余さん、ぽこべぇと共に帰投した、久方ぶりのイサリビは――数週間しか経っていないとは思えないほどに豹変していました。
胸騒ぎにそそのかされた私は、イサリビのあちこちを見て回ったのですが……居住区の空き地や道端には機械で出来たかかしが立って銃火器を構えており、やや浮足立っている日常の中で暮らす人々を守っていました。海辺の漁にはLEONによる護衛が付き、畑作業の手伝いまでしてくれています。話を聞くと、『レオーニオの強い要望に沿った』のだといいます。
西洋の殺伐とした色合いは、不思議とイサリビの風景に溶け込んでおり――その曖昧な混色が、如何にも〝此の地らしい〟と思えたことを素直に嬉しく思えました。古くを愛するイサリビも、新しきを迎合する異教も……どちらも『間違っていない』と思っているからこそ、この混ざり合う二色の安寧を望んでいたのかもしれません。
アマネ殿の工房でも、最新技術を組み込むための炉の改修が行われていました。これで、より品質の高い村の器具や新しい装備の鍛造にも期待できそうです。たくさんの珍しい素材を手渡したアマネ殿は「創作意欲が掻き立てられるものばかりだ!」と嬉しそうに笑っていました。
イサリビの案内を兼ねて段々畑や村の中などを巡り、最終的に集会所へと辿り着きました。そこでLEONの人々と真剣に話をしていたハマのおばちゃんに、余さんのおうちの用意を頼み、私は急ぎ足でお社に戻ります。するとそこには、居住区以上に大きな変化が起きていたのです。
「お屋形様、ただいま戻りました――ん? なんか、聞こえる……?」
『えぐっ……えぐっ……ふえーんっ……!! もうだめだぁ……やっぱり、あたしはダメなんだぁ……!』
『うむむ……! ほれ、レオーニオ、もう落ち着いてはくれぬか……なぁ……。おれも、そろそろ国へ出向かなければならんのだが……』
「…………お屋形様がレオーニオを泣かしてるんだけど!? またか!この女の敵めぇっ!! 成敗してくれるッ!!」
ひっく、ひっくとすすり泣くおなごの声を聞いて、がらら!と襖を開いた先に――私とぽこべぇは、刀を同時に抜いて突撃しました。
お屋形様はこちらに目を向けることもなく、立てかけていた大太刀を手に取り、勢い任せの奇襲を難なくしのぎます。
「――やれやれ……。ようやく帰ってきたと思えば、ずいぶんな挨拶だな、風真。他に何かないのか?」
「ふん、だ! おなごを泣かせるような人に渡すお土産なんてありませんよ! 欲しければ自分が先に買ってきてくださいよ!」
刀を収め、いーっ!と口角を指で伸ばしてみせると……お屋形様は、ふう、と大きく胸を撫で下ろして、優しく微笑んでくださりました。
「……おかえり、風真」
「……っ……ただいま、です……!」
……やっと、帰ってきたんだなぁ。いろんなことが、たくさんあった旅路だったなぁ。
そう感じて、思わず涙ぐんでしまいそうでしたが……目を真っ赤に腫らして、気まずそうにそっぽを向いているレオーニオを見て、涙が引っ込んでしまいました。
「それより、レオーニオ……どうしたの……? お屋形様に酷いことされた……?そうなんだよね……?」
「風真、語弊がある聞き方をするでない。おまえはおれを何だと思っているのだ」
「あちこちに女を作って抱きまくっているスケコマシですけど」
「…………否定、できんか……」
「…………くすん……違うよ、いろはちゃん……。酷くなんかない……リュウオウ様には……キスと、エッチしか……してもらってないよ……」
「やっぱりか!! お屋形様!そこに直りなさい!今、此処で、罪を断ってみせましょうぞ!」
私が勢いよく立ち上がり、再び抜刀しようとすると――足元で正座したぽこべぇに窘められ、ちょんちょん、と再び座すように示されました。なんか、そういう空気ではなかったらしいです。普通に理不尽だと思いました。
「レオーニオのことだが……ここ数日、ずっとこのような調子で……何かを恐れて、心を病んでいてな……。あの部下たちも態度を決めあぐねているようなのだ」
「LEONの人たちが、ですか……? あんなに心が通じ合っているのに……どうして……?」
「うむ……。おれがレオーニオに訳を聞いても、『喋りたくない』と……彼らも『レオン様が言わないなら、こちらからはお話できない』と拒絶されてしまってな……。おれが遠地でソウリョクを回収しているあいだに、いったい何があったのだ……」
「…………でも、レオーニオと性交や接吻はしたんですよね? まさか……数日間、ずっとですか? 私が大変な思いをしているときに!?」
「…………それは…………断れないだろう、この状況では……ッ!!」
