※この作品はR-18です。

この怠惰な女神に信奉を   作:熱心なエリス教

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いつも私の妄想にお付き合い頂きありがとうございます。

魔王は取り敢えず倒しておくのが私のスタイル。と言うことで、マジギレ魔王にも挑むのが主人公の宿命。カズマさん元気に死んでおいで!って感じの最終決戦です。

またお暇な時にでもお付き合いください。


この宿命の戦いに決着を

物語に出てくる勇者という存在に、俺は憧れてなど居ない。

 

「くっそ!また死んだ!レベル上げなきゃここは無理か?」

 

世界の為に精神をすり減らして、何度も何度も死にかける。そして、報酬として手に入れた武器で次の戦場へと向かわされ、また繰り返し死にかける。にも関わらず……

 

「おい待てよ!東京タワーに串刺しって……何考えてんだよ制作陣は?!」

 

その結末がハッピーエンドなんて保証はどこにも無く、物語が終わってから幸福だったと言う保証もない。だから俺は、勇者に憧れるのを辞めたのだ。

 

…………………

 

「悪いが俺は最後まで勇者になるつもりはない。ウォルバクを助ける為に汚い手も使うし、アーネスにも無茶を要求する。今からでも逃げたいって言うなら、俺は止めたりしないぞ?」

 

魔王城へ向かう直前。俺は鎧をアーネス用に調整していた。強い武器は確かに魅力だが、それは使いこなす存在が居てこそである。早い話が、真っ向勝負なら俺よりアーネスの方が勝率が高いのだ。

 

「ウォルバク様を確実に助ける為だ。忍び込むのはカズマの方が良い。それに、あたしは魔王の得意な闇魔法に抵抗力がある。この方法がベストなのに異論はねぇよ」

 

「合理的でありがたい限りだな」

 

こうして話をしていて思うが、アーネスはやはり話が分かる。合理的で契約主義と言うのは、こちらが誠意を見せれば裏切ることがないと言うことだ。これが危険な悪魔として扱われるなんて、この世界はやはり色々とおかしい。

 

「さて、色んなカッコいい仕掛けはあるが、メイン攻撃は剣でいく。理由は至極単純で、この剣なら悪魔のアーネスでも聖属性の攻撃が可能だからだ」

 

「それアクアの残り湯と毛髪で作ってた武器だろ?!最終決戦になんてもんを……」

 

と言いつつ握りと重さを確認する辺り、アーネスもこの武器の優位性を理解しているのだろう。本当に、最後まで頼もしい相棒だ。

 

「アクアに話は付けておくから、召喚魔法の発動と同時に支援魔法を貰ってきてくれ。目眩ましが失敗したらゴーレムの振りだ。俺じゃ魔王には勝てないから、何が何でもアーネスには戦って貰う。頼りにしてるぜ?」

 

「あぁ、任せなカズマ……いや、マスター」

 

「おう、ガッカリさせんなよ忠臣」

 

バニルの予知は覚えているし、これで勝てる保証もない。でも、この時拳を突き合わせた俺達の目は、勝利しか見ていなかった。

 

…………………………

 

「なんてカッコいい感じだったじゃん!マスターのために時間稼げよ!って危な!!」

 

魔王の魔法攻撃を掻い潜りつつ、俺達は馬鹿な口論を続けていた。あれだけ自信満々だったアーネスは、結局真っ向勝負ではこの体たらくである。昨晩はあんなに頼もしかったのに、やはりただのエロ悪魔だったようだ。

 

「お前が顔を出したからバレたんだろうが!あたしはウォルバク様と逃げるから、お前はここで潔く死ね!」

 

「時間稼ぎじゃなくて死ね?!流石にそれは酷くない?!」

 

実際の所を白状すると、今回の敗因は間違いなく俺だ。大量の魔石を使ったのに門番とか言うやつを仕留め切れず、更に魔王に俺の存在を晒してしまった。魔王がまだ縛りプレイの最中なら、逃げる手も勝算もあっただろう。しかし、何でも有りになった魔王に、そんな隙などある筈がない。唯一の勝算だった魔王の誓約を、俺は無駄にしてしまった訳だ。

 

「争うのは後にして!あれだけの魔法を連発している以上、間違いなく魔力切れは来る!それまで死なない事に集中しなさい!」

 

「「すみませんでした!」」

 

しかし、それにしたって攻撃の手が止まない。門番を倒すのに全力を尽くしたウォルバクは魔力切れで、テレポートは詠唱中に動けないので狙い撃ちにされる。となれば魔力切れを待つのが正解だと思うのだが、何故かそんな気配は微塵もない。これはひょっとして、何か大切なものを見逃しているのでは?

