サポートギターとして、今度の収録の打ち合わせを終えて。
騒がしい飲み屋街を歩く。
疲れたな・・・
ここ最近ずっと食欲が湧かなかった。
そしてお酒を飲みたい気分だった。
お酒と言えば・・・
脳裏をもう会えない人の横顔が過ぎる。
どこか適当なお店に入ろうかな。
でも1人で知らないお店に入りたくないな・・・
そんなことを考えながら、トボトボ歩いていたら。
「後藤さま! 後藤さまですよね!」
呼び止められた。
・・・様付けするあたりファンかぁ。
普段だったら嬉しいけど、あんまりファンサする気分じゃないなぁ。
「そうですけど・・・」
声へ振り返り、息を飲む。
キャミソールみたいな薄着に編んだ髪。
アルコールに上気した顔。
『廣井きくり』に顔立ちや雰囲気が似ていた。
どきりとしたが、すぐに正気に戻る。
冷静に見ると、そこまで似ていない。
お姉さんが持っていた破滅的、孤高な雰囲気はない。
せいぜいお酒にだらしなさそうな退廃的な気配を感じるぐらい。
それにこの人、おっぱい大きいし。
絡み合った夜のお姉さんの裸体が脳裏を過ぎる。
骨が浮き出るまでに痩せ細った、死の気配を感じさせる体は綺麗だったなとぼんやり と思い返した。
お姉さんにはもう会えない。
・・・この、お姉さんに似ている人を見ていると、お姉さんとの思い出が引っ張られて次々に浮かんでくる。
「いやー、私いわゆるキャッチなんですけど、まさか後藤さまに会えるなんて。
シフト入ってて良かったなぁ。あはは。もし良かったら飲みに来ませんか?
安くしときますっつーか、貢ぎますよぉ」
「・・・よろしくお願いします」
「うぇっ?! 言っちゃ悪いけど、芸能人が怪しいキャッチに付いてかない方がいいよ!
あ、自分で怪しいって言っちゃった。てへ」
本当に怪しい人は自分のことを怪しいなんて言わない。
根は良い人だなぁ。
お財布に結構入ってるし、ボッタクられても大丈夫・・・かな。
「もう少しあなたと話したいと思って・・・着いていったらダメですか」
「うー。最初から断られると思って言わなかったんだけど・・・ガールズバーだけど平気?」
ガールズバー??
ガールズバンドみたいなもの?
女の子のBAR??
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繁華街の路上で会った『ガールズバー』とやらのキャッチさんに着いていく。
もう会えない、ベースとお酒を愛した『お姉さん』・・・に雰囲気が似た店員さん。
連れられて入ったお店は雑居ビルの2階にあった。
時計は19時を回ってすぐ。
早い時間のせいか、お客さんは私の他にはいない。
カウンター席にも店員さんが1人しかいなかった。
連れてきてくれた人みたいに、呼びこみに行ってるのかな。
「あら、カッコいいお姉さんね」
カウンターで準備をしていた店員さんが振り返った。
「へへっ、私の推しなんだ。見つけてナンパして来ちゃった」
「ん? もしかして結束バンドの人・・・?」
「そうだよ! キャッチしてたら見かけて声かけちゃってさ。貢ぎたくてナンパして来ちゃった!」
「あんたねえ〜、ま、払うもの払ってくれたらどうでも良いけど」
キャッチの店員さんは、店長らしき人に、へへっと笑うとカウンターに入って行った。
「後藤サマ、いらっしゃい! 何飲む?」
「じゃあ・・・ハイボールで」
店員さんはハイボールと、頼んでいないミックスナッツを出してくれた。
本当に奢ってくれる気でいるみたい。
店員さんも同じくハイボールを持ってきていて、杯を掲げた。
「かんぱーい!・・・それにしても、どうして着いてきたん?」
「・・・憧れていた人に似てたからですかね」
「おー、そいつは光栄だね」
何かを求めていたわけじゃない。
お姉さんに似た人と、お酒を飲みたい気分だっただけ。
ハイボールをちびちびと舐める。
目の前の人と会話をしつつ思い出に耽る。
店員さん・・・いやキャストって呼ぶのが正しいらしいけど・・・だんだんカウンターの奥にいるお店の人も増えてきて・・・
話下手の私にしては会話が弾んで・・・
どんな話を振っても興味深く相槌を打ってくれて・・・
ガールズバー楽しい!
