剣斬の活躍が見たい方は是非暇なときに読んでくださると嬉しいです。
俺の名前は
俺は今、金を稼ぐために受けたとある依頼をこなすべく、町の外れにある廃墟に侵入している。依頼人のおっさん曰く、その廃墟を根城にしている盗賊に自分の大切なものを盗まれたらしい。
「そこっ!」
「ぐあぁぁあ!」
俺は手に持ったナイフで次々と盗賊を始末しながら、廃墟を調査しつつ目当てのものを探していた。するとどこかから、複数の声が聞こえてくる。俺は声のした方へ足を運ぶと、一つの部屋のドアが半開きになっていた。俺はそのドアに近づいて耳を傾ける。
「へへっ、今回も上玉ですなぁ兄貴!」
「そうだな。今までもいい女はそこそこいたが、今回はそれ以上の上玉かもしれねぇ」
「は、離せ! お前ら! こんなことをして恥ずかしくないのかよ!?」
「恥ずかしい? 何を馬鹿な。捕まるような馬鹿が悪いに決まってんだろ」
「けどいきなり俺らの前に出てきて大口叩いたかと思いきや、いきなり全裸になるなんてな!」
「あれは傑作だったな! 俺らなんもしてねぇのに、勝手に自滅してくれるしよ!」
ドアの近くで盗み聞きした限りでは、一人の女に複数の男が話しかけているみたいだった。会話の内容からして、何らかのヘマをして女が捕まり、そして捕まえた女を男たちが尋問しているようだ。
「さて、じゃあ始めるか」
「な、なにをする気だ……?」
「なにって……こんな場所で無様にとっ捕まった女にすることと言ったら、一つしかないだろう?」
「まさか……や、やめ……」
「お、さしもの勇敢なお嬢ちゃんでも、いざレイプされるとなりゃ怯えもするか。安心しろよ。すぐに気持ちよくなるから」
「いやぁ! 触るな! この変態!」
「ははは! 負け犬の吠える声はいつ聞いても最高だな! 自分のミスが原因なのに、人のせいにして喚き散らす様も実に滑稽だ!」
「ひっ!? やめてぇ……そんなところ、触らないでぇ……」
何やら中でかなり盛り上がっている様子だ。今なら女に夢中で警備も手薄になっている。目当ての物を探すにはうってつけのチャンスだ。けど闇雲に探し回るより、中に入って男たちに盗んだ物の場所を聞くのもいいかもしれない。
どうすべきか考えていると、中から気になる会話が聞こえてきた。
「しっかしこの間のおっさん、ずいぶんいいもん持ってたっすよね?」
「ああ。これを売れば相当の金額になる。何しろもう二度と手に入らない希少金属でできた時計だ。こいつの価値を知っている奴からすれば、喉から手が出るぐらい欲しがるだろうよ」
「ならその金で、うちの組織ももっと拡大できるっすね!」
今の会話を聞いて、俺はドアの隙間から中を確認する。そこでは体を押さえつけられて怯えている全裸の女に、今まさに強姦しようとしている男たち、そして見るからに高級そうな時計を掲げて上機嫌に笑ういかつい男がいた。
恐らくあれが依頼人のおっさんが盗まれた物に違いない。そう思った俺はドアを蹴破って中に突入する。
「お取込み中失礼するよ」
「なっ!? 誰だ貴様!?」
突入してきた俺を見て驚いている男の首を、俺は持っていたナイフで切り裂く。首を切られて倒れる男を見て、周囲の男たちは驚いたような表情をして武器を構える。
「な、なんだよこいつ! どっから入ってきやがった!?」
「くそっ! 見張りは一体何してやがった!」
「構うな! こいつは一人、こっちには大勢仲間がいる! 囲んでやっちまえ!」
いかつい男の合図で、男たちは一斉に俺に襲いかかってきた。
「ハハッ! いいぞ! まとめてかかってこいよ!」
俺は左手にナイフ、右手に拳銃を構えて応戦する。数は多いものの、一人一人があまり強くなかったのもあり、ものの数分で制圧できてしまった。
「これでしまいだ!」
「ぎゃあ!」
最後の一人を片付け、俺は一人残ったいかつい男を見る。
「さてと、あんたが今手に持ってるそれ、おっさんから盗んだものだよな? それ渡してくれる?」
「はっ! 誰が渡すかよガキが! テメェには、仲間ぶっ殺してくれた礼をしなきゃならねぇ!」
いかつい男はそう言って、懐から何やら注射器のような物を取り出す。そして男は、そのまま注射器を自分の首に打ち込んだ。