 

「なぁ、門番って奴は何がそんなにヤバいんだっけか?」

 

「あいつは地獄の門と繋がっていて、そこから魔力を無尽蔵に得られる存在なのよ。だから、倒しておかなきゃ逃げる事もままならないって思ったんだけど……」

 

その話を聞く限り、目の前の魔王がそんな感じに見える。さっきから上級魔法が連発されていて、いくら高レベルでも魔力切れを起こさない訳が無い。そして、その門番がさっき死んだ状況から推測すると……

 

「あたしが魔王を魔王城にぶっ飛ばしたせいで、今度は魔王が地獄の門と繋がったとかねぇよな?」

 

「あり得るわね……魔法陣を書き換えるだけで、対象の変化は容易だもの……」

 

「マジかよ?!最強の2人を片方仕留めたと思ったら、もっと最強の1人を生み出してんじゃねぇか!」

 

「な、なんかごめん!」

 

生きて帰れたら、アーネスにはエロいお仕置きをしてやる!

 

「どうした逃げるばかりか!先程までの勇敢さはどうしたアーネス!何か策を弄してみろカズマ!まさか、守って貰うしか出来なくなったかウォルバク!!」

 

魔王は分かりやすく魔法を連発しつつ、俺達に向かって挑発を続けている。それに乗るほど馬鹿ではないが、これは相当なプレッシャーだ。

 

「こうなったのはあたしの責任です。一か八か時間を作るので、2人はテレポートで逃げてください。悪魔には残機というのがありますから、死んでもまたいつか……」

ガッ

 

「……待て、アーネスに残機は残っているのか?」

 

瓦礫の影から出ようとするアーネスの手を、俺は咄嗟に掴んで止めた。アーネスは悪魔で嘘は付かないが、嘘でない事を勘違いさせる事は出来る。今の話を聞く限りでは、アーネスに残機があると言うことにはならない。

 

「……離してくれカズマ。だとしてもここで戦うべきはあたしだ。主従契約した悪魔として、主を死なせる訳にはいかない。それに少しでも生存者を増やそうとするなら、あたしが行くのが最適解だ」

 

「なんだよそのふざけた合理性!そんなの死にに行くって宣言じゃねぇか!」

 

「他に選択肢なんてねぇだろ!あたしにだってプライドがある。だから、ここはあたしに行かせてくれ……」

 

この絞り出すようなアーネスの言葉を、俺は否定することが出来なかった。改めて周りを見渡せば、周りは魔王軍の包囲網。逃げる手段はテレポートのみで、俺たちを包囲している魔王軍も、魔王が命じれば直ぐにでも攻撃を開始するだろう。それをしない理由は恐らく、魔王が自分の手で俺達を殺したいからだ。それ以外にこの状況を作る理由がない。

 

「この鎧の機動性なら、魔王だって簡単には当てられないはずだ。なにより空が飛べるあたしなら、最終的に逃げるにも有利だ。この方法が1番生存率が高いって、カズマならわかるだろ?」

 

「なら、アーネスが突っ込むと同時に私が魔王に魔法を放つから、カズマはテレポートを詠唱して。そして、魔王の気を逸らしたら、発動間際にアーネスも戻るの。それなら全員が生き残れるわ。全員が生き残る作戦しか、私は認めないわ」

 

作戦と言うにはあまりにギャンブルだが、正直今はそれしかない。あらゆる小細工を弄した所で、魔王が嫌になれば全軍が突撃してくるだけだ。それなら、早々に決着を着ける方が良い。