ギャルっぽい女の子がチヤホヤしてくれる。
なんていうか、皆さん聞き上手。
話を聞いてもらうのが仕事だもんなぁ。
私に結束バンドの『後藤ひとり』であることを求められないし。
圧倒的に気が楽。
だから、あっという間に時間は過ぎていて。
「へへっ、私のシフトもう終わりなんだ。これからはプライベート♪ ちゃんと会計持つからねぇ〜」
対面で話を聞いてくれていた店員さんが隣に座っていた。
肩が触れ合うような隣に回ってくる。
そのまま何度目かの乾杯。
そんなときに電話がなった。
仕事関係かな・・・
楽しいところだったのに。
コミュ障には無視することは出来ない。
つい確認してしまうと、『リョウさん』とスマホには浮かんでいた。
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リョウさんからの電話に出て見ると────
「ちょっと歌詞のことで今話したかったんだけど・・・もしかして外で飲んでる?」
「ガールズバー?? そうゆうとこ行ってるの? へぇ、ロックだね」
「近くにいるし、行ってみるよ。歌詞? まぁ、それは後でいいや」
予想外の反応が返ってきた。
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・・・そんなこんなで、ガールズバーにリョウさんが現れた。
ドアが開いてリョウさんが姿を現すとと、部屋の空気が華やかになった気がする。
学生時代からさらに身長も伸びて、男女を超越する妖しい魅力は今も成長中。
「キャー! 後藤サマに続いて、リョウ様まで・・・」
「え、テレビで見るよりすごい。雰囲気ある!」
お姉さんたちの反応良いなぁ。
やっぱりモテるんだな。
「どうも」
リョウさんは黄色い声にさらりと返事をして、私の隣の空席には座らず、お話していた店員さんを隔てて座った。
「えっ、なんで私の隣に座らないんですか? 空いてたのに」
「せっかくこんな珍しい場に来たんだから、話す席に座らないとでしょ」
「後藤サマとリョウ様に挟まれるなんて・・・プリンセス喜多ポジションじゃない・・・?!
えっといくら払えば・・・?」
私とリョウさんに挟まれた店員さんはワタワタとしていた。
なんかファンの間で、喜多ちゃんが姫で、私とリョウさんが両脇に跪くナイトみたいな扱いをしている人達がいる。
確かにリョウさんは中性的な美形でナイトかもしれないけど、私は違うんじゃあ。
スーツでいることが多いからSPみたいに思われてんのかな。
「じゃあノンアルのカクテル、適当にもらえる?」
「あれ? リョウさん、飲まないんですね」
元々お酒に強くなくてあまり飲まない方だけど、全く飲まないのは珍しい。
「・・・なんか気が乗らなくてさ」
ちらりと、リョウさんは店員さんに目を向けた。
きくりお姉さんに、どことなく似ている店員さん。
リョウさんもお姉さんのことを思い出してるのかな。
「・・・逆にぼっちはよく飲めるね」
お姉さんの命を持ち去ったアルコール。
お姉さんが短命だったのは、お酒のせいなのは間違いない。
けれど。
「お姉さんはお酒が、そしてお酒を飲む場が好きだったから。嫌いにはなれないです」
お酒のある場には、なんだかお姉さんがいる気がする。
だから私は飲む空間が好きだ。
「そっか。ぼっちらしい。・・・せっかくだから乾杯しよっか。ほら、そこのお姉さんも合わせてさ」
「え、私もいいの? じゃあ失礼して・・・」
除け者にしたみたいですみません。
リョウさんが頼んだシャーリーテンプル・・・ハイボールにシロップ入れたヤツだっけ・・・にグラスを合わせた。
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店員さんに一通りのファンサをして、その場はお開きとなった。
支払いは私持ち。
店員さんは払ってくれると言ってたし、リョウさんは平気でたかる気だったけと問題あるだろうと払った。
「ぼっち、少し歩こうよ」
「いいですね」
賑やかな繁華街を二人、無言で歩く。
夜風が気持ちよくて、悪くは無いと思えた。
昔からリョウさんとの無言の間は苦痛ではない。
「ぼっち、狙っていた女の子奪ってごめんね」
ぽつりとリョウさんが、変にシリアスな雰囲気で口を開いた。
「別に狙ってないですよ」
いつの間にかベッドインしていることは多々あれど、私から狙いにいったことなんてない。
「まぁ。ぼっちは誘い攻めだからね」
なぜか楽しそうに、リョウさんは笑った。
そのまま手を引かれる。
「埋め合わせもするからさ、ちょっとゆっくり話をしようよ」
行き先にはホテルがあった。
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リョウさんはホテルのソファーにバックを放り投げると、自室かのように自然に冷蔵庫からサイダーのペットボトルを取り出した。
机に並んでいたグラスに注ぐ。
「ぷはーー。ぼっちも炭酸飲む?」
ツマミ片手にお酒を飲んでたせいか、それともリョウさんとホテルに来ているというシチュエーションに緊張して喉が渇いていた。
「いただきます」
「召し上がれ」
素直に受け取り、グラスに注がれたサイダーを飲む。
冷えた炭酸が喉に心地よい。
リョウさんは疲れた雰囲気を隠そうともせず、気だるげにベッドに寝転がった。
大の字に手足を放り投げている。
「最後まで、きくりさんには認められなかったなあ・・・」
くたびれた声で、ぼそりとこぼした。
お酒を全く飲まなかったりと、様子がおかしいとは感じていた。
ガールズバーの店員さんにお姉さんのことを思い出して、リョウさんはそのまま引きづっているみたいだった。
「実はさ、ぼっちのことを嫉妬していたんだ。きくりさん、同じベースの私を飛び越えて、ギターのぼっちばっかり気にしてたからさ。
・・・いつか演奏で見返そうって思ってたけど、ぼっちのバンドのベーシストで終わっちゃったよ」
「お姉さんが私のことを構ってくれていたのはそうですけど・・・リョウさんのことはちゃんと意識してましたよ」
SICK HACKの曲やお姉さんの演奏の中に、結束バンドの曲に宿るリョウさんの匂いは感じられた。
お姉さんは音楽に対して真摯だった。
そしてリョウさんが手がけた結束バンドの音は自慢の曲ばかりで、しっかり評価していたと思う。
「ぼっちにはそういう風に見えてたんだ。・・・ぼっちが言うならそうなのかもね」
あまり納得してない声。少し壁を感じる。
「今だからいうけどさ、バンドマンとしてきくりさんのことは尊敬していたんだ。
『ベースボーカル』だよ?