「ぐっ!? かっはははは! いいぞぉ……力が湧いてきたぁぁ!」
男の体はどんどん隆起していき、しまいにはゲームで出てきそうなオークらしきモンスターに変わった。肌は灰色に変わり、全身の筋肉は隆起して血管が浮き出ている。顔に至っては元の原型がなくなるぐらい変わっており、もはや人間と呼べるようなものじゃない。
「おいおい……そんなものを隠し持ってたのかよ……」
「ハハハ! 怖気づいたか? 今更後悔してももう遅いぞ!」
「後悔? そうじゃないよ」
俺は笑みを浮かべながらナイフと銃をしまい、懐から小さな本のような物を取り出す。
【猿飛忍者伝!】
「思わぬ楽しみができて嬉しいんだよ、俺」
「はっ?」
「俺、最近ろくに強そうな奴と戦えないでもやもやしてたんだ。でもあんたなら、少しは楽しめるかもしれないと思って」
俺はそう言って、小さな本──ワンダーライドブックのページを開く。
【とある陰に忍は疾風! あらゆる術でいざ候……】
「何言ってんだガキ? 頭でもイカれたか?」
「そんなことはない。俺はいたって正常だよ。ただ……」
目の前のオークと言葉を交わしながら、俺は腰に背負った剣を抜く。こいつを抜くのは実に半年ぶりぐらいだ。最近はこいつを使うまでもなく片付けられる仕事ばかりだったから。
【
「強い奴と戦うのが好きなだけだ」
「……なんだそれは?」
「これか? 見ての通りただの剣だよ。でもこいつにはある秘密があってな」
「なんだ? テメェが言うその秘密って?」
「今見せてやるよ」
俺はワンダーライドブックを風双剣翠風のスロット部分にセットする。セットすると同時に、俺は翠風を二つに分断する。
【猿飛忍者伝! 双刀分断!】
「変身!」
風双剣翠風を交差させるように振るうと、そこから発生した風が俺の体に収束され、鎧のようなものが形成される。
【壱の手、手裏剣! 弐の手、二刀流! 風双剣翠風!】
やがて風が四散するとともに俺の全身に鎧が纏われ、俺は風の剣士・剣斬に変身した。
【翠風の巻! 甲賀風遁の双剣が、神速の忍術で敵を討つ!】
「その姿……まさか、テメェがあの風の剣士か!?」
「ん? もしかして俺って、結構知られてたりする?」
「知ってるぞ……二振りの剣を巧みに振るって荒れ狂う風の如く戦うその様は、まさに嵐のようだと」
「マジで? 俺ってそんな風に言われてんのか?」
「クソッたれが! よりにもよって風の剣士が相手かよ!」
オークは焦ったような顔をしているが、やがて覚悟を決めたのか、俺に思いっきり拳を振るってきた。
「おっと!」
俺はそれを横に動いて回避すると、そのままの勢いでお返しの斬撃を繰り出す。
「ちぃ!」
オークは間一髪それを躱し、俺から距離を取る。どうやらあの注射で強化された身体能力は伊達ではないようだ。それを知った俺は歓喜するかのように口角を上げる。
「ハハッ! さすがにこれぐらいは余裕で躱すか!」
「舐めるなよクソガキが……その生意気な口をすぐにでも利けなくしてやるよ!」
「それはいいな! 是非とも本気でかかってきてくれ! 今度はこっちから行くぞ!」
俺は軽く駆け出して即座にオークとの距離を詰めると、今度は袈裟切りの要領で翠風を振るう。オークはそれに対応できなかったのか、腕でガードしようとする。俺はそのままガードしている腕ごと斬りつける。
「おりゃ!」
「ぎゃあああ!」
オークの腕は豆腐を切るみたいに、驚くほど簡単に切り落とされてしまった。肉体を強化しても、翠風の切れ味の前には力不足だったようだ。
「おいおい、ずいぶんあっさり斬れちまったけど……そのデカい図体はハリボテかよ?」
「くそがぁぁぁ!」
俺の挑発にオークは怒り狂ったように吼えると、即座に腕を再生させて飛び掛かってくる。しかし俺はそれに対して、がら空きになった腹目掛けてカウンターの回し蹴りを喰らわせる。
「せいっ!」
「グべッ!!」
ぐちゃっという嫌な音と共にオークは壁まで吹き飛ばされ、激突すると同時に壁に大きなクレーターが作られる。
「なんだか拍子抜けだな……もういいか。さっさと終わらせよう」
【一刀流!】