 

「しょうがねぇな!裏切るなよアーネス!お前が来なきゃ、テレポートを発動しないからな!」

 

「わかったよ!カズマこそ、詠唱ミスなんてだせぇことすんなよ?」

 

「その時には、また1から勉強ね。だから、絶対に死ぬんじゃないわよ!」

 

駆け出して行く2人を見送り、俺は体内の魔力を高める。こんなに余裕のないテレポートなんて、今までやったことが無い。しかし、例え相手が動いていようと、不安定な状態であろうと、俺に失敗は許されな……

ズシャッ

 

「…………はっ?」

 

突如として腹から生えてきた金属の板が、最初は何なのか理解できなかった。数秒の思考停止を経て、それが後ろから刺された刃だと知る。しかし、知った所でこんなの………

 

「カズマ?!」

 

「ばか……前から、魔王が……」

 

「『カースド・ライトニング』!」

パァン!

 

「きゃっ!」

 

俺の方に気を取られたアーネスの脚を、魔王の魔法が容赦なく貫いた。俺の後ろに立つのはゴーストで、きっとこの機会を伺って居たのだろう。魔王のやつ、どこまでも同じ土俵で勝ちに来やがって……

 

「指揮、采配、策略。それらをもってしても勝ったのは私だったようだな?ウォルバクの目はまだ死んでないようだが、この状況に希望があるとでも?」

 

「残念だけど、私には何も浮かばないわ。でも、私はカズマを信じてる。カズマがここで死んで終わるのなら、一緒に終わるのは本望よ!」

 

「あたしもお供しますよウォルバク様!あたしだって、コイツを主に認めたんですから!!」

 

魔力切れを起こした魔法使いと、脚を焼かれた手負いの悪魔。勝てる理由など何処にもないが、それでも俺を信じると言う。こんな死に損ないの俺を信じて、魔王の前に立ち塞がっている。なら俺は、思考を止める訳にはいかない。

 

「サトウカズマ。お前は楽に殺さない。魔王様の決闘に泥を塗ったのだ。大切な仲間が死ぬ姿を見せてから、長く苦しめて死なせてやる」

 

「くそっ……いい趣味しやがって……」

 

考えろ。あと数秒あればアーネスが死ぬ。更に数秒でウォルバクも死ぬ。この状況を覆すイメージを描け。魔力があれば選択肢が増えるが、魔力をどこからか集めるにもこのゴーストが邪魔で……

 

「くそっ……お前さえ居なきゃ……」

 

「コイツが居なきゃ、勝算はあるんだな?」

 

こ、この声は?!

 

「おらぁ!!」

 

「ぐはぁ!」

ズドーン!

 

「「ホースト?!」」

 

そんな致命的な状況の中、ホーストの拳がゴーストを捉えた。普段なら遅いと一喝してやる所ではあるが、正直今は助かった。いや、欲を言えば刺される前に来て欲しかったが、今はそれどころではない。

 

「ホースト!貴様、あれだけやられてまだ残機があるとは、どこまでもしぶとい悪魔め!」

 

「主をこんな奴らに助けられたとあっちゃ、大悪魔なんざ名乗れねぇからな!悪いが、ここらで見せ場を作らせて貰うぜ!!」

 

魔王に突っ込んでいくホーストの姿に、正直俺は安堵した。あいつ程の実力があれば、少しは状況が改善すると……しかし、その目に飛び込んで来た事実を見せられ、その安堵は再び絶望へと変わる。

 

「うらぁ!!」

パシッ

 

「ほう?どうやら先程の一撃が最後の力か……死に場所を求めて来たらしいな!」

ザシュッ

 

「くっ……良い切れ味してやがるな……」

 

ホーストの一撃は容易に受け止められ、その手は魔剣により切り落とされた。恐らくはウォルバク奪還に無茶をして、既に戦える身体では無かったのだろう。それでもこの場に現れたのは、俺のことを信じてくれたから………

 

「残念だよホースト!お前は実力があったのに、馬鹿な主と弱い人間に肩入れするとはな!!」

 