私も結束バンドの曲でベースボーカルやったことあるけどさ、難しすぎる。演奏のリソースがガリガリ削られて、いっぱいいっぱいになってた。とにかく必死で歌い切ったよ」
ベースボーカル。難易度はギターボーカルとは次元が違う。
ボーカルは曲の中心のポジションで、ベースはギターやドラムを土台として支え、束ねる役割。
全くやっていることが違うため、同時進行で一人二役やるようなもの。
ベースボーカルとは演劇で例えるならば、主演を張りながら、ハンドサインで舞台装置を指揮する様なものだ。
リョウさんがベースボーカルで1曲やるときは、ベースの仕事がやりやすいように編曲した上で、その曲の習熟度を限界まで上げて、ライブにて披露していたっけ。
・・・お姉さんは当たり前のように、『ベースボーカル』をポジションとしてこなしていた。
ギターとドラムをベースで支えて、自ら歌詞を書いて作曲した歌を振りかざし、圧倒的なカリスマでファンに君臨していた。
天才ベーシストという呼称は、決してお姉さんの自称なだけではなかった。
「きくりさんには、一生かけても追いつける気がしないよ」
サイケデリックというドマイナージャンルでなければ。
重度のアルコール依存症という人物像でなければ。
SICK HACKは、インディーズのトップ程度には収まっていなかった。
なんて、リョウさんは鬱々とつぶやいている。
・・・はっきり言って、リョウさんらしくない。
「売れるなんてどうでもいい。自分の音楽をやれればそれでいいって言っていたリョウさんはどこへ言っちゃったんですか」
「・・・昔の発言をよく覚えているね。その意見を曲げる気もないけどさ、ナーバスになる夜もあるってこと。かっこ悪くてごめんね」
ばつが悪そうに、リョウさんは言葉を続ける。
「最初に、ぼっちが歌詞を作ってきたきたときに、個性を捨てたら死んでいるのと一緒って話をしたよね。
きくりさんの個性といえばさ、飲酒じゃん。365日、ほとんど24時間酔いっぱなし・・・・・・。
酔ったくらいで天才になれるわけはないはずだけれど・・・私からはお酒ありきの天才に見えたよ」
「・・・お姉さんは臆病だったから」
臆病さを吹き飛ばしてくれる何かを求めて。
お姉さんが得た答えはお酒だった。
だから、お姉さんは自分が愛した世界を音楽で表現して、その世界に君臨した。
サイケデリックな世界の住人。
お酒を飲まない廣井きくりは、サイケデリックではない廣井きくりは『廣井きくりではない』。
それは死に至る個性で、呪いだったっと思う。
「・・・大槻コヨコってさ、コミュ障だけどハイスペックじゃん」
「まぁ・・・」
お姉さんのお葬式で号泣していた姿を思い出す。
まだ引きずっているのかな。それとも立ち直ったかな。
「大槻コヨコが真人間としてやっていける能力を100、酔ってないきくりさんは平均的な50として・・・泥酔することで10まで真人間から逸脱してたって私は思っている。
ロックってさ、爪弾き者の遠吠えだから、
どれだけ『普通』から逸脱しているかがカリスマの根源で、きくりさんはそれを体現していたように思う。
私は小さいころから人から感性がズレているって言われてて・・・。その個性を大事にしていけば何者かに成れると思っていた。
・・・でも私はヘタレだから。普通を投げ捨てて、破滅へ向かって進むようなことはできなくて・・・きくりさんの生き方がずっと眩しかった・・・」
わかる気がする。
私も、ああいう風に刹那的な生き方に憧れを感じたことはある。
SICK HACKのファンの多くも、お姉さんの生き様に魅せられた人に満ちていた
「酔わないままにきくりさんが音楽を初めていたら、もしも中学とか高校生のときにバンドを初めていたらどうなってたんだろう・・・」
酔ってない、お姉さん。
お酒という選択肢を取らなかったお姉さん。
お姉さんにとってお酒は、ブレーキを壊すもので、アクセルをべた踏みする理由で、きっとガソリンそのものだった。
お姉さんはお酒有りきのミュージシャン。
お酒を飲まない廣井きくりは、私の知っているミュージシャンではない。
酔っていないお姉さんは、物静かで気弱そうな大人の女性で、まるで別人だった。
