※この作品はR-18です。

朽ちぬ木の葉は色褪せず   作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)

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第二一話 神と人とを繋ぐもの

 ソウリョクの暴星と流星がぶつかり、煌めきの嵐がイサリビを包み込んだあの日から、二週間ほどが経ちました。

 

 とんてん、とんてん。がやがや、わいわい。人が働く音とともに、爆風で壊れた家屋の修理が進んでいきます。段々畑では乱れたうねが整えられて作物が葉を美しく揺らし、穢れが吹き飛ばされた海では漁師たちが魚を獲っていました。

 

 私やアマネ殿、レオーニオとその部下の人たちも復興のために注力しましたが、その道のりは大変なものでした――が、人間の心や体は、自分たちが思っているよりもたくましいもののように感じます。どれだけ絶望の底に叩き落とされても、生きている限り、その暗闇から這い上がることができる強さを備えているのです。

 

 再興に励む人々の様子を見ながら、私はイサリビを巡っていきます。困っている人がいればソウリョクを用いて手を貸し、〝みんな〟で『〝今日〟を取り戻す』という目標に向かって歩んでいました。

 

「あら、ヘビちゃ――ヘビ様でねえの。どしたのよお?お祈りの日でもねえのに、こんなとこに用事かい?」

 

 その道すがらで立ち寄った集会所には、拳を振り上げて怒鳴っていたハマのおばちゃんと、やけに頭を低くしていた男衆がいました。

 

「いえ、少しイサリビの様子を見ていただけで……かざまは、決してサボっていたわけではないでござるよ!」

 

「アッハッハ! ンなこたァわかってるさね。おめさんの手と顔を見りゃ、すぐにわかんだよお」

 

 おばちゃんは私の顔に付いていた灰汚れを指で拭い、羽織を汚していた土埃をぽんぽんと払ってくれました。

 

「ほれ。働きもしねえで悩んでるばかりの穀潰し共よ。あたしらのために頑張ってくれとるド偉ぇヘビ様に、言いたいことがあったんでねえか?」

 

「う、お、お……しかし、ハマコよぉ……こんなこと言ったら、ミヤ様に呪い殺されるかもしれねえのに……」

 

「バカタレが!大の男が何をウジウジしとるか!! 巫僧であるあたしに言った時点で、それは竜禪への告解も同然さね!! 覚悟を決めんか!!」

 

 おばちゃんにお尻をどっかりどっかりと蹴とばされた男性たちが……頭をがりがりと掻いたり、もじもじと足踏みをしたりしながら、不安に揺れる目を私に向けました。

 

「……へ、ヘビ様……? あの……その……み、ミヤ様ってのは……竜禪ってのは……ほんとに、信じていいもんなんかねえ……?」

 

「……え……?」

 

「あ、あんなよお……空を真っ黒に灼くようなバケモンを〝神様〟として崇めていいんだろうか……?」

 

「俺たち、それがわからなくなっちまって……いつ、またあの黒い龍が暴れだすか不安で……夜も眠れねえんだよ……!」

 

「……皆殿……」

 

「あ、う……わ、わかってんだ……!わかってはいるんだ……!! あんたに……ミヤ様に、とんでもなく失礼なことを言ってるって……!」

 

「でも……でもよお……!!一度憶えちまった不信感が、寝ても醒めても沸いたままだ……腹の底でぐずぐずに煮えて、煮え続けて……どうしても、消えてくれねえんだよお……!!」

 

 私は、イサリビに向かう途中で見せられた戦火の映像や、変貌してしまったお屋形様のおぞましい姿を見ていたので、その不安な気持ちは痛いほどにわかっていました。

 

 ……しかし……実際に面と向かってその想いを告げられると……正直に言って、胸が痛む思いでした。『みんなのために』と頑張って、氷で焼けた痛みを忘れられない手が……じん、と鈍い不快感を走らせます。

 

 私やお屋形様が善意のままに身体を張って、命を懸けて守ろうとしても……その想いが正しく伝わることも、努力が報われることもないのかもしれません。

 

 それでも、私たちは――。

 

「……他の人に強要するつもりはないですが……かざまは、お屋形様の〝大きすぎる〟善意と優しさを――そして、皆殿が力を与えてくれて、奇跡を起こせる竜禪を信じているでござるよ」