お屋形様は、丸まった猫のように着物を掴んで縋っているレオーニオを抱きながら、珍しくむきになって大声を出しますが――ごほん、と咳払いをして話を区切ります。いわゆる〝ごまかし〟というやつです。
「……おまえも、その穴だらけの羽織を修繕せずに戻ってきたぐらいだ……何か報せるべきことがあるのではないか?」
「あっ……え、ええ……。それが……旅先で、異教を裏切ったと思われる太陽志士が……その……突然液体になって、天に召されてしまいまして……」
「ひっ……!? あっ……あっ……うぁあああああああああっ……!! やっぱりっ……裏切者はっ……あたしはっ、このまま……わあああんっ……!!」
取り乱したレオーニオが、より強くお屋形様の庇護を求めて、震えながら塞ぎこんでしまいました。
……その、何かに怯えて、逃げようとしている様子は……私がこの目で見た、液体化した太陽志士とよく似ていました。それに、ウェニキスが処刑されたときの光景を感じたときも、レオーニオはその目を絶望に染めていたように記憶しています。
「……お屋形様……。もしかして……毒島が、また何かを……異教の信者たちに見せたのでは……?」
「……ぶすじま……異教の長だな。おれたちには何も見えなかったが……確証があるのか、風真よ」
「いえ……ですが……太陽志士が、赤髪の宣教師のことを……。それと、今、レオーニオが言った……〝裏切者〟についても言及していまして……」
「そこまで気づいているなら、話が早そうですねぇ」
すらり、と襖を開けて……とて、とて、とたどたどしい歩みで入室したウェニキスが、自然な流れで会話に入り込んできました。
流れるようにぽこべぇを拾い上げながらあぐらをかき、「おかえりぃ~、ぽこち~ん♡ 待ってましたよ~♡うりうり~♡」と甘い声で囁いて、ずっしりと重たそうな胸をたぬき頭に乗せるように抱き締めます。
……そのときのぽこべぇの幸せそうにとろけたスケベ顔は、いまだに忘れていません。もう、鼻の下がデロデロに伸びてて、しかもなんか誇らしそうにして――ウェニキスの恋人面をしていたんですよ。真剣な話をしていたというのに。まったくもう、これだから男の子って苦手なんですよ。
心の底から怪訝そうにしていた私の顔を見て、くすり、と清廉な笑みを浮かべたウェニキスは――声や態度こそ同じでしたが、何もかもが違って見えました。よく見れば、二つに縛った毛先の黒色が抜けており、以前に発していた力の気配をほとんど感じなかったのです。
……皆殿にわかりやすく伝えると……あの白くてかわいい先輩から、きーつね耳が無くなった見た目にそっくりでした。でも、なんか微妙に雰囲気が違くて……なんというか……毒気がないっていうか……ちょっと無個性な、色素の淡い美少女って感じ……かな……。いや、先輩に毒があるって意味じゃないんだけど……伝わるかな、この感覚……批判とかじゃないからマジで切り抜かないでね……。
「まあ、いろはちゃんの予想どおりですよ。あのブスジマのおち×ぽ様が、数日前にマルちゃんの処刑を行って、我らの教徒だけにその光景を発信していたんです……〝裏切者〟の末路をね」
「なっ……!? それじゃあ、早く助けに行かないと……!!」
「ははは……そこで『助ける』という言葉が出るの、最高にいろはちゃんらしいですけど……もう、手遅れですよ」
「て、手遅れ……そんな……!? まさか、もう……!?」
「生きてはいます……でも……処刑が終わったときには……マルちゃん、その……もう、二度と逆らえない状態になっていましたから……。マルちゃんの船の自動防衛機能を突破できる力はどこにもない……『今は何もできない』んですよ……悔しい、ですけど……」
ウェニキスは下唇を噛みながら、わずかに震えを隠せていない手で、ぽこべぇの身体をわしゃわしゃと撫で回しました。ぽこべぇもその不安を感じ取っているのか、ウェニキスの指を小さな両手で握り、元気づけようとしていました。
「ブスジマも、そのことがわかっていて……いえ、全部勘案したうえでマルちゃんを〝使った〟はずです……。あの男、悪知恵だけは働くので……」
「じ……じゃあ、どうすれば……!? マルテーサは、助けられないの……!? そっちの信徒は……裏切ったら、死ぬしかないの……!?」
「…………信徒については、ブスジマ様のさじ加減なので何とも言えないですけど……。マルちゃんは、助けるどころか……これから、竜禪を本気で潰そうとしてきますよ。それがわかっているから、レオンちゃんもイサリビの防衛体制を強化したわけで……」
「……っ……かざまに、できることは……?」