「くそっ……この身体じゃ……耐えるだけで……ぐふっ!」

 

魔剣による連続攻撃を、ただひたすらに耐えるだけのホースト。その身体に攻撃する力は残っておらず、ただその体躯をもって攻撃を受けるだけ。徐々に刻まれていく身体からは、悪魔の青い血が流れ出ている。

 

「ははは!合理的であれ悪魔は悪魔だな!馬鹿な主と契約したが故に、お前はここで無駄死にする!本当に、主に恵まれなかったな!」

 

「馬鹿なことは辞めてホースト!戦えないのにどうして来たのよ!本当に消滅しちゃうじゃない!貴方は合理的な悪魔なんでしょ?!」

 

ウォルバクの静止にも耳を貸さず。ホーストはただ俺と魔王の間に身体を入れ続ける。それなら俺も行動をしよう。それが無謀な賭けだとしても、もはや他に選択肢はない。やらなきゃ死ぬと分かっているなら、この可能性に賭けるしかない。

 

「はぁはぁ……そうさ……俺様は合理的なんだ。合理的だからこそ、今この瞬間に来たんだ!戦えない俺様でも、役に立てるこの瞬間に!そうだろう!サトウカズマ!!」

 

「あぁ……本当に合理的で……最高だよお前は!」

 

「なっ?!身体に血文字の魔法陣だと?!」

 

身体に描いた魔法陣には、何度も見てきたお決まりの文面。それは最初に学んだ魔法陣。ウォルバクが俺に魔法使いとして戦う術を与えてくれた、そのきっかけとなった最初の魔法。それを形取る円は必要ない。地獄に頼る必要もない。この国にはバカみたいに大きな円が、ここを中心に確かにある!

 

「国一個巻き込む大魔法。これが俺の、魔法使いとしての集大成だぁー!」

カッ!

 

「させるか!『カースド・ライトニング』!」

パァン!

 

………………同時刻、ウィズ魔法具店…………

 

「ふっ、ハハハハハ!そうか!まさかこう来るとは思わなかったぞ!」

 

小僧が消えた翌日の昼。吾輩はヤツを見失った理由を知った。恐らくは誰も予想していなかったその事実は、吾輩でも見通せなかった。いや、見通せるはずがないのである。吾輩が見通せない存在とはつまり、吾輩を超えた存在なのだから……

 

「おい貧乏店主。直ぐに大量の酒を発注しろ!明日は宴会三昧になるぞ!」

 

「へっ?!これから魔王軍が責めてくるって時にですか?!」

 

そんなものは最早脅威でさえ無い。魔王の加護のない魔王軍など、この街にとってはもはや雑兵。小僧と堕女神の残したものは、思いの外、役に立つようだ。

 

「そうだな。ポーションは不要だが、マジックポーションはいくつか仕入れておくが良い。はしゃいだ馬鹿共が無茶をする故、それらについては高く売れるぞ」

 

「は、はい!今直ぐに!」

 

さぁ、見せて貰うぞ魔王。吾輩が小僧を見通せぬなら、汝を通して小僧の晴れ舞台を……

 

「いや、これはまさか早まったか……両者ともに見えない状態とは、吾輩も流石に想定外である……」

 

……………再び魔王城前……………

 

「本当に一か八かだったよ。でも、やっぱり俺は幸運らしいな。さぁ、ここから仕切り直しだ!」

 

魔王の放った闇魔法は、真っ直ぐに俺へと向かってきた。その一撃はあまりに強力で、並大抵の冒険者なら即死していた事だろう。それを防壁魔法で止められたと言う事は、俺は今同じ次元に居ると言うことだ。

 

「円を持たない魔法陣だと?馬鹿な!それでは魔法は発動しない筈だ!」

 

「円ならちゃんと用意したさ。魔王の勢力圏を回避する為に作った新しい街道。あの街道そのものが、この魔法における魔法陣だからな!」

 

上手くいくかは賭けだった。不発に終わる可能性もあれば、膨大な魔力に俺の身体が弾け飛ぶ可能性だってあった。ただ、それでも仲間のピンチを前に、何もしないなんて選択肢はない。結果的に俺は賭けに勝ち、再び魔王の前に立っている。つまりまだ、この手に勝機は残っている!