 

 ――強さを持てない人の暮らしを――ただ生きるだけではない〝命〟を守るために、その熱心な願いに応えてあげたい。お屋形様も、きっと同じ想いを抱いていると信じていたのです。

 

「大きすぎる……って……あんな、怖ェ姿になることが、か……? あんなの、乱心と暴虐にしか見えんかったぞ……!?」

 

「……ッ……それでも、お屋形様は……ミヤ様は、イサリビを守ったではありませんか!」

 

 ……さまざまなことを学び、自分や周囲のことを思い改めた私は……この時初めて〝神の使い〟の仕事を正しく理解できたような気がします。

 

 神であるお屋形様は、人の営みに自分から関わることはできません。そして、ただ機械的に人を守っているだけでもありません――だからこそ、〝伝わっていないことを伝える者〟が要るのです。

 

 ――人に神の本質を説き、神に人の願いを伝えること。私はその〝橋渡し〟を担っている者として、近いのにとても遠い対岸同士で生じている齟齬を正す役目もあったのです。

 

 ……そのためには、〝伝えること〟の取捨選択をしなければなりません。善悪の境界線を跨ぎ、己の中に揺るがぬ意志を持ち――責任を背負って判断を下せる〝自分〟が必要だったのです。

 

 国を治めて法と規律を守り、治安を維持する〝武士〟の役目は――正しさを疑いながらも、〝己が間違っていないこと〟を信じることから始まるのです。

 

「たしかに、人間が思い描くような〝神様らしい振る舞い〟ではなかったかもしれません……減衰した力や焦りのせいで、皆殿が苦しむことをしてしまったのかもしれません……けれど……お屋形様は、凶悪な力に呑まれながら……『これまでと同じように』外敵を討ち払っていたはずです……!」

 

 ――自分の言うことが、他の誰かから見たときに正しく思われなかったとしても。『相手が正しいことを言っている』とわかっていたとしても。

 

 私は――『私が〝守りたい〟と思ったものを守る』と決めたのです。そのために、自分勝手な我儘を貫く覚悟を握り、その背に掲げていたのですから。

 

 ――お屋形様の想いを信じる。自分がやってきたことの意味を信じる。そして――『彼らならわかってくれる』と信じるのです。

 

「故郷を失った幼いかざまを、お屋形様と共に育ててくれたイサリビの〝今日〟は続いている……そうではないのですか!?」

 

「…………そ、そりゃあ……そうかもしれねえけどよお……でも、あんなに怒り狂う化け物は〝神様〟なんかじゃ……」

 

「であれば! 〝神様らしい〟と思える素振りを――〝神の為すべきこと〟を貴方の祈りとして、言葉にして願ってください。貴方の本意を、心の底から望んでください――その想いは、必ずかざまたちが受け止めます」

 

「…………えッ……!?」 

 

 私は両手を合わせて、小さく頭を下げました。すると、男衆はギョッとしたのか、何歩も後ずさりをした音が聞こえました。

 

「恥ずかしながら……信仰が弱まった今の我々には、〝全て〟を守れるような力はありません……〝正義〟を誇れる正しさもありません……! ですが、皆殿の〝信心〟に応えるための努力はしているつもりです……イサリビを守り、明日に繋いでいくために必要なことを……この身一つで果たしてきました……!」

 

「へ、ヘビ様…………ぐ、ぐう……!」

 

「……でも、そうだよなあ……。ヘビ様が言ってることも……竜禪も、ミヤ様も……正しいのかはわからねえけど……『間違っている』とは思えねえよなあ……」

 

「……俺たち、ずっと見てきたもんな……でっかいミヤ様がイサリビを守ってよ、ちっこいヘビちゃんがイサリビのために仕事をしていたところを……ずっと……見てきたじゃねえか……」

 

 ……きっと、ですが……私のきれいな言葉だけでは、男衆の疑心を払拭することはできなかったと思います。

 

 けれど……これまで積み重ねてきた行いが……お屋形様が示してきた誠意が、不安の泥で埋もれかけた信心の輝きを解き放ったのです。

 

