※この作品はR-18です。

朽ちぬ木の葉は色褪せず   作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)

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第三三話 退路無き強襲

 霊水の村落近辺の祠に転移した後、お屋形様は竜人の姿に変身し――ぽこべぇを身体に引っ付けさせた私を背に乗せて、大風を身にまといながら飛翔しました。もちろん、近隣の人たちの目にも留まらぬ速度で遥か上空へと飛び上がりました。

 

 黒い大翼でぎゅんぎゅんと風を斬りながら、層になった空気を破るように進んでいきます。木々が川のように流れていく眼下の風景も、似たような雲が散り散りに漂っている水平線も、全部が同じように見える空の中で――私には右も左もわからない孤独な場所でも、お屋形様は迷いなく、まっすぐに飛び続けていました。まるで、目的地が何処にあるか、ずっと昔から知っていたかのように。

 

『ところで、風真。マルテーサと戦い……その後はどうするつもりだ』

 

「えっ……? どうする、とは……?」

 

『いや、な……おまえのことだ、無為に命を奪うようなことはしないとわかっているのだ。だが、【それでは済まない状況だった】とき……おまえにその覚悟ができているのか、少し心配になっただけだ』

 

「……………………それは……」

 

 私の背中に抱きつき、乱気流に耐えていぽこべぇの手の力が、ぎゅう、と強まるのを感じました。当時からウェニキスにお熱だったようですし、その同僚を害することには強い抵抗感があったのだと思います。

 

 ……たしかに、お屋形様の懸念は私の胸の痛いところを射ていましたし……レオーニオの怯えきった様子からも、マルテーサが相当に酷いことをされたうえで竜禪を潰そうとしているとわかっていました。交渉の余地もなく、和解や休戦を期待できる可能性は非常に低い……そう、何となく想像できていたのです。

 

 ですが……私はもう揺るぎない〝力〟を握っています。全てを公平に扱おうとせず、〝正義〟だけにはこだわらず――『守りたいものを守る』と決めて、前に進み続けてきたのです。

 

 各地で国が被害に遭っています。無差別な破壊行為で心身を痛めている人がいます。この暴走を『止めてほしい』と願う声があります。この状況を打破するために……躊躇することはできません。たとえ、誰に批難をされようとも。

 

「……ウェニキスたちは、竜禪とは異なる方法で〝あるべきかたち〟や〝人らしさ〟を広めていました。その謳い文句は〝救済〟でしたし、人々もそれを望んでいたから……お屋形様も排斥しなかった。そうですよね?」

 

『…………ああ、そうだな』

 

「ですが……今のマルテーサによる攻撃は、ただの破壊と殺戮でしかありません。あれほど『大事だ』と言い張っていた命が奪われた場所も少なくないです。此の地において、そのような脅威を退けるのは……ミヤ様の務めと同じだと思うのです」

 

『相違ない。だが、天崇から託された〝攘夷〟の使命は、あくまでおれの都合であって……』

 

「ふふ……私は貴方の〝使い〟ですよ? それに……今のマルテーサは〝らしくない〟と思います」

 

『……らしくない、か……』

 

「……はい。あの破壊は彼女の本懐ではなく……誰かが止めてあげないといけない……だから、ウェニキスやレオーニオがあんなに真剣にお願いしてきたんですよ。正義がこの手になかったとしても、この胸に灯る〝正しさ〟は確かに感じています」

 

『くくく……おまえも酷い目に遭わされたはずだが、マルテーサのことをそこまで心から想えるのだな。ただ【願われたから言いなりになった】のではないと知れて安心したぞ……そういえば、おまえはあの頃からやけに――』

 

「あ、いや、そんなこともありましたけど……! 決して、マルテーサの加虐が気持ちよかったとか、忘れられないとか、そういうわけでは――」

 

 私の必死な弁明を退けるように、しゅごごごごう、と遠くから焔が噴き上がる音が近づいてきました。気づけば私たちは、あの大きな無名の湖がわずかに見える所まで接近しており……湖周辺で待機していた四角い機械が、火を噴きながら並走を開始しました。

 

『よう、お三方。ずいぶん早い到着じゃないか』

 