お酒と距離を置いて長生きして欲しい気持ちはあったけど、それでも。
お姉さんの音楽が好きだった。
リョウさんは、お酒を飲まないバンドマンのお姉さんに思いを馳せているようだった。
「私みたいに凡人の領域で終わっていたのか、それとも別の形で成り上がってたのかな」
亡くなってしまったからか、リョウさんはお姉さんを神聖視しすぎていると思う。
お姉さんはお姉さんだった。
それに。
「リョウさんは多彩な才能を持つ、大人気のベーシストじゃないですか」
結束バンドの売り込みに燃えていた時期。
喜多ちゃんが大学進学をせずバンドマン一本でやっていくと決めた季節。
感化されたのか、この道に引きずり込んだ責任を感じたのか、リョウさんはサポートベースやら他のバンドへの曲の提供にと、めずらしく積極的にコネづくりやスキルアップに動いていた。
結果として。
ビジュアルもあってベーシストとして人気が出たり、提供した曲がバズったりして、プロ・ミュージシャン、山田リョウは誕生した。
「勝ち負けの話だよ。実力できくりさんと比べて勝っているとこってビジュアルぐらいじゃない?」
「あ、そこは自信あるんですね」
「まぁね」
普段通りに見えて、投げやりな返事。
いつもの調子で振舞おうとするからこそ、リョウさんに普段ほどの元気がないことが気になる。
「ねえ、慰めてよ」
リョウさんが流し目で、私を射抜く。
現実に引き戻されて、びくりと背筋を震わせてしまう。
なんとなくリラックスして話をしていたけれど、ここはカフェでも居酒屋でもなくて。
私が行き慣れているエッチなホテルだ。
「・・・知っていたんですか」
「私にもガチ恋ファンはいるでしょ。身体を求められて断ったら、ぼっちはしてくれたのに・・・みたいな形で聞いたのが最初かな。
思うところはあったけど・・・うん、『私も』口に出さないことを選んだ。
ただの好奇心で聞くんだけどさ、なんでそういうことしているの?」
改めて聞かれてもとわからない。
私から誘ったことはないし、いつも流されるがままだった。
「なんででしょうね?求められるのは悪い気がしなかったからかもしれません」
「ふーん、そういうもの。じゃあ、今日は私が求めるよ。理由はそういう気分だから。初めてで勝手がわからないから、ぼっちに任せる」
ごくりと唾を飲み込む。
見知ったリョウさんで、見知っているからこそ非日常だと強く感じる。
「・・・任されました」
言いながらリョウさんのブラウスのボタンに手をかける。
中性的な顔立ちをしているけど、結構おっぱい大きいなぁ。
ブラウスを全開にすると、リョウさんの肌色が見えてくる。
腰のくびれが美しくて、思わず腰骨のでっぱりに思わず口付けた。
しっとりとしたシルクのような肌の奥に感じる、女性らしい骨格。
「くすぐったいよ、ぼっち」
上気したリョウさんにたまらなくなって、下着に手をかけた。
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リョウさんとの交わりは、セッションしているみたいだった。
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ぬるくなってしまったサイダーで唇を湿らせて、ゴロゴロと二人してベッドに転がる。
素肌で感じるベッドシーツの感触が心地いい。
「ねぇ、リョウさん。
ちょっと気になったんですけど、さっき言ってた真人間として普通にやっていく能力って、私はどのくらいに見えますか」
さっききくりさんのことを10って言ったと思うけど、とリョウさんは前置きをしてから。
「ぼっちは1だと思ってる」
「ひ、ひどい・・・」
「褒めてるんだよ。
ぼっちは平凡に埋もれる能力は1で、だからこそロッカーとしてのカリスマはあるよ。これからもよろしく、うちのリードギター」
照れた様子で口に出してから、はっと何かを思いだした顔をした。
少し口ごもって。
「こんなことをした上で言いにくいんだけど・・・今日ぼっちに連絡した本当の理由なんだけどさ。
――――――虹夏が結束バンドを辞めようかなって言ってる」