※この作品はR-18です。

朽ちぬ木の葉は色褪せず   作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)

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第二五話 つんでれウェニキス

 ネムフリャの街からウェニキスを奪還した私たちは、レオーニオが乗ってきてくれた機械ですぐにイサリビへと戻りました。

 

 帰投するなかで、レオーニオや部下の人たちが一生懸命にウェニキスの治療をしてくれたおかげもあり、命に別状がないところまで快復できたそうですが……『しばらくは絶対安静』とのことだったので、お社で看病をすることになりました。

 

 レオーニオは『〝れおんきゃんぷ〟や研究所でも面倒は見れるぞ』と言ってくれたのですが、神酒によって背中の深手も塞がっており、特別な治療をするということはなさそうだったので……お屋形様の意向もあり、客間をウェニキスの療養所にしたのです。

 

「イモマ×コ、りんご食べたい」

 

「はいはい、今、皮を剥いてますからねぇ」

 

「イモマ×コ、おしっこ」

 

「はいはい、かざまはおしっこじゃないよ」

 

「イモマ×コであることは認めんのかよっ!」

 

「認めてないよ!? っていうかもう元気じゃん!絶対安静じゃなかったの!?」

 

「…………あ…………もれる……あ……あ……」

 

「うっそ、おしっこはホントなの――待って!?ちょっ……もうプルプルしてる……!す、すぐ用意するから、あとちょっと待ってよぉ……!! おけ……桶、どこぉ!?」

 

 ……そんなこんなで……ウェニキスは、一週間程度で〝病床に伏す人〟っぽく振る舞えるほどには快復していました。まだ動くには介助が必要ですが、なかなか意識を取り戻さなかった頃に比べたらかなり良くなった方なのです。

 

 ……ここに至るまで、いろいろとありました……。より早い快復のために、お屋形様がウェニキスの口に子種を注ぎ込んだり、私がウェニキスの顔に跨って〝神酒〟を直飲みさせたりと……彼女が性的な儀式に慣れていなければ、いろいろと問題がありそうな療養の日々だったのです。

 

 ……まあ、あれだ……ウェニキスは、舌遣いがとても上手でした……。お屋形様は「ぬう! これは魔性の口壺……!」とかアホみたいなことを言って無様にヘコヘコと腰を振ってしまうし……私も、まあ、その……必要以上に〝神酒〟を出してしまって、ウェニキスの顔をべちゃべちゃにしてしまうし……とにかく、大変だったのです。

 

 ……え? いや、だから……普通に上手かったってば……『どれぐらい?』はさすがにライン越えてるだろ……!! えー……いや、なんか、こう……舌でほじくられて……先っぽをしつこく舐められて、ねちっこくしゃぶられて……つい、ウェニキスの顔に押し付けちゃったけど……!? それが悪いのか……!?

 

「お、おぅ……ふぅ……はぁ……はぁ~……♡ あっ……♡あぁ……♡」

 

「へ、変な声出さないでよ……! っていうか、ウェニキスのおっぱいが重すぎるんだけど……!」

 

 私が背中側から乳房の下あたりを支えてウェニキスを立たせ……まるで猫を持ち上げるときのような体勢で、がっぱりと脚を開いたウェニキスが中腰で用を足します。

 

 大きな桶に、ばたばたばた、と打ち付けられていた雫が……いつの間にか、ちょろちょろと小川のような水音に変わっていきました。

 

「ねー、まだぁ……? おしっこ、全部出たぁ……?」

 

「あっ……♡ も、もう、ちょっと……♡ ずっと、我慢してて……んーっ――あッ!?いたたたっ……! ヘンにいきんじゃった……おま×この奥が痛い……!」

 

「まったくもぉ……ちょっと、お腹押すから……痛かったら言ってね……」

 

「きゃぁんっ!?♡ あっ……なでなで……♡ はぅ……あッ♡でる……でるっ……♡ あんっ……あぁんっ……♡」

 

「ねーえー! もうわざとじゃんそれぇ……! 嫌がらせするなら、もう手ェ放すよ!? お尻、おしっこまみれにするかぁ!?」

 

「あ、ごめんっ、こんなシャワーもない場所でそれは勘弁っ……あっ……やばっ……♡ おしっこ、気持ちいいのはホント……あっ♡あっ♡……そ、そこ、押したらっ……はぁああっ……!♡」

