「う……ぁ……?」
がんがんと、石で鋼鉄を殴り付けたような音が頭の中で鳴り響き……私は、痛む頭を押さえながら身体を起こしました。
「……わた、し……じゃない……かざま……なに、してたんだっけ……? たしか……お夕飯の支度をしてて……レオーニオと、話をしているときに……」
ぼんやりと、再び眠りこけようとする頭を必死に叩き起こし――私は、頭の中に流れ込んできたもの――全身が震えるほどにおぞましい〝公開処刑〟の様子を鮮明に思い出しました。
映像ではなく、〝実際に目の前で起こったこと〟のように感じた光景の中で……ウェニキスは、世界中の人間の前で股間を割り開かれ……陰部に突き込まれた陰茎で、子宮の内部まで凌辱されていました。
女として最大限の辱めを受けただけでなく、彼女の胎内で夢を見続けていた〝明星信仰〟の信徒――彼女が個人の魅力で勧誘した大勢の命たちが一方的に殺され、毒島の力として取り込まれてしまったのです。
空には変わらずお天道様が輝き、柔らかな日差しを届けてくれていたのですが……明らかに日が低く〝戻って〟いました。皮を剥いたイモはひからびて変色しており、丸一日か、それ以上の時間が経っていたことを如実に報せてくれました。
身体が停止していても、時間は確実に経ったということでしょう……お天道様よりも手前には、毒島がウェニキスから奪った力を使って空に広げた三つの光の輪っかが、ごうごうと走りゆく雷雲のように音を立てて居座っています。それは時たまに光の矢を放ち、新たに契約した信徒に力を与えていました。
「う……ぐぐ……ブス、ジマ……! あの野郎……くそぉ……!!」
「っ……レオーニオ……!!」
私よりもつらそうに顔を歪めて、どうにか起き上がろうとするレオーニオの身体を支えます。
その腕は完全に脱力しており……弱々しく握られた拳が震え、凛々しい目からはぼろぼろと涙がこぼれていました。
「ひでぇよ……ウェニ先輩が……あんな、無残に……! 見せしめにされて、信徒を殺戮されて……全部、奪われちまった……!」
性感に脳を焼かれていくウェニキスと、加速度的に殺されていった信徒の命たち。レオーニオは、同じ職務を果たしてきた宣教師として、あのような非道に心を痛めないはずがなかったのです。
「…………レオーニオも、ウェニキスの正体を知っていたの……?」
「知ってたさ……でも、自分で信仰を復活させてたなんて気づかなかった……。でも、あの人なら可能だっただろうな……悪魔の中では間違いなく最強だったんだよ……」
私は、ウェニキスについてお屋形様と話したことや、お屋形様の態度に見えていた違和感について思い返します。お屋形様は以前から知り合いだったようですし……元々、いろいろと知っていたのかもしれません。
そんなお屋形様も、今は国を巡るので精一杯なことでしょう。架け橋である私が竜禪の祠を再興させていない場所――特に西側方面の奥地は、隔絶された竜禪信仰と小さな国が多く、最近はそちらにかかりっきりなのです。
「あのウェニ先輩が、一方的に壊された……ブスジマは、もう……止められないのかもしれねェな……」
「っ……れ、レオーニオ……! そんなこと………………ッ……!」
……私は、レオーニオの弱気な言葉を否定しようとしましたが……ウェニキスが堕とされた地獄を思い返すだけで、身震いが止まらなくなってしまいました。
全ての異教を葬ろうとする野望の大きさと、揺るがない実行力を見せつけられ……レオーニオに希望を示せる自信がありませんでした。
「はは……はははは……! あたしも、あんな風に壊されちゃうのかな……せっかく、生かしてもらえたのに……今度は、何をされて死ぬのかな……。また、すっげぇ……痛いのかな……」
「…………だ、大丈夫だよ……! そんなことは………………そんなことはッ……! かざまが、絶対にさせないから……!」
「……ッ……い、いろはちゃん……」
恐怖に震えるレオーニオの手を強く握って――逆に、私が勇気づけられました。『友達を守りたい』という意志が確かな活力を生んで、絶望という怠惰にかまけようとする身体に鞭を打てるのです。