 

「国を巻き込むほどの大魔法とは、随分と大きな事をやってのけるじゃないか!これで、貴様も勇者の仲間入りだな!」

 

「国中の魔物を強化できる化け物に言われたくねぇな!こんなの、一時のドーピングでしかねぇよ!」

 

「「『インフェルノ』!」」

 

俺と魔王の放った魔法は、もはや紅魔族さえ超える程に強力なものだった。魔法がぶつかり合った場所は、地面が溶岩状に煮えたぎっている。本当に、よく弾け飛ばなかったな俺の身体。

 

「い、いける!これならイケるぞカズマ!無尽蔵な魔力を使って、一気に魔王を畳み掛けろ!」

 

「残念だけどそれは無理よ。元々の魔力の低さもあって、カズマは殆ど上級魔法を覚えてないわ」

 

うん。それはそうだけどウォルバクがバラすの?そこは魔王に警戒させたほうがよくない?

 

「そんな?!それじゃ膨大な魔力の意味が……」

 

「心配ないわアーネス。私の一番弟子なのだから、その程度のハンデは問題にもならない。さぁ、勇者らしくやっちゃいなさいカズマ!魔王討伐の栄光は、今の貴方にこそ相応しいわ!」

 

「ほぅ、限られた上級魔法で私に挑むか……舐められたものだな!『カースド・ライトニング』!」

 

「舐めてるかどうかはこれから分かるさ!『スティール』!」

パァン!

 

咄嗟に発動したスティールにより、俺の手にアクアの剣が舞い戻る。それは神々しく白く輝き、魔王の闇魔法を霧散させた。本当に今更ではあるが、あいつ本物の女神なんだな。

 

「魔法で敵わぬなら剣と来たか!しかし、貴様の剣技で何時まで防げるかな!」

 

「あぁ、そりゃ距離を空けるよな!接近しなきゃ剣は届かないから、俺だって多分そうするよ!でも、遠距離戦は魔法だけじゃないぜ!『スティール』!」

 

「アッ!オレの弓が?!」

 

魔王軍から奪った長弓を構え、俺は真っ直ぐに魔王を見る。卓越したアーチャーの弓は、魔法の射程を上回る。魔法はあくまで道具の1つ。魔法だけで敵わないなら、何かで不足を補えば良い!

 

「冒険者ごときの弓がこの距離で当たるか!『カースド……」

 

「『エンチャント、ウィンドブレス』風の加速に……『狙撃』!!」

バシュッ……スパァン!

 

「馬鹿なっ?!この距離で魔力を込めた腕を?!」

 

俺の放った渾身の一矢は、風の斬撃により魔王の右腕を切り落とす。潤沢な魔力を込めたスキルは、それだけでも効果が桁違いに高い。そして、イメージ通りに身体が動くのも、潤沢な魔力の補助あってこそ。身体がイメージ通りに動くなら、この戦いにも勝機はある!

 

「どこまでも真っ向勝負を避け続け、常に広い視野で自分の優位を取りに来る。そして、その胆力に加えて頭の回転の速さ。我軍の幹部が負けたのは、間違いなく貴様の力だろう。だからこそ、貴様はここで確実に殺す!!」

 

「やってみな魔王!次は反対の腕を吹っ飛ばしてやるよ!」

 

「馬鹿め!引き絞る隙など与えるものか!!」

 

魔力による身体強化か、それとも魔王本来の力か。俺が次の矢を番えた時、既に魔王は目の前に居た。当然この距離は剣のほうが速く、このままいけば俺は両断されるだろう。しかし、身体がイメージ通りに動くなら、この状況でも恐れはない!

 

「カムラ流……『身躱し矢斬り』!」

スパァン!

