数百年の時を経て、守護者は隔離されていた天崇の中核同士を合流させることに成功した。薄暗い闇の中で空を裂き、風切音を光らせながら鞘に滑らせ――糸を引きながら垂れていた女蜜を着物で拭った。
守護者は此の地を震わせる脈動に、旧き信仰と呼応して目覚めたディヴァ信仰の真髄の気配を感じながら、同質の力を孕んでいた美女に駆け寄る。
褐色肌が雅に艶めく肢体は小刻みに痙攣し、金輪が先端を飾っている乳房や白濁に濡れた大腿の肉を震わせていた。
目のやり場に困りながら、竜皇は汗ばんだ肩に手を触れて、美女の端正だった顔――下品に舌を垂らして夢想を見つめ、頬の赤みが引かないままの顔を覗き込む。
「これ、しっかりせんか。おなごが野外で肌を晒すものではないよ」
「はへっ……はへぇっ……!♡ へ、へひぃ……♡あ、貴方が……ふぅ……ブスジマ様の〝贈り物〟を……ぉっ……壊して、しまったのですか……?♡」
「……其方は、斯様な拷問器具を〝贈り物〟だと言うのか。其方を……いや、此の地の旧き宝を辱めていた、あの悪趣味な玩具を……そのようにありがたがるのか」
「ふぅ……ふぅ……ふ、ふっ……フフフフっ……♡ 彼の愛は……人には、理解できませんよ……。もちろん……信仰されて神性を宿すようになり、不死になっただけの人間――貴方にもね……」
女神はツンと上向いた乳首と汗ばんだ乳房を手で覆いながら、震える脚で立ち上がり……じょろろ、と快感の残滓を股から漏らしながら妖艶に微笑んだ。
その温厚な表情には似つかわしくない、強大な威圧感を放つ姿に総毛立ちながら、守護者は背負った二振りのうちの一つ――手中に収めたばかりの〝アメノムラクモ〟の柄を握る。
「遥か天に燃ゆり、遠き地を見守る神たる私との〝同化〟を受け入れなかった悪い子……旧き信仰の御神体、アメノムラクモ……。貴方が背中に差したもう一本のそちら、天神・ディヴァを護る〝クサナギノツルギ〟と合わせて、この国の太陽信仰の象徴でしたね……」
「クサナギノツルギ……同化、だと……! 異教を司る其方に、そのようなことができるはずが……!」
「フフ……普通の宗教ならば、そうですね。ですが、卑しき人々が曖昧かつ身勝手な信仰を抱くキョウでは『より強大かつ簡易で都合がよいもの』に習合されていく……貴方もよく知る、胡乱な歴史が物語っていることです」
「……ッ……!」
「ああ、失礼。その形代の正しき名すらも知らなかった、ただの御人……私が守るべき子羊ならば、気づけなくても自然なこと。買いかぶってしまい、申し訳ありませんでしたね」
守護者を自然と見下しながらも蔑むことはなく、慈母のように柔和な笑みを見せる太陽神は――天崇の神気が抜けていく空気に手を翳し、半透明な光の膜を呼び出して素肌に羽織った。それでもくっきりと見え続ける桃色の乳首と装飾や濡れた内腿が、堕ちた女神の魅惑を淫靡に薫らせる。
「……おれの存ぜぬことすら押さえていようとは。随分と、こちらや此の地の事情に詳しいようだな」
「ええ、まあ、間接的に得た知識ですが。ブスジマ様が、イサリビとやらに固執していましたもので」
「……其方は何故、毒島という男に隷属するのだ。話を聞く限りでは、神の代行者を騙る異常性欲者ではあるが人間なのだろう……其方の言う、守るべき子羊の一人ではないのか」
「…………それは、そうですね……。敬虔な人の子から向けられた信心には〝全能の神として信仰されている私〟は応えなければいけなかった……ですが、私には彼の特異な熱意を報わせることができません。今は『いつかは彼の願いも必ず叶える』という契約の下に、神の信憑性を維持しているのですよ」
ソルは物憂げに視線を落としながらも、どこか無機質な態度で手遊びを始めた。
