※この作品はR-18です。

TENZIマジカル珍宝帖 ~私の嫁はラスボスでした~   作:ポチ&タマ

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 これでラストストックとなります。
 少々私生活が忙しくなりますので、次の投稿は恐らく一カ月ほど掛かると思われます。
 なるべく早い投稿を心掛けますが、それまでお待ちください。



33ページ目

 その後、火影室に集まった一同。その場には私と小南、アイノとアイナの他に、現火影であるミナトさん、ヒルゼンさん、綱手、自来也さん、ご意見番の老公お二人。そして柱間さんと扉間さんが集まりました。

 ご意見番のお二方は戦没した初代と二代目火影さんの姿に驚いた様子でしたが、私が蘇らせたと聴くと難しい顔で何かを考え始めます。

 そして、最初に口を開いたのは現火影であるミナトさんでした。

 

「此度は、木の葉の里を救っていただいてありがとうございます。神隠れの里の協力がなければ、木の葉は甚大な被害を受けていたでしょう」

 

 そう言って頭を下げた後、戦後処理は任せて欲しいと頼まれてしまったので、お言葉に甘えて丸投げさせて頂きました。

 今思えば、此度の木ノ葉崩しは、ほぼ神隠れの里で対応したようなものです。自里の危機に関わらず同盟相手が問題を解決してしまいましたから、木ノ葉としては面目丸潰れでしょう。

 私としてはそんなつもりは無かったのですが、もうちょっとミナトさんたちのことを気に掛けた方が良かったかもしれません。

 そのためか、先程から扉間さんが鋭い視線で突き刺さしてきます。

『よもや木ノ葉を救った大恩を口実に無茶な要求をしまいな?』と目が語っているのです。

 なので私は扉間さんに聞こえるように木ノ葉の皆さんに言いました。

 

「盟友として当然のことをしたまでです。此度の戦では奇しくも私が敵将の首を獲りましたが、これを口実に木ノ葉の皆さんへ何かを要求することはありません。同盟相手としてこれからも良き関係を築いていきたいと思います」

 

 そう明言してようやく、扉間さんの視線攻撃が止んだのです。一先ずは信じてくれたのでしょうか。

 

 次に取り掛かった問題ですが、柱間さんたちの扱いについてです。

 蘇生したお二人ですが、その気になれば魂を再び涅槃に戻すことが出来ます。

 なので、お二人の行く末は本人と木ノ葉の皆さんに任せることにしました。私としてはどっちでも良いので。

 綱手を始めとした皆さんと存分に語らった柱間さんたちは、涅槃に戻る派。

 対して綱手は、このまま留まって欲しい派。

 その他の皆さんはどちらとも言えないといった感じで分かれてしまいました。

 柱間さんたちの言い分としては「我らは過去の人間ぞ。今を生きるこの時代に、我らのような古い忍びは不要」というものです。

 対して綱手さんは、単純にお爺様ともっと一緒に居たいという家族愛からのもの。

 他の皆さんは、「理性としては留まって欲しいけど、死者をこの世に留まらせるのは自然の摂理に反する禁忌」というジレンマから答えが出せない様子。

 

 埒が明かないと感じたのか、柱間さんはこの問題を私に丸投げしてきました。

 

「ここはテンガの意見に身を委ねるのはどうだ? 元々、我らを蘇生したのはテンガであるし、この者の意見も儂、大いに気になる」

 

 その言葉で皆の視線が私に集中したのです。

 私の個人的な意見ですか。参考になるか分かりませんが、そういうことならと素直な気持ちを口にしました。

 

「一言で言うなら古臭い上に頭の硬い考えですね。折角授かった命を自ら不意にする考えが私には分かりません。本来は一度しかない人生を、続けることが出来るのですから、私なら喜んで二度目の生を謳歌します。

 それに、古い人間と言いますが、時が過ぎれば誰もが例外なく古い人間になります。大切なのはその時代に順応することではないのでしょうか。

 あと、死者蘇生が禁忌とされる理由も私には分かりません。穢土転生は分かりますよ。あれは死者の意志を縛る術でもあるので、死者への冒涜にも繋がりますから。

 ですが、死者蘇生が禁忌と言われているのは、その難易度の高さにより高確率で失敗するからと考えています。

 それとコストの悪さですね。一人蘇生させるために三十人の生贄が必要など、明らかにコスパが悪すぎるため、それを戒めるためにもタブー視されているのではないのでしょうか。

 そういう意味では転生眼による蘇生はこれらに当て嵌まらないため例外と言えます。

 それに、綱手さんにとって柱間さんがそうであるように、その方と親しい人物の心境としては生きてほしいと思いますね」

 