「そうだよお……。イサリビがヘビ様のおかげでどんどん豊かになっていったのも……やたらめったらと外敵に襲われている場所でも安心して暮らせているのも……全部……〝竜禪〟っていう信仰が――〝神様を信じながら生きる在り方〟があってこそだろうに……!」

 

「う、うっ……!! で、でも、俺たちは……こうして、あんたらのことを不審がってしまった……! もう、後には……!」

 

「……たしかに……神という存在は、皆殿の心の中から生じるもの――信じられなければ、何もしてあげられません。だから……かざまたちのことを、もう一度信じてもらえませんか?」

 

「…………し……信じて……大丈夫なのか……? また、あんな風にミヤ様が暴れるんじゃないのか……!?」

 

「そのときは――かざまが、必ず鎮めるでござる! 皆殿が見ていたように、ズバッとね!」

 

 私は、どすん、と胸を叩いて覚悟を示しました。『信じてくれて大丈夫!』と思われるように、自慢げな顔を保ちつつ――ちょっぴり、頬をぴくぴくとさせつつ……でしたけれど……。

 

 ……慣れないことではありますが……これは、私がやらなければいけないことでしたから。イチから出直すつもりで、心から、皆殿とぶつかってみたのです。

 

「…………ふふ……ははは……アハハハハッ……! バカだな、俺たちは……こんな、娘みたいに育ててきた子に気を使われてよ……ああ、まったくバカみてえだ……!」

 

「…………そうだいなあ……治安が悪い此の地で、俺たちが平穏に暮らせていたのも……ぜえんぶ、ミヤ様のおかげだあ……」

 

「てめえの陣地を守る力もねえオラたちがよ……はざまの地で奪い、奪われるばかりの生き方をしなくていい……そんな毎日こそが、竜禪とミヤ様の〝力〟だった……。だのによ、それが当たり前みてえに思っちまって……」

 

「……元から、あるだけでありがたかったモンなのに……ちょっと失いかけただけで、情けなく揺らいでよ……情けねえ、申し訳ねえ……ヘビちゃん……かたじけねえ……!」

 

 男衆は、私に倣うように両手を合わせて……名乗りながら、静かに祈りを捧げ始めました。これまでの不敬を悔いるように――そして、不信感を覚えることがあったとしても『信じる』という想いを込めて――溢れ出した力強いソウリョクを私に託してくれました。

 

 お社が近いイサリビでは、私を介さずともお屋形様にソウリョクを捧げることができます。それでも、あの方たちは……『私たち』に信心を示してくれていたのです。

 

「……ヘビ様……ほんに、立派になられて……う、うっ……」

 

 涙ぐむハマのおばちゃんからは熱すぎる祈りを捧げられて、さすがに背中がこそばゆくなってしまいましたが……私はその場から逃げることはしませんでした。

 

 一人ひとりの想いと向き合って、示された信心をきちんと受け止めること。そんな、神に通ずる者として最も基本的なことを、ようやくこの身で実行できたのでした。

 

 ……………………。

 

 イサリビの復旧や人々の快復が順調に進んでいる一方で、停滞しているものもありました。

 

 ……その日のお昼過ぎのことです。私は多くの人にお屋形様の行いを正しく認識してもらい、その対価として受け取ったソウリョクを、お腹の中にしこたま溜め込んだ状態でお社に帰りました。

 

「ただいま戻りました」

 

 戸を開けて声をかけますが、応答はありません。よく遊びにくるアマネ殿や、家族同然の暮らしをしているレオーニオは、イサリビ復興に精を出してくれている時間帯なので、当然といえば当然なのかもしれません。

 

 おトイさんやコロ爺からおしつけ――ごほん、ありがたく頂いたお野菜を炊事場の保存庫に入れてから、お屋形様の寝所に参ります。

 

 そこには、先日と同じく――いえ、意識を取り戻した一〇日ほど前と同じように、布団の上でぼおっと座っているお屋形様の姿がありました。

 

「……お屋形様。起きているなら、お布団ぐらい片づけてくださいよ。かびが生えてしまいますから」

 

「……ん、ああ……戻っていたのか、風真……おかえり」

 

「はぁ……反応の段階がいくつもずれているんですけど……。まったくもう、だらしないんだから……」

 