「異なる世界、異なる時間……あの方が心の飢えに吼えたとき、私はその強い意志を汲みました。神にも、人にすらも見向きされなかった孤独な獣……その内で〝私〟のように燃える狂気的な熱意こそが、必然のように怠惰へ堕ち行く人類を導くことに期待して……彼の願いを一つだけ叶えようとしたのです」
「……叶わなかった結果が、其方の隷属なのか」
「……えへっ♡ 〝天を司りし万能の女神〟ともてはやされていた私が、筋金入りの無神論を簡単に捨ててくださった彼の小さき願いすらも叶えられず……『じゃあもういいから僕の所有物になっておけよ』と不遜すぎる命令をされてしまいまして……ああッ♡私としたことが、なんと無様な末路でしょうッ……♡」
次元の頂点に立ち続けていた神が、急転直下で中年男の所有物となった――そのせいで被虐性癖をこじらせた美女が、恥じらいに赤らめた頬に手を添えてわずかに悶える。
守護者は崇高な神代の終わりを察したのか、苦虫を噛み潰したように顔をしかめて、おぞましいものとして美女を見ながら口を開く。
「陽光の女神よ。件の毒島という男は何処に居る――此処に居ると踏んでいたのだが、其方のように強大な気配は感じぬぞ」
「さあ? 私の胎内をカタナでほじるように固定してから、しばらくは一緒に居てくれましたが……途中で視姦にも飽きてしまわれて……『面倒な八武信仰の一つを無力化できそうか確認してくる』とだけ言って、どこかへ行ってしまいましたので」
「……八武信仰の無力化……確認……まさかッ……!!」
竜皇は、目の前で無防備な姿を晒している敵対勢力の要石を見て逡巡し――〝攘夷〟の使命を果たす絶好の機会を認識して二の足を踏みながらも、身を翻して神殿の外へと向かった。
八武信仰再興の進捗を外部の人間が確かめられるものは、この世に一つのみ――風真いろはの下腹部に刻まれた主柱のあかし――〝八武の紋〟だけだった。
……………………。
お屋形様がネムフリャの街へと出立した後のことでした。レオーニオは研究所に戻り、クマルンとその一味はイサリビの漁師たちと共に近海での食料調達に向かい……ウェニキスはいつもどおり、ふらりと猫のように何処かへ姿を消してしまいました。
その頃になると、ぽこべぇはウェニキスのことを過剰に気にかけるようになっていました。そのたびに、私は「女の子にはいろいろあるんだよ」と伝えていたのですが……その不安や焦燥の根っこを取り払うことは、私にはできませんでした。男の子ってむずかしいですね。
……正直なことを言うと、ウェニキスの様子がおかしかったことには私も気づいていたのです。でも、なんだか……彼女はそのことに触れてほしくないような……『いつもどおりでいてほしい』というような雰囲気を匂わせていたので、敢えて聞きだすようなことはしませんでした。ウェニキスは一度おへそを曲げると、その後に長く尾を引く人でしたから。
そうなると、私とぽこべぇにできることはただ一つ――イサリビの平和を守り、外敵の襲撃に備えることしかありません。お屋形様が不在の今はイサリビの守護に努め、竜禪を信仰してくれる者たちの〝今日〟を守るために備えていました。
「いろはちゃん、頼まれていた宝刀の勾玉ができたよ。あと、手裏剣とくないと……クマルンだっけ?あの子が持ってたっていう銃も鍛えておいたから」
「おお~! ありがとうございます、アマネ殿! これでいろいろと捗るでござるよ!」
「それと、宝刀の力を扱ってきた経験を使って……あや――余さんの魔力を補助する鈴飾りも作っておきました。どうぞこれを!」
「ほんと!? やったー!ありがと~! ではさっそくね、髪のところにちょちょいと付けまして……おおっ!!力がもりもり湧いてくる余~!」
イサリビの中で、最も見晴らしが良い丘の上で……全方位の見張りを行っていた私と余さん。お菓子を持ってきてくださったアマネ殿から支援物資を受け取りつつ、雑談を交わしていました。