 色々と語ってしまいましたが、私の結露を申すなら『勿体ない』です。

 そう告げると柱間さんは大きく口を開けて笑いました。

 

「お主はそう考えるか! なるほど、俺にはない考えだ! それに、ふむ……綱たちの思いを無下にしている、と言われては何も言えんな」

 

「だが我らはすでに死した身。大手を降って表に出ることは出来まい」

 

 そういい、ヒルゼンさんやミナトさん、自来也さんたちを混じえて話し合う柱間さんたち。

 私たちは蚊帳の外でそれを見守っていましたが、ススッと側に寄ってきた綱手が囁いてきました。

 

「……ありがとう、テンジ。私のことを考えて言ってくれたんだろ? 嬉しかったよ」

 

 流石は私が惚れた男だ。そう言ってリップ音を鳴らして頬に口づけしてくると、目聡く気付いた柱間さんが食らいついて来ました。

 

「なんだ、お主が綱手の男だったのか! うむ、お主ほどの男であれば綱手を任せられる! 儂の孫娘を頼んだぞ!」

 

 上機嫌に笑いながら背中を叩いてくる柱間さんですが、ヒルゼンさんたちにとっては寝耳に水でしょう。

 綱手には既に望という娘がおり、父親は長らく不明とされてきましたが、ここに来てその相手が私であるとバレてしまったのです。

 ミナトさんやヒルゼンさん、自来也さんは驚きのあまり声を失い、しばらくしてようやく復活しました。

 両者の立場が立場であるため、隠れての恋愛であること。また我が里では一夫多妻制であり、私はすでに多くの妻を娶っているが、妻たち全員から認知されており、実質身内扱いを受けていることなど、一部を捏造して伝えました。

 当初は苦々しい反応を示していたミナトさんたちですが、両想いであり同意の上で結ばれたことと、同盟里であり木の葉を救ってくれた里であることから、認めていただけるように。

 ただし神隠れの里に移住することは認められませんでした。

 まあ、ここまで譲歩を引出せたのですから良しとしましょう。

 綱手さんに娘がおり良い人もいると知った柱間さんは現世に留まることを即決。兄者の暴走はワシでなければ止められん、と扉間さんも留まることになりました。

 

 

 

1

 

 

 

 結局、箝口令が敷かれ柱間さんたちの存在はここにいるメンバーと、あの場にいた忍びたちのみが知ることとなりました。

 続いてこちらに――というより私に寝返ったアイノたちについてです。

 彼女たちについては予めバックボーンを用意しており、その情報を公開しました。

 暁の襲撃に備えて前々からスパイとして送り込んでいたこと。彼女たちのおかげて彼らの計画や輪廻眼の詳細について知ることが出来たこと。

 そして、最近ペインに動向を怪しまれて密かに監視を付けられていたため、今回の襲撃は自分たちも当日まで知らなかったと伝えたのです。

 暁に対するスパイ活動は木の葉でも行っていたため、すんなり理解を示してくれたのでホッと一安心したのですが、私の安堵を覆してくれたのは自来也さんの発言でした。

 

「思い出したっ! どこか既視感があると思っておったが、その眼にアイノたちが羽織っておる衣! 間違いない、お主……『旅団のテンジ』だのぉ!」

 

 この言葉で場の空気は一変。そんな馬鹿な、と言いたげな顔で固まるミナトさんとは対象的に鋭い目を向けてくるヒルゼンさん、およびご意見番のお二人。

 何のことだか分からず首を傾げる柱間兄弟。

 顔色を変える綱手。

 そして、「もしかしなくても、私たちやらかしました?」と言いたげな目を向けてくるアイノたち。

 重々しく口を開いたヒルゼンさんが、「どういうことじゃ自来也」と訪ねました。

 

「あれは忘れようにも忘れられねぇのぉ。かつて山椒魚の半蔵を即殺し、ワシらを一蹴した男。そして綱手を連れ去った奴を。確かにあの時、彼奴の目にはテンガと同じ転生眼があった。そして、アイノらが羽織っておる服は間違いなく、あの【旅団】を示すもの。

 疑念点はまだまだあるのぉ。旅団の動きが見られなくなったのと神隠れの里が設立された時期はほぼ一緒であるし、そもそも名前からして似通っておる。

 間違いあるまい、神隠れの里のテンガよ。お主があの『旅団のテンジ』本人だな?」

 

「なに? 綱を連れ去っただと?」

 

