※この作品はR-18です。

朽ちぬ木の葉は色褪せず   作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)

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第九話 希望の裏側

 奈落谷での激闘、そして〝使命〟の終わりを看取った私たちは……癒えない過去を覆い隠していた細雪が晴れた闘技場跡地で体勢を整え、危険が完全には消えていない復路に就きました。

 

 道中のどんよりとした、絡みつくような瘴気は薄れていたのですが……険しい環境で生き延びてきた動物や野盗は依然として手強かったのです。

 

 私はその間もソウリョクが足りないままだったので、アスラ信仰の妙技でぽこべぇが変身した戦士――〝暁〟は大活躍でした。ぽこべぇを変身させると、全力疾走を何分も続けるような疲労感がしつこく残るので多用はできませんでしたが……人喰い熊のつがいに襲われたときなどには、本当に大きな力になってくれました。

 

 強敵を退けた暁は、上双腕で刀をぎゅんぎゅんと器用に回し、下双腕に構えた鞘に納刀します。苦戦が続いた後にようやく臨戦態勢を解いた私とアマネ殿は、東雲色の鬼火を伴いながら宙に浮く彼を見ていました。

 

「写したアスラ信仰の信心……黎明様と暁……三面六臂の神の化身……か。もしかしたら、この子には〝まだ手にしていない力〟もあるのかもね」

 

「……どうして、そのように?」

 

「いや、ほら……変身したぽこちゃんの下の腕、不自然な感じに空いているからさ。『まだ何か持てる』んじゃないかな、って思ったんだ」

 

「……ふむ……言われてみればたしかに……」

 

 私が暁の下腕について考えていると……その強靭な肉体が、ぷしゅるるる、と気の抜ける音とともにしぼんで、凛々しい顔をしていたぽこべぇに戻ってしまいました。それがちょっと恥ずかしかったのか、彼はてれてれとしながら頭を掻いており……「かわいい~!」と興奮したアマネ殿に、全身をわしゃわしゃと可愛がられます。

 

 暁が手にする伝説の宝刀――〝日輪〟と〝月輪〟は、私の背中で預かることになりました。「この二振りは、間違いなくキミを持ち主に選んだ。大事にしてね」と、アマネ殿はぽこべぇに刀を授けてくれたのですが……普段の彼には、大きすぎて持てなかったので……。変身するときには刀の方から勝手に飛んでいってくれるので、とても便利です……さすが、ソウリョク関連の代物といったところでした。

 

 そんなこんなもありつつ、賊を蹴散らし、野生動物を狩り……なんやかんやあって、私たちは無事にモリの国へと辿り着きました。久しぶりに見たように感じた門前では、武家の当主が私たちを出迎えるようにして待っていました。

 

「風真殿、よくぞ御無事で……! そして……〝罪殺し〟への対処、ありがとうございました……!」

 

「いえ、礼はいいとして…………どうして私たちが任務に成功したことを……?」

 

「……つい先日、異国の装束を身にまとった盗賊団が攻め入ってきました。そのときに〝罪殺し〟が現れなかったため……風真殿が事を為してくださったのだと……」

 

「な、なんだって……!? 盗賊団……それじゃあ、町は……!? まさか……!?」

 

 アマネ殿が目玉を飛び出させながら町へと入ります――が、その真剣そのものだった様子の頭が、くねり、と傾げられました。

 

「……特に、何か……壊されたり、奪われたりしてなくない……? 普通に、いつもの日常があるような……」

 

「…………ええ。お恥ずかしい限りでございますが……」

 

「……『恥ずかしい』……? どういう意味ですか……?」

 

「〝罪殺し〟が来ないことを察した民たちは〝いつもと同じように〟……自分の力で、自分の暮らしを守ったのですよ。アマネ殿や他の鍛冶屋が鍛えた武具を用いて……へっぴり腰で、刀に振り回されていた武士たちの力など借りずにね」

 

 アマネ殿が言っていたとおり――モリの国では、最初から、高楊枝を咥えているだけの武士のことなどアテにすらされていなかったようでした。

 

 難しい表情で、それでいてどこかすっきりしたような顔を浮かべていた当主は、ちょんまげ頭を指で掻きながら……私たちを、町の中の一角まで連れていきます。

 

 すると、そこには……きれいな着物を脱ぎ、ふんどし一丁で鍛錬に励む武士たちの姿がありました。

 