アマネ殿は、余さんがイサリビに来てからいろいろと関わることも多かったようで、もうすっかり仲良しでした。ウェニキスやレオーニオ……それにクマルンとも仲良くなるのが早かったので、不思議な縁を持っている方なのだと思います。
「それでね、コロタのじいちゃんがくれた野菜を切ったら、中からでっかい芋虫が……!」
「うげっ、うそぉ!?そんなことあるの……!? ひえー、なんだかお料理が怖くなってきたぞ……!お鍋とかお野菜たくさん使うもんな……今度のあれ、ちょっと考えさせてもらいますかね……」
「えー、それは困りますよ……! かざま、今度のお鍋会を楽しみにしていたのに……!余さんのお料理食べたいでござる~……!」
レオーニオたちが動かしている兵器によってやや物々しい雰囲気が漂ってはいるものの、〝平和〟と言っても差し支えがないほどにのどかな風がイサリビ全土に吹き渡っていました。
――『明日も同じような日が訪れる』。何の根拠もないのに、何故かそのように思えてしまう、穏やかで温かな空気の中で――私の肩に、ぽん、と何かが置かれます。
「どうしたの、ぽこべぇ――…………え……?」
あまりにも〝普通〟のことすぎて。あまりにも、何事もなさすぎて。
最初は、ぽこべぇが肩に乗ってきたのかと思ったのですが――足元で首を傾げたぽこべぇの顔を見て、私の身体が反射的に硬直しました。
……その違和感には、どこか、覚えがありました。ですが私は、そのことを信じたくなくて……否定するために、呼吸を乱しながら、恐るおそる振り返ります。
「あはは、すごい顔しとる――ん……? ござるさん、どうしたの……ッ……!?」
すると、そこには――。
「サルウェ……じゃねえや。こんにちは、いろはちゃん。また会いに来たよ」
――実際には、一度顔を合わせただけの関係性でしたが……私と無数の因縁で繋がれている男――毒島三段腹が、私の顔のすぐ近くで醜悪に笑っていました。
「なっ……あ、れ……えっ……!? この顔……あの、夢で見た男……!?」
「この人ッ、何処から……!! 余の気配探知にも引っ掛からずに……!?」
「アマネ殿は下がって!余さんは――」
「――言われんでもッ!」
私は武装していなかったアマネ殿を背中に守りながら、並び立ったぽこべぇと同時に抜刀します。そのときには既に、余さんが二振りの刀を握り締めて、毒島に向かって飛び掛かっていました。
「警戒してるとこに、のこのこと出てくるんが悪いからねッ!!」
余さんは振りかぶった刀身に霞色の大焔をまとい、周囲の草花を焼き焦がすほどの火力を逆巻かせて、毒島のふくよかな腹を十字に切り裂きます。肉を飛ばして大量の血を噴き出させ、その飛沫を蒸発させて空気をべたつかせました。
「痛っ……!! くっそぉ、速いな……それに遠慮もない。さすがは鬼神様かな」
「無駄口なんて叩く暇があるんかなぁ!? 女の子を嬲る悪い敵ッ……余がここでッ!全部、終わらせちゃうよ!!」
ソウリョクのような輝きを全身で燃やした余さんは、熱風を巻き上げながら――最大火力を超えた灼熱で毒島の身体を切り刻み、細かな肉片を炭化させていきました。その猛烈で無駄がない斬撃は、私やぽこべぇが出る隙も与えず、黒煙で世界を包み込んで――毒島の白い聖衣を灰と化させ、荒く斬り放した肉塊と消し炭になった骨だけを残させました。
数百の刃を振り切った余さんが息を切らせると、陽光を遮っていた炎の嵐が晴れていき――黒い帳が上がります。その場所には……長かった悪夢の終わりを告げる、無惨な死骸と焼死体の臭いだけが残っていました。
「……はぁ……はぁ……! 魔力、かなり使っちゃったけど……あの白い子の、仇だからな……!」
「お、終わった……終わったの……!? じゃあ、かざまたちもイサリビも……これで、未来が……!!」
私と余さんが、安堵に力を緩ませると――太陽の光を遮っていた黒煙が、さわやかな風に流されていきました。