 邪龍と化し、イサリビの空で暴れ狂った悪夢から解放されたお屋形様は……数日のあいだ意識を失い続け、やっと目が醒めたと思ったら、食べるか寝るかの生活を続けていました。なので、ガンダルヴァ信仰とヤシャ信仰の力をお渡しすることもできていませんでした。

 

 最初は、『お屋形様は普段から忙しくしていたのですから、たまにはゆっくりするのもよいのかも』などと考えていたのですが……さすがに、いつまでも悠長に過ごしていられるほどの余裕があるわけではありません。

 

 やきもきした私は、お屋形様の近くに正座して生気の抜けた顔を覗き込みますが……ふい、と視線を外されてしまいました。向いた顔の先に、すすす、と移動しても、手を振ってみても、堂々巡りになってしまいます。

 

 とっても寛大な歩み寄りを無視された私はムッとして、ずるり、とお屋形様の懐に潜り込みます。あぐらをかいている脚に乗り、首に手を回して……蛇のように、捕捉した相手を逃さない体勢で絡みつきました。

 

 顔を寄せて、じっと目を見つめますが……それでも、お屋形様は私から顔を背け、肩を弱く叩いて私をどかそうとしました。

 

「……どうして、かざまから逃げるのでござるか?」

 

「…………すまない、風真……おれは………………すまない…………」

 

 ……お屋形様は、とても気怠そうで、人間臭いゆっくりとした動きで肩を落とし……毎日、同じ言葉を繰り返すばかりでした。

 

 神としての自覚を失ったことへの猛省や……マルテーサに迫られた〝選択〟が尾を引いていたのだと思いますが……その落ち込みようは尋常ではありません。

 

 ……そりゃあ、私も全身の血が冷えるぐらいにはショックでしたし、結果としてとても酷い目には遭いましたけれど……それにしても……という感じでした。

 

「……申し訳ないと思っているのでしたら、私の想いを汲んでくださってもよいのではありませんか……? これ、普通に恥ずかしいんですけど……」

 

「…………おれには、もう……おまえを抱く資格がないのだ……。故に、もう……おまえと肌を重ねることは……」

 

「むっ……『他の〝柱〟の人を抱く資格ならある』とでも言いたいのですか?」

 

「…………それは……」

 

 私はババ上――じゃない、おばあ様から聞いていた話を思い返しながら、敢えて意地悪に問うてみました。

 

 しかし、お屋形様は『痛いところを突かれた』と言わんばかりに視線を落として、布団の上で握っていた拳をぎりぎりと痛めます。

 

「ちぇ~っ、スケコマシの好色家め……! かざまは、資格があるからお屋形様に抱かれたわけではないんですけど……まあ、他の〝柱〟の方と同じように、義務感で抱いてくれればそれで――」

 

「――おまえは、他のおなごとは違うのだ……!! おれにとって……おまえは…………ただの〝柱〟では……ない……」

 

 お屋形様はそう言いながらも、次第に声の張りを弱めていきました。自分で、抱える想いと取った行動が矛盾していたことに気づいてしまったのかもしれません。

 

 けれど……仕方がなかったはずなのです。負けた私を救おうとすれば、お屋形様を信じるイサリビの人々を見殺しにしてしまうのですから……崇められる立場の者として、そんなことはできなかったはずなのです。

 

「……おまえを、選んでやれなかった……男嫌いのおまえが辱められ、穢されるとわかっていながら……救ってやれなかったのだ……!」

 

「………………めんどくさいなぁ、もう……!」

 

「ッ……風真、何を――ッ……!」 

 

 私は、力が入っていないお屋形様の身体を押し倒して、羽織と装束を乱雑に脱ぎ散らかしました。さらしをほどいて乳房を晒し、下着と長い靴下だけという恥ずかしすぎる格好で、たくましい男体に跨ります。

 

「お屋形様は己の運命を嘆くばかりですが……私はまだ生きているし、こうして戻って来れたんです! 死にかけたレオーニオだって救えたんです!! それを喜んでくれてもよいではありませんか!?」

 

「も、もちろん、喜んでいるとも! だが、それとこれとは……」

 