恐れを握り潰した私は、羽織についてしまった皺をのばして立ち上がります。
「……よし……動ける……! まずは、ウェニキスを助けに行こう……!」
「は……ッ……!? いや、待て……ウェニ先輩は、アンタの……敵だろ……!? なんでそんなことを……」
「敵とか味方とか関係ない! 『ぽこべぇを助けてくれた』っていう話はアマネ殿から聞いているんだよ……それなら、放っておけないよ……!」
もっともらしいことを言った私でしたが……ウェニキスには、個人的にも救いたい理由があったのです。
かつて、何も知らなかった私に説法をしたり、鋼鉄の都市を案内しながらご馳走してくれたり……異教への勧誘というかたちで、口の悪い誘い方ではありましたが、私を『救おうとしていた』のは事実だったからです。
……竜禪信仰のために、たくさんの苦労と苦痛を味わってきた今だからこそ、わかります……。たしかに『彼女の誘いに乗って武士や竜禪の生き方を捨てた方が楽に生きられた』はずで、『ウェニキスの心に嘘はなかった』と信じられるのです。
「レオーニオ! ウェニキスが……その……アレ!されていた場所、どこかわかる!?」
「え……あ、ああ……たぶん、ネムフリャの街だ……。ここから遥か西にあるアタの国の信仰地を潰して立てた〝太陽の祭壇〟が見えてたし……」
「ネムフリャの街……アタの国だね? ありがとう、レオーニオ! かざま、行ってくるでござる!」
私がレオーニオに頭を下げて、木彫りの像を通じてお屋形様に報告し……すぐに出立しようとすると――息巻いた手を掴まれてしまいました。
「待て……! 一人で行くつもりか……!? アタの国って、ここからだとめちゃくちゃ遠いんだぞ……!?」
「……レオーニオも一緒に行ってくれる? あの乗り物を使って、治療の機械とかを持ってきてくれたらすごく助かるんだけど……」
「……ッ……そうしたいのは、やまやまだが……今から準備をしても、すぐには出撃できねぇ……! それに……棄教してないウェニ先輩を助けるのは、イサリビにとって……竜禪のプラスになるのかは、まだ……」
「そういうのは後で考えよう! レオーニオは後から来て! かざまが先んじて活路を切り開いておくから!」
「あっ、おい……!! いろはちゃん……!!」
私はレオーニオの制止を振り切り、草鞋を履いて外に出ました。普段と変わらぬ風が穏やかに吹いていましたが、ざらざらと、私の心にさざ波を立ててきます。
その焦りを踏み潰すように、境内を全速力で駆け抜けようとしたとき――しばらくイサリビに顔を出していなかったぽこべぇが、突然、するりと進路に入り込んできました。
「ぽこべぇ……!? もしかして、貴方もウェニキスの処刑を見たの……!?」
ぽこべぇは重々しく頷いて、アマネ殿から授かった小刀の柄を握ります。その仕草は、私に助力してくれる意思を示したように見えました――。
「ありがとう、ぽこべぇ……! 一緒に、ウェニキスを助けに………………え…………?」
――ですが、彼は……その小さな身体が大きく見えるほどに全身を震わせて……抜き身の小刀の切っ先を、私に向けました。
「……ぽこ、べぇ……? なに、してるの……? そんなこと、遊びでもしちゃだめ……危ない、から……!」
目の前の光景を信じられず……息を乱した私が近寄ろうとすると、ぽこべぇは刃を握る手の力を強めて……脅しをかけるように、大きな振り抜きで風を断ちました。
「……えっ……え……? ぽ、ぽこべぇ……どうしたの……? かざまの……私のこと……嫌いに、なっちゃったの……?」
ぽこべぇは、私の言葉に心を痛めたようでしたが……その苦痛を糧にするかのように、私と対峙し続けます。
……身体を震わせて……大粒の涙をこぼして。どれだけ強い力で小刀を握っても……切っ先が乱れてしまうほどに、大きな感情に揺れながら。
「……きっと、命を懸けて助けたアンタに……これ以上、危険な目に遭ってほしくないんだろうよ」
いつの間にか私の隣に立っていたレオーニオが、ぽこべぇに真摯と慈愛の目を向けます。
