※この作品はR-18です。

朽ちぬ木の葉は色褪せず   作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)

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第三二話 反攻の兆し

私がイサリビに帰投してから程なくして、各地で〝海賊船〟の目撃情報と、甚大な被害が多発するようになりました。ウェニキスの言ったとおり、マルテーサが本気で竜禪を滅ぼすために攻勢をかけてきたようでした。

 

 それに合わせて、何かを恐れる太陽志士や波乱の気配を感じ取った野盗の攻撃が活発的になってしまったうえに、毒島による侵攻の懸念は払拭できておらず……イサリビや国には厳戒態勢が敷かれることになりました。終末を望む者たちと、安寧を守ろうとする者たちの衝突が始まりつつあったのです。

 

 精神的に不安定だったレオーニオと、そんな彼女を支えるLEONの人たち、アマネ殿、余さんに居住区と海岸線の防衛を任せつつ、私とお屋形様はイサリビ全土の守護に徹しました。さらに交代で各地の国を巡り、海賊船による攻撃に対応せざるを得ませんでした。

 

 マルテーサの海賊船は神出鬼没で、数日おきに突然海に現れたかと思えば、遠く離れているはずの国を目がけて主砲を撃ち込み続けます。砲弾の雨を降らせ、爆散する火薬で鉄針の華を咲かせ……竜禪を信仰する国民や武士たちを冷酷に傷つけ、国土を無差別に破壊していました。

 

 トライプルの中でも理的に見えていたマルテーサが、こんなにも大雑把で――そして無慈悲な攻撃を、何の理由もなく、好んで仕掛けるとは思えなかったのですが……黙って被害を増やすわけにはいきませんでした。私は船の目撃情報が出た地域に赴き、国の中で防衛に徹したり、海を臨む場所から攻勢に転じようとしたりしました。

 

 しかし……海賊船が搭載した大量の銃火器による砲撃は無尽蔵に放たれており、近づこうとしても、その前進は火薬と鉄の嵐に阻まれてしまいます。そして、国を恐怖と苦痛のどん底に陥れてから間もなく……さあ、と霧のように消えてしまうのです。

 

 LEONの人々が現状の調査を続けて根本的な対策を練っているあいだは、私たちは耐え忍ぶことしかできませんでした。今日も今日とて、遠海から異次元の超長距離砲撃を繰り出してきた艦船の撃退を諦め……モリの国の手前で、飛来する砲弾や兵器を斬り伏せて叩き落とし、物理的に凌ぎ続けた後のことでした。

 

「おお……! 風真殿、よくぞ堪えてくださりました……!」

 

「けほ、けほっ……。まだ、完全に無事とは言えませんが……どうにか、此度の襲撃は凌げたと思います……。モリの国の皆殿から注がれたソウリョクに、ずいぶんと助けられましたよ……」

 

 修繕したばかりの羽織に付いた煤を払いながら、私は出迎えてくれた武家の当主と軽く会釈を交わします。その人の後ろには、砲撃音が止み、恐怖が去ったことに涙しながら「ありがとう」、「竜禪を信じてよかった」と感謝を述べる国民の方たちが並んでいました。

 

 黎明様が保ってきた〝摂理〟が崩壊した今でも、モリの国では民たちが自らの手で暮らしを守り、心を入れ替えた真面目な武士たちも治安と法の維持に努めています。その結びつきの核となる竜禪信仰は、そのあつさを以前よりも増しており……この危機に対しても、より潤沢なソウリョクを生み出してくれていたのです。

 

 イサリビでもそうでしたが……困難があるたびに、人は思い出したように〝何か〟を頼り、縋りたくなる気持ちが強くなるものです。普段よりも強くて必死な信心を感じて、「そんな都合のいいことを」と……〝神の使い〟という立場として、少し複雑な気持ちを抱かなくもないのですが……未熟だった過去から学び、「それもまた人なのだ」と思うと、言葉にすることが難しい温かな気持ちになるのです。

 

 ――信じてくれる人の期待を裏切りたくない。愛してくれる人の希望を壊したくない。『守ってあげたい』と思える人たちを守るために、私は自らを犠牲にして〝力〟を握っていたのですから。