「ぎゃあん!半裸のおとこ! 僕に何てモノを見せるんだよ!? ふんどしがッ……ズレて、なんか見えてるんだけどっ!!!!」

 

「アマネ殿、意外とうぶですね……あ、ふんどしが…………あー……」

 

「ぎゃあああああん!?なんかぶら下がって……っていうか、キミは意外と慣れてるな……!?」

 

「…………いや、まあ……そんな騒ぐことではないような……」

 

「ま、まさか……僕より年下なのに、もう、そういう……!? なんて破廉恥な――あ!いつの間にか無言で視線逸らしてるし!!慣れすぎだろ!!日常茶飯事か!?」

 

「さすがに茶飯事ではないですけど……『もっとおっきいのを眼前で見ているしなぁ……』って感じで……」

 

「お、おとな……それが、オトナの余裕なのか……!? ぐ、ぐぬぬ……僕も刀のことばっかりじゃなくて、男漁りでもしておくべきだったかなぁ……!?」

 

「うおっほん……! おのこの身体を見て沸き立つ、うら若きおなごらしい歓談もよいものですが……そろそろ、本題に入ってもよろしいですか?」

 

「あ、ごめんなさい……どうぞ……」

 

「……自分たちの店や家を守ろうと奮起した民草に『刀を持っているだけの木っ端は邪魔だ』、『見かけ倒しが足を引っ張るな』などと事実を言われたのが、彼らもさすがに堪えたようでしてね。〝罪殺し〟が現れなくなったこともあり、『武士が変わらねばならぬこと』への理解も進み……武家の仕事や意義は増えていくでしょう。わたくしどもは、この痛感を経て……どうにか、少しずつではありますが、前に進んでいけそうです」

 

 モリの国で見かけた武士全員の数と見比べると……街角の鍛錬場に居たのは、その半分ほどだったと思います。きっと、勤勉な生活に耐えられずに廃刀したり、はざまの地に逃れたりした者も数多くいたのでしょう。

 

 民としては穀潰しが減って税の有効な利用にも繋がることを期待しているでしょうし、国としては武士や武家の地位向上に励まなくてはならないのでしょう――勤勉な生活を受け入れられなかった、元武士たちの生活を犠牲にしたうえで……より効率良く、価値ある人〝だけ〟を高く評価しながら……新しい社会へ変わろうとしていたのです。

 

 ……イサリビや国の暮らしも同じです。信心や信仰で成り立つ平穏は、社会性を放棄する人たちを含めた〝全て〟を救えているわけではないのです。

 

 

 

 ――『この悪鬼の如き所業に、果たして正義は在るのか』。写した信心と共に――黎明様の葛藤も、私の心身に刻まれたように思えました。

 

 

 

「………………本当に……これで、よかったのかな……」

 

「……いろはちゃん、大丈夫……?」

 

「……いえ……悔いるぐらいなら、最初から事を起こさなければよかっただけの話ですから……私は、自分の選択に責任を持たねば……」

 

 私の行いは……黎明様の永遠に続くだろう呪縛を断ち切り、〝正義〟の苦悩から解放しました。その一方で、当主からの依頼があったとはいえ、多くの人の生活を変えることに加担をした側面もありました。

 

(……でも……あの場で黎明様を解放しないことは、私には選べなかった……! あんなに苦しんでいたひとを……見殺しにするなんて……)

 

 自分の中にある〝理由〟は確かなものでしたが……モリの国の武士からすれば、『屍人が勝手に仕事をしてくれる』という恩恵を、一時の情のためにわざわざ切り捨てる蛮行だったことでしょう。

 

 視野が広がり、知識が深まり……己の世界だけを妄信することができなくなった私の腹には……深く、重たいものがのしかかっていました。

 

(……でも、これが武士の生きる道なんだ……逃げずに、向き合わなきゃ……)

 

 私は自分が行ったことへの責任を受け止めながら、背負った刀の柄を強く握ります。

 

 ……ぎしり、と不穏な感触を滲ませた風真家のあかしは……私の心に揺らぐ〝善悪の境界〟をそのまま表しているようでした。

 

 ……………………。

 

 それからモリの国で数泊した私は、武家の屋敷で竜禪の教えを説いたり稽古をつけたりして、武士の変革を内面から支援していました。

 

 空いた時間には外を警邏し、お店を営む人たちや日々を暮らす子供たちと交流をして……そう、イサリビと同じように〝武士らしい振る舞い〟で過ごしていました。

 

