアイテム職人のお前が、事前準備もなく私に勝つなど……」

 

「いや、セレスディナの助言で事前準備はして来たんだが……一応魔道具は一式あるぞ?」

 

「…………ちょっと待っててくれ。こっちはこっちで話がある。セレスディナ、来い」

 

「なんだよ〜。まだ1000エリス貰ってねぇぞ〜」

 

何その微妙なリアクション?なんか魔王が少し青ざめてた気がするが、ひょっとして準備してくるのは想定外だったとか?いや、流石に魔王がそんな情けないこと言わないか、どんな挑戦でも受けるって話だし……

 

「セレスディナ!お前どこまで情報流してんだ!これで魔道具職人として挑まれたら、太刀打ちする方法など何も無いぞ!」

 

「いや知らねぇよそんなの。いつも通り正々堂々と……あれ?魔道具職人との戦いってどうすれば成立するんだ?」

 

「それが出来んから困ってるんだろうが!」

 

あぁ成程。真っ向勝負を受けると言う条件だと、戦いはあくまで相手の土俵。俺が魔道具のみで戦うとなれば、魔王も同じ条件を揃えなきゃならない訳だ。となれば向こうは実質スキルの使用を制限された縛りプレイ。道具を用いた戦闘に限定すれば、俺が圧倒的に有利と言うわけだ。

 

「あ〜……大変申し訳無いのだが、スキル無しの防具スペックで戦うと言うルールでも良いだろうか?私はクラフトスキルは持っていなくてな。特殊な魔道具もないので、鎧と剣で戦うことになるのだが……」

 

「えぇ〜?明日まで待つから、そこは自分の手で作ったアイテムじゃないのかな〜?曲がりなりにも魔王なんだし、特別ルールはどうかと思うけどな〜?」

 

「しかし、戦闘職でもないのに魔王と一騎打ちをするなど前代未聞!本来なら品評で勝負すべきクラフト職なのに、賭けるものが部下となれば話も変わってくるのも仕方ないと言うか……」

 

それについては俺も同意だ。冒険者として挑むのも考えたが、全てを極めた魔王が何でも使えるのは分が悪い。しかし、逆に本人が凄いからこそ、凄い魔導具は持っていない。これは最大のチャンスと言える。

 

「しょうがねぇな〜!なら、その借り物の剣と鎧は認めてやるよ!俺が勝ったらウォルバクを貰うが、後で文句なんて言うなよ?」

 

「と、当然だ!魔王として受けたこの勝負!結果に異議を唱えるなどあり得ない!」

 

と言いつつメッチャ焦ってるのは、やはり魔王も自信がないのだろう。本当にありがとうウォルバク。俺は魔導具職人として英雄になります!

 

………………………………

 

「おい待て!流石にこれはずるくないか?!」

 

魔王が焦っていた事から、俺は魔王の不利を確信していた。しかし、実際に魔王の着る鎧を見て、俺はその判断を後悔することになる。

 

「何を言う。由緒正しい魔王の装備と言えば、暗黒の鎧と闇の魔剣に決まっているだろう?流石にズルいかなと思ったのだが、お前も認めたではないか?」

 

「渋ってた理由は強過ぎるからかよ……流石にそれは想定外だぞ……」

 

いくら俺の鎧が便利だろうと、その材質は全て市販品。そんなチートアイテムを相手にすれば、間違いなく防御面と攻撃面では劣ってしまうだろう。どうしよう、途端に勝ち目が見えなくなった。

 

「なんて、そんなこと言ってても始まらねぇよな!行くぜ魔王……変身!」

ガチャン!

 

「なっ?!何と言う芸の細かさ!私の鎧は1人では着れぬのに、お前のそれは自動装着だと?!」

 

取り敢えず最初の変身シーンは、魔王的にはアリだったらしい。これをやらないと着れないので、もしここで攻撃されてたら俺は即時負けていただろう。流石は魔王、空気の読める男である。

 

「白銀騎士と名付けたマジックアーマーだ。これが俺の集大成……そして、お前に敗北を刻む魔道具の名前だ!」

 

「良いだろうかかって来い!これは中々に楽しめそ……」

 

「エネルギー全開!『セイクリッド・エクソシズム』トリプルバースト!!」

カッ!

 

「あぁー!!!」

バリバリバリバリバリ!