 

「くっ!回避と同時に矢で攻撃を?!」

 

「からの『狙撃』!」

 

「ぐはっ!こいつ!どこまでも小癪な真似を!」

 

回避行動からの流れるような一射を受け、たまらず魔王も膝を付く。ステータスでは遅れを取り、真っ向勝負も分が悪い。でも、ゲームじゃそんなの日常茶飯事だ。モンスターにフィジカルで勝てないからこそ、技と言うものが存在する!

 

「どこまでも小細工で翻弄するか……ならば、思考の暇さえ奪ってやるまでだ!」

ぶしゃっ!

 

「気合で腕が生えてくるって、どんだけ魔王は規格外だよ!」

 

全身の魔力を高めた魔王が、腕を生やして真っ直ぐに俺へと斬りかかる。反応速度で負けている以上、同じ技はもう使えないだろう。だが、同じ技を使う必要はない。俺はアクアの剣を手にとって、その切っ先を魔王に向けた。

 

「剣技で私に挑むとはな!なればその実力を見せてみろ!」

 

「あぁ見せてやるよ!古牧流『虎落とし』!」

ドスンッ!

 

「ごふっ!この状況で……徒手格闘だと……」

 

あえて懐に飛び込みながら、俺は渾身の拳を魔王の鳩尾に叩き込む。剣の振りは魔王のほうが速く、剣技は勇者を凌ぐ実力者。そんな相手と剣でやり合うなど、俺なら絶対にお断りだ。

 

「ここまで懐に入り込んでしまえば、その自慢の魔剣は使えないだろ!」

 

「ふっ!それは貴様とて同じ事!その女神に祝福された聖剣とて、振り抜け無ければ意味はない!そして鍔迫り合いでは力がものを……って熱っ!ちょっ!その剣を近付けるんじゃない!近付くだけでめっちゃ熱い!」

 

「ははは!たっぷり聖水を塗り込んだ武器だ!じっくり魔法で炙ってやれば、気化した聖水がお前を焼く!鍔迫り合いでも俺の勝ちだ!」

 

「貴様!この期に及んでまだしょうもない小細工を!いい加減にしろこの!」

ゲシゲシ!

 

「ちょっ!お前こそスネを蹴るんじゃない!魔王がセコイ攻撃すんな!」

 

「貴様がそれを言うなぁ!」

 

俺の地味な攻撃に何度も晒され、遂に逆上した魔王が掴みかかる。武器を捨てての殴り合いなら、ステータス的に魔王が有利だ。なんて考えに至ったとしたら、まさに俺の狙い通りだ。

 

「『ダッキング』!からの……『右フック』!」

スパァン!

 

「くっ!この状況にも反応するか!しかし、貴様の貧弱な筋力では、私を倒すことなど……ぶふっ!」

パァン!

 

「続け様の『左フック』!そして!」

 

俺の拳を受けた魔王は、その威力から脅威とは思わなかったのだろう。確かに俺のステータスでは、魔力補助を受けても大した威力は生み出せない。だが、この身体がイメージ通りに動くなら、効くまで叩き込めば良い!

 

「『デンプシーロール』!」

 

「ごふっ!がっ!ぐっ!んぐ!」

パァンパァンパァンパァンパァンパァンパァン!

 

高速で放つフックの連打に魔王の身体が徐々に下がる。何度も繰り返しプレイしてきたゲームが、何度も見てきた憧れたヒーローが、俺と魔王の溝を埋めていく。イメージを具現化するのが魔法なら、きっと今の俺に敗北はない。俺が憧れたヒーロー達は、俺の瞼に焼き付く英雄達は、間違いなく魔王より強かった!そして、まさか蛍光灯の紐で練習したこれが、役に立つとは思わなかった!

 

「馬鹿な!何故冒険者風情がここまで戦える!どれだけ膨大な魔力を得ようと、扱う術など知らないはずだ!」

 

「私の弟子を侮ったわね!カズマにとって魔法は道具!あらゆる可能性を秘め、何処までも自在に変化する、願望を叶える便利な道具よ!だから私は使い方だけを徹底的に叩き込んだ!魔法と魔力を自由に出来れば、後は想像力が武器になる!唯一の弱点だったリソースを得た今、カズマは私さえ超える魔法使いよ!まぁ、普段はリソースが無いからアレだけど……」

 

「最後の一言要らなかったろ?!でも、その期待には応えてやるよ!想像や妄想で勝てるって言うなら、俺は誰にも負ける気がしない!」

ダァン!