 すると、モリの国で失われていた竜禪信仰が微量に再興したのか、私の身体にもわずかにソウリョクが宿るようになりました。他の要因もあり、〝転移〟ができるほどまで回復した私は……モリの国に別れを告げ、竜禪の祠からイサリビに戻ろうとしたのですが――。

 

「ちょーっと待ったァ! いろはちゃん!僕もイサリビに連れていっておくれよ!」

 

 ――いつぞやのように噂を聞きつけたアマネ殿が、がっちゃがっちゃと大量の鍛冶道具を持った状態で合流したのです。

 

「はぁ……はぁ……あっぶねぇ……! キミって、目を離すとすぐ風のようにどこかへ行っちゃうね……! 神出鬼没とはこのことだ!」

 

「いや、だって……やるべきこともあるのに、同じところに留まり続ける理由もなくないですか?」

 

「うーん、なんていう行動力だ……まあ、間に合ったからよし! これで僕もイサリビで鍛冶屋を開けるよ!」

 

「……イサリビで、鍛冶屋を……?」

 

「そうだよ! キミが話してくれたイサリビの民……彼らが使う農具や鉄器なんかも作れるだろうし、何より、キミの武具を鍛えられる。キミにとって、そんなに悪くない〝お土産〟だろ?」

 

「……でも、いいんですか? 『鍛冶業が盛んだから』という理由で、ここに長いこと暮らしていたのですよね?」

 

「まあね。でも、一番の目的――『〝日輪〟と〝月輪〟を正しい持ち主に返すこと』は果たせたから、もういいかなって。僕、元々は根無し草だからさ!」

 

「そういえば、そんなことも言っていましたね……。まあ、アマネ殿でしたら問題ないでしょうけど……治安を乱すようなことはしないでくださいよ……?」

 

「大丈夫だよ。キミと違って、入った郷に従うことには慣れてるからね」

 

「むぅ……なんか含みがある言い方ですね……。まあ、否定できませんけど……それじゃ、参りますね。後で『やっぱりやーめた!』って言っても遅いですよ?」

 

「おう!そんなことは言わないよ、ぜひよろし――のひゃあ!?」

 

 私はぽこべぇを肩に乗せて、両手が塞がっている小柄なアマネ殿を正面から抱き締め――周囲につむじ風を起こします。枯れ葉を伴う風の流れは、私たちを攫ってイサリビへと向かいました。

 

 眩い光の渦が収まり、辿り着いたイサリビにて――〝転移〟の余韻に浸ったり、イサリビの風景に感激したりしているアマネ殿に少し待ってもらい、アスラ様を祀る竜皇の祭壇を訪れました。

 

 すると、そこでは……ハマのおばちゃんが手を擦り合わせて、熱心に祈りを捧げていました。私が少し躊躇しながら声をかけると、おばちゃんはびょんと跳ね上がって、私の頭からつま先までを何度も眺めて……「おかえり……!」と、温かく抱き寄せてくれました。

 

 抱擁を解かれ、最も長かった冒険の話をいろいろとする中で……おばちゃんは、少しだけ申し訳なさそうにして問いました。

 

「アスラ様は……〝本物〟のアスラ信仰は、どんな様子だったんだい?」

 

「……最後の信仰者であられる黎明様は、とても立派に……己の使命を果たしていました。律神を信じる者として……紛うことなき〝正義〟を貫いておられたのです――ハマコ殿と同じように、とても熱心に……〝主柱〟として断言いたします」

 

 私は下腹部にある八武の紋の上に手を置き、心からの言葉を告げました。

 

 その誠意が伝わったのか……おばちゃんは胸に抱いていたものを鎮めるように、大きな安堵を漏らしました。

 

「……そうかい。それなら……ああ……それなら、よかったよお……。あたしが信じていたのは……嘘とか、間違いでは……なかったんだねえ……」

 

 八武に属するアスラ信仰は失われてしまっていましたが……ハマのおばちゃんが信じ、祈りを捧げ続けた想いはソウリョクとなって竜禪に注がれており……お屋形様にも、私にも届いています――紛うことなき〝本物〟だとわかっていました。

 

 私が、神の使いとして……此の地に据えられた〝主柱〟としての務めを果たしたことで、モリの国での冒険は無事に終わりを告げたのでした。

 

 ……………………。

 