「この声……レオーニオ……!?」

 

 あひるのような口から、があがあ、ちゅんちゅんと機械的にかすれたレオーニオの声が聞こえてきました。きらりと光る機械の目で、こちらの様子も見えているようです。

 

『補給ユニットを大砲式でブッ飛ばしてみたんだが、思いのほか上手く行ってよかったよ。リュウオウ様の武装、届けておいたよ』

 

 その言葉に合わせて、がこん!と機械の箱が大きく開いて私たちの頭上に移ります。緑色の光線をお屋形様の四肢に照射し、その線に合わせて装備品が微量の炎を噴射しながら滑空させ――高速で飛ぶお屋形様の巨体に部品を噛み込ませ、移動しながら合体を完了しました。その時、レオーニオの背後と思わしき場所から大きな喝采が聞こえました。

 

『……よっしゃ……! 一発勝負だったけど、どうにか成功したぞ! リュウオウ様、痛いところとかないか?』

 

『ああ、問題ない。これは、直近の襲撃時に使っていた武具だな』

 

『そうだよ。〝キョウを守る〟んだから、そいつが必要だと思ってさ。うちの子たちがちゃんとメンテナンスをしておいたから、きっと役立つと思うよ!』

 

『……ふふ。恩に着るぞ、レオーニオ』

 

『おいおい、そいつはこっちのセリフだっての――あと、いろはちゃんにもコイツを頼むよ』

 

「はえー、すっごい……あっ、私――じゃない、かざま!? いやいやいや、こんな機械とかぜんぜんよくわからんし――わ、わっ……!?」

 

 鉄の箱の中から、もふり、とした何かが私目掛けて落ちてきました。ばらばらと乱風に揺れていたそれをどうにか掴んで胸に抱きます。

 

「……あ、あぶな~っ……!ってか、なぁに、これ……? この子……あれ、この顔って……?」

 

『使うか、使えるか……使わないか……全部含めて、アンタに任せる。あの人を追い込んじまったの、あたしの責任でもあったから……秘密兵器を個人的に開発しておいたんだ』

 

「秘密兵器……? これが……?」

 

『使い方は……あたしたちのことをずっと見てきたアンタなら、たぶん感覚でわかると思う。もし、マル先輩に情けをかける余裕があって……アンタが、過去の蛮行を赦す気になって……さ……。それで……その……できれば、でいいんだ……だから……』

 

「………………うん、わかった……! 全部かざまに任せるでござるよ、レオーニオ!」

 

 私は、レオーニオの想いが詰まったその子を手に抱いて、拳を突き出して見せました。『絶対に失敗できない』という、凄まじい緊張と緊迫を……できるだけ顔に出さないようにしながら。

 

『……………………いつも、ありがとな……。それじゃあ、後は任せたよ……あたしの信じる神サマたち……』

 

 レオーニオの音声がぶつりと途絶え、機械の箱が失速を始めます。ゆるやかに減速をしながら地面へ降り――イサリビと私たちを繋いでいた物は、生い茂る木々の中に呑み込まれていきました。

 

『……負けられんな。心してかかるぞ、風真!』

 

「……はいっ!!」

 

 私はレオーニオからの大事な預かりものを道具入れにしまって、速度を上げたお屋形様の背に抱きつき……因縁が刻まれた湖の上空へと飛翔しました。

 

 ……………………。

 

『……! 例の船が見えたぞ! 心構えは十分か!』

 

「っ……大丈夫です……!!」

 

 ほとりに大量の死体が流れ着いた、腐臭の漂う湖が眼下に広がります。自然の雄大さ、そして人間の愚かさを伝えるような光景に見えなくもないほどに、果てた死骸が小さく見えましたが……細切れになった見覚えのある赤い布地が、その惨状の悲哀を事細かに物語っていました。

 

 嘲笑うような陽光がまばゆく反射する湖面から目を背けず、全身に力を込めます。見る者の心臓を射貫く、マルテーサの紋様が描かれた船旗を見据え、身構えた私たちを背に乗せたお屋形様が急降下の準備を整えます。

 

『よし――ゆくぞッ!!』

 