 自来也さんの一部発言に、反応を示す柱間さん。

 ここまで指摘されてしまえば、言い逃れはできないでしょう。

 いえ、出来るかもしれませんが、それは問題の先延ばしでしかありません。

 打ち明けるには良い機会かもしれないと考えた私は、観念して長年被り続けていた仮面を外したのでした。

 

「流石は『木の葉の狂気』自来也さん、お見事な慧眼です」

 

「その顔……! 本当に旅団のテンジなのか……!」

 

「これは面倒なことになったのう……」

 

「テンジ……」

 

 険しい顔をするヒルゼンさんたちとは対象的に、綱手さんが心配そうな目を向けてきましたので、大丈夫ですと微笑みかけます。

 

「申し訳ありませんテンジ様! 私としたことが、テンジ様にご迷惑をお掛けしてしまうなんて……っ!」

 

「アイナ反省……。ごめんなさい、テンジ様」

 

 私の隣でアイノたちが深々と頭を下げました。

 

「頭を上げてください。遅かれ早かれ私の正体は明かされていました。遅いが早いかの違いですよ」

 

「……兄さん、狩人を招集する?」

 

「その必要はありません。彼らは敵ではないのですし、却って無闇に刺激を与えるだけでしょう」

 

「……わかった。でも何かあったら、容赦なく行くから」

 

 警戒した様子で皆さんの一挙手一投足に気を配り始める小南。彼女には貧乏くじを引かせてしまいましたね。

 ようやく事態を呑み込んだミナトさんが、厳しい目を向けてきました。

 

「まさか、神隠れの里が『旅団のテンジ』が作った里だったとは……。色々と聞かせてもらうよ?」

 

「こうなっては仕方ありません。素直に話しましょう」

 

 そうして私は【旅団】の設立から今に至るまでの流れを、所々捏造しながら説明しました。

 元より【旅団】は戦争孤児や行き場を失った人たちで構成された組織であること。

 いつしか私の目標である『武力に頼らない平和な世の中』に共感を覚えた同士たちが集まり、他里の戦力の弱体化およぴ尾獣たちの保護のため、暁に先じて人柱力を狙い国を跨いで活動していたこと。

 平和な生活を望む移民たちが押し寄せ、気がつけばそこそこの規模に膨らんだこと。

 新たな拠点として、誰もが侵すことの出来ない安寧の地である【空中都市】を作り上げたこと。

 ただ、綱手に手を出したことを切っ掛けにビンゴブックに載ってしまった故、資金繰り及び団員の安全を確保するために、隠れ蓑として現在の【神隠れの里】を立ち上げたこと。

 

 そして私は自他共に認める女好きである上に、惚れっぽい性格をしているため美女を見かけると口説かずにはいられない性質であり、そのためには手段を選ばないこと。当初、綱手を連れ去ったのも彼女を口説くためであり、危害を加えるつもりはなかったこと。

 最終的には本人の意思に委ねるため、現在の綱手との関係は同意の上で成立しており、彼女と同じように他里のくノ一にも粉を掛け過ぎた結果、『目についた女性を誘拐する極悪人』という認識に繋がったと説明しました。

 話を聞いて今にも襲い掛かってきそうなほど殺気を向けてくる柱間さんたちですが、綱手の懸命なフォローもありなんとかその場に留まってくれています。

 

「以上が【旅団】とそれを率いる私の説明となります。どうしますか、ミナトさん――いえ、四代目火影殿。このような私が長を務める里とは、友好は結べないでしょうか?」

 

 頷くのであればそれも良し。綱手や紅、アンコたちの故郷であるが故に気に掛けているのであって、我が里としては無理に木の葉と同盟関係を続ける必要性はありません。

 綱手さんたちは愛国心が強いので木の葉を離れる可能性は低いでしょうが、その時は嘗てのようにひっそりと逢引きするだけです。

 

「あの正体不明の里が、旅団の本拠地か……」

 

「女癖の悪さについてはワシも人のこと言えんが、それにしても他里の忍びでもお構いなしとは……。手癖が悪いってもんじゃねえのぉ」

 

 火影室から空を見上げるヒルゼンさん。視線の先には今も大空を我が物顔で行き来する【空中都市】の姿が、豆粒程度のサイズですが確認できます。

 自来也さんは私の女好きについて呆れているようです。これについては弁解する余地はないですね。

 

「……」

 