すると、天を覆う三つの輪が妖しく輝き……陽光が差し込んだばかりの場所を目がけて、強大な力を何層にも重ねるように放ちます。毒島三段腹だった残骸が眩い光を放ち、渦巻く力の波動によって包まれました。
「な、なに……!? 余さん、いろはちゃん……いったい、何が起こって……きゃあっ!?」
「アマネ殿っ……!くッ、ううっ……!!」
「……なんだ、この力ッ……!? 魔界でもあり得ないほどの圧が……!こんなの、反則だよ……ぬ、わああああっ……!!」
大嵐のような勢いに弾かれ、私たちは踏ん張る地面を抉りながら強制的に後退させられました。そして、どくん、どくん、と脈動していた激しい光の奔流が収まっていき……その中心地には、灰になったはずの聖衣を身にまとった、無傷の毒島が蘇っていたのです。
「あー、死ぬかと思った。いや、たぶん何十回分かは死んだのかもしれない……あやめちゃん、容赦ないよね」
「……な……ん、で……生きて……? 臓器も、肉も……再生できないぐらい、焼き飛ばしたのに……!!」
「なるほど、やっぱりセンスがあるね。それは僕を痛めつける最適解なんだが……〝殺しても死なない悪役〟なんて、こっちの世界ならお決まりすぎて退屈するほどだろう? 天使、悪魔、妖怪……なんでもいい。君の故郷にも、そういうものが居たはずだ」
「た……たしかに、そういう人たちもいるぞ……! けど……お前は、違うじゃないか……!?」
「そうだ、全部違うね。君が言う『人間様』ってヤツだよ。僕自身は大した力を持っていない……けれど、〝道具〟には恵まれたみたいでね」
毒島は手を天に翳し、さらなる力を得て自身の存在感を大幅に強めました。はち切れんばかりに力を凝縮し、全身から光を放つ腹の出た身体は……私や余さんどころか、変身したお屋形様を軽く凌駕するほどの威圧を放っていました。
しかし、同時に――彼が自分でも言ったように、〝普通の人間〟を見ているかのような平凡感を損なっていませんでした。私はもはや、目の前で何が起こっているのか、頭と心で正確に把握できていなかったのです。
「ふ、ふんっ……!どれだけ力を得ても、人間は人間ってことだもんね……! 今度は骨身すら一片も残さず、灰燼に帰させてあげるぞッ!!」
「か、かざまも参るでござるッ! ぽこべぇ、〝暁〟にッ!!」
私と暁、そして先手を切った余さんは――まるで、全裸で山に入ろうとする子供のような心許なさを抱えながら、毒島に向かって刀を振り抜きました。
……………………。
力を得た毒島は、手を振り抜くだけで強力な〝重圧〟を放って私たちの臓物に深手を負わせてきました。余さんと私、暁が捨て身の覚悟で懐に潜り込み、皮膚を切り裂き、肉を抉り飛ばしても――陽光が燦燦と降り注ぐ場所では、すぐに傷が塞がってしまうのです。
糠に釘を打つような攻撃を重ねて、重たい反撃を受け続けて……やがて、暁が霧消してぽこべぇが倒れました。そこで勝負を急いだ余さんと私が息を合わせ、決死の突進と刺突を繰り出したのですが――私たちの頭を片手ずつで掴まれ、軽々と持ち上げられてしまいました。
「ぐ、がっ……ああああああああああっ……!! 魔力が、吸われる……!! こんなのっ……くぅううっ……!!」
「余、さんっ……しっか、り……ぐっ……ううっ……!! あ、頭、割れる……首が、ちぎれ……痛いっ……!あああああああっ……!!」
「余さん、いろはちゃんッ!! おい、やめろ肉団子……!! ボクの友達に酷いことするなよ……!放せ……放してよッ……!!」
私たちを救おうと、アマネ殿が素手で毒島の腹肉を掴み、握り潰そうとしていたようですが……刀による斬撃も効かない相手には当然効かず、いじらしい抵抗に微笑ましさを生むだけでした。
「クク……〝てぇてぇ〟なぁ。ホロメンのイチャイチャ、懐かしいなぁ……ぐふ、ぐふふっ……! ほっぺた痛くなるよなぁ……!愛しすぎて、もう全部欲しくなるよなぁ……!!」
