※この作品はR-18です。

ETERNAL ZERO   作:エッマの友人

1 / 3
第0夜

土砂降りの雨の真夜中の海辺に波が押寄せる。絶海の孤島にある真新しい洋館。館の主の白髪の老人は寝室で高いびきをかいている。そこに音もなく近づく黒い影。ベッドの脇まで近づくと、足を止める。一瞬の沈黙の後、雷の閃光と雷鳴。鋭い爪が振り下ろされ……

 

パチッと子供部屋の照明が付く。「ショーン!フランク!せめて部屋の明かり付けなさい」固唾を飲んでテレビに齧り付いてた私達に呆れた調子で母親が叱る。はーい、と生返事をし、たった今ドラマが終わったテレビの電源を切った。「モブ山モブ治郎死んじゃったね、兄さん」まだあどけなさの残る弟のフランクが興奮した様子で話しかけ、私達は笑顔で今後の展開を楽しげに予想して話し、寝る準備をいそいそと始めた。いつもと変わらない毎日、何十回、何百回と繰り返した日常だった。この時までは…

 

それからは思い出したくもない。その夜、人狼が現れたのだ。父と母は鋭い爪や牙で切り裂かれ呻き声をあげていて、フランクは血で濡れ、倒れていた。私は半狂乱で家を飛び出し、助けを求めたが……誰も話をまともに聞いてはくれなかった。人狼などおとぎ話だと笑われ、手近な大人を引きずって帰った頃には父母は既に息絶え、弟は跡形もなく消えてしまっていた。私は天涯孤独になってしまった。

 

それからは借金を背負い何とか学校に通い、卒業までこぎつけた。家に帰りつくと、見慣れない黒塗りの高級車が止まっている。ついじっと見ると、やおら私の目の前の窓が開き、「おい、」後部座席の壮年の薄い色のサングラスの男と目が合った。面食らってる私に構わず「乗れ」と短く指示する。「何故です?」「ニュースを見てないのか?お前の借金の債権者は死んだ。そしてお前はこれから馬車馬のように働いてもらい金を返してもらう」そう言うと、ドアが開き、有無を言わさず中へ入らざるを得なくなった。「さては契約書もよく見ずにサインしただろう?今借金の額凄いことになってるぞ。悪いこと言わないから利率はしっかり見ろ」きっと青ざめている私を乗せて、車は走り出した。

 

車内のテレビではこの街有数の富豪が殺害されたとアナウンサーが淡々と伝えている。映し出された写真に確かに見覚えがある。今までにない心地よい乗り心地だが、気もそぞろでどうも落ち着かない。

 

やがて車は閑静な住宅街のお高そうな一軒家の前で止まり、中へ招かれた。玄関先こそ一般的な家だったが、奥の書斎に通されると、怪しげな水晶玉や掛け軸、カードが几帳面に重ねられてあったり、意味深な記号がチョークで描き殴られてあったり、難しげな分厚い本が本棚に並べてあったりと、人目で異様な空間であった。「まずは医者だな」と、注射針を突然握らせる。と、一瞬で注射針が破裂し、中の液体が流れ出た。素っ頓狂な声を上げる私に構わず、次は近くにあった藁人形を握らせると、命が吹き込まれたかのように暴れだし、私の手から逃げ出してしまった。「あの、これは何なんですか?えーと……」「ビルだ。ああ、お前の素質を見ている。なんもなけりゃ蟹漁にでも行ってもらうさ」蟹……

 

「詩人の素質もなさそうだな」勢いよく弦が切れた音に、流石に申し訳なくなってきた。ビル氏は一瞬考え、棚からゴソゴソと重そうな箱を出してきた。開けると銀のリボルバーが光沢を放っている。「気をつけろよ。」どう気をつければいいのかは分からないが、分かりました。と頷き受け取る。

 

それはしっくりと手に馴染み、不思議と初めて銃を手にしたと思えないほど心が落ち着いた。暗殺か。悪くないな。そう独り言をしながら、ビルが本棚のスイッチを押すと仕掛け扉が開き、鉄製のエレベーターが顔を出した。地下深くにある射撃場で人型の模型を何発か撃った。「これならちょっと仕込めば使い物になるな。報酬は弾むぞ?」ビル氏は上機嫌なようだ。私としても悪い話ではない。カニ漁よりは向いてる気さえしてきた。だが……「ビルさん、しかし私は……まさか殺しを………?」「は?馬鹿言うな。俺はクリーンは商売を心がけてるんだ。人外でもなけりゃ人は殺らせねぇ。」ビルは赤いボタンを押す。すると今までいたレーンの隣のスペースが動き出し、黒く大きい獣……人狼を模した人形が現れた。「お前の獲物はこっちだ。まあ、期待しているぞ。」二つ返事で私はこの人に雇われることになった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。