 

 じょろろ……しゃあああ……と、がに股で桶に跨らせているウェニキスの身体から、透明なおつゆが尿のように漏れ出てしまいました。

 

 さすがに潮失禁は恥ずかしかったのか、ウェニキスはしゅんとしおれて静かになりました。私がお股を拭いてあげて、お布団に寝かせるまで、珍しく一言も発しませんでした。

 

「…………どうして、敵であるウェニにここまで尽くすんだよ……?」

 

 私が手を洗ってから部屋に戻り、少し乾いてしまったりんごを再び手にしたところで……ようやく、ウェニキスがこちらを見て呟きました。

 

「昨日も言ったでしょ? 貴女はぽこべぇの恩人だし……かざまも、貴女にはお世話になったから。そのお返しでござるよ」

 

「……へ、へーんだっ……! 良い子ぶりぶりっ子なんて、ただクサいだけですよ……! うんちかよ、オマエ……くっさ~!」

 

「尋常じゃないほどおしっこしたばっかりの子が言うことですか。はい、りんご剥けたよ」

 

「…………ん、ぁ……!」

 

「……まったく……自分で食べる練習もしないとだよ……? はい、あーん……」

 

 ウェニキスとの下品な会話にも慣れてしまい、私の心はいろいろとスれ始めていたように感じましたが……不思議と、その時間は心地のいいものでした。

 

 童顔なウェニキスは黙っていれば美少女ですし、悪態をつかなければ素直に可愛らしい声をしています。大きくて可愛い子供と考えれば……まあ、それなりにこの状況を受け入れられたのです。

 

 しゃりしゃりと、彼女の鋭い犬歯にりんごの果肉を押し当てて、唇に伝った果汁を拭ってあげます。

 

「んむ、ぁ……! う、ウェニを赤ちゃん扱いするんじゃないよ……! 口ぐらい自分で拭けるってば……!」

 

「りんごを食べさせておきながら何を言うか……。まあ、赤ちゃんはおしっこをしてエッチな気分にはならないと思うけどね……」

 

「ぐへっ……おっ……まえ……! 今のは……ちょっと、キいたぞ…………ぐすん……」

 

「あ、ごめん……ウェニキスが冗談として許容できる範囲、意外と難しいね……めんどくさいな……」

 

「……めんどくさくて悪かったな……! ガチで恥ずかしいと……なんか、なんでも感じちゃうんだよ……! オマエだって潮ぐらい噴くだろっ!?それと同じじゃい!」

 

「いや、何も言ってないし、何も言わないけど…………なんか……わんちゃんみたいだね」

 

「人のイキ癖を嬉ション扱いすんなよぉ!? くっそぉっ……オマエ……マジで覚えてろよ……!?」

 

 力を失ったとしても、まだ生きている――そんな彼女と他愛ない話をすると、ウェニキスを助けられたことへの安堵を得ることができましたし……毒島が見せた、暗雲立ち込める未来に、わずかな光を見つけられました。きっと、私も先行きが不安だったのです。

 

 しかし……いつまでも、この温もりに包まれたままでは何もできません。私は軒先から覗く空を見やり、広大な光の輪よりも手前に架かる〝橋〟の一つを捉えました。

 

「…………八武信仰の再興、続けるつもりなんですか? ウェニがこんなボロクソに潰されて、粗チンパンピー共に犯されまくって……大事なもの、全部奪われたところを見たのに……」

 

「……うん。かざまには、まだできることがあるし……行けるところまで行くつもりだよ」

 

「……バッカじゃねえの……!? 苦労して、痛い目見て……結局、なんにも得られずに終わるだけだろ……そんなの……」

 

「…………本当に、そう思ってる……? なんか……ウェニキスは……何も諦めていないように見えるけどな……」

 

「っ…………オマエ……前より、余計に目ざとくなったな……」

 

 ウェニキスはバツが悪そうに歯噛みをして、ぷい、と何処かを向いてしまいました。

 

「ふふ……それだけ、いろいろ頑張ってきたつもりだし。期待してくれている人たち……それと、かざまのことを信じてくれた人たちのためにも、頑張らないとね……!」

 