「もし、あの子もウェニ先輩の凄惨な姿を見たんなら……心配するのは無理もねえ。次に被害に遭うのは〝一番目立つ行動をとった異教徒〟だろう……竜禪に肩入れをすればするだけ、アンタが不幸になるってわかってるんだろうよ」
「そんな……! ぽこべぇ、違う……大丈夫だよ……! かざまも、カフの国でいろいろあってね……変われたんだよ……! 不幸になんかならない……これが、かざまの生きる道なんだよ……!」
「…………っ……」
「……かざま……強くなったよ……!! だから……心配しないで……ね……? 頑張るから……みんなのために、務めを果たすつもりでござるよ……!」
私が力強く説明しても、ぽこべぇは涙を散らしながら首を横に振るだけでした。その腫れた目が、やけに私の手を気にしている様子を見て……氷で焼けた深手のことを案じてくれていることがわかりました。
「………………なるほどなぁ……」
頭の一部だけ変身をして、ぴん、ぴん、と跳ねた獅子の耳でぽこべぇの意思を聞き取ったレオーニオが……ぽん、と私の肩を叩きます。
「……いろはちゃん……アンタは……竜禪のために頑張って、何を得られた?」
「え……? それは……イサリビの平穏とか、発展とか……八武信仰の遺志を読んで、過去の遺恨を清算できたとか……お屋形様のお力添えとか……? たくさんありすぎて、わからないよ……それぐらい、得るものがあって……」
「その中に、『自分が得をしたこと』ってどれぐらいあった?」
「……得……? それ、は…………武士の生き様とか、新しい力とか……」
「それも結局『竜禪のために使うもの』だろ? 『いろはちゃん自身が得したこと』だよ――ぶっちゃけ、あんまりないだろ?」
「………………えっ…………あ…………!」
レオーニオにそこまで言われて……私は、ようやく……ぽこべぇが私を止めようとしている理由の片鱗に触れることができました。
私が身を粉にして努力を重ねて……一番大きな恩恵を得るのは、たしかに、私ではないかもしれません。その努力に見合うものが得られているのかは、私自身も計りかねていることでした。
……だからこそ、あんなにも迷って……一度、心が折られてしまって……何かを信じられなくなったり、辱められたりしたのですから。
「その子は今、竜禪に対して強い疑念を抱いてる。『これ以上はいろはが苦しむだけだ』と思ってる……ま、あたしも同じ気持ちだけどな」
「っ……レオーニオも……?」
「ああ。アンタは自分を犠牲にしすぎて麻痺ってるかもだけど……普通、他人や義務感のための自己犠牲を〝良し〟とする人間なんていねえよ」
「…………でも……その苦痛を受け入れないと戦えないし……」
「……わかってる……でも、その覚悟は『狂気の沙汰』と言っていいほどだ……。そこまでしてやってんのに、あの災禍ではイサリビの民が逆に竜禪を裏切ろうとした……あんな仕打ちを見りゃあ、誰でもアンタの未来を心配するだろうさ」
……ぽこべぇは、私と多くの苦難を共にしてくれました。だからこそ……『その道の先に幸せを期待できない』と思ってしまっていたようです。
そのために……恥辱にまみれ、苦しみ続けた命の恩人を切り捨ててでも――もっと大事な私の行く末を案じて、止めようとしてくれていたのです。
「…………ごめんね、ぽこべぇ……!」
私のために、全身全霊で私と戦う覚悟を決めてくれたぽこべぇに深い情念が湧きましたが……私は、その気遣いに甘えることができませんでした。
……もう、覚悟を決めたのです。自分一人になったとしても、大好きな人たちを守るために――私は、戦い続けると。
「かざまは、もう止まれないよ……! みんなを見捨てて……守りたい人を守らずに……自分だけの安寧を選ぶことなんて、できないから……!!」
心を熱くする温かさを噛み潰し……私はぽこべぇの隣を素通りして、お社の石段を駆け下りました。
神馬を呼び出して鞍に跨ったところで……ぽてぽてと四つ足で走ってきたぽこべぇが、私の背中に張り付きます。
「……ぽこべぇ……いいの……?」
羽織を握る手が、いつもより強い力でもどかしさを伝えてきます……『言っても無駄だから』という諦めの気持ちでいっぱいだったのでしょう。
