それから数日、ショーンは地下の射撃場で幾度か訓練した。それまでのボロ屋から少しだけまともなアパートに引っ越すことも出来た。ある日、珍しく郵便物が届いていた。……封筒に封蝋がされてある。ペリリと剥がすと、センスの良い便箋が入っていた。ショーン様へと言う文字に心を躍らせてソワソワと目を滑らせながら読むと、宛先の人物の名に息を飲んだ───
差出人の名はフランク。ショーンは気もそぞろで足早に誘われるように同封された地図に導かれて洋館へ向かっていた。洋館に足を踏み入れると、踊り階段の上で若々しい青年が優雅な物腰でこちらを出迎えていた。
「やあ、兄さん。元気にしてた?」
「ああ、…………フランク……お前こそ生きていたのか…良かった。ずっと死んだものと諦めていたんだ。」
すっかり見違えた姿の弟を見て、ショーンは感無量で涙を堪えていた。
積もる話もあるし、奥へどうぞ、と通された先には中年の男女が2人いた。
「紹介するよ、僕の育ての両親。とっても頼りになっていい人達なんだ。」
フランクは真っ白な歯を覗かせてにっこりとした。フランクを育ててくれていたお礼を言い、固く手を握り握手したが、彼らは慎ましやかなのか、どうも反応が薄い。むしろ、
「当然のことです、フランクさんには私たちの方こそ感謝しきりなのですよ」
とまで言う。ショーンは少し訝しく思ったが、まあ、よく分からないが色々な家族の形があるよな、とあまり深く考えないことにした。
楽しく世間話をしていると、時間があっという間に過ぎてしまった。既に夕日が沈む頃になり、そろそろ帰ると申し出ると、もう今晩は泊まっていかない?せっかくだから家で夕飯を食べていってとフランクが言うので、お言葉に甘えさせてもらう事にした。
食事はとても美味しかった。お風呂にもお風呂にも入らせてもらい、就寝の支度をして、早々に客用の寝室に入った。少し固めのベッドの感触が心地よい。すると、廊下から声が聞こえてきた。「ああ、もういいよ、今日はありがとうね。もう帰っていいよ。」
「ご命令には従いますが、しかし…フランク様お1人で本当によろしいのですか?」
「え?僕がヘマするとでも?」
「とんでもない事でございます、失礼致しました。では、我々はこれで」
盗み聞きをするつもりではなかったが、思わず聞き入ってしまっていた。彼らは親子ではなかったのか?と理解が及ばない。おもむろに寝室のドアが開き、弟がにこにこしながら近づいてくる。
「兄さん、」
「フランク……?お前は本当にフランクなのか?」
ショーンはベッドから降りようとしたが、強い力で上半身を押さえつけられ、のしかかられた。
「やだなあ、兄さん。僕が分からないの?本当に僕はフランクだよ、何も変わらないんだ、何も。」
開けたままの窓のカーテンが風でたなびく。すると大きな白い月が雲の間から顔を覗かせた。するとフランクの痩躯が震え、暫しの間苦しげに顔を手で覆うと、みるみるうちに獣の耳が生え、太い尻尾が生え、顔つきは狼のそれに変化した。ああ、人狼だ、と、ショーンは諦めとも絶望ともつかない声色で呟いた。