 私は立ち上がり、大きく伸びをしてから旅立ちの準備を進めることにしました。どこか心配そうに私を見つめるウェニキスに向かって、にっこりと笑ってみせます。

 

「それに、何も得られないってことはないよ――だって、ウェニキスも助けられたでしょ?」

 

「…………ハッ……どーだか……! これからすぐに、それも徒労になるかもしれないですけどねぇ……ブスジマのおち×ぽ様のこと、舐めすぎだっての」

 

「大丈夫だよ。ウェニキスのことは、私とお屋形様……それに、あの子が守るから!」

 

 私は縁側の向こう――境内の方を指差します。そこには、栄養価が高そうな果物を両手に持ち、ぽてぽてと歩いてこようとするぽこべぇの姿がありました。その隣には、お手伝いをしにきてくれたアマネ殿も居ます。

 

 ウェニキスはお布団に寝たまま、何かを諦めたように大きなため息をついて……身体を重たそうにしながら、のっそりと起こしました。

 

「あっ……ウェニキス、まだ無理しちゃだめだよ……! それとも……今度は、あ、あっち……? さすがに、準備しないと……ちり紙と濡れ布巾……あと、なんだ……?」

 

「下ネタばっかり言ってんじゃねーよ!ばーか!! クソガキですか、オマエは……!」

 

「え……ええ~……? それ、ウェニキスだけには言われたくないんだけど……」

 

「……そういうのじゃねえ。ちょっと、こっちに顔を寄せてください」

 

「……???」

 

 ちょいちょい、と手招きをするウェニキスに従って、お布団の上に座ったウェニキスと視線を合わせます。その座り姿は、白いお花が咲いているように可憐で……どこか儚い雰囲気をまとっていました。

 

 私が見惚れていると、彼女は目を閉じながら顔を寄せて……その、淡雪のように柔らかな花びらを……ふわり、と私の唇に重ねました。

 

「んっ……!? ん……ぅ……くっ……うう……♡」

 

 …………ウェニキスは、すっごく……舌遣い同様に……接吻も上手でした……。もう、なんというか……唇が触れているだけで、身体の力が抜けるほどの快感が全身に走り抜けていくのです……。

 

 一度、二度……三、度……と……。ウェニキスはついばむように私の唇を食み、私からソウリョクを吸って――ふう、と初春のように鮮やかな息吹に変えて返してきました。

 

 吹き込まれた力の風は、無数の粒上の光となって体外に湧き出て、私の耳に噛みつくように結ばれていき――私に、新たな力を授けてくれました。

 

「……ぷ、ぁ……♡ はぁ……ふぅ……それ、持っていけよ……。救えないバカやろうにはお似合いの逸品だぜっ……♪」 

 

「…………りんごの味がする……ちょっと、甘味が薄かったね……」

 

「き、キスのことはええやろがいっ! こほんっ……それより、オマエ……ウェニが認めてやったんだから……簡単に、負けんじゃねぇですよ……!」

 

「……うん! それじゃ、アマネ殿も来てくれたし……かざま、そろそろ行こうかな……!」

 

「あ、ちょい待ってください。これもついでに持っていけよ」

 

 ウェニキスは、懐から何かを取り出して放り投げました。微妙にズレた方向に飛んでいった物を空中で掴むと……手の中には、小さな星型の金属板が収まっていました。

 

「それは私の力――〝明星信仰〟にゆかりがあるモンで、オマエが持っている木製の竜像と似たようなものです。もう信仰は潰えましたけれど……ウェニ自身が生きているうちは何かに使えるだろ、たぶん、きっとな」

 

「なんかすっごい不確実な言い方してる……でも、ありがとう。これがあれば、ウェニキスといつでもお話できるってことだよね?」

 

「ああ? ん……まあ、それぐらいならできるかもしれねえけど……もっとマシな使い方とか考えないんですか?」

 

「お話するの、大事なことだと思うけどなぁ。まぁ、じゃあ、その辺はおいおいということで……それじゃあ、ウェニキス。お大事にね!」

 

「………………生きて帰ってこいよ…………いろは、ちゃん……」

 

「うん――えっ……!? あ、の……ウェニキス……? 今――え~っ!?♡ ウェニキス、もう一回言って~! かざまのこと……やっと、名前で……えへ……でへへへへ……!♡」