「…………ウェニキスを助けよう!! 竜禪は関係ない……ぽこべぇを助けてもらったお礼、言わないといけないから!」
ぽこべぇは踏ん切りがついたのか、私の背中をぽん!と叩きました。私たちは、光の蹄を高鳴らせて、深手を負ったウェニキスが待つ旧アタの国――ネムフリャの街へと向かったのです。
……………………。
神馬に大量のソウリョクを与えて、雲行きが怪しい空の下を全速力で駆らせます。私のソウリョクの扱いが上手くなったからなのか、お屋形様に習合した信仰が増えたからなのか……出立から半日も経たないうちに、アタの国の跡地が見えてきました。
その地は、周囲の空が黒々とした雷雲で閉ざされていても、鋼鉄の高い壁で囲われた内側だけは神々しい陽光が差し込み続けています。立場の差別ではなく、単純な〝弱肉強食〟を表しているかのようで……逆に清々しく思えるほどに対照的な光景。それらが一つの視界に映っているのが、とても奇妙で不気味でした。
「あの都市……まったく隙が無い……! どうやって入り込もう……?」
まだしばらく距離があるというのに、既に若干見上げないと視界に収まらないほどに巨大な都市は、堅牢な防衛体制が敷かれていました。侵入者を照らすいくつもの大きな光の眼に、ぎらりと黒光りする無数の砲塔……空には、ぱらぱらと翼を回している機械の小鳥が巡回しています。
私とぽこべぇは馬から下り、できるだけ目立たないように、広大な土地に広がる豊かな農地を進み……途中に打ち棄てられていた竜禪の祠で手短にお参りをしました。ぽこべぇは祠に近づくこともできず、私を心配そうな目で見つめるばかりです。
しかし……私がどれだけお祈りをしても、祠にはソウリョクが宿ってくれません。何者かに力の流れが堰き止められているかのように、うんともすんとも言わないのです。
「……ダメかぁ……! ごめん、ぽこべぇ……おまたせ……!」
私は〝何かあったとき〟のための保険を諦め、ぽこべぇと合流して周囲に注意を向けながら道なき道を進みます。壁付近にあった詰所の跡地らしき廃墟の中で、崩れた壁から続く地下道を抜け……光が差し込む出口から顔を出すと――。
「……う、わぁ……!?」
――そこには、異世界のような景色が広がっていました。広大な常晴の都市には、煉瓦と鉄で組まれた白みの多い頑丈な石造りの建造物が立ち並び、甲冑を身に着けた兵士や洋服を身にまとう住民が歩いています。あちこちから異国の香りが詰まった風が吹いており、違う世界に転がり込んだような気分でした。
喧噪の中ではあちこちで商いが行われ、食料品や雑貨を売り、欲する声が混ざり合います。それら全てを祝福する鐘の音が響き渡り――以前に見た異教の都市より数倍も裕福で、数十倍も混沌とした風土が、一つの世界として完結したような気がしました。
「此処が、ネムフリャ……とんでもなく栄えてる……!」
立っているだけで雰囲気に呑まれてしまいそうな、規模も存在感も大きな街に圧倒される私たち。特に異教への不安を覚えていたぽこべぇは、イサリビとの差を痛感して、身震いをしているようでした。
「……ぽこべぇ……お外で、待ってる……?」
私が気遣うと、彼は全身の毛を逆立てて飛び上がり……ぶんぶんと首を横に振ります。異教への恐れも相当でしたが、それでも『ウェニキスを助けたい』という気持ちの方が大きいようでした。
都市の中には此の地の着物を身にまとっている人も居たので、私は羽織を抜いでぽこべぇを包んで胸に抱き、できるだけ〝おのぼりさん〟っぽく見えないように振る舞いながら都市の中を探索しました。
どれだけ進んでも道路や路地が続くほどに広くて、どこもかしこも騒がしい……そんな敷地の中をしばらく歩いていると……どこからか、大きなざわめきが聞こえてきました。
周囲を警戒しながら聞き耳を立てて、音の発生源に向かうと――私が大嫌いな音が……女性の声と汚らしい音が混ざり合う、恥辱の泥音が不快を与えてきました。
「んーっ……!!♡ん、ぶぅうっ……!!♡ うぎゅっ♡ううっ……ふぐぅううんっ……!!♡」
(……この声……まさか、ウェニキス……!?)