 難しい顔で黙り込んでしまうミナトさん。ご意見番のお二人は今すぐ関係を切れと言いますが、彼らと綱手以外は渋面のまま黙考しています。

 同盟を解除して敵国となった場合、我々の戦力がそのまま木の葉に向けられると考えているのでしょう。

 直に、そして至近距離で観戦していたのです。私の有する力が里に向けられた時の脅威を考えると、友好関係をふいにすることに躊躇いを覚えるのも分かります。

 まあ、専守防衛が基本姿勢なので、仕掛けてこない限りこちらから攻めませんが。

 熟考を続けるミナトさんを尻目に、柱間さんは孫娘と向き合いました。

 

「……綱よ。一つ訊く。今お主は、幸せか?」

 

 真剣な目で尋ねてくる祖父に、綱手は力強く頷きます。

 

「はい、お爺様。確かに思う所は無きにしも非ずですが、今の私は胸を張って、幸せ者だと断言できます」

 

「そうか」

 

 綱手の言葉を聞いて静かに目を閉じる柱間さん。その時、珍しく九喇嘛から変わってほしいと頼まれました。

 素直に体の主導権を明け渡すと、私の肉体を借りた九喇嘛は――。

 

『――久しぶりだな、柱間よ』

 

「お主、もしや九尾か」

 

 突然、九喇嘛が表に出てきた事に驚愕する木の葉の皆さん。綱手も驚いてますね。

この子が誰かに話し掛けるのはこれが初めてなので、私も驚いてますが。

 

『俺たちはコイツのお陰でようやく、自由を手に入れることが出来た。コイツを通して人間の中にもまともな奴がいるんだと知ることが出来た。力の塊、抑止力としてしか見てないテメェらと違って、コイツは俺らを本物の孫のように見てくれる。そんなコイツだからこそ、コイツが大切にする里だからこそ、俺たちは護ることを厭わない。

 もしテメェらがコイツの敵になるなら、そん時は覚悟しな。なにせ、八匹の尾獣が相手になるんだからよ』

 

 言いたいことを言えて満足したのでしょう。体を返してくれた九喇嘛にお礼を言うとともに、心の中では感無量でした。

 なにせあの九喇嘛がようやく、心を開いてデレたのですから。

 後で超特大いなり寿司を送ることを決めた次第です。

 彼の言葉を受け取りどう感じたのかは分かりませんが、ミナトさんは決断を下したようです。

 

「木の葉はこれまでと変わらず、神隠れの里と同盟を結ぶことにする」

 

 ご意見番も九喇嘛の言葉に前言を撤回せざるを得ないのでしょう。ミナトさんの決断に否を唱える人は居ませんでした。

 改めて木の葉と神隠れは友好を深めることで合意し、堅い握手を交わしたのです。

 

 

 

 2

 

 

 

 それから色々と話し合った私たちは、夜も遅いからと宿泊を勧められましたが、これを丁重に断り里に帰還することにしました。

 ミナトさんたちに見守られながら、子供たちを連れて里を出ていこうとすると、日向ヒアシさんがやって来たのです。

 複雑な表情を浮かべた実父殿はヒナタさんの目を真っ直ぐ見つめると「帰ってくる気は、ないのか?」と問いました。

 それに対しヒナタはただ静かに一礼だけすると、振り返ることなく私の裾を掴み、歩き出したのです。

 

「……」

 

 その横顔は凛としていますが、不思議とどこか寂しさを堪えているように見えて、思わず頭を撫でてしまいました。

 驚いた顔で私を見上げるヒナタ。黙って頭を撫で続けていると、静かに腕を組んで体を寄せて来たのです。

 それを見た娘たちも我先にと抱きついてきたため、里に着く頃には子供たちという気ぐるみを着ているような気分でした。

 

 こうして中忍試験に木ノ葉崩しの阻止と、長く濃い一日を終えたのです。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 今話題の『推しの子』のSSを読んで、大体のストーリーを把握し、アイの父親の所業に思わずファッキン。

 衝動のまま書いた次回作予告(嘘)がこちら!

 

 

 

 

 

 ――これは、誅伐である。

 

 

「推しの子、ですか。その作品は知らないですね。それで? とあるヒロインを救ってほしいとのことですが、詳しい話を聴かせてもらいましょうか――転生神様」

 

 

 ――幼稚で責任感の無い少年への、誅伐である。

 

 

「星野アイさん、ですね。初めまして。私は八神テンジ。皆のまとめ役を担っています。分からないことがあったら何でも聞いて下さい」

 

「うん! よろしくね野外くん!」

 

「八神です。……ところで、その瞳の星は何かの瞳力ですか?」

 

 

 ――幾多の女性の人生を狂わせ、多くの女性の命を絶たせた少年に対する、誅伐である。

 