 

「しかし……まことに、奇怪な襲撃ですよね」

 

 当主は以前よりも鍛錬の生傷が増えている細腕を組みながら、怪訝そうに呟きました。

 

「……え? どういう意味、ですか……?」

 

「いえ……普通、襲撃をするなら『何かしらの目的』があると思うのですよ。例えば……そう、物資の略奪だったり、怨恨の清算だったり、と言った具合に……この鏖殺では、ただの破壊や憂さ晴らしでしかないように感じまして……」

 

「…………そ、それは、おそらく……あの船が、竜禪の破滅を目論んでいるからであって……。皆殿の敬虔な信仰を、暮らしどころか、命共々奪いたいと考えているのかと……」

 

 私は、当主や国民たちに、敢えて聞こえる声の大きさで告げました。「竜禪を信仰しているからこそ致命的な危機に陥った」と思われて、手の平を返されて石を投げつけられることを覚悟したうえで……真実を包み隠さずに話したのです。

 

 すると……最初は混乱めいたどよめきが生まれたものの、次第に生き方を迷う声が消えていき……人々は、私に向かって頭を下げ、静かに拝み始めます。その胸からは純然たるソウリョクが湧き上がり、消耗した私の身体にさらなる力を与えてくれました。

 

「……民草の皆も、わたくしと同じ気持ちのようですね」

 

「……貴方と……?」

 

「ええ。この国を支配していた怠惰と妥協を正し、自らの足で歩んでいくことの大切さを教えてくれた存在――風真殿と竜禪のことを、心から信じたいと思います」

 

「……でも……っ……! かざまのお節介で、貴方たちは楽をできなくなったことも……竜禪を信仰しているからこそ、危険な目に遭っているのは間違いないんですよ……? どうして、そこまで……」

 

「はは……たしかに竜禪の教えは厳しく、満足に楽をできるような仕組みではありません。怠けたがる武士の半数近くが去っていったのも事実です。でも……わたくし共は法を守って規則に従いながら、〝竜禪〟や〝国〟という一つのまとまりを感じ、皆の手で守り、より良いものに変えていこうと思えています。個々の力では実現できないこと、守れないこと……溢れんばかりの〝願い〟を集団として……社会として、叶えていられるのです」

 

 当主は腕を広げて、平和を守り続けているモリの国を見せてから……刀の柄に手を置き、凛々しい顔で頷きます。その決意に応じるように、民たちはまっすぐな瞳で私を見つめていました。

 

「それに……わたくし共が竜禪を信じていたから、風真殿は、こうして報いてくださった。わたくし共の身勝手な祈りにも、全身全霊で応えてくださった。そうでしょう?」

 

「…………それは……私は、武士として当然のことをしたまでで……」

 

「ご謙遜なされないでください。わたくし共は、神の所業を目の当たりにしました……古くから伝わる武家と法の意義……失いかけていたものの真価を、今、こうして……この身で感じているのです。『信じてよかった』と……心から思っていますよ……風真殿……」

 

「…………っ……」

 

「ありがとうございました」と、声を震わせた当主や民たちが深々と下げた頭に、鼻の奥をツンと突かれながら……私は、その真摯な態度から目を背けず、正面から向き合って受け止めました。

 

 イサリビに救援要請があり、私やお屋形様が出向いて助力したところでは、モリの国のように感謝と信仰を約束してくれることが多くありました。もちろん、全てではなかったですし、騒乱の真相を知って石を投げつけてくる場所もあったのですが……強力なソウリョクと信頼を寄せてくれる人たちは、まだ此の地にも多く生きてくれていたのです。

 

 聞けば、私が八武信仰の再興を目指す旅の中で立ち寄った場所や困り事を解決してきた地域では、竜禪信仰が再び重んじられることもあったようです。まだ未熟で、粗のある信仰ではありましたが……私の胸に届いた声に変わりはありません。その祈りが無駄にならないように、できる限りのことを続けていると……とても温かいソウリョクを生んでくれるようになりました。

 