俺は翠風の刀身を重ねて一刀流モードにすると、翠風のスロットからワンダーライドブックを取り外し、翠風の速読器『シンガンリーダー』に読み込ませる。
【猿飛忍者伝! ニンニン!】
翠風から音声が鳴ると同時に、翠風から風のエネルギーが生み出され、翠風の刃部分である風雲刃に急速に収束されていく。限界まで収束されたのを確認した俺は、その場から天高く跳躍して翠風のトリガーを押した。
【翠風速読撃! ニンニン!】
トリガーを押すと同時に風を纏った刀身が緑色に輝き、俺はそれをエネルギーの刃としてオークに向けて放つ。壁にめり込まれたオークはそれを躱すことができず、そのままオークに直撃した。
「ぐわああああ!」
オークは断末魔の叫びをあげて爆死する。奴が爆死したのを見た俺は、スロットからブックを取り外して変身を解除した。
「はぁ……久々に強い奴と戦えると思ったのに……」
「あ、あの……」
俺が風双剣翠風を腰に収めてため息を吐きながらうなだれていると、すぐ後ろから全裸の少女が話しかけてきた。
「何?」
「その……助けてくれてありがとう……」
「あぁ……いや、別にあんたを助けたわけじゃないから」
俺はそう言ってオークが死んだ場所へ向かう。そこには目当てのものである時計が落ちていた。一応時計に攻撃を当てないよう気を付けてはいたものの、あの爆発で傷一つつかないのは正直驚いた。希少金属を使ってるだけあって、爆発にも耐えられるのか。
「じゃ、俺もう行くから。あんたも気を付けて帰れよ」
「う、うん。……ってちょっと待て!」
用を済ませたので帰ろうとした俺を、少女は慌てて腕を掴んで引き留めてくる。
「なんだよ、俺もう用事済ませたから帰りたいんだけど?」
「あ、あんた……普通女の子を一人でこのまま放っておくか!?」
「だって赤の他人だし。ていうかあんた、いつまで裸でいるつもりなんだよ? 風邪ひくぞ?」
「へ? ……ってうわぁぁぁ! 見るな! このスケベ!」
俺に今の自分の恰好を言われて慌てた少女は、急いで俺から距離を取ろうとする。しかし俺の足に自分の足を引っかけてしまい、危うく倒れてしまいそうになる。
「うわぁぁぁあ!」
「おい、ちょ!?」
俺は急いで彼女の腕を掴んでこちらに引き寄せる。思わず抱き寄せる形になったものの、なんとか倒れずに済んだようだ。
「ひゃんっ!?」
「……?」
けどどこか少女の様子がおかしい。倒れる寸前にこっちに抱き寄せたので怪我とかはないはずだけど。でもさっきからなんか手の平に柔らかい感触があるような……。
「あうぅぅ……お尻、揉むなぁ……♡」
「……!?」
言われて俺は、慌てて手元を確認してみる。するとそこには、がっちりと張りのある尻を鷲掴みにしている俺の手があった。
「……ごめん。すぐどくから」
俺は申し訳ない気持ちになりながら手をどけようとする。
「ひゃ! ちょっと待って! 手を動かすなぁ!」
しかし手をどけようとした瞬間、どういうわけか少女がまたバランスを崩しそうになった。俺は彼女の体を後ろから支える形になったが、今度は彼女の柔らかい胸に手が行ってしまい、後ろから胸を鷲掴む形になった。手の平に尻とはまた違った揉み心地を感じる。
「ひぃん! おっぱい揉むなぁ!」
「おい待てや。いくら何でもおかしくない? こんなバランス崩しかけることある?」
「うぅ~、また私のラッキースケベられがぁ……」
「なにその頭悪そうな名前。今のやつといい、捕まってたことといい、もしかしなくてもポンコツだろあんた?」
「ぽ、ポンコツっていうなぁ! 私だって、望んでこうなってるんじゃない!」
次々と起こる出来事に、俺と少女は口論になる。しかし敵の住処でいつまでもくだらない口論をしている場合ではない。先ほど俺が派手に暴れた影響か、この部屋に敵が集まってくる気配がした。それも大勢。
このままでは逃げられなくなる。俺一人ならともかく、こいつを連れていくとなれば一刻も早く行動しなければ。そう考えた俺は、渋々強硬手段に出た。
「きゃ! こ、今度は何する気だよ!」
「うるさい。いいか? 今俺たちがいるのは敵地のど真ん中だ。こんなところにいつまでもいたら囲まれて袋叩きに合う。今頃騒ぎを聞きつけた奴らがこっちに向かってきてるころだよ」