 

…………………………

以降セレナ視点

 

「はぁはぁ……き、貴様!イキナリ必殺技はおかしいだろう!そう言うのはタイミングとかあるだろう?!」

 

「他人の作ったもんに守られながら言うことかよ!絶対に来ないと思ってるからこそ行く!それが戦術の基本だ!」

 

戦闘開始と同時に放たれたカズマの大技に、既に魔王は満身創痍だった。付近を真っ白に染める聖魔法の一撃は、魔王の後ろに居た門番の奴まで失神させている。伝説の鎧が無かったら、正直魔王も危なかっただろう。

 

「成程な……幹部の奴らが負けたのも分かる。命をかけた戦いで、私を前にこの駆け引きが出来るのだ。少なくとも、並の戦士ではないらしいな!」

 

「そりゃ当然!弱いなりに手を尽くしてきたんでな!!」

ガァン!

 

魔法が使えない魔王にとって、唯一頼れるのは右手の魔剣。しかし、その唯一の攻撃手段でさえ、カズマはその剣で凌いでみせた。

 

「くっ!魔剣を押し返す聖剣だと?!きさま、それ程の腕を持つ職人だったのか!」

 

「いいや!これは剣に女神の毛髪を混ぜ込み、使う水を全て女神の風呂の残り湯にしただけの女神剣だ!野生の獣には役に立たない、ただお前達と相性が悪いだけの武器だ!」

 

「最終決戦になんてキワモノ持ち込むんだ貴様!勇者としてそれで良いのか?!」

 

魔王はサトウカズマという男を知らない。優秀な参謀には違いは無いが、それ以上に手段を選ばない鬼畜野郎。あらゆる準備を万全にする相手は、ただ強いよりも厄介な相手だ。

 

「貰った!」

 

「おっと、離脱!」

パァン!

 

そして、その厄介さに拍車をかけているのが、恐ろしいまでの実戦慣れである。

 

「くっ!こちらの太刀筋より速い離脱……こんなにも機動力の差があっては、決定打は難しいか……」

 

「ならとっとと諦めろよ!いくら剣技で勝ってようが、その剣はこっちにゃ届かねぇぜ!」

 

「ぬかせ!直ぐに見切って斬り伏せてくれるわ!」

 

しかし、そこはやはり魔王として何年も戦ってきた男。カズマの持つ剣が相性最悪でも、剣技で圧されることはない。ただ、この戦いは剣技で決まるものでもないのだが、魔王はそれを分かっているのだろうか?

 

「なら見切ってみろよ!この最強の秘剣をな!」

スッ

 

「横に構えたから何だと言うのだ!お前の稚拙な剣術など、私に見切れぬ筈が……」

 

「秘剣『燕返し』!!」

スパァン!

 

「なっ?!」

ブシャッ!

 

独特の構えから魔王を襲うのは、ほぼ同時に迫った3発の太刀筋。それは魔王の剣をすり抜け、魔王の頬へと一太刀浴びせた。そんな不可能に近い攻撃さえ、カズマの鎧には可能だと言うのか……

 

「くっ!それがスキルでなくて何だと言うのだ!私が見切れぬ太刀筋など、剣士のスキルでも見たことがないぞ!」

 

「スキルじゃないから当然だろ!さぁ、もう一発食らいな!!『燕返し』!」

スパァン!

 

「くっ!深手を避けるので精一杯だと……」

 

とまぁ、あいつらの空気に合わせてみたのだが、実は遠目から見るとネタは簡単に見破れる。魔王も驚くほぼ同時の三連撃とは、鎧の背中からもう2本の剣が出て来ているだけ、つまりマジで同時攻撃なのだ。魔王からすれば死角からの攻撃だろうが、種が割れたらこんなもの。観客の皆も凄く話したそうにしているが、ルール的に言っちゃいけない。

 

「ならば、この鎧の持つ闇と呪の力で戦うのみ!闇の力を思い知れ!!」

 

接近戦が不利と見るや、魔王は鎧に宿る闇の力を解放した。その黒煙は術者の意思通りに動き、対象を闇の力で蝕む。煙幕と呪の同時攻撃は、勇者の光でなきゃ封じられないとされ、強過ぎるからと封印され……

 

「ファイアーアローをセット!発射!」

ボシュッ!