くぐもった悲鳴が聞こえたときには、私の身体が既に反応していました。地面を蹴って壁を登り、高い位置の段に張り付いて――男たちが欲望を滾らせて作った人混みの中心地を見抜きます。
石造りで水のせせらぎが巡る美しい広場の中心地には……光の呪印が刻まれた鋼鉄の断頭台に四肢と首を固定され、ぼろ切れのようになった聖なる白い装束を血で汚し……今も男たちに辱められているウェニキスの姿がありました。
「いやー、柔らかくて張りのええ乳房だぁ……! すけべな乳首も乳輪からよう勃っとるわい!」
「おう、おう! こんなのを〝使って〟いいたぁ、ブスジマ様も太っ腹の三段腹だぁね……! ひたひたに濡れたほとの肉が、よう絡むっ……おお、出っどぉ!」
「こっちも出るぞぉ! そらっ……異教の心を浄化するんだぁ……うっ……で、出るっ……!」
「んぐぅううううううううううッ!?♡ ぐっ♡ぶふっ――ふぎゅうううっ……!!♡ ふ、ぐっ……んぐううっ……!♡ フーッ……フーッ……!!♡」
男根で串刺しにされたウェニキスが、乳房を見世物のように揉まれながら、口内と秘部を同時に穢されます。ずろり、と引き抜かれた陰茎には大量の白濁が付いており……赤く腫れた花弁から垂れた屈辱の汁と色を重ねていました。
「ぜーっ……ぜーっ……♡ げ、ふっ……く、そっ……この、カスチ×ポども……っ……!! 私に……こんなことをして……ただで、済むと――おッ♡お……ごぉおおおっ……!!♡」
「まだそんなこと言ってんのか! もうお前は終わってんだよ……! 減らず口はしっかり魔羅で塞いで、浄化してやらんとな!」
「生きててえらい! 生きててえらい! ふーっ!出産後のゆるゆるマ×コが吸い付いて気持ちいいぜー!!」
「うう、早く二週目まで来ないかな……! 普通のマテルとは段違いの極上な女肉で、雑に精液を吐き捨てられるなんて最高すぎるぜ……! ブスジマ様、最高……!いくらでも忠誠誓っちゃうよ……!!」
「ふぐ、ゅ……っ……♡ う、うぐうっ……んぐぅうううっ……!!♡」
ウェニキスは無限に続く凌辱地獄の中で、何度も意識を飛ばしながら……頑丈な造りの身体のせいで、死ぬこともできないでいるようでした。
その最大限の恥辱を、都市で暮らしている宣教師たちは見て見ぬふりをし……女性への乱暴を平然とはたらく毒島への反抗心を、すっかり失くしてしまっていたようでした。人間は、抱えた理不尽や不快の全てに立ち向かえるほど、強くはないのかもしれません。
六つの肉穴が抉られているウェニキスの背中には大量の汚濁が浴びせられており、長いあいだ辱められていたことが見ているだけでもわかります……あまりにも……あまりにも、酷い光景でした。
周囲の人間が皆、この凄惨な状況を受け入れていたとしても……私は、この巨悪の所業を見過ごすことなどできませんでした。
「貴様らッ……ウェニキスに、何をする……!!」
私は、抜刀しながら群衆の中に飛び込み――ソウリョクの刃で、ウェニキスを取り囲んでいた男たちを斬り抜けます。
「ぐわあっ!? な、なんだ……斬られたのに、痛くねえ……でも……あ、ああ……!」
「ち、チ×コが縮んでいく……な、なんでぇ……!?」
「ウェニキス……! まだ、生きてる……!?」
「うっ……ぁ……? げふっ……オマエ……なんで、こんな所に……!」
「……返事ができるならよし……! ちょっと待っててね……!」
私は下半身を丸出しにしている男の尻を蹴っ飛ばしながら、ウェニキスを守るように刀を構えます。その隣で、怒りに震えたぽこべぇも武士の気概を見せていました。
「こ、こいつ……刀を持ってやがるぞ!武士だ!! やっちまって――ああ!ヤッちまえッ!!」
股間と鼻息を荒ぶらせた男たちが、私に向かって肉欲を弾けさせるように飛び掛かりました。周囲で刃物や銃器を構えた敵対者も含めて、両手で捌くには数が多すぎました。
「……ッ……!! ぽこべぇ……〝暁〟に……!!」