 

「はっ、はーっ……!? な、なに勘違いしてんだよ……アホくさ!ばーか、ばーか!! イモマ×コのイモ臭くて甘ったるいマン汁のせいで頭が沸いたんですかねー!! お顔があっちっちすぎる!あーねむ!じゃあ、おやすみっ!!」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめたウェニキスは、不貞寝をするようにお布団の中へ潜ってしまいました。

 

 私は支度を進めていた旅荷物を持って草履に足を通し、アマネ殿とぽこべぇにお社のことを任せます。

 

「それじゃあ、しばらくあの人のことをお願いします。先ほど用を足させたばかりですし、お屋形様にも『ウェニキスのためにも夕方前に帰ってくるように』と言ってありますから」

 

「あい、任された! レオンちゃんの介助でいろいろ慣れてるから大丈夫だよ! 安心して行っておいで!」

 

「……恩に着ます、本当に……。どうか、お手洗いと清拭など……普通の女の子が恥ずかしがることでご助力ください。食事の用意や洗濯などの雑事はお屋形様にやらせますので」

 

「す、すげえ……!神様を尻に敷いてんじゃん……!! やっぱりいろはちゃん、タダモノじゃねえや……!!」

 

 アマネ殿の髪飾りよりもきらきらと光る眼差しはとても鋭利で、私の心にぐさぐさと突き刺さるものでした……信心とは異なる類の敬意は、さすがに慣れていませんでした。

 

「そ、そんなことはないはずですけど……。それよりアマネ殿……先ほど聞いた〝アメノムラクモ〟のお話、間違いありませんか……?」

 

「あ、うん……レオンちゃんが言ってた〝太陽の祭壇〟とやらは、たぶん〝天崇信仰〟を押し潰して作られたんだと思う……だから、〝アメノムラクモ〟の本体――天崇の〝御神体〟は、その近くにあるはずだよ!」

 

「てんすう、というのは……かつて、此の地で竜禪としのぎを削っていた信仰のことですよね。たしか、八武の天神・ディヴァ様とも深い結びつきがあったとか……」

 

 お屋形様やハマのおばちゃんたちから聞いた話を頭の中でまとめながら……お屋形様が手にしている太刀のことを思い浮かべます。

 

 此の地の守護者であるお屋形様は、自らのことを〝刃〟と称していました。その根拠たる力の象徴を強化できれば、閉ざされかけている未来は大きく開けると思ったのです。

 

「ふーむ……お屋形様のためにも御神体を手に入れたいところですが、彼の場所は、私のせいで警備が厳しくなってしまったようですし……やっぱり、先に八武信仰を再興させた方がいいですよね……」

 

「ボクもそれがいいと思う。あと、各地での宝刀回収も忘れずにね。西側で僕が見聞きしたり、お返ししたりした宝刀や妖刀をまとめておいたから!」

 

「あ!ありがとうございます!助かります!」

 

 アマネ殿からいくつかの情報を受け取り、懐に入れていたいくつもの勾玉に手を触れます。アマネ殿にはいろいろな面でお世話になりっぱなしで、たくさん救われてきたので……改めて、決意を固めます。

 

「アマネ殿! 其方は、かざまが守りますからね! 危機が訪れたら、いつでも呼んでくださいね!」

 

「……おう!ボクの命、よろしく頼んだよ!」

 

 アマネ殿と腕をがっちりと突き合わせ、彼女の敬虔な礼拝と向き合います。そのくすぐったいほどに純粋で熱い想いを――非常に質が高いソウリョクを受け取ってから、にっかりと、お互いに笑い合いました。

 

 その間も、隣でおろおろと迷っていたぽこべぇと視線の高さを合わせ、私は彼の頭を撫でてあげます。

 

「ぽこべぇは、ここでウェニキスとアマネ殿を守ってあげてね。今日みたいに、レオーニオが居ない日もあるから……大事なお仕事、よろしくね」

 

 ぽこべぇは、何かを言いたそうにしてこちらを見つめていましたが……迷いを吹っ切れないまま、ウェニキスのもとへ向かいました。

 

 私は後ろ髪を引かれる思いでしたが……アマネ殿に背中を見送られながら、空に架かる〝橋〟を独りで辿って、遥か西の地へと向かったのでした。

 

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