 ……それから後日のこと。四人と一匹という大所帯になったお社で、十分に身体を休めた私たちは、イサリビへと繰り出してアマネ殿の新しい生活のための下地作りを行いました。挨拶回りはもちろんのこと、竜禪の教えやイサリビに敷かれた暗黙の了解などを教えていったのです。

 

 イサリビの人々にも無事受け入れられたアマネ殿は、小さな鍛冶場やたたら場がある産業区域の空き家を改造し、専用の鍛冶工房兼住宅を構えて暮らすことになりました。

 

 施設を作るためには資材がそれなりに必要だったので、レオーニオが保管していた〝お屋形様の戦果〟も使いつつ、どうにか最低限の機能を持たせました。アマネ殿が言うには「まだまだいろいろできる!」とのことだったので、ちょくちょく顔を出していたのですが――。

 

「……ん……いろはちゃん。その宝刀……ちょっと見せてくれる?」

 

 ――突然、アマネ殿が真剣な目つきでそんなことを言いました。

 

 私は、心の臓を素手で握られたかのように身震いをしました。触れてほしくないものに気づかれて生まれた感情の揺らぎを、できるだけ面に出さないようにしながら、父上から受け継いだ刀を手渡します。

 

 アマネ殿は鞘から刀を抜き、光を孕む刃やなかごをじっくりと眺め――小さなため息をつきました。

 

「……この子は……普通の宝刀ではないみたいだね。刃こぼれや破損をしているわけではないのに〝何かが崩れかけている〟……いや、この子は……そもそも、〝刀〟なのか……?」

 

「……え……? どういう意味ですか……?」

 

「うーん……詳しくはわからないけれど、力が弱っているのは確かなんだよなぁ……でも、今の僕には直してあげられなさそうなんだ。その代わりと言ってはなんだけど……これをキミにあげるよ」

 

 宝刀が壊れないように慎重な動きで収めたアマネ殿は、刀と合わせて、不思議な光を放つ勾玉を渡してくれました。

 

「これは……?」

 

「僕がかつて〝還した〟刀の伝説を閉じ込めたモノだよ。何回か試したんだけど、当時の未熟な僕には、その一個だけしか成功できなくてね」

 

「い、いいんですか……? そんな貴重な物を……私に……」

 

「いろいろ付き合ってくれたお礼だよ。キミがそれを身に着けていれば、その子に外因的な力を付与できるはずだ――おそらく、〝似たようなもの〟だろうから」

 

「……??? よくわかりませんが……では、ありがたく頂いておきますね」

 

 私がその勾玉を握ってから鞘にくくり付けると……風真家の宝刀を覆うように注がれたソウリョクが氷の刃を形成し、周囲に霜を舞わせました。

 

「……お、おぉ……! これは……シコウセイ?とトクセイ?が、伝説によって形作られているという……よくわからんアレですか……!?」

 

「たぶんそう!知らんけど!」

 

 ……後でちゃんとレオーニオに聞いたら「それで合ってんで」とのことでした。

 

「もし宝刀や妖刀を見つけたら、僕の所に持ってきてよ。キミがソウリョクで補助してくれれば、勾玉作りも上手くいくと思うんだ――その氷の刃みたいなヤツとか、もっとべつの〝剣技〟とか……各地に残る伝説の数だけ可能性があるはずだよ!」

 

「そ、それは夢がありますし、ありがたいのですが……アマネ殿……どうして、私にここまでよくしてくれるのですか?」

 

 私は、アマネ殿のここまでの行動から不思議に思っていたことを素直に尋ねました。

 

 彼女はどうにも……いや、自意識過剰だったかもしれませんが……私のために、イサリビに来てくれたように思えたのです。

 

 すると、アマネ殿は「僕もよくわからないけど」と前置きをしてから――。

 

「キミのために、『自分にできることをしてあげたい』って思ってるんだ。ふふふっ……キミの勇姿と太刀筋に恋をしちゃったのかもね♪」

 

 ――ぱちり、と片目をつぶりながら笑って見せ、綺羅星のような輝きを飛ばしました。そこにはソウリョクが溢れており――竜禪ではなく、〝私〟に対する信心が宿っていたようでした。

 

 ……………………。

 

 私はアマネ殿と別れて、イサリビが一望できる丘の上まで登りました。以前は苦労して辿り着いた場所も、今では瞬く間に着いてしまいます――自分の成長と時の流れを確かに感じながら……ゆっくりと、しかしながら確実に発展していく〝民の暮らし〟を眺めました。