 双翼で風を打ってから黒羽を丸めて背を守り、地に引かれる落下よりも素早い速度で空を跳んだお屋形様は――爆ぜた弾丸のように、大きな海賊船に接近しました。

 

 しかし、目にも止まらぬ攻勢だったにもかかわらず――ぎちぎちぎち!と船の兵装がけたたましい音を上げて鎌首をもたげ、飛来するお屋形様に全ての照準を合わせます。そして、無数の銃口から火花を散らしながら、弾丸で〝壁〟を形成しました。

 

『ッ――!! やはり、そう易々とは突破できんか……!! 風真!ぽこべぇ!しっかり掴まっていろ!』

 

 お屋形様は両翼を開いた衝撃で旋風を巻き起こし、押し寄せる弾丸を弾き返します。その隙に翼を翻して自らの軌道を変え、湖面を筒状にへこませるようにざあざあと水を切り裂きながら弧を描き、散らした大量の飛沫を宙に輝かせました。

 

 その回避に合わせ、ときには先回りをして、海賊船の装備が私たちに追いすがります。まるで横殴りの雨のような、無数に思えるほどに分厚い攻撃でした。

 

 お屋形様は、蜂の大群のように襲い掛かるそれらを紙一重で避け、身体を回転させて竜鱗を盾にし――再接近を仕掛けます。

 

『牙には牙を合わせるしかあるまいッ!!』

 

 竜人は両肩から伸ばしていた銀色の翼を開き、中からいくつもの火矢を吹かせます。しゅごう、しゅごう、と炎を噴いて進む鉄の筒が、船の外周を取り囲んでいた銃火器に衝突し――大輪の火花を咲かせて、船の装備を物理的に無効化しました。

 

 その攻勢を緩めず、回転をしながら鉄の台風を払い除けて、腕に構えていた銃機――レオーニオが装備していた長銃によく似た兵装の銃口を輝かせます。圧縮したソウリョクを一気に発射して光の爆風を生み、銃器をいくつも湾曲させて爆発させ、海賊船自体に甚大な被害を与えていきました。

 

 しかし……海賊船はその出し惜しみ無しの決死の攻撃を繰り返し受けても、夥しい物量の武装は有効な手数を維持します。それどころか、船側に隠していた砲塔などを突き出して、私たちの行く手を阻みました。

 

 反撃の精度も少しずつ上がっており、お屋形様への攻撃が苛烈さを増していきます……武装破壊に集中しようとしたお屋形様の肩装備を撃ち抜き、間近で起こった爆風が私の顔を熱く焦がそうとしました。

 

「うあっ――きゃああああああっ!!」

 

『ぐッ……!! 風真、大丈夫か――ぬおっ……!!』

 

 崩れた体勢に慈悲を与えることもなく、砲台や機銃の全てがこちらを向き、集中砲火を加えてきました。視界を焼き焦がすような閃光が世界を覆い尽くし、お屋形様の鱗を深く剥いで、相次ぐ弾丸がその傷から血肉を抉り飛ばしていきます。

 

「お、お屋形様ぁッ!? ぽこべぇ!暁に変身して、お屋形様を――」

 

『動ずるなッ!! おまえには、果たさねばならぬ約束があるのだろう!!』

 

「っ……!! で、ですが……このままでは……!!」

 

『わかっている……!! 一瞬ではあるが……おれが活路を拓く!! ぬうっ――おおおおおおおおおッ!!』

 

 お屋形様は自ら機械の兵装を脱ぎ捨て、わざと弾丸の雨にさらすことで、故意に爆発を起こさせました。その炸裂した爆風と閃光に乗じて一気に上空へと舞い上がります。

 

 海賊船の防衛設備が事実を認識しないうちに、お屋形様が全身を震わせ、傷口から大量の血を流しながら顎を開いて口腔にソウリョクを集中させます。竜人の威気に合わせ、渦巻く光の粒子と煌めく火花が凝縮されていき――一際大きな波動が周囲に響き渡り、水面に大きな波紋を生んで木々を荒ぶらせました。

 

『迸れ――龍すら食らうガルダの焔よ!!』 

 