「えっ……?」
「とりあえず俺が泊まってる宿があるから、そこまで連れていくよ。話はそれからだ。死にたくないなら大人しくしてて。わかった?」
「わ、わかった……」
よし、合意は得た。後は行動に移すのみ。
俺は彼女の体を抱えて急いで廃墟を後にした。途中少女の悲鳴が聞こえてきたが俺は無視した。だってうるさいし。
~~~~~~~
「落ち着いた?」
「……うん」
あれから俺たちは、無事に宿にたどり着いた。依頼人のおっさんへの報告は明日に回すことにし、俺は就寝の準備を終える。後は寝るだけというところまで行って、ようやくゆっくり話ができる状態になった。ちなみに廃墟を出る前に彼女の服は回収しておいたので、現在はちゃんと服を着ている。
「とりあえず、まずは自己紹介からだな。俺は八神蓮矢。旅をしてる」
「……私は環古達。この町の孤児院に住んでる」
互いに自己紹介を終えた俺たちは、あの場での出来事を互いの状況の視点から情報交換した。環曰く、孤児院で一緒に子供の世話をしていた友達が攫われたので助けに向かったところ、あのラッキースケベられが起こって着ている服を全部脱いでしまい、あっけなく敵に捕まって犯されそうになったところを俺が助けた形になるらしい。
「それでその友達は?」
「……わかんない。捕まってから時間がそこまで経ってないから、まだあの廃墟のどこかにいるかもしれないけど、もしかしたら……」
「……とっくに奴隷として売られたか、もしくは殺されて臓器を売られたかだな」
「……っ!?」
俺の言葉に、環は泣きそうな顔をする。
「それでどうする? またあの廃墟に忍び込むのか?」
「……まだあそこにいるなら、助けないと」
「勝ち目はあるのか?」
「……」
環は何も答えない。でもなぜか俺の方を見てすがるような目線を向けてきている。これはまさか……。
「なぁ……」
「断る」
「まだ何も言ってねぇだろ!?」
絶対碌なことじゃない。俺はただ旅の資金を稼ぎたかっただけだ。なんで金にもならない人助けなんてしないといけないんだよ。
「なぁ頼むよ! あんたの強さがあれば、きっと……」
「嫌だね。環に協力しても、俺になんのメリットもねぇじゃん、それ」
「なんでだよ! あんなに強いなら別に助けてくれたっていいじゃねぇか!」
「俺は慈善団体の人間じゃないんだ。報酬もろくに期待できない仕事はしない。人助けなら他を当たってくれ」
そう言い放ち、俺はベッドに入って眠ろうとする。
「……ぐすん」
「えっ」
すると部屋の中にすすり泣くような音が聞こえてきた。
「なんでだよ……なんで誰も助けてくれないのっ!? あんたも! この町の人達も! 私たちみたいな親のいない子供は、どうなってもいいっていうのかよ!?」
「……」
「みんなそうだ! 孤児院出身ってだけで馬鹿にされて、町の人達から親に捨てられたって言われ続ける日々! ひどいときなんて石を投げられたこともあった! それでも私たちはくじけずにみんなで一緒に頑張ってきた!」
「……」
「でもそれからも町の人たちに白い目で見られ続けて! それに耐えきれなくて孤児院にいた大人はみんないなくなって! 友達は攫われて! なんでなの!? なんで私たちだけがこんな目に合わなくちゃいけないの!?」
「おい、もう夜も遅いし、続きはまた明日にしてそろそろ……」
「うるさい! もういいっ! あんたの助けなんていらない! 私だけでやってやる!」
そう言って環は泣きながら部屋を出ていった。残された俺は突然の出来事に呆然としつつも、俺にできることは何もないと考え、そのまま寝ることにした。
しかし翌日になって、俺はさらに面倒くさい出来事に巻き込まれることになった。
本作の主人公は基本的に損得勘定で動く人間であり、強い存在と戦うことを好む戦闘狂です。
原作セイバーにおける緋道蓮に似ていますが、蓮は曲がりなりにも世界のために戦っているのに対し、蓮矢は自分のために戦っているので、ある意味蓮よりもヤバい奴かもしれません。
そんな彼がこれからの旅でどんな人間になっていくのか。
本格的なエロは次回からになります。