 

 途方もなく思えた信仰の再興も既に三つを果たしており、お屋形様とレオーニオによってイサリビの平和も無事に守られています。

 

 全てが順調に進んでおり――私の心には、少し浮かれたような、希望に満ちていた気持ちがありました。

 

 ――『このままイサリビをずっと守っていけるのだ』と――根拠もなく、そう思っていました。

 

 

 

 ――――――――。

 

 

 

 ――竜禪特区イサリビと天崇皇洛イワトの間にある旧〝アタの国〟――その場所には現在、マテルたちが本拠地を置くウルヴである〝ネムフリャ〟の街が築かれている。

 

 支配した土地に築かれた鋼鉄の城は、一面に広がる平野を軽く一望できるほどに雄大な姿をしており――見上げる者に〝格〟の違いを植えつける。

 

 最新技術が惜しげもなく使われる城内には、既に国を潰して役目を終えた多くのマテルが暮らしている。当然、聖職者たちを統括する者も最有力拠点として活用していた。

 

「ふーい、たらいまぁ……けぷっ……♡ もうお腹があっちもこっちもパンパンだぁ……♡」

 

 城の再上層に位置するコマンダールーム。その自動で開く鋼鉄の扉の奥から、一仕事を終えたウェニキスが入室する。

 

 白き聖女は恥ずかしい音を口から漏らし、汗やら汁やらで透けている布地にぴったりと勃起乳首や恥丘のカタチを浮かせ……腰には絶頂の余韻を艶めかしく残していた。

 

「ん、はぁっ……♡ あ、あらウェニちゃん、おかえんなさ――うっわ、精液くっさ! ちょっと、今日は何人引っ掛けてきたのよ……?」

 

「二六人。っていうかぁ、マルちゃんもかなり〝増やしてる〟じゃん? 粘っこい発情マン汁とくっせぇ子種汁の混ざったニオイが、前垂れの奥からプンプンと香ってきますがー?」

 

「いや、あたしはヤるべきことを……っていうかウェニちゃん!ここ数ヶ月ぐらいどこをほっつき歩いてるのよ!?」

 

 マルテーサは、豊満な乳房に残った性交の痕跡を手で隠しつつ、脚を組んで性臭をごまかしながら続けた。

 

「ウェニちゃんが『自分でヤる』って宣言したのにまだ残ってる国の数、全然減ってる気配がないんだけど……!? あたし、統括責任者として本国に報告しづらいのよ!?」

 

「んー、あー、まぁ……その辺はボチボチって感じですねぇ、うん。苦労かけて悪いんだけど、ちょっと『やっておかないといけないこと』があってさぁ……ま、大襲撃まで時間もあるし、ウェニの魅力なら余裕で――」

 

「……はあ……〝ウェニキス様〟。お戯れもそれなりにしておかないと……もう、そんなに時間が取れなくなるかもですよ……?」

 

「……んッ……なんか、あったのかい?」

 

 役職としては上に位置する統括者がかけた〝圧〟に、力関係では勝っているはずの者が襟を正す。

 

「……あまりにも計画が進んでないから……ブスジマ様、こっちに来るって」

 

「…………えっ?」

 

「『さすがのお前もウェニキスには手を焼いているようだな』って笑っていたから、大丈夫だとは思うけど……でも……ウェニちゃんは『マ×コ洗って待ってろ』ですって」

 

「げぇーっ……!? ウェニはまたオナホ生活かよぉ……とほほ……あのオッサン、神懸かり的に絶倫なんだよなぁ……♡」

 

「顔が嫌がってねえじゃねえか……ま、そういうことで……ブスジマ様の〝お世話〟はお願いね」

 

「んぃ。って、あれ?マルちゃんはどこでオナホになるんだい?」

 

「アッハハハハっ! 選択肢が狭ェなぁ、泣けてきちゃうワ…………〝そっち〟の方が楽に思えるお仕事、任されちゃってるのよね」

 

「…………ふーん?」

 

 ウェニキスの細めた目が見つめるなかで――マルテーサはため息交じりに、手元にあった報告書を見やる。

 

 そこには〝八武〟の信仰や、ソウリョクによる呪印に関する最新の調査結果が記されており……浅葱色の羽織を着た少女武士の写真が貼付されていた。

 

「……レオたん。肩身が狭い生活も……あと少しの辛抱だからね」

 

 

 

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