 

「くそぅ!何処までも無茶苦茶をする師弟め!」

 

俺の渾身の一撃を受けても、魔王が膝を付くことはない。それは無尽蔵な魔力による回復の効果で、それこそ圧倒的な火力無くして勝つことは出来ないのだろう。だが、それでも精神的には辛いはずだ。一撃で殺せる俺を相手に、何故かここまで追い詰めらている。そんな状況で切り札が切られれば、間違いなく全力で止めにくる!

 

「『それは始まりの炎。それは終の炎……』」

 

「肉弾戦をしながらの魔法詠唱だと?!させん!爆裂魔法だけは絶対に止める!」

ズシャ!

 

「ごふっ!」

 

なりふり構わず突き立てられた魔剣が、俺の脇腹を深く貫く。吐血により詠唱が破棄された事で、魔王の顔にも安堵が見える。だが、これなら俺は即死せず、魔剣も思うように振るえない。そう、回避不能なこの状況こそ、俺の狙った理想の状態!

 

「やっぱり魔王って半端ねぇよ……俺の思い描くヒーローでさえ、あんたを殺すことは出来なかった……でも、俺の最も憧れたヒーローの技は、ウォルバクの使う最強の魔法は、いくらアンタでも耐えられないよな!」

 

「つ、掴んだ拳の中に爆裂魔法だと?!まさか、さっきの詠唱は囮だと?!」

 

「真っ向勝負すると思ったか!この距離なら無詠唱でも充分だろ!穿け!『エクスプロージョン』!!」

カッ!

 

「まさか、こんな奴にぃー!!」

ドォン!

 

左手の皮膚が焼ける感覚に、視界を埋め尽くすまばゆい閃光。俺がウォルバクに黙って覚えた唯一の魔法は、その圧倒的火力を持って魔王の身体を消し飛ばした。そして、身体の血文字が焼け焦げた事で、俺の奇跡も終わりを迎える。魔力を使い果たした身体を、そのまま大地へと放り出して……

 

「「カズマ!」」

 

「よぉ、勝ったぜ2人とも……おっと!」

もにゅん

 

いつぞやの首チョンパの時とは異なり、柔らかく包まれる4つの膨らみ。まだ周りには多くの魔物が居るわけなので、本来ならこんな事してる場合じゃない。でも、ほんの少しくらい許して欲しい。この温もりを感じられるのは、きっとこれが最後だから……

 

「えっ……どうしたのよカズマ!なんで魔力が薄れていくのよ!貴方は勝ったのよ!それなのに……なんで……」

 

「泣くなよウォルバク。魔力で無理矢理は動かしただけで、この身体はもう死に際だったんだ。本当は負けていた筈の俺が、最後に反則勝ちしただけさ。でも、かっこ悪くてごめんな……」

 

魔王と戦っている時から、確かに身体に違和感があった。殆ど呼吸をしない肺と、早くならない心臓の鼓動。今なら理由がハッキリと分かる。この身体が殆ど死んでいたから、多量の魔力に拒否反応が起こらなかったのだと……

 

「ふざけんなよ!ここまで来てなんで……お前は汚く生き残るんじゃねぇのかよ!」

 

「悪いなアーネス……結局、最後までお前に世話をかける。最後の約束……ウォルバクのことを、よろしく頼む……」

 

徐々に弱くなる鼓動と呼吸。何度も味わった死の感覚。普段なら苦痛に感じたこれが、どうしてか今は心地良い。向いてないかなと思っていたが、案外俺は………

 

「「死なないでカズマ!!」」

 

勇者向きだったのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最期までお付き合い頂きありがとうございます。

ちょっといい感じに終わった最終回の序章。そうですね。次が私の本当の最終回です。
バカなのが嫌いな人はここで読み終えると、感覚的に綺麗に終わりますが……

ということで、相変わらず不定期です。よければ最後までお付き合いください。
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