 

「あっつ!その鎧は遠距離攻撃機能まであるのか?!と言うか、なんでこっちが見える?!」

 

「いや、魔王が煩かったからそこに向かって……」

 

「冷静過ぎるだろ?!と言うか闇の力に苦しむ素振りもなしか?!」

 

魔王は確かに煩かったが、だからって闇の力に蝕まれない人間など居るはずがない。あの鎧にそんな力があるのか、それとも本人が闇落ちしているのか、どちらにせよ魔王のピンチに変わりはない。

 

「くっ!いくら装備が優れていようと、こいつはただの冒険者だろう!そんな力を持っているはずが……」

 

「知らねぇのか魔王?お前が手こずってる人間てのは、魔族や悪魔より数段弱いんだよ。でも、自分が弱いと分かっているからこそ、強くなる為に手を尽くすんだ!」

 

手の甲に付けられた遠距離武器に、細くしなやかな聖なる剣。そしてステータスの差を埋める鎧と、それら全てが弱者の武器。サトウカズマという男は、本当にどこまでも予想を超えてくる。

 

ドォ〜ン!

 

「ま、魔王城で爆発だと?!まさか一騎打ちの最中に賊が?!こんな時に!」

 

「まぁ、あたしら以上の賊は居ないけどな?」

 

「お前本当に上司に冷たいな?!」

 

んなこと言われても事実は事実。そこで取り繕う意味はない。どうせ賊が来たところで、魔王の側近は実力者揃いだ。並大抵の侵入者なら、数秒も経たず無効化されるだろう。

 

「魔王城の侵入者より、今は自分を心配するんだな!余所見なんてしてやがったら、その首容赦なく落としてやる!」

 

「言うではないか!まさか貴様がここまでやるとは、私も予想してなかったぞ!」

 

どちらにせよ。この2人には侵入者なんてどうでも良いようだ。これ程の好敵手に出会うことなど、きっと生涯で何度もない。故にどんな賊が出てこようとも、今は戦いに集中を……

 

「おい馬鹿!こっそりだって言っただろ!いきなり上級魔法なんてぶっ放しやがって!陽動作戦が無駄になるだろ!」

 

「仕方ないじゃない!門番が目を覚ますなんて想定外だもの!アイツはマジでチート持ちだから、仕留めとかないと不味いんだってば!」

 

いや待て!いくら何でもそれはおかしい!どんな賊でも言ってはみたが、流石にサトウカズマとウォルバクは駄目だろ?!

 

「いや、なんでそこにサトウカズマがいる?!となればお前は誰なんだ?!」

 

「み、見た目で判断してくれると……」

 

「「フルプレートアーマーで?!」」

 

本当にどうなってんだ?!鎧を着た所は間違いなく見たよな?そこからずっと戦ってたよな?!まさかサトウカズマは最初から2人なんてことは……

 

「って、余所見するなって言ったよな!!」

ズバッ!

 

「がふっ!ま、まさかここまで罠を張って……私の動揺を誘う為に……」

 

「冥土の土産に教えてやるが、こりゃあたしも想定外でビビってるよ!聖剣射出!!」

パァン!

 

「き、貴様はアーネス?!ごふっ!」

 

聖剣に穿かれた魔王が、そのまま魔王城の中へとふっ飛ばされていく。偽る事を辞めた戦いの主は、ウォルバクの配下にいたアーネスだった。魔王よりウォルバクを優先するであろうアイツなら、確かにカズマに手を貸してもおかしくはない。しかし、まさか一騎打ちさえ利用するとは、あいつ本当に勇者候補か……

 

「良くやったわアーネス!魔王も仕留めたみたいだし、早い所逃げるわよ!」

 

「は、はいウォルバク様!しかし、それはフラグだとカズマが……」

 

「そうだぞ!取り敢えず、喜ぶのは無事にアクセルに帰ってからで……」

 

「『カースド・ライトニング』!」

ドォン!

 

「ほら生きてるじゃねぇか!!」

 

いや本当に惜しかったよ。それはあたしも心から思う。だが、決闘を汚してしまったのは間違いだったな。今この瞬間、お前達は全力の魔王を相手にする事になった。

 

「殺す……貴様らだけは絶対に殺す!!」




最後までお付き合い頂きありがとうございます。

すみません。なんか最後まですみません。でも私は引かない!皆ドン引きだろうけど引かない!
と言うことで、最終決戦は次回に続きます。

また不定期ですが、お暇な時にでもお付き合いください。
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