「同じ話のはずですよ! だって、お屋形様は〝イサリビを守った神様〟で……私は、その使いなのですから!! 皆殿はまだ、そのように信じてくれているでござるよ……!!」

 

 私は、強くて熱い光が灯っている下腹部を撫でて、八武の紋の上で習合を待っている二文字を示しました。

 

「イサリビのみんなが……八武の神様たちが、お屋形様と私を信じてくれているのです。ならば……貴方は崇められる神として、私は信念を持つ武士として、やらねばならぬことがあるのではないのですか?」

 

「かざ、ま…………う、ぁっ……!!」

 

 どれだけ口で言い聞かせても埒が明かないと思ったので……私は、実力行使に出ることにしました。

 

「これ、風真ッ……! そのような、一方的に……くっ……うう……!!」

 

「……ふふ……♪ どれだけしおれても、男の本性は隠せませんね……♪ 好色家のくせにずっと不貞腐れていたせいで、もうぱつぱつに張っているではありませんか♪」

 

 いつもはすぐに組み敷かれてあんあんと喘がされてしまうため、屈強なお屋形様を手玉に取れたのは貴重な経験でした。

 

 だるだるに緩んだ寝間着の隙間から手を差し込み、別の生き物のように震えている魔羅を撫でて、風船のようにはち切れんばかりに膨らんだ陰嚢を優しく揉みほぐします。

 

「わ、あ……♪ もう、先っぽがねとねとに濡れて……おなごを孕ませようと、必死に鎌首をもたげていますねぇ……。かざまのおててまでびちょ濡れですよ……♪」

 

 私は、羞恥で真っ赤に染まった顔を近づけて首筋を舐め、耳に湿った吐息を吹きかけ……レオーニオに習った性技を駆使して、お屋形様の身体に熱い汗を垂らさせます

 

「う、おお……! 風真……おまえっ……こんな……くっ……!」

 

「くすくすっ……♪ ここに――おち×ぽに、どれだけ精を溜め込んでいたのですか……? お屋形様のすけべ……♪」

 

「ぐっ――ぬ、ぁああっ……!! 風真っ……先端を、こねくり回すな……う、おおっ……!!」

 

 じゅっこ、じゅっこ、じゅっこ、と。包み込んだ先っぽの膨らみを撫で回し、粘液を塗りたくるように手首をひねり続けます。時たまに竿を撫で下ろし、むちむちの肉皮をたわませるように竿をしごくと、お屋形様はがくがくと腰を振って悦んでくださいました。

 

 ……こんな淫女の真似事など、したくはありませんでしたが……お屋形様にやる気がない以上、私がいつも以上に頑張る必要がありました。

 

 お腹の中でぎゅらぎゅらと渦巻いている祈りの光を、神の元まで届けるために――〝神の使い〟としての役目を、きちんと果たすために。

 

 私はいくつものこぶが浮いている極太の肉竿を何度かしごき上げて、溢れた蜜を塗りたくってから手を離します。お屋形様の着物を、湯浴みの前と同じような手順で脱がせて……自分の下着を脱ぎ去り、濡れた陰部同士を、ぐちゅり、と接吻をするように重ねました。

 

「くっ……ぁ、はぁっ……! お屋形様の陰茎……ぜんぜん、鈍っていませんね……♪」

 

「……っ……これは、鈍るようなものでは……ないからな……。おまえの弱いところと同じだ……」

 

 まだ躊躇いながらも、錆に覆われた情欲に火がついたお屋形様は、少しぎこちない動きで手を伸ばし――私の乳房を鷲掴みにしました。手の平で、膨らんだ乳首を転がしながら肉を揉みしだきます。

 

「っ――は、ぁっ……♡ はぁっ……あっ♡そこっ――ぁあんっ……!!♡」

 

「――ッ……!! か、風真……今の、声は……」

 

 私の喉から漏れ出た〝雌〟の声に、お屋形様が驚いて手を止めてしまいました。

 

「あ、いや……ちがっ……! い、今のは、その……ま、マルテーサに……快楽を教え込まされて……それで……ぁっ……はっ、ぁっ……♡ぁぅ~んっ……♡」

 