刹那の中で両手を合わせ、私はぽこべぇの身体にソウリョクを注ごうとしました――が、何故かその想いは届かずに、光の粒子のまま霧消してしまいました。
変身できなかったぽこべぇも、慌てて自分の両手と身体を見やるばかりで……私の背中にある〝日輪〟と〝月輪〟はぴくりとも動きません。
「くっ……!! なら、かざま一人でもッ……!!」
私は身体をひねって旋風を起こすように刃を滑らせ、光の刃で欲望を切って回ります。〝蛇腹舞〟で石畳の上と岩壁を鞭打つように跳び回り、次々に、ばったばったと男をなぎ倒していきます。
「だッ――ぁああああああああああああああッ!! 近づくな……ウェニキスに、近寄るなぁあああああッ……!!」
白刃の残像を無数に刻み、大嵐のような剣風を吹かせて男たちを無力化していきます。出し惜しみはせず、全力で柄を握って苦難に立ち向かい続けました。
「うおおおおっ!? なんだこいつ……化け物みたいな動きをしやが――ぎゃああああっ!?」
「んごごっ!! へ、へびっ……蛇のバケモンだ……!! 睨まれたら、チ×ポがカエルみたいに縮んじまうんだ……!!」
やけに身体が重く、ソウリョクの消費も激しい戦いでしたが……どうにか、襲い掛かる男たちの頭数を減らすことができました。
再びウェニキスを背に守った私と、じりじりと、熊から逃げるように距離を取ろうとする男たちの間で……ついに、勝敗が決しようとしています。
「はぁっ……はぁっ……!! 早々に……立ち、去れ……!! このまま、去勢させられたいのか……!? 本当に……はぁっ……斬り落とすぞ……!?」
刃をすらりと陽光に滑らせて、丸出しでしょぼくれた陰茎に近づけます。すると、男たちは顔を真っ青にさせて立ち退きました。
「ひぇっ……!! く、狂ってる……怖すぎるっ……!! お、おたすけっ……お助けぇっ……!!」
「く、クレイジーッ……!! 都市の中で武器を振り回すなんて……ド田舎暮らしの狂人に違いねぇ……!!」
「い、生きててえらい……生きてて、えらいんだぁ……わああああ……!!」
陰嚢をぶらつかせた男たちは豚のように四つん這いで煉瓦道を這いずり、周囲の群衆と肉団子のようになって逃げ去ってしまいました。
私はすぐに枷を破壊し、ねとねとに汚れて弱りきったウェニキスの身体を介抱しますが……その身体は、凄惨なまでに穢されていました。天使の翼を根元から引き千切られた背中からは子種が混ざった血が垂れ落ち続け、口からは男の股座のようにすえたニオイが漂い……腫れるほどに使い込まれた女陰からは、とめどなく白濁が滴っていたのです。
ぽこべぇは、命の恩人が酷い目に遭わされた様子を直に見て……呆然としながら、深い傷を負っていたようでした。自分の体毛が汚れることも厭わずに、小さな手で冷えた身体を温めて、ウェニキスの傷心に寄り添っていました。
「……オマエ……本物の、バカだな……」
「そうだよ、馬鹿でいい。だから、一緒に帰ろう……ウェニキス……」
「………………ほんとに…………すく、えない……なぁ…………」
ウェニキスは安心できたのか、気を失うように眠ってしまいました。その寝息が比較的安定していることに胸を撫で下ろすと――カンカンカン!と金板を打ち合わせる警報が鳴り響きます。
「居たぞ!侵入者だ!! ブスジマ様からの〝お恵み〟が奪われようとしているぞ!!」
「ッ……!? ぽこべぇ、逃げよう……!! ウェニキスを庇いながらじゃ戦えないよ……!」
私は応急処置用に持ち歩いていた神酒を、穴だらけの背中に浴びせてから、ウェニキスをお姫様のように抱きかかえます。ソウリョクを使いきる勢いで、すぐにその場を去り――街の外に脱出し、レオーニオと合流しやすそうな場所へ全力で逃走しました。
……私たちが辿った道には……ぽこべぇが落とした悲哀の雫と、ウェニキスが垂らした敗者への仕打ちの跡が、ぽた、ぽた、と残ります。
その痕跡は――まるで、『その先には絶望以下の結果しかない』と示された……狭くて暗い一本道のようでした。