「…………さあ? それは、自分で考えることじゃないですかねぇ……その前に、鏡を見ることをオススメしますけど」
ぽこべぇを抱いたウェニキスがふらふらと立ち上がり――ちらりとお屋形様を一瞥してから、ぐすぐすと鼻を鳴らして丸まっているレオーニオの肩を叩きます。そして、お社の外で待機していたLEONの人たちの手を借りて、神域の外に出てしまいました。
いつもと変わらぬ初夏の風が、さあ、と葉擦れを奏でています。お空には、まだ高いところにお天道様が輝いており――二人きりになった私とお屋形様が居る室内を、ほんわりと明るく照らしました。
「…………なあ、風真。もう少し、近くに寄ってくれぬか」
「っ……さっきまで、別のおなごを侍らせていたくせに……節操なし、なんですから……」
「すまない。そう思われても仕方がないとわかっている……だが……今は、おまえの顔が見たいのだ」
「…………仕方ない、ですねぇ……もぉ……♪」
緊張で硬くなっていた頬が、その一言で綻んだことが自分でもわかりました。お屋形様のかいなに抱かれて、温もりに包まれるだけで……じんわりと伝わる心地良さが全身に広がっていきます。
「しばらく見ないうちに……少し、大きくなったな」
「……お屋形様のすけべ……。すぐ、おっぱいの話するんだから……」
「ち、乳房のことではない、体躯のことだ……。おまえの身体が〝まだ〟育ってくれて、よかった………………ああ……無事に帰ってきてくれて……本当に、よかった……」
「……おやかた、さま…………ん…………っ……」
お屋形様は私の唇を奪い、食むように接吻を重ねて……穴だらけの羽織や、武士らしさを誇る装束を器用に脱がしていきました。さらしまで解かれ、きつかった胸が楽になり――いつの間にか肌着一枚にされた私の下腹部に、お屋形様の手が触れます。
「……無事にガルダ信仰を写せたか……もう、再興した新興は六つになるのだな」
「……あとは……天神・ディヴァ様と……龍神・ナァガ様……ですよね……?」
ナァガ様の名を出したとき……お屋形様は、苦虫を噛み潰したように顔をしかめました。やはり、触れてほしくないお話のようでしたが……いずれは、聞かなければならないことなのでしょう。
「…………ああ。八武の全てが集まった際には……きっと、おまえの望みは叶うだろう」
「ん……叶ってもらわねば、困ります……。こんなに、大変な思いをしているのですから……」
「……ふふ、そうだな。此度の冒険も、厳しいものだっただろう……よければ、おれに聞かせてくれ」
二回りも三回りも小さい身体をすっぽりと覆い尽くし、傍目にふれないようにして……お屋形様は、私の心をぐずりとくすぐってきました。
つん、と鼻の奥を刺激された私は……猫のように甘えながら、旅路の中で味わった苦痛や苦悩を吐き出します。賊に辱められたこと、余さんと一緒に現地の人から虐げられたこと……投げられた石が、とても痛かったこと……ぽつぽつと語っているうちに、どうしてか、涙が出てきてしまって……そのときに、気づいたのです。
「……わかっているとも。おまえは本当によく頑張っているぞ、風真。今日ぐらいは……うむ……思う存分に、言いたいことを言ってもよいのだ……」
〝正しさ〟を握るべき武士の衣を脱ぎ、外聞を気にしなくてよくなった寵愛の中で……嗚咽を漏らして泣きじゃくり、身勝手な言葉を吐き散らす私は……とても疲弊していたようでした。擦り切れた心がじくじくと痛み、膿のように澱んだ感情を身体の外に滴らせてしまいました。
お屋形様は、素裸の私から出てくるものを全て受け入れて、欲しかったものを与えてくれました。「つらかった」と言えば「よく頑張ったな」と返してくれて、「もうやめたい」と漏らせば「後悔しないなら、いつでもやめていい」と受け入れてくれたのです。
……それは、私が〝必ず立ち直る〟と信じてくれていた期待からなのか……それとも、お屋形様の慈愛からなのかはわかりません。けれど、その言葉が……私の弱りきった心身を力強く支えて、癒やしてくれるものだったことは間違いありませんでした。
……努力に見合うものが、必ず手に入るほどに世の中は甘くないかもしれないけれど。こうして、努力の存在を認めてくれる人がいるだけで……救われるものは、少なからずあるんだなぁ……そう思えた出来事でした。
「ぐすっ……くすんっ……。ふう……えへ……。すっきり、したし……そろそろ……お勤め、果たさないとですよね……♪」
日がそれなりに進み、涙がすっかり枯れた頃。お屋形様が用意してくれた鼻紙で恥じらいを包み隠し……私は鼻声のままで、泣き腫らした顔を見られないように、がっしりとした胸板に背中を預けました。
自分から最後の肌着を脱いで、産まれたままの姿を晒し……お屋形様の股座に、お尻をすっぽりと嵌め込みます。
「もう、よいのか」
「……はいっ……! っていうか……なんか、今は……お屋形様に……めちゃくちゃにしてもらって……ぶっ飛びたい気分なのでっ……♡ えへっ……♡」
「……っ…………まったく、おまえというやつは……」
「だって、こういうのも久しぶりですし――ひゃっ……わっ……♡ んっ……あ……はぁっ……♡きゃっ……あんっ……♡」
苦笑しながらも陰茎を硬くしたお屋形様に乳房を揉まれ……悪戯な手指に先っぽをこねくり回されながら、私は甘い声を漏らします。つままれた乳首を弄ぶように転がし、陰唇のくぼみを押し上げるように男根型に膨らんだ布地が擦れるだけで、とろとろと蜜液が溢れてしまいます。
他の人に、優しく愛撫されたのが久しぶりすぎて……身体に電流が走ったかのような、痺れる刺激にすっかり骨抜きにされてしまいました。お屋形様が着物をはだけさせ、屹立した肉槍を抜き身で私の股座に押し付けます。
「……風真……行くぞ……!」
「は、はひっ……♡ いつ、でもっ――ぅっ♡ぅうっ……!!♡ おっき、ぃっ……はぅううんっ……!!♡」
「……っ……本当に……甘い声を出すように、なったな……ういやつめ……!」
お屋形様は、私を背中から抱き締めるようにして女体を抱き上げ、腰を突き上げるようにして抜き差しを繰り返しました。ぬかるんだ秘部に、こぶがある極太の肉槍を突き立てて、穂先の膨らみをずるりと粘膜に滑らせます。
「あっ♡あっ♡ぁぅうっ……♡ こつんっ、こつんっ、て……♡ お屋形様の……すっごい、当たるぅっ……♡」
「ああ……おまえの、一番深いところを感じているぞ……。とても、心地が良い……おれは、やはり……おまえとの、時間が……」
「んっ……くっ……ふぅっ……♡ お屋形、さまっ……お屋形様ぁっ……♡ もっと……もっと、たくさんっ……きてっ……♡」
「っ……!! ああ……わかっている……!」
陰茎を深々と食み、愛液でしとどに濡れたほとが蜜を垂らして畳を穢していきます。そんなことが気にならないほど、私は、入り口付近と終点の壁を交互に刺激する肉果の快感に酔い痴れていました。
「あっ♡はふっ♡ふっ♡く、ぅうんっ……!!♡ お屋形、さまっ……私っ……すごいの、キ、てっ……ううっ……!♡」
「おれもだ、風真……っ……! 一番、奥で……くっ……!!」
「きゃっ――あぁあんっ……!!♡ っあっ♡っあっ……クるっ♡おっ、きい、のっ――んぁあああああっ……!!♡」
がくん、がくん、と身体が震えて、ふわふわと茹だった視界が上下に揺れるなかで……お腹の中に、ぐもぐもと鈍くて低い水音が這い回り……じんわりと、身体の内側に熱を広げていきました。
それと同時に、私の下腹部に刻まれた紋が光り輝き……お屋形様の御身体に、ガルダ信仰を習合させることができました。
「はーっ……はーっ……♡ は、ぅっ……はふぅっ……♡ どろどろ……あつい、れす……っ……♡ まだ、出てるっ……ぅんっ……♡ 出しすぎ、ですようっ……♡」
「くっ……ぬっ……! す、まぬ……いつもより……快感が、大きくてな……」
珍しく息を切らせていたお屋形様は、切なそうに腰と陰茎を揺らし、私の最奥をくすぐってきました。そのおねだりは、私の中で渦巻いていた欲望に火をつけて、頬と膣を勝手に緩ませてしまいます。
「んっ……んぅ……♡ お屋形様……っ……♡」
「む……どうした、風真……。抜くのは、少し待ってもらいたいのだが……」
「……風真の、おま×こ……♡ まだ……足りない、かも……です……♡ もう、一回…………だめ……?♡」
「っ…………断れないだろう……この状況では……ッ……!」
「あっ♡やだ――あぁんっ♡ お屋形様の、すけべっ――きゃっ♡ふぅんっ……!♡ あっ……あっ……あぁんっ……♡ まだ、硬いのっ……あつ、いっ……♡ すごい、よぉっ……!♡」
私は、わんちゃんのように四つん這いにさせられ、お尻に腰をぶつけるような抽挿を繰り返されて、お屋形様と何度も絶頂を共にしました。ケダモノのようによがり狂うなかで、一緒に見る天上の世界の光景は、とても晴れやかで、美しいものでした。
私とお屋形様は、途中から儀式の義務などすっかり忘れてしまい……日が暮れるまで、一番深いところで愛し合いました。その後、畳に取り返しがつかないほどの汚れを残してしまったのを見て……『次からはきちんと布団を敷いてから始めよう』と誓い合ったのでした。