 お屋形様は台風の如き一息を湖に叩きつけ――発した熱線の刃で、湖面を一刀両断しました。世界が静止するほどの衝撃が空気を圧殺し、熱線の通り道には鉄をも融かす劫火が燃え盛り――湖面に巨大な水柱を立てて、爆発を起こすように気化させます。

 

 熱線でななめに斬られた海賊船は、大きく揺れ動きながら幾度も爆発を起こして船体を燃やし……鋼鉄の武装が融けて、どろりとひしゃげていく様子が見えました。

 

「お、お屋形様……!! これなら、さすがに……!!」

 

『が、はっ……!! い、や……まだ、兵器は生きて――……ぐうっ……!』

 

 習合していた八武信仰――その全力を投じた一撃で激しく消耗したらしく、呼吸を乱していたお屋形様は、そう言いきらないうちに身体をひねります。すると、一瞬前まで巨体があった場所を大岩のような砲弾が貫き――お屋形様の硬い翼に、鋭い爆風が穴を空けてしまいました。

 

「お、お屋形様ぁっ!? そ、そんな……あんなにすごい攻撃でも、ダメだなんて……!!」

 

『……ご、ほっ……!! 風真……構えて、おけ……!! このまま……おまえを、送り届けるぞ……!!』

 

「えっ……!? で、でもっ……このままだと、お屋形様は……!!」

 

『甘えを見せるな……ッ……!! おまえには……おれの心配よりも、為すべきことが……あるのだろう……!!』

 

「……っ……!!」

 

 お屋形様は大量の血反吐で咳き込みながら、渦巻くように発射された弾丸を体内に撃ち込まれ続け……その頼もしかった巨体をぼろぼろにさせ、ぐらりと体勢を崩しました。

 

 その力尽きた自然落下に見せかけた動きで、海賊船の猛攻をわずかに緩めさせ――背負っていた大太刀を振り抜いて真空の刃を飛ばし、甲板までの道を一気に斬り拓きます。そして、初回よりも捨て身で爆ぜた垂直落下によって弾丸の壁をくぐり抜け――最後の力を振り絞るように防衛網を突破しました。

 

 竜人の身体でも余裕を持って着陸できそうだった広大な甲板に、血まみれの巨体が転がるように衝突します。強い衝撃に備えていた私とぽこべぇでも、傷ついた背から振り落とされてしまいました。

 

「あうっ……!! お、お屋形様……ご無事ですか……!?」

 

『が、ふっ……!! お、おれは……外から船を攪乱して……生きている兵装が、甲板を攻撃しないように……仕向けておく……!! 後は任せたぞ……風真……!!』

 

「…………っ…………か、必ず、生きて再会しましょうね……!! 約束破ったら、タダじゃおきませんから……!!」

 

『……それは、怖いな……ああ、迎えに行くとも……! おまえが、何処に居ても……どれだけ時間がかかろうとも、な……!!』

 

 お屋形様は血の帯を船体に垂らしながら跳躍し、穴だらけの翼で空へと舞い上がりました。船から引き千切った装備を自らの力に変え、派手な爆熱を起こしながら、防衛機能の注意を惹いてくれていました。

 

 その痛ましい姿に、つい身を案じてしまいますが……私はその迷いを振り切って、肩に掛けていた宝刀をすらりと引き抜きます。

 

 焔が燃え広がっていく、人の気配がまったくない甲板の上で……私の視線の先に居たのは……白い聖装束から女の魅力をはみ出させ、黒光りする両手足を映えさせた赤髪の聖女でした。

 

「……まさか、わたくしの〝壁〟をこんなにも強引に突破してくる人がいるなんて……思いも寄りませんでしたわ♪」

 

 にっこり、と満面の笑みで私を出迎えたマルテーサは、神に祈りを捧げるように手指を組み合わせていました。

 

「……マルテーサ……!! もう、国やイサリビへの……竜禪への攻撃を止めて……!! そうしたら、かざまたちは……!!」

 

「くすくす……♪ 『お前を殺さずに済む』ですかァ? まあァ~、ずいぶんと物騒かつ無知で高慢な物言いですこと……♪ わたくしに心を折られて快楽に屈し、無様なアヘ顔とドロッドロのびしょマンを晒したこと……もうお忘れですかァ?♡」