毒島は純白の輝きを放ちながら、腹の底から醜悪などす黒い感情を剥き出しにして、大口を開けて笑っていました。その不気味さに勇気を呑まれてしまったアマネ殿が、友達のために突き出した手を離して……涙を流しながら、一歩ずつ後退してしまいます。
「あ、まね、どの……! そのまま……にげ、て……!ぐ、ぎっ……ぎぎっ……!! ぽこべぇ……連れ、て……逃げてッ……!!」
「や、やだ……いろはちゃんも、余さんも、死んじゃう……やだぁ……!!」
「ハッハッハ! そう言いながらおしっこ漏らして、足が勝手に後退しちゃってるね!あー可愛い!マジ天使!スクショ取りたいな!ハハハハハッ!!」
「……ぬ、ぉおおおおおおッ……!! 余の、友達のぉ……頑張った姿を……ッ……!笑うんじゃねえよッ……!!」
「んッ……!? まだ、吸い尽くせてなかった魔力があったか……!悪魔どもの力は、やっぱりアテにならないな……」
余さんは全身から霞色の焔を噴き上げて、炭化させた毒島の腕を蹴り折りながら拘束から逃れました。肩で息をしながら、地面に転がっていた刀を取り戻し、アマネ殿を背に守るように身構えます。
その一方で、私はなけなしの力を使っても、頭蓋を握り締めて割ろうとする苦痛から逃れることができませんでした。それどころか、すぐに再生した片腕で、さらしや装束を引き千切られて……漏らした小便で濡れていた股間をまさぐられます。
「ふきゃああっ!?♡ や、めろっ……♡そこはっ、お前が触っていい場所じゃっ……あっ……あんっ……♡」
「ほうほう。膣内は濡れていないが、十分に柔らかいな……これなら、このままブチ込んでもすぐに慣れるだろう」
「ッ……戦ってる最中に、そういうことまでするんか……!! もう、余……本気で怒ったぞ……!!」
余さんは瞳を狭め、自らを焼き焦がすほどの業火を放ちながら、毒島に飛び掛かりました。まずは私を助けるために、両腕を一文字に切り落とそうとしたのですが――圧縮された力の塊が刃を弾き、その渾身の一撃は容易く防がれてしまいます。
「ククク……どうしたんだい、あやめちゃん。さっきまでの鋭い刃が、ただのなまくらになっているよ? もう魔力どころか、体力も使い果たしちゃったのかな? そんなんで僕に勝てるの?いろはちゃん、助けられるの?」
「う、うるさいなぁ……! 余がホントのホントに本気出したら、すぐに終わっちゃうこともわかんないの……!? 余裕ぶったお前に、すぐ『ひぃひぃ』言わせてやるぞッ!!」
濡れ始めた股座をまさぐられる私を見据えて、余さんは刀を構えて斬りかかりました――。
……………………。
――結果だけを述べますと……私たちは、圧倒的な力を持つ毒島に勝つことができませんでした。
私たちは敗者として毒島に囚われ、荒縄で縛られて、地べたを引きずられながら運ばれていきます。異教に背いた見せしめとして、ウェニキスやマルテーサのように責め苦を与えられるのです。
……そう、覚悟したときでした。
ソウリョクを搾り尽くされ、涸れ果てた身体には……抵抗する力など残されていませんでした。毒島が私たちの膣内に指を入れて勝利を確信し、わずかな油断を見せていたときに――イサリビの中で生じたソウリョクが、私の胎内に注がれたのです。
地面に擦り付けられて痛む身体の中で、極限状態まで追い詰められた心が激しく揺さぶられ――どこかで聞いたことがあった声が、胸の内で響きました――。
『後世に紡がれた、信仰の軌跡が見えました。血筋の末裔で、呪いに転じた想いすらも救ってくださった勇敢な貴女に――兄様の〝大切なもの〟を守れるだけの祝福を――』
――かつて私が、その痛みを忘れないように刻み込み……心の中に残していた〝幻〟の一文字。そのあえかな想いの軌跡が、強い光を放つとともに消えてゆき――その代わりに生じた祝福が、私たちを温かく包み込んだのでした。