元ネタは電撃ムックシリーズ「思い出たちとの12ヵ月」同梱ドラマCDです。
「やだ、もう戻ってきちゃったの? ちょっと向こうを向いててよ。今お化粧直してるんだから」
彼とのデートで入ったカフェ。軽く食事をした後の輪郭だけ残ったリップを整えていたときだ。
なんだかバツが悪い。
「僕は全然気にならないよ?」
「バカ! あなたが気にしなくても私が気にするの! もぅっ、女心がわからないんだから……」
「デリカシーに欠ける男は女の子にモテないわよ?」
「そう? 僕は晶のこと、何でも知りたいけどな?」
「ふ〜うっ、わかってないわね……せっかくのデートだから、あなたには最高の私を見せたいのに」
ホントは彼にありのままの私を知ってもらいたい。
だけど、女の子には誰にも知られたくない秘密がある。彼にも見せたくない部分がある。
「晶はそのままでも充分魅力的だよ」
「ウフフッ、ありがと……でもね、私は完璧主義なの」
褒められてうれしくないはずがないもんね。自然と頬がゆるむわ。
「そうだ! このリップ、春らしくっていい色でしょう? 私のお気に入りなの。どう?」
「うん。……それもいいけど、そのポーズが色っぽいよ」
「ウフフッ。もうっ、しょうがないわね、あなたってホント正直なんだから」
「気を悪くした?」
「まさか。もちろんそう言われて悪い気はしないけどね。……ありがと」
「ウフッ……知ってる? 女の子って褒められるとどんどんきれいになるのよ?」
「そうなんだ」
「一説には恋をするときれいになるとも言われてるけどね」
「晶は……いま誰かに恋をしてるの?」
不安そうな顔。ボーイフレンドがたくさんいるって言ったのが効いてるのかしら?
安心して。私が好きなのは、あなただけだから……。
「さあ……どうかしら?」
はぐらかすように微笑む。私って悪い女。
「う〜ん、気になるなぁ。あ、混んできたみたい。そろそろ出ようか」
「そうね」
公園を散策する。春の日差しがあったかい。
「あっ!」
彼のほうを見ていて足元を見ていなかったらつまづいた。
よろけた私を彼が抱きとめてくれる。
「晶、大丈夫?」
「うん、ありがと」
見つめあう。
……そしてそのまま、どちらからともなく唇が重なった。
触れあっただけの唇が離れる。
……キス、しちゃった。
あっ、彼の唇がほんのりと赤い。私のリップ……よね。
それを見た途端、急に恥ずかしさが増した。私たち、キスしちゃったんだ……。
「ご、ごめん」
「バカ、なんで謝るのよ。悪いことなんかしてないでしょ?」
「晶、怒ってないの?」
「どうして怒るの? 私はちっともイヤじゃないわ。……まさか今のキス、いい加減な気持ちなの?」
聞きながら、表情がこわばるのがわかった。
「ち、違うよ、僕は真剣に晶が好き」
初めて彼が気持ちを告げてくれた。……バカ、誤解するようなこと言わないでよね。
「ありがと……私もね、あなたが好き」
「晶……」
もう一度、今度は思いを込めて唇が合わさった。