 もにゅ、もにゅ、とひかえめに、熱を染み込ませるような手の動きで乳房を可愛がられているだけで……私は、男根を内側からくすぐるような、男体に媚びる嬌声を漏らしてしまいました。男を貪っていたウェニキスやマルテーサと同じような、とてもはしたない声が……自然に出てしまうようになっていたのです。

 

 マルテーサの呪いが解けても、長時間凌辱され続けた過去はなくなっていません。穢れや病を払う奇跡が起ころうとも、敏感になった乳首や、亀頭に触れるだけで包皮がめくれる陰核の粒だち、ちょっとした性感で愛蜜が垂れる花びらは相変わらず熱く疼いてしまいます――心身に刻まれた性感の記憶は、この身に残ったままだったのです。

 

「……お、おれのせいで……おれのせいで……! おまえが、このような屈辱を……! くそう……やはり、おれは……おまえを……!」

 

「っ……お屋形様……! ここで止めたら……私は、お屋形様に『犯してもらう』しかないんですよ……? 我々の伽は……此の地を守るために必要な〝儀式〟なんですから……!!」

 

 私は、乳房から離そうとした臆病者の手を握って繋ぎ留めます。腰を舞踊のようにくねらせて、ちゅく、ちゅく、と蜜肉を擦り合わせて情欲を滾らせました。

 

「はぁっ……く、ぅうんっ……♡ か、かざまが、再興させた信仰の力です……どうか、女体の深奥を小突いて……受け取ってください……! そして……此の地を……イサリビに暮らす人たちを、お守りください……!」

 

「…………風真……いい、のか……? おれは、おまえを見捨てたのだ……それなのに……」

 

「…………〝良い〟とか〝悪い〟とか、関係ないでしょうっ……!? おなごがここまで恥を晒して誘っているのに、貪らぬおのこが何処にいるのですか……!? 人がこれほどまで切に願っているのに、応えぬ神が何処にいるのですか……!?」

 

「…………ッ……」

 

「……かざまはっ……武士としての責務を……神の使いとしての宿命を受け入れて果たします……! だから……その……お屋形様も……ええと……責任、とってください……! それが全てです……!!」

 

 私が熱く潤んだ目から雫をこぼして訴えると――お屋形様は、唾を呑んで目を閉じてしまいました。

 

「はぁっ……はぁっ……まさか、不安なのですか……? この大きいだけの男根で……マルテーサよりも、かざまを気持ちよくさせる自信がないのですか……!? 神様のくせにっ……そんなこともできないなんて、恥ずかしいですもんね……!!」

 

 私の必死すぎる拙い煽りを受けて――お屋形様は、ゆっくりと刮目しました。

 

 開かれた双眸には活力が宿っており、燃えるように輝く意志が視線に芯を通していました。

 

「……そうだな……たしかに、全て……おまえが言うとおりだ……。おれには、神として果たすべき使命があり……男として、応えねばならぬ〝誘い〟があるようだ……!」

 

「ほえっ――きゃっ、わはぁ~んっ!?♡」

 

 お屋形様は、油断していた私の腰を抱き寄せて――ずぶり、と刀身を鞘に埋めてしまいました。

 

 久しぶりで、少し縮こまっていた膣穴がめりめりと音を轟かせながら、お屋形様のカタチに合わせて割り開かれてしまいます。

 

「あっ♡あっ……ぁあああっ……!!♡ ふ、とっ……ぉおっ……!!♡ お、おきゅっ……ごつん、って……ふゃああんっ……♡」

 

「くっ……もう、ここまで濡れそぼっているとは……! 熟れた肉がとろけて、熱い蜜が絡みつく……具合が良くなりすぎているぞ……! ずいぶんと、マルテーサに仕込まれたな……!」

 

 お屋形様は律動を刻むように腰を振り、挿入で腰砕けになってしまった私を……乗馬術を強制的に授けるように、がくん、がくん、と振り乱します。吸い付くひだを掻き分け、粘液にたっぷりと糸を引かせ……鬱積した欲望で、蜜壺を食らい尽くすように抽挿を繰り返しました。

 

「ふきゃっ♡ひゃっ♡あぁあんっ……!!♡ はぁっ……こ、こすれっ……♡ こすれてっ……あ、ぉおうっ……!!♡」

 