 

「アイさんは周りだけでなく自分に対しても嘘をついてますが、何故ですか? そんなに気を張っていては疲れるでしょうに」

 

「……私、愛されたことないから。愛って知らないから……」

 

「愛を知らない、ですか。なるほど……。では、私が教えて差し上げます。愛し愛される喜びを」

 

 

 ――その男に倫理観は無く、正義感も無い。

 

 

「実は私、こう見えて人には負けない特技がありまして。アイさんには特別にお見せしましょう。影分身の術! そして変化!」

 

「すごいすごいっ! 八神くんが増えた! えっ、今度は小鳥さんになった!?」

 

「実は私、昔は忍者をやってたのですよ。ふむ、興が乗って来ました。お次は限界剝離ビームをお見せしましょう! ……あ」

 

 

 ――されど、男には一つの信念が在る。

 

 

「ねえ聞いて聞いてテンジ! 私、アイドルのスカウトされたんだよ!」

 

「ほう、アイドルですか。それは素晴らしい。最近はアイも素の自分を出せるようになって来ましたし、これはチャンスですね。私も微力ながらお手伝いしますよ」

 

「当然でしょ! テンジはずっと私と一緒にいるんだから!」

 

 

 ――気に入った女性は何が何でも幸せにする。そのためならば、手段は問わない。

 

 

「あはは~、デキちゃった☆」

 

「それはそうでしょう。毎日、あれほど体を重ねているのですから、子供の一人や二人身籠って当然です。……ふむ、双子ですか。それも、この未来は……」

 

「どうしたの? 珍しく難しい顔しちゃって。……もしかして、嬉しくない?」

 

「そんなことあるわけないでしょう。とても嬉しいですよ。アイに似て、きっと可愛い子が生まれるでしょうね。…………さて、元忍びらしく、忍んで行きますか」

 

 

 ――悲劇を喜劇に。

 

 

「流石、アイですね。復帰してまだ一週間だというのに、まるでブランクを感じさせません」

 

「えっへっへー! もちろんっ! なんたって私は、一流アイドル! B小町のアイなんだからっ☆」

 

「これは、私も負けていられませんね。私も忍者系ユーチューバーとして一層精進せねば。まずは登録者数百万の壁を超える事からです」

 

 

 ――異界の力を宿して生まれたその男。

 

 

「キャー! アクアもルビーも可愛いー! も~、なんでうちの子はこんなに可愛いの~☆」

 

「それはもちろん、愛する私たちの子だからですよ。愛する人との子は、愛おしく感じるものです」

 

「そっか~。うん、確かに! テンジは私のことが大好きだし、私もテンジのこと大好きだもの! こんなに愛おしく感じるのも当然だよねっ!」

 

「ええ、当然ですね」

 

((……誰かこのバカップルを止めて))

 

 

 ――瞳に浮かぶは転生を司る六芒星。

 

 

「アイ……君が悪いんだ……アイドルのくせして結婚なんかして……」

 

「おや、お客さんですか。とはいえ、刃物を隠し持つのは頂けませんね。危険物の持ち込みは固くお断りしています」

 

「……っ! おま、お前は……っ!」

 

「さて。あなたの記憶、拝見させて頂きますよ」

 

 

 ――今、一人の男が、少女の運命を変えるため立ち上がる。

 

 

「初めまして、あなたがカミキさんですね。正史においてアイの未来を狂わせた元凶さん。……なるほど、随分と多くの女性を泣かせ、悲しませて来たのですね」

 

「――っ!?」

 

「あぁ、抵抗されても面倒なので、金縛りの術を掛けさせて頂きました。さて、アイには直ぐに帰るように言っているので、さっさと済ませてしまいましょう」

 

「――」

 

「……無責任なあなたでも見覚えがありますか。えぇ、そうです。彼女たちはあなたを恨んで死んでいった女性たちですよ。私が冥府から呼び寄せてきました。因果応報、人生と命を弄ばれた方々の贄になるくらいで丁度良いでしょう」

 

 

 ――無垢なる悪意よ、覚悟せよ。

 

 

「……あぁ、すみませんね。もう済んだのでこれから帰りますよ。ほう、今夜はハンバーグですか。それは急いで帰らないといけませんね。――はい、もう着いたので切りますよ」

 

「お帰りなさい、テンジ!」

 

「おかえり」

 

「おかえりパパ!」

 

「ただいま帰りました。アイ、アクア、ルビー」

 

 

 ――これは、誅伐である。

 

 

【推しの子 in TENZI ~マジカル珍宝劇~】

 

 





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