 

「っ……忘れることなんて、できるわけないだろ……!! でも、此処には……その復讐で来たわけじゃない……! だから……!!」

 

「チッ……!反吐が出るほどに純真を気取るじゃない、他人の人生をメチャクチャにしまくる非処女のクセにさァ……! 身の程知らずが下品に鼻をムクムク勃起させやがって……叩き折りたくなるぐらいに生意気だワぁ……!!」

 

 マルテーサは柔和な微笑みを一変させて、剥き出した歯を軋ませ、額に青筋を浮かべて――ぶちり、と感情を爆発させました。おぞましさを感じるほどに苛烈な激情がソウリョクと重なって表情を壊し、くすんでいた色味の髪の毛を鮮やかな赤色に燃え上がらせます。

 

「ああ……ああああッ……!!あぁああああああああああーーーーっ!!!! ウザいキモいダサいキショい終わってるッ!! どいつも、こいつもっ……あたしを小馬鹿にしやがって!! 全部……全部、終わらせてやるよ……!!」

 

 抱えた頭を振り乱し、ぶつ、ぶつ、と全身から湧き出る醜悪な黒色の瘴気を身にまとい……その憤怒を示すような鮮烈な赤色に染まった姿へと変身しました。羽飾りが付いた黒い帽子と豪奢な外套が、闇色に明るく揺らめく焔のような色味の衣服を縁取っていました。

 

 ……当時の世間知らずだった私にはわかりませんでしたが……あれは、〝女海賊〟の姿に他なりませんでした。眼帯を外しているところも含めて……皆殿がよく知る〝本物〟とまったく同じ姿だったのです。

 

『ゲラゲラゲラゲラ!! あーあ、キレちゃいました、ブチ切れちゃいましたァ……!! せっかくのメイクが台無しなんだワぁ……!!』

 

 溢れ出た瘴気が女海賊の背後に浮かび、底知れぬ恐怖の中から、腐肉が付いた骨の怪物が現れます。双眸にはマルテーサと同じく色味の異なる宝石が怪しく輝いており、その骨身の両手には、大振りの曲刀と銃身の長い単発式の銃が握られていました。

 

「あたし……この醜い姿、好きじゃないのよ……。あの子たちに、見られたら……生きていけないの……。だ、だからね……くすっ……♡ み、みひっ……み、みみ、見た、ヤツっ……全員ッ……!ブッ殺さなきゃ……アハッ……!!♡」

 

『そうなの~!わたくしって、昔ッからそうなんですわよねぇ!! わたくしたちの本気ィ、ここでイヤと言うほどマンキツさせてあげるワぁ!! ギャハハハハハァッ!!』

 

 マルテーサも腰の革帯から、背後で嗤う悪魔と同じ武装を引き抜いて両手に構えます。ふらふらと身体を左右に揺らしながら、くつくつと暗黒的な微笑を漏らし続けていました。

 

「……ぽこべぇ、暁に変身してくれる? あのわからず屋とまともに話をするなら……ちょっと、先にやらないといけないことがあるかもだから……!」

 

 歯噛みした私は、ぽこべぇに朝焼けの輝きを灯してもらい……薄闇が蔓延る船上を、明星の光で照らします。変身した明星・暁の手に、背負っていた〝日輪〟と〝月輪〟……そして私が生成した刀を握らせ、二対二の様相で対峙しました。

 

「ふふっ……アハハっ……アハハハハハッ!!♡ 名はマルテーサぁ、命は〝快落〟ゥ! それでは――ありがたく『命をお大事に』ィッ!!」

 

「ッ……!! 風真家――いや!イサリビが武士、風真いろは!! いざ、参るッ!!」

 

 直線的に前へ跳び出た私と、跳ねるように飛び掛かってきたマルテーサの刃が激しく重なり――その頭上では、暁と悪魔の武器が火花を散らして交差します。

 

 それが決戦の火蓋だと言わんばかりに、飛び知った閃光が滴り落ち――譲れないものを懸けた戦いの幕が、今此処に切って落とされたのでした。

 

 

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