 亀頭が見えるほどに肉棒を引き抜いたかと思えば、ごじゅん!と深く突き刺し……それを何度も繰り返して、迸る粘液で布団を濡らしていきました。

 

「どうだ……!これでもまだ、自信のない男の腰振りだと思うか……!! この、最も深いところをさらに押し込めばッ――」

 

「――んぎっ♡ひぅうっ!?♡ おっ♡おひゃっ♡おひゃかたっ♡しゃまっ♡あっ♡あっ――あぁああ~っ……!!♡ は、激しひっ……ひぇええっ……!!♡ ご、ごめんなしゃっ――ひゃぁあんっ……!!♡」

 

「受け取れ、風真っ……! おれが、おまえの過去を上塗りにする……! おまえが望む快楽を与える……! それが、おれの取るべき責任だ……!」

 

「そ、そんなっ♡ことっ♡ しなくてもっ――んっ♡んぶっ……ぅう~っ……♡ ちゅるっ……ちゅ、ううっ……♡んふぅっ……んむぅう~っ……!!♡」

 

 お屋形様に唇を奪われ、舌を絡め取られながら何度も抽挿をされ……びりびりと痺れるような快感に包まれた私は、全身を痙攣させて絶頂に達しました。

 

 お屋形様も最奥で子種を吐き散らし、じんわりと熱を広げながら、胎内に眠るソウリョクをじゅるじゅると吸収したのですが……腰の動きが、まったく止まる気配がありません。

 

「んぶ、ぁっ……あひっ……♡ は、はひっ……ぜひぃっ……♡ お、おやかた、さまっ……おち×ぽ、止めてっ……♡ あーっ♡イくっ……また、イッ――けひっ――あぁああんっ……!!♡」

 

「くっ……まだ、出るぞ……! 風真の肉壺め……ここまで、男を虜にするとは……こ、腰が……溢れる子種が、止まらん……!!」

 

 お屋形様は私の身体を軽々とひっくり返し、繋がったまま四つん這いにさせました。そして、激しい腰遣いで尻肉を叩き、交尾に耽る犬のように射精しながら抽挿を続けてました。

 

「おぶっ♡うっ♡うっ♡んひぅううっ……!!♡ ひ、ひ、ぁああっ……あぁ~っ……♡ も、もうっ♡おなか、いっぱいっ……あっ♡あぁあっ……♡びゅくびゅくって――せーえきっ……あっ♡出てるっ……イッ――…………~~~~っ……!!♡」

 

 お屋形様は雌犬を躾けるように、最奥をひっぱたくような肉槍の烈撃を加えて――私を、とても高い絶頂へと吹き飛ばしました。

 

「ぐひっ……ひぃいっ……!!♡ へひっ……へ、えっ……♡ あ、あおって、しゅみましぇんっ……♡ も、もう、無理……♡ むりっ――いひぃいんっ……!?♡」

 

「ああ……言葉にせずともわかっている……! 貪欲に男根を求めて吸い付くほとが物語っている……さあ、重ねていくぞ……!」

 

「ひっ――あっ♡あっ♡ぁああああああああっ……!!♡ なんでっ……こう、なるのぉおっ……!!♡ あーっ♡だめっ♡またっ……ぎゅっ――きゅうううんっ……!!♡」

 

 ……その後も、日が傾くまで……何度も、何度も射精されて……何十回もの絶頂の果てに、じゅぽるん、とようやく男根が引き抜かれました。すっかり男体が抱える欲望の大きさをわからされたおなごの膣が、ぱくぱくと蠢いて、お腹が張るほどに注がれた白濁液を漏らします。

 

「んへぇっ……へぇっ……♡ し、死ぬぅ……♡ せっかく、イきたのにっ……ん、ぁっ……♡ ぜひっ……ぜひぃっ……♡」

 

 お尻を上に突き出したまま腰をガクガクにさせて布団に突っ伏した私は、そのまま意識を失ってしまいましたが……再興した信仰の力はお屋形様にまとめて渡すことができ……同時に、人の願いを届けることができました。

 

 これでようやく、イサリビの民とお屋形様のずれていた意思を正すきっかけを作れたのですが……そのとき、板挟みに苦労していたらしいマルテーサの心境を、ちょっとだけ理解することができたのでした。

 

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