 迷うことも、苦しいこともたくさんあった旅路でしたが……その苦難にも、きちんとした意味があったことを知れて、私は少しだけ誇らしい気持ちになれました。そして同時に、この背に預けられた期待の重さを再認識したのです。

 

 ……………………。

 

 モリの国で襲撃を凌いだ翌朝のことでした。一晩中の時間をかけて、お屋形様としっぽりエッ――た、胎内のソウリョクを義務的に!超絶義務的に!いやいやな感じで!受け渡した私は、秘部に走ったむず痒さで目が醒めました。

 

「んっ……まぶ、しい……。もう、朝ぁ……?」

 

 私の寝ぼけた瞼をカッと貫いた朝日は、それなりに高めの位置から差し込んでいるようでした。儀式のために体力を限界まで使った日にはありがちな、普段よりも遅い起床に、思わず気怠さを覚えます。

 

 昨晩は特に激しかったせいで寝室の中に熱気がこもっていたため、雨戸と障子を開けたまま寝てしまったようなのですが……初夏のうららかな陽光に染まる風はほんのりと温かく、絡み合ったまま力尽きた男女の裸体を、優しく包んでくれていました。

 

「はふぅ……あっ……♡ ん……んっ……?♡ お屋形様……なんで、まだ……硬く……っ……♡」

 

 ずろり、と粘液が固まりかけていた膣内では……お屋形様の剛槍が突き刺さったまま、隙間を埋めるように、むぐり、むぐりと大きくなっていきました。

 

 お屋形様はまだ深い寝息を立てており、ただの生理現象だったようなのですが……不幸にも、その刺激で……まあ、なんというか……目覚めたばかりの私の身体が、昨晩の激しい熱と擦れる肉の具合を思い出してしまいまして……。

 

「はぁっ……♡ちょっと、だけっ……♡ ちょっと、借りるっ……♡だけ……だからっ……♡ はぁっ……あっ♡あっ……ここっ……♡ここっ、すきっ……♡」

 

 私は重たい手足に力を込めて、お屋形様のたくましい御身体に跨り……ぱつん、ぱつん、と尻たぶを打ち付けるように、自分の弱点を男根に貫かせました。

 

 つい数刻ほど前までほじくられて、びりびりと快感が走っていた部分を貪欲に掻き回させ……次第に硬さが増し、脈動を強めていく陰茎の刺激と熱に、つい夢中になってしまっていました。

 

「あっ♡あっ♡クるっ……!♡ これっ♡もうっ♡だめっ――お屋形様っ♡お屋形様ぁっ……♡ もっと、愛してっ……あっ♡あっ♡あ、ぁああんっ♡だめっ……イッ……っ……♡く、ぅっ……はぅううんっ……!!♡」

 

 私が肉馬へ淫靡に跨り、天上まで乗せていってもらった瞬間……お屋形様の陰茎が強く跳ねて、私の膣内を新鮮な白濁で温めていきました。私の鼓動とお屋形様の吐精の勢いが重なり、二人でひとつの心臓を共有しているかのような、幸せな温もりに包まれます。

 

「は、ぁっ……はぁ~っ……♡ 今日も……ああ、んっ……♡ イイ、日に……なり、そう……………………?♡」

 

 花の香りで満たされたような、うっとりとした夢見心地で天上と現世の境目を揺蕩っていたのですが……ふと、何者かの視線を感じて、境内に目を向けました。すると、そこには――。

 

「……あはっ♡ 朝から一人でお楽しみでしたね♡ たしかに、イイ日になりそうですねぇ……くすくすっ……♡」

 

 ――にっこり♡と朝日と見紛うばかりの良い笑顔を見せたウェニキスが、何やら小さな馬っぽい生物に跨りながら、私の痴態を嘲っていました。

 

「………………な……ぁっ……!? うぇ、うぇうぇうぇっ……!うぇに、きす……なんでっ……!?」

 

「むぐう……風真……何か、あったのか……。なんだ……股間が、やけに熱いが……」

 

「ああ、ようやく朝勃ちドラチンもお目覚めですかぁ。ウェニたちが朝から頑張ってたというのに、そっちの方も頑張ってるとは……まったく、体力おばけのドスケベカップルなんですからっ♡」

 

「むっ……ウェニキス、か……。頑張っているとは、いったい……」

 

「ぎゃあっ!? お、お屋形様は知らなくてイイっ――はぁんっ!?♡ や、ぁっ……♡い、ま……起きちゃ、だめっ――はぅ~っ!?♡」

 

 お屋形様が突然身体を起こしたせいで、ヘンな角度で、深いところをぞりぞりと擦られ……かく、かくん、と淫らに腰を振ってしまいました。噴いてしまったおつゆが、お屋形様のお腹に無数の水滴を浮かべて、朝露のように煌めきます。

 

「あ、いろはちゃんの可愛い喘ぎ声が出ちゃいましたねぇ。でも、ぽこちんはウェニのしか聞いちゃだめですよ~♡ め~っ♡」

 

 にこにこと楽しそうに笑っているウェニキスが、跨っていた仔馬らしきナマモノの耳を塞ぎました。

 

 子供が背伸びせずに楽々と乗馬できそうな大きさのぶちゃいくな生物は、ぽこべぇが変身したもののようでした。まるで大きな玩具のように……あの、公園の遊具とかにあるグヨグヨ動く乗り物みたいな感じのアレです……その上に可愛らしく、ちょこんと跨った宣教師姿のウェニキスがため息交じりに続けます。

 

「ほら、朝勃ちジジイといろはちゃん! 朝からパコパコと盛ってないで、そろそろ作戦会議を始めますよ!」

 

「はぁっ……はぁ~っ……♡ さ、作戦会議……って……?」

 

「もちろん……マルちゃんの無差別破壊を止めるためのですよ。あなたたちがそうやって蓄えた力の使い方を決めるんですよ」

 

 ウェニキスは、脚代わりにしていたぽこべぇの耳から手を離し……私たちに、不敵な笑みを見せました。

 

 ……………………。

 

 私とお屋形様は簡単に身体を清め、身だしなみを整えてから、ウェニキスが待っていた客間兼療養室に集合しました。

 

「それにしても、おまえのほとの中は子種がやけに新しかったな」と余計なことに気づきかけたお屋形様のみぞおちを肘で打ち、痛がったその人と並んで……ウェニキス、ぽこべぇ、レオーニオと膝を突き合わせます。

 

「…………ぽこべぇ、すごい自然な感じでそっち側に居るじゃん……」

 

 頭の上に「!!」と驚きを浮かべたぽこべぇが、慌てて私の横に座し直します。その憎たらしい様子を見たウェニキスが「あら~♡ぽこちん、かわいいね~♡」とこれまた腹立たしい猫なで声を出しますが、隣のレオーニオが真剣な声音で咳払いをして、たるみかけた空気を変えました。

 

「マル先輩の海賊船なんだけど……うちの部下たちの調査で、休息中は決まった場所に留まっていることがわかったよ」

 

「決まった場所……? それって、どこなの……?」

 

「……いろはちゃんが囚われていた、あのりゅ……いや、無名の湖でいいか……あたしが『近づくな』って言った場所だよ。さすがに覚えてるだろ?」

 

 レオーニオは、何かを言いたそうな目でお屋形様の顔を見ましたが……すぐに気まずそうに視線を逸らし、私と目線を重ねます。

 

「あそこは何故か、人目を避けるには最適な場所だった……しかも巨大な湖の上だから、船で近づいてきた不届き者を蜂の巣にしやすい。絶対の防御性能を誇るマル先輩の船は、空を飛ぶ機械を持たないキョウの原住民ではどうしようもできない〝水上の要塞〟になってるんだよ」

 

「……水上の要塞……変身したお屋形様の力で、どうにかなりませんか……?」

 

「うむ……。襲撃を抑えているときに一度だけ……ガルダの力を使って攻勢を払い、船上へ乗り込もうとしたことがあったのだが……銃火器による攻撃が止まらず、近づくだけでも手一杯だった。よもや、神に匹敵する力を持つとはな……」

 

「まあ、あの他人を信用しないブスジマが、オキニのオナホのためにわざわざ与えた神の祝福ですからねぇ。ドラチンの弱った力ではそんなものでしょうね」

 

「……そんな……! じゃあ、どうすれば……!?」

 

「……まあ……結局のところ、マルちゃんをどうにかしないとリュウゼンの劣勢は覆りませんし……あの子の苦しみも終わりません。だからウェニは……いろはちゃんが〝直接的に〟決着をつけにいくべきだと、貴方たちに進言します」

 

 すらり、と刀を抜いたように鋭さを増したウェニキスの目が、私の心を深く突き刺しました。

 

「リュウくんは八武の力を使って、ハートスナッチ号の堅牢な防衛ラインをどうにか突破してください。その隙に、いろはちゃんとぽこちんが船内に進入してマルちゃんを叩く……こうでもしないと、リュウゼンに半年先はないでしょう」

 

「で、でも……! それでは、私とお屋形様がマルテーサにかかりきりになっちゃうし……何かあったときに、打つ手がなくなっちゃうよ……!? そんなの、あまりにも危険すぎるよ……!」

 

「…………その辺は……あたしたちが、任されるよ」

 

 膝に置いた拳を握り締め、深呼吸をしたレオーニオが……境内で待機していたLEONの面々を指笛で呼び、軍団の頭として決意を改めます。

 

「……総力戦ってヤツだ。たしかに、リュウオウ様といろはちゃんが戦っているあいだに何かが起こる可能性は高い……でも……このままだとジリ貧なのも間違いない。そんなら、ヤるだけヤる……それしかないだろ?」

 

「れ、レオーニオ……! でも、貴女は……!」

 

 私が危惧したことを肯定するように……レオーニオの顔は青ざめており、握ってみせた手が震えていました。

 

 しかし、靴を脱いでお社に上がった部下たちにその手を支えられ、レオーニオは脂汗を落としながら、しっかりと力強く頷きます。その献身的で、団結力を感じる姿が……モリの国で私を信じてくれた人たちの真摯な態度と重なりました。

 

 ……その時に、思い出したのです。お屋形様や私の力は万能ではなく……『こんなもんか』と思われてしまうこともあるほどに、弱くて小さいものなのです。

 

 ――〝信じてくれること〟を信じ、自分にできないことを素直に頼れる大切な人たち。彼らに支えられて、彼らの力を注がれて――私たちは、ようやく信仰を保っていられるのです。

 

「……不安なとき……たくさん、慰めてもらったんだ……。もう、あたしだけ怖がってるワケにはいかねェからさ……!」

 

「……レオン様は、俺たちが支えます。俺たちの〝暮らし〟になってくれたイサリビの平和も、この手で必ず守ります……! だから……リュウオウ殿、武士殿……マルテーサ様を、もう…………楽に、してあげてください……!!」

 

 レオーニオの心に深い傷を与えた映像を、LEONの人たちも見ていたのでしょう。その震えた声には、元上司に当たる女性への確かな温情が含まれていました。

 

 私とお屋形様は、全ての事情を知っているわけではありませんでした。けれど、こうして間近で寄せられた信心を無視することなどできません――お互いに顔を見合わせて、深く頷き……私は、ぽこべぇと一緒に立ち上がります。

 

「……『マルテーサのことをどうする』って確約は、今はできないけれど……できることを、できるだけやってみます! ね、お屋形様!」

 

「……フッ……そうだな。ここまで熱心に望まれてしまっては、神として応えざるを得ぬだろうよ」

 

 私たちにできることなど、たかが知れています。それでも、何もできないということはなく――『この胸に灯った想いを必ず叶えたい』と、注がれた熱いソウリョクは自らを奮い立てるのです。

 

 私とお屋形様、そしてぽこべぇは完璧に準備を整えてからイサリビを後にしました。そして、かつてお屋形様と私を引き裂いた、霊水の村落に近い竜禪の祠まで転移し――竜人と化したお屋形様の背に乗り、私とぽこべぇは、忌まわしい屈辱の記憶が残る湖